サメを巻き上げる“シャークネード”は可能か?

ハンク・グリーン氏:どういうわけか、映画『シャークネード』(注:竜巻に巻き上げられたサメの大群が襲ってくる人気B級映画)には続編があり、我々にはシャークネードについてまだお話しするべき科学があります。それはいいものであるとお約束します。

2013年、最初にシャークネード現象が始まった時、我々は明快な答えをもって明快な質問に答えました。シャークネードは不可能なのです。

それにはたくさんの理由があります。しかし『シャークネード5』――そう“5”です――に関するあらゆる誇大広告により、我々は再び最初の映画のことを考えさせられたのです。

ネタバレ注意ですが、シャークネードの終盤に、肉食の旋風を止めるため主人公たちがヘリコプターから爆弾を投げました。そしてそれは、ご想像の通りそれも失敗に終わりました。

そのアイデアは妥当に思われますが、なぜトルネードを爆破できなかったのでしょうか?

まず少し背景についてですが、当初のシャークネードでは、太平洋を横断するハリケーンは、サメのたくさん詰まった一まとまりのトルネード――専門的には水上竜巻ですが――を創り出しました。

トルネードはただの渦を巻いた風ですよね? なのでもしあなたが風を妨害し回旋するのを止めれば、理論的にはトルネードを殺すことができるはずです。

では、巨大な爆発からの衝撃波よりも、一まとまりの空気を妨害するよりよい方法とは何でしょうか。

この計画にはいつくか問題点があります。最初のものは主人公が地上を離れるずっと前からあります。映画の中のトルネードは、サメを水から引き上げ運ぶのに十分な強度があり、ロサンゼルス中にサメをつまようじのように放り投げます。そして不運にも、そんなに強力なトルネードが隣にあったとすると、竜巻に爆弾を投げるためのヘリコプターをホバリングさせる方法はないのです。

そもそもヘリコプターは通常の雷雨の中でも安全ではないのです。なぜなら予期できない突風が発生したり、羽根の周りの空気もかなり安定している必要があります。ですので、映画の中のヘリコプターは近くのトルネードにはまったく歯が立たないのです。……すみません、シャークネードでしたね。

トルネードに爆弾は無意味?

しかしヘリコプターの飛び方についての物理を無視したとしても、例えば爆弾を抱えてトラックでトルネードの中に突進したとしても、シャークネードの結末は現実味のあるものではないのです。それにはトルネード自体の物理的な理由があります。

科学者たちは、なぜトルネードを生み出す嵐の構造があったりなかったりするのか、いまだにはっきりとはわかっていません。しかし、彼らはトルネードがどのような状況下で生み出されるのかはわかっています。主に、循環する空気の流れです。

トルネードのことを思い起こすと、おそらく垂直な軸の周りを空気が煙突状に回転している様子を想像するでしょう。しかし実際には他の多くの空気の流れが含まれており、さまざまな方向に流れているのです。

竜巻が形成されると、円柱状の暖かい湿った空気が渦を巻く空気を一緒に引き連れ、素早く地上から上昇していくのです。その暖かい空気が雲の上に到達すると、それは広がり冷たい乾いた空気を押し出し、地上に戻っていくのです。そしてそのプロセスは繰り返されます。

よりたくさんの暖かい空気が上昇し、たくさんの冷たい空気が下降するにつれ、風は強さを増し、まとまっていきます。最終的に、我々がトルネードと聞いて想像する斜め向きのつむじ風が形成されるのです。これらの垂直な風は、トルネードが旋回し始めると止まりません。嵐が過ぎ去るまでずっと続きます。

たとえいくつかの爆弾が、シャークネードの外側の層を成している斜め向きのつむじ風を止めることができたとしても、嵐が再び轟音をあげることを防ぐには、巨大な垂直の対流の流れを止める必要があります。

そして、巨大なトルネードやサイクロンの外側で起こる小さな爆発は、中心部の暖かい空気が上昇するのを止めるのには何の役にも立ちません。もしあるとすれば、爆発で発生する熱が嵐の中心部をより暖かくし、むしろ勢力を強めてしまうでしょう。しかしそれもほんのわずかです。

なぜならそれは、この計画において3つ目の問題を引き起こすからです。

最も外側の斜め向きの風を止めるだけでも、非常にたくさんのエネルギーを要します。過去最大級の勢力のハリケーンやトルネードでは、風速およそ時速300から400キロのスピードが観測されました。

そしてそのようなスピードで移動する巨大な空気の塊は、巨大なエネルギーを持っています。プロパンを満たした爆弾の1つや2つとは比べものにならないくらいです。強大なトルネードのエネルギーと競うには、映画で使われた爆弾が何千個も必要でしょう。

映画のように、トルネード1つに数個の爆弾を使用したところで、何にもならないでしょう。ヘリコプターにさらに1万もの爆弾を搭載すると、まずヘリコプターは地面に墜落していきながら非常におぞましい時間を過ごすことになります。

しかしながら、シャークネードについての映画が科学を誤って理解しているという事実は、おそらく大きな驚きではないはずです。より大きな驚きなのは、シャークネードのレンズを通して我々がどれだけ多くのことを語れるかということです。私はそれを語り続けることができて幸せです。

みなさん、『シャークネード5』を楽しみにしましょう。スポンサーがついているわけではなく、我々はただワクワクしています。