「ただ好きなことをやっていたらこうなった」巨匠・坂本龍一氏が振り返る、音楽家としての足跡

トークセッション #1/3

世界を舞台に独創的な挑戦を続ける人をたたえ、今後の活動を支援する目的で創設された「デジタルガレージ ファーストペンギンアワード」。8月29日、第2回の受賞式が行われ、受賞者の坂本龍一氏が登場しました。授賞式のあと、デジタルガレージ代表の林氏、共同創業者の伊藤氏とトークセッションを行い、自身のこれまでの活動を振り返りながら、将来への期待を語りました。

第2回ファーストペンギンアワード受賞者は?

司会者:それでは、デジタルガレージファーストペンギンアワード2017受賞者の発表です。デジタルガレージファーストペンギンアワード2017受賞者は、この方です。

坂本龍一さんは、デビュー当時から世界を舞台に最先端のテクノロジーを駆使した音楽活動を展開。日本初のインターネットライブやソーシャルメディアを活用したプロジェクトなど、インターネットの波に乗った、枠にとらわれない独創的な挑戦を続けています。

近年では、森林保全団体「more trees」や、東日本大震災被災地の幼稚園・小中高校に対して学校楽器備品の点検・修理や音楽活動支援を行う「こどもの音楽再生基金」を設立。楽器修復を終えると、東北ユースオーケストラを設立し、音楽を通じた被災地支援を続けています。またテレビやWebを通じて音楽の魅力を語り、教え、演奏する音楽番組を展開しています。

こうした枠にとらわれない独創的な挑戦、自身の経験をもとにグローバルな視野に立って後進の育成にあたる功績が讃えられ、ファーストペンギンアワードの受賞にいたりました。

それではご本人に登場していただきましょう。Ladies and Gentlemen, the winner of the First Penguin Award 2017 is Mr. Ryuichi Sakamoto! 大きな拍手でお迎えください。

(会場拍手)

司会者:坂本さんは、作曲家、音楽家、音楽プロデューサー、ピアニストとして、世界を舞台に独創的な活動を続けるかたわら、後進の育成にも積極的に取り組んできた功績が讃えられ、このたび受賞にいたりました。改めまして、坂本さん、ようこそおいでくださいました。よろしくお願いいたします。

坂本龍一氏(以下、坂本):こんにちは。

優勝賞金の授与

司会者:では、さっそく授賞式、執り行わせていただきます。まずは、林社長よりトロフィーの授与をお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございました。続いて、副賞としまして賞金5,000万円をデジタルガレージファーストペンギンアワード選考副委員長の伊藤より贈呈させていただきます。

(会場拍手)

司会者:伊藤さん、ありがとうございます。

さらに副賞としまして、四代徳田八十吉様の香炉が贈呈されます。四代徳田八十吉様の手が作り出す九谷焼の陶磁器は、絵柄でなく色の配色のみで作品を仕上げるのが大きな特徴で、世界でも高い評価を受けています。

本日は金沢からご本人がかけつけてくださいました。さっそくご登場いただきましょう。どうぞ。

四代徳田八十吉氏(以下、徳田):おめでとうございます。

(会場拍手)

司会者:ここで徳田様に一言コメントいただきたいと思います。贈呈した陶器についてなど、一言いただければと思います。

徳田:僭越ですが、英語ではdawnという一言かもしれませんけれども、日本では、東雲、黎明、曙など、朝焼けを表現する言葉がいくつもあります。

春は曙。「青春とは人生のある一定の時期をいうのではなく、心の持ちようである」という有名な言葉がありますが、そういう心を込めて「曙」と香炉を命名し、製作させていただきました。本日は誠におめでとうございます。

(会場拍手)

光栄だが、荷が重い

司会者:ありがとうございます。そしてここで、坂本さん、率直な感想をお聞かせいただけるとありがたいです。

坂本:率直な感想(笑)。

(会場笑)

坂本:いや、あのね、ファーストペンギンというのはたぶんそういう意味だろうなと。

たくさん群れがいるところで最初に飛び込むやつなんだろうけど、シャチがいるわけだから食われちゃう。だいたい、食われないでスイスイいければいいんですけれども。

だけど、知らせをもらったときにすぐに聞いたよね、「Joi(注:選考委員の伊藤穰一氏のこと)、なんで俺なの?」って。いや、そんなに先んじてなにかをやってるつもりもなかったんですけど。たいへん光栄なことなんですけど、かといって荷が重い。

これをいただいたからには、これからも先んじて進んでいかないといけませんね。後進の育成に関しても、あとでまた話があると思いますけど、若いときはむしろ、「若い芽を摘む会」というのを1人でやっていて、ライバルは若いうちに摘んでおこうと思ったんですよ。

(会場笑)

そういう冗談を言ってたぐらいなので、(後進の育成は)そんなにやってないんですけど。だけど、気がつくと自分でも、森林保全のmore treesとか、東北ユースオーケストラとかね、非常に気の長い、時間のかかる後進の育成というかな、をやっていた。

なので、大きなすばらしい意志があってやってるんじゃなくて、気がついたらやってたという感じです。だいたい僕はそういうことが多いんですけど、これをしっかり受け止めて、これからもなるべく人に先んじて、冒険精神を忘れないで進んでいきたいと改めて思いました。

好きなことをやっていたらこうなった

司会者:ありがとうございます。それでは、ここから坂本さん、林さん、伊藤さんのお3方でのトークセッションを始めさせていただきます。椅子をご用意しておりますので、どうぞおかけください。

四代徳田八十吉様にはここでご降壇となります。ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:それでは、またファーストペンギンアワードについて説明して、そのあとピックアップしていただければなと思います。

この賞は、海の中にいる獲物を得るために自らを危険にさらすことを覚悟し、氷床から真っ先に海に飛び込むペンギンになぞらえてできたアワードです。

科学技術、芸術、文化、スポーツといった分野で、世界を舞台に独創的な挑戦を続ける方を称えるものですが、これを機に新しい活動への思いなどはありますでしょうか?

坂本:あの、本当うれしいことなんですけど、「そんなに独創的なことやってるかな?」という、自分を客観的に見るというのは本当に難しい、一番難しいことで、自分で自分がやっていることってよくわからないんですよね。

だから、このような賞をいただけるというのは本当に光栄なことですけれども、自分ではそれほどあまり意識してやってるわけじゃないんですよ。ただ好きなことやっていてこうなっちゃって。ねえ、林さん。

林郁氏(以下、林):(笑)。

坂本氏の受賞の理由

司会者:では、林さんと伊藤さんにうかがいたいんですけれども、今回坂本さんを選ばれた理由などを教えていただけますでしょうか? 

:ご本人はご謙遜なさってますけど、僕からすると、昔、テクノといってた時代、やっぱりテクノロジー、コンピュータを一番最初に使って、グローバルにあれだけのムーブメントを巻きおこして、YMOを経て、それでもうソロの活動に入っていって。

かつ、いつも、当時すごいタッチーだった原発の話や自然環境保護の話とか、僕からすると常にちょっと斜め上を走ってる先輩という感じです。

ご謙遜なさってますが、とにかくさっき言ったように、インターネットのライブも日本で最初で。わずかにストーンズに抜かれてしまいましたが、インターネットで一番最初に取り組んでやってましたし、Joiともかなりそこで近くなってましたし。

あと、音楽の著作権をインターネット上に流すというのがタブーだった時代にいち早くいろんなことをやられて。当時、こんなこと言っちゃいけないかもないんだけど、JASRACさんといろいろやってましたね。戦ってましたね。

坂本:そうですね。文化庁の審議会に出かけていって発言したことありました。そういえばね。

:その頃の常識が今はもう非常識になっていて、どんどんいろいろレギュレーション変わってると思います。その1つの穴は、間違いなく、坂本さんが飛び込んだ氷層の穴なんじゃないかと思います。

坂本:さっきティモシー(・リアリー)の言葉がありましたけど、「常識を疑え」というか「オーソリティを疑え」というのは、それは僕はもう物心ついた子どもの時からずっとそうでして。自然に、別に誰に教わったとか親からそう言われたわけでもなくてそうでしたね。

つまらない話、例えば道の赤信号青信号も、子供心で「これ誰が決めたの? 俺じゃないし」みたいに思っていたぐらいで、かなり危ない子どもではあったんですよ。それは今も変わらないですね。基本的にね。

坂本氏が考える音楽の役割

伊藤穰一氏(以下、伊藤):今でも危ない大人という(笑)。

坂本:いや、それほど(笑)。

伊藤:坂本さんと僕が最初会ったときは、マイクロソフトのフルカワさんからwindows95の機械かなにかをもらって、インターネットが入ってて。そしてなんか、僕に初めて連絡があったのは、「インターネットを教えろ」っていうので(笑)。

やっぱり、必ずなにか先のことを勉強して、そしてそれを作品にするということ。あとはやっぱり英語では「Speak Truth to Power」とあるんだけど、権威に対して発言する。それは(坂本さんが)たぶん学生運動をやってたっていうのはみんな知ってると思うんだけども。

坂本:高校の時からやってました。

伊藤:先ほどのJASRACの話もそうなんだけれども、やっぱり思ったことをきちっと言うし、そしてそれもまた作品の中に出てきて、それがちゃんとテイストでいいかたちで出てくる。

だから、なんとなく、今、僕が世の中で一番重要だと思うのは、やっぱり文化のシフトだと思っています。環境問題なんかも、やっぱり我々の美学が。だから美学が変わらないといくらルール変えても変わらなくて、それを伝えるのは音楽だと思ってる。

坂本:音楽しかない。

伊藤:それが入らないとだめで。ただ、その音楽の中にメッセージが入ってないと無駄なので。だからたぶん、僕は坂本さんが今本当にやってきた「more trees」とか「NO NUKES」とかを文化的に、今、若い子たちは変わってきてると思うんだけれども、そうやらないと、戦争もそうだし環境もそうだけど、直らないような気がして。それがとても僕としてはずっと期待してるところです。

環境問題への取り組み

坂本:環境問題に少し関心が出てきたのはものすごく前で、92年ぐらいです。それで、言葉でみんなに広めるというよりは自分でできることをやろうと思って。

その頃はCD売ってました。だから自分の本業のCDのパッケージをエコフレンドリーなものにまず変えたんですよ。そうしたらものすごいバッシングというか、評判が悪くて。「あいつは気が狂った」とか言われたんですけど、まあ少しずつ地道にやっている。

2000年ぐらいに自分のコンサート、これを自然エネルギーでやろうと思って、いろいろ声をかけて協力してもらってやったんですけど、リハーサルとかコンサート含めてけっこう電気使うので、最初始めたときはたった10パーセントだったんだけど、2005年にツアーやったときは100パーセント自然エネルギーで賄われていたんだったかな。まあ、いろいろやってます。

だけど、今Joiが言ったように、やることも大切だし、言葉で言うことも大切なんだけど、やっぱりかっこよく美しくやりたいというか、僕がやってることがかっこいいかどうかはそれはさておいて、自分としてはそう思っています。

だからよく言ってたんだけど、言ってることが正しくとも受け入れにくい入り口というか、お化粧というか、見かけがないと人の心には入っていかないので。それは音楽でもファッションでもなんでもそうですけど。言ってることが正しくて、でも見かけもいいと。これでやっと人は見てくれるし、耳を傾けてくれると思うので、そういう精神でやってきました。

:すばらしいと思います。あと、実は今日ずっと出ているティモシー・リアリーって。この間、坂本さんと今回の受賞の話でニューヨークで話をした時に、実は坂本さんもティモシーに「Joiってのがいるぞ」と。僕もぜんぜん関係なく、ティモシー・リアリーの、当時マルチメディアの撮影に行ったら、「Jo Itoを知ってるか?」と言われて。だから、ちょうどここにティムがいて。Joiが真ん中の三角形のこのへんに(笑)。

坂本:導き役だった。

:っていう不思議な関係なんです。

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