20年前と変わらない、"男女平等"の現状

パット・ミッチェル氏(以下、ミッチェル):TEDWomenのステージにお帰りなさい。

シェリル・サンドバーグ氏(以下、サンドバーグ):ただいま。皆さんにまたお会いできて、光栄です。これほど多くの女性が集まるなんて、嬉しいですね。皆さんもそうだと思いますが、普段こんなことはめったにありませんからね。

ミッチェル:初めてお会いした時、ソーシャル・メディアの話題になるだろうという予想に反して、特にテクノロジーやソーシャル・メディアの分野で女性リーダーが少ない、ということを強く感じていましたね。あなたの中でその思いがどのように発展し、あのTEDでのスピーチへと結実したのでしょうか?

サンドバーグ:あの時、このステージで女性について話すのは本当に恐怖でした。皆さん同様、私もずっとビジネスの世界で生きてきましたから。女性であることはあえて言わないようにしていました。だって、気付かれてしまうでしょう、私が女性だってことが。

「女性」なんて口にしようものなら、テーブルの向かいに座っている人たちから「特別待遇を求めている」とか、「不平を言っている」と思われかねません。それどころか、「裁判に訴えるつもりだ」と受け取られかねません。ですから……(笑)。

そうですよね? 私はそれまでのキャリアを通じて、1 度も女性であることに触れたり、公の場で話したことはありませんでした。ただ、それでは良くないということにも気付いていました。

私が大学を卒業したのは、もう20年以上も前です。同期に女性もいましたが、上司は全て男性でした。でも、それも変わるだろうと思っていました。あなたの世代が、男女平等を求めて素晴らしい戦いぶりをしてくれたおかげで、私たちは平等を手に入れたはずでした。実際は、違ったのです。

大きな転機となったスピーチ

サンドバーグ:年を追うごとに女性の同僚が減っていき、今では、会議室で女性は私1人だけのこともしょっちゅうです。ですから、TEDWomenに出て女性のことについて話すべきかどうか、多くの人に意見を求めましたが、否定的な反応ばかりでした。「これまでのキャリアが水の泡になる」、「女性の話は企業の重役にふさわしくない」、「二度とまともに取り合ってもらえなくなる」と言われたのです。

でも、幸いなことに、スピーチに賛成してくれたあなたのような「誇り高き少数精鋭」もいました。Facebook設立者で上司のマーク・ザッカーバーグが、私たちに問いかけるように、私も自らに問うたのです。

「恐れなければ、何ができるだろうか」と。それに対する答えは、「TEDのステージに立ち、女性やリーダーシップについて話す」ことでした。そして、何とか乗り切ったのです。

(会場拍手)

ミッチェル:乗り切っただけではありません。あの時のことを思い出します。シェリル、あなたと舞台裏に立っていた時、あなたは私のほうを向いて、話をしてくれました。本番直前でしたが、私は「ねえ、是非その話をしてちょうだい」とお願いしたんです。

サンドバーグ:そうでしたね。

ミッチェル:その話をしてくれますか?

サンドバーグ:これまでの歩みの中で、大事な出来事でしたね。もともと、TEDWomenはワシントンD.C.で開催されていました。私は前日、ここから飛行機でワシントン入りしたのですが、当時3歳の娘が、私の足にしがみついて「ママ、行かないで」と言ったんです。

当初予定していたスピーチは、事実と数字だらけで、個人的な話は一切なしでした。それとは関係なく、パットには友人の気安さで「今日は辛いわ。昨日、娘が足にしがみついて行かないで、と言われたの」ともらしたのです。

すると、あなたは私を見つめて、「その話をして」と言いましたね。「TEDのステージで? ご冗談でしょう? ステージ上で、娘が足にしがみついたと告白しろと?」と私が驚くと、あなたは「女性のリーダーを増やすことについて話したいのなら、それがどれだけ大変なことか、正直に話すべきよ」と言ったのです。私はその通りにしました。あのスピーチが、本当に大きな転機になったと思います。

『LEAN IN』が世界中から共感を得たワケ

『LEAN IN(リーン・イン)女性、仕事、リーダーへの意欲』を執筆した時にも、同じようなことがありました。執筆にとりかかり、第1章を書き下ろし、我ながら出来ばえに満足していました。それもデータと数字でぎっしりの内容です。マサイ族の母系制社会とその社会学的特徴に3ページも費やしていました。それを読んだ夫からは「力こぶが入りすぎじゃない?」と言われました(笑)。

誰もこんな本なんか読みたくありませんよね。この経験から、もっと正直にオープンに私自身の話をしなければいけない、と気づいたのです。自信を持ってふるまえないことが多々あること。最初の結婚の破綻と離婚。職場で泣いてしまったこと。

今でも「自分はここにいるべき人間ではない」と思い、罪悪感を覚えていること。このTEDWomenのスピーチがきっかけで『LEAN IN』を出版し、財団(LeanIn.Org)を設立しましたが、いずれも自らがこうした課題にもっとオープンで正直になることで、他の女性にもそれを促し、真の平等を目指して皆で取り組みたいとの願いからでした。

ミッチェル:あなたの本の中で最も印象的だったのは、皆の痛いところを突いて、あなたが自らをさらけ出したことで世界中から共感を得たことです。そして、他の女性が知っておくべきとても重要なことを観察した上で、実際に様々な障害や考えを異にする人とも向き合う中で、多くの女性に共通する課題を経験したことを正直に書いています。

ビジネス界以外からの反響

ミッチェル:そこに至るまでを伺いましょう。プライベートな部分をさらけだすと決め、こうした問題を解決する、いわば専門家になったわけです。

サンドバーグ:TEDでスピーチをした後、正直言って、作家でもライターでもないし、本を書くなんて思ってもみなかったのですが、スピーチが何度も再生され、人々の生活に影響を与えるようになりました。初めて受け取った手紙の中に、ある女性からの素敵な知らせがありました。

彼女は職場で大きな昇進の機会があったのにそれを断り、親友にその話をしたところ、このTEDトークを観るよう強く勧められました。観た翌日、彼女は昇進を受け、帰宅後、夫に買い物リストを渡したそうです(笑)。「私ならできるわ」と言って。

私にとって大きな意味があったのは、影響がビジネス界の女性にとどまらなかったことでした。もちろん、ビジネスウーマンからは様々な反応があり、多くの影響も与えましたが、他のいろいろな環境にある人々にも影響があったのです。

ジョンズ・ホプキンス病院で指導医をしている方とお会いしました。彼は私のTEDスピーチを見て初めて、自分が指導する医学生は男女半々なのに、回診の時に女子学生は男子ほど発言をしていないことに気が付いたのだそうです。注意して見ると、質問をしても手を挙げるのは男子学生ばかりでした。そこで女子学生にも、もっと手を挙げるように言いましたが、あまり効果はありませんでした。

そこで平等に発言できるよう、学生に「これからは挙手はやめ、こちらから指名する」と言いました。すると、女子学生も男子と同じか、それ以上に上手く答えられることが証明されて、女子学生もそう伝えたということです。

また、ある専業主婦の女性は、問題の多い地区に住んでいて、近所に良い学校がありませんでした。会社勤めの経験はなかったけれども、私のスピーチに刺激を受け、学校に行き、子どものために良い教師の採用を求めて闘ったのだそうです。

スピーチをした時、私自身が声を上げようとしていたのでしょう。それを通じて他の男性も女性も声を上げることができたとわかりました。それで私はスピーチの後、本の執筆に取りかかったのです。

「リーン・イン(1歩前に踏み出すこと)」というムーブメント

ミッチェル:本の中で、あなたははっきりと力強く声を上げていただけではなく、自分が学んだことを共有し、他の人の経験も共有してくれました。だからこそ、あなたが「リーン・イン(1歩前に踏み出すこと)」の専門家になったのではないでしょうか。

それについては、どのように感じ、またあなたの人生にどんな影響をもたらしましたか? ベストセラー本や人気動画だけでなく、人々が職場で行動を起こすことを文字通り「リーン・インしている」と呼び始めるなど、1つのムーブメントに発展しましたね。

サンドバーグ:嬉しく、光栄だと思います。ありがたいことです。それこそがまさにスタート地点でした。自分がこの分野の専門家と言えるか、そもそも専門家がいるのかもわかりませんが、確かにたくさん調べました。あらゆる研究に目を通し、資料も熟読しました。学んだことは非常に明白です。

偏見があるために、世界中で女性がリーダーになれないことがわかったのです。とても驚きでした。『リーン・イン』は世界中で読まれ、私は世界各地を訪れてそれについて話しました。文化は場所によって大きく異なります。

アメリカ国内でさえそうですし、日本、韓国、中国、アジア、ヨーロッパ、どこも全然違います。唯一の共通点は「ジェンダー」です。世界中、どんな文化においても、男性は強くあるべきで、自己主張し、積極的に声を上げるべきだとされています。一方、女性は話しかけられた時だけ話し、他人を助けるべきだと考えられているのです。

さて、世界中で女性は「偉そうな」と言われます。どの言語でも女の子に対して「偉そうな」という表現がありますが、男の子にはほとんど使われることがありません。男の子が仕切っても、それに否定的な表現はありません。そうすることが期待されているからです。でも、仕切っているのが女の子なら、「偉そうな」と言われるのです。

男性なら「リーダー(boss)」、女性なら「偉そうな(bossy)」

会場の数少ない男性の皆さん、どうぞおつきあい下さい。男性代表ということでお願いします。職場で「気が強すぎる」と言われたことのある方は挙手をお願いします(笑)。いつも少数ですよね。5%ぐらいでしょうか。さあ、男性の皆さん、いいですか。女性の皆さん、職場で気が強すぎると言われたことのある方は?(笑)世界中どの国で聞いても、こんな感じでした。データできちんと裏付けされているのです。

さて、女性は男性よりも気が強いと思いますか? もちろん違いますよ。単に偏見にとらわれていただけです。職場で成果を上げるために示さなければならない資質の多くが、仕事で結果を出し、リーダーシップを発揮することなどは、男性であれば「リーダー(boss)にふさわしい」と言われるのに、女性なら「偉そうな(bossy)」と言われるのです。でも、幸いなことに、偏見を認めれば、これは変えられます。

これまでの歩みの中で最高に嬉しかったのは、『リーン・イン』の出版後、シスコ社CEOのジョン・チェンバースとステージに立った時でした。彼は私の本を読んでくれていて、共に壇上に立ち、男性も女性も含めて全経営陣の前で私を招き、こう言いました。

「我が社には、そして私にも偏見はないと思っていました。でも、この本を読んで、女性管理職が皆、気が強すぎると言っていたことに気が付きました。この場を借りてお詫びします。同じことは繰り返さないとお約束します」

ミッチェル:その言葉、知り合いみんなに送ってもいいかしら?

(会場拍手)

女性が管理職になれないという事実に向き合う

サンドバーグ:ジョンがそう言ったのは、会社にとっても良いことだからです。こうして偏見の存在を認めてこそ、現状を変えられるのです。だから、今度誰かが女の子に向かって「偉そうな」と言ったら、その人のところに行き、にっこり笑って「その子は偉そうなんかじゃないわ。その子には経営幹部に必要なリーダーシップがあるのよ」と言ってあげてください(笑)。

ミッチェル:お嬢さんにもそう言ってらっしゃるんですよね。

サンドバーグ:もちろんです。

ミッチェル:本の中で焦点を当てているのは、また、そもそも本を書かれた理由は、この問題について対話を促すためでしたね。つまり、問題を明るみにし、これだけ門戸が開かれ、チャンスも増えているこの時代にあっても、女性はまだ管理職になれないという事実に向き合おう、というものです。

『リーン・イン』ではこの現状に焦点を当て、「課題が山積みだが、それを自分の課題として捉え、向き合わなければならない」と提言されていましたが、本の出版後、何か変化はありましたか? 変わったと実感したことは?

サンドバーグ:対話が確実に増えているのは、素晴らしいことです。でも、私だけでなく皆にとって本当に大事なのは、行動を起こすことです。どこに行っても、CEOから、ほとんどが男性ですが、言われます。

「君のおかげで、ものすごくお金がかかるようになったよ。女性が皆、男女同給を主張するからね」と。それに対して「おあいにくさま」と答えています(笑)。だって、男性と同じ給料をもらって当然ですから。

地球の裏側に住む女性の人生を変えた

行く先々で、女性から「昇給を要求してみます」と言われます。行く先々で、「夫婦関係が良くなった」、「家事をもっと助けてもらえるようになった」、「遠慮せず職場で昇進を要求してみます」という声を耳にします。大切なのは、女性たちが可能性を信じているのです。

些細なことでもいいのです。ある州知事からは、女性の多くが文字通り部屋の隅に座っていることに初めて気付いた、と言われました。今では、女性スタッフ全員がテーブルに着席するというルールを決めたそうです。

著書『リーン・イン』と共に設立した財団は、女性の、もちろん男性でもいいですが、サークル結成を支援しています。10名から何名でもいいのですが、小グループで月に1回会合を開きます。今頃までに500ぐらいのサークルが立ち上がってくれれば素晴らしい、と思っていました。10人前後のグループが500もあればいいと。実際は、世界50カ国に1万2千以上のサークルが出来ました。

ミッチェル:それはすごいですね。

サンドバーグ:しかも皆、毎月欠かさずに会合を開いているのです。北京でそんなサークルの1つを訪れました。29、30歳の女性たちが、北京初のリーン・インサークルを結成したのです。中にはとても貧しい農村部の出身者もいました。

29歳の彼女たちは、未婚であるため、世間からは「売れ残り」と言われています。月に1度の会合を通じて、彼女たちは自分の生き方、キャリア上の目標や、理想のパートナー像を自ら決めようとしているのです。

彼女たちを前にして、順番に自己紹介をすることになり、それぞれ名前と出身を言いました。私の番になって「シェリル・サンドバーグです。これが私の夢だったんです」と言うと、思わず泣き出してしまいました。

そう、私は涙もろいんです。前にもお話しましたよね。でも、地球の反対側に住む、農村育ちの、望まない相手と結婚するよう言われてきた女性が、今は月1度仲間と会って、伝統を拒否し、思い通りの人生を手に入れることができるのです。これこそが、私たちの望むべき変化ではないでしょうか。

「仕事と家庭の両立」について聞かれたことのある男性はいる?

ミッチェル:そのメッセージがグローバルに通用することに驚きませんでしたか? この本が出版された時、多くの人がこれは若い女性のキャリアアップにとって貴重なバイブルだ、と思いました。若い女性がこれを読んで、障害を予想し、認識し、明らかにして話し合うべきである、と。

この本が実際にターゲットとしているのは、ビジネス界でキャリアを追求する女性だと思われていました。でも、今やこの本は、おっしゃる通り、農業国や開発途上国でも読まれています。驚いた点はありますか? そして何か新しい気付きがあったでしょうか?

サンドバーグ:この本は自信を持つことと男女平等について書いています。世界中どこでも、女性はもっと自信を持つ必要があるということがわかりました。女性は男性と対等な存在ではないとされているからです。

世界中どこでも男性は「仕事」も「家庭」も両立しているのに、女性はそのどちらかを選ばなければなりません。どうやって両立させているか、聞かれたことのある男性にお目にかかったことはありません(笑)。

それでは、再び会場の男性陣に質問です。「どうやって仕事と家庭を両立させているのか」と聞かれたことのある人、手を挙げて?(笑)男性だけですよ。では、女性の皆さん、どう両立させているか聞かれた人、手を挙げて。

男性は、仕事も子どもも持てるのが当然と思われているのに、女性には出来ないと思われるなんて、おかしな話です。アメリカを含め、世界中どこでも、大多数の女性はフルタイムで働いて、子育てもしているのですから。

男女平等のメッセージは、世界共通のもの

このメッセージがどれほど広範な意味合いを持つか、十分に理解されていないと思います。マイアミには救出されたセックスワーカーのためのサークルがあり、そこでは『リーン・イン』を使って、女性たちが、まっとうな人生に戻れるよう支援をしています。

売春あっせん業者から女性たちを救っているのです。テキサスのドレス・フォー・サクセス(女性の再就職支援をサポートするNGO)でも、高卒女性たちの就労支援にこの本が使われています。エチオピアにもサークルがあります。

「女性に男性と同じことは無理」と言われ、リーダーシップは男性のものとされ、声を上げるのは男性とされている現状で、こうした男女平等のメッセージは、私たち皆に影響を与えるもので、世界共通のものだと思います。TEDWomenの役割も同じですね。TEDWomenも「もっと多くの女性が声を上げれば、もっと平等になる」という理念を信じて、私たちをひとつに結びつけてくれています。

「フェミニスト」を復活させるべき

ミッチェル:もしもまたTEDWomenに招かれたとしたら、この経験から個人的に何を得て、この歩みを通して女性、そして男性について何を学んだと話しますか?

サンドバーグ:そうですね、強調するつもりでしたが、さらに強調して言います。現状に甘んじてはいけません。現状では不十分で、速さも十分とは言えません。TEDトークに出て、本を出版した後、国勢調査局から新たな統計が発表されました。

その結果はどうだったでしょう? 米国における男女間の賃金格差は相変わらず、男性1ドルに対し、女性は77セントなのです。黒人女性なら64セントで、ヒスパニック系女性なら54セントです。この数値が前回上昇したのはいつだと思いますか? 2002年ですよ。いろんな面で私たちは停滞しているんです。

それなのに、私たちはこのことを正直に受け入れられないのです。理由はいろいろあるでしょう。ジェンダーについて話すのは難しいことです。「フェミニスト」という言葉も、本当は受け入れるべきなのに敬遠してしまうのはなぜでしょう。

「偉そうな」なんて言葉はなくして、取り戻すべきなのは……声を大にして言いますね。「偉そうな」という言葉をなくし、「フェミニスト」を復活させるべきです。私たちに必要なのですから。

(会場拍手)

ミッチェル:それに、私たちは皆もっと前へ踏み出さないといけませんね。

サンドバーグ:もっと前へ踏み出しましょう。

ミッチェル:ありがとう、シェリル。1歩を踏み出してくれて、ゴーサインを出してくれて、ありがとうございました

サンドバーグ:ありがとうございます。

(会場拍手)