2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
リンクをコピー
記事をブックマーク
上村嗣美氏(以下、上村):みなさんはじめましての人もいれば、こんにちはの人もいるんですけれども、サイバーエージェントで広報をしております上村と申します。
私はサイバーエージェントの社員数がまだ20人くらいの時にサイバーエージェントにジョインして、社長の藤田の秘書を経て、今は広報歴15年です。
サイバーエージェントがどんな会社なのかというご紹介ですが、いわゆるインターネットの企業です。広告代理店でもあり、AbemaTVやAWA、アメーバブログといったようなメディアを運営していたり、あとはスマートフォンゲームなどを展開している会社です。
(スライドを指して)下のグラフの通り、1998年に設立され、新しい事業を次々に展開しながら成長してきたような会社です。
非常に新規事業も多くて、ちょうど今年度に入ってサイバーエージェントグループで設立された会社が18社あったりとか。
(会場笑)
と、笑ってしまうくらいなんですけれども、どんどん新しい事業だったり、子会社が立ちあがっていくような会社で私は仕事をしています。なかなか1社で15年広報を務めるというのは珍しいかもしれませんが、会社の成長とともに私も経験して成長してきたと、そんなキャリアになります。今日はよろしくお願いします。
(会場拍手)
石根友理恵氏(以下、石根):ありがとうございます。田尻さんよろしくお願いします。
田尻有賀里氏(以下、田尻):リノベる株式会社というところで広報をしている、田尻有賀里と申します。リノベるという会社は、広報をして3社目の会社になります。私は新卒の1年目以外は、ご縁があって、ずっと広報の仕事をしています。
学生の時はもともとマスコミ志望で就職活動をしていたのですが、ちょうどインターネットの企業が出始めた時期で、インターネットに新しいメディアとしての可能性を感じたことから、新卒でインターネット企業に入りました。
新卒で入社した会社では、webサイトの企画や編集の仕事を経験し、その後2年目にグループ会社の化粧品会社に出向になり、広報・PRの仕事をする機会を得ました。そこからはIT企業2社で広報をやっていました。総合すると、IT広報のキャリアが長めですが、今はめぐりめぐって住宅のリノベーションの会社の広報をしています。
私は、広報機能がないベンチャー企業で、広報の立ち上げをする機会が多くて、そういったゼロイチでの広報を多く経験してきました。
簡単に会社の紹介をさせていただきますと、リノベる株式会社というのは、設立して8期目の会社で、まだまだ新しいベンチャー企業です。
メインとなるのは『リノべる。』というマンションのリノベーション事業です。その他にも新規事業として『nekonote』という施工現場の管理ツールアプリだとか、『Connectly』というブランド名でIOTを取り入れたスマートハウスのブランドをやっていたりだとか。いろんな新規事業もやっています。
『ビフォーアフター』という番組であったような、築30年とか40年の中古マンションの配線配管等を全部取っ払って、スケルトンの状態から、お客様1人1人に合わせたセミオーダーのおうちを作っていくような事業をしています。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
石根:ありがとうございます。では簡単に、本日のモデレーターをつとめる石根と申します。「グラスタWeb」の編集長をしています。グラスタWebはIT業界を活性化するという目的で運営しており9月にリニューアルリリースをする予定です。本日はよろしくお願いします。
(会場拍手)
石根:では早速、質問形式で1問1答に答えていただくという形式で進行いたします。
まずは「広報戦略の立て方とKPI」。広報業務において、戦略の立て方とKPIはすごく難しく、悩んでいる方が多いのではないでしょうか? そこの部分についてお2人におうかがいできればと思います。
まず上村さんからおうかがいいたします。サイバーエージェントはさまざまな事業を手がけており、広報の事業部も多岐にわたる中で、どういった戦略を立てていらっしゃるのでしょうか?
上村さんは「広報全体の事業部ごとに半年の戦略を立てる」、そして「都度戦略の変化に合わせて戦略と目標を修正している」とのこと。詳しくおうかがいできればと思います。
上村:はい。サイバーエージェントでは単体で10名くらい広報担当がおります。基本的に1人1事業を担当していて、私は広報全体の統括と企業広報を担当し、あとは広告事業の担当だったりアドテクだったりゲーム。それからメディア、あとはスタートアップ事業と社内で呼んでいる、社内の新規事業ですね。あとは技術やクリエイティブ、といった事業や領域ごとに担当が分かれています。
私たち広報全体の戦略と目標なんですけど、広報担当者一人ひとり、担当している領域や事業が異なるので、経営戦略や課題、あとは市場周辺の環境、これは業界だったり今の世の中の流れだったり、そういったことを見て、今サイバーエージェントの広報として、どういったことを課題解決しなければいけないのか、どこに力を入れることが経営貢献につながるのか、ということを考えて、半期の戦略と目標を立てています。
みなさん悩まれているのがいわゆる目標設定だと思うんですけれども、私たち広報全体の目標設定というのは、実は定量目標を立てるのをやめました。今は定性目標しか立てていないような状況です。その代わりに、定量目標は個々の広報担当、それぞれの事業や領域の広報ごとに目標設定するんですね。
では広報全体ではどうするのか、というのは、この半年、サイバーエージェントの広報としてどこに注力するか、半年後に例えば役員だったり、社員だったり、業界内だったりから、「こういう声があがったらすごく理想的だよね」というゴールを決めるんですね。
そのゴールを定性目標として、私たちはキャッチコピーにするんですけども、これは広報担当者全員で集まって、じゃあどういう状態にしたいか、それをキャッチコピーにしたらどういうふうになるかを全員で考えます。
そのキャッチコピーというか、目標自体は担当役員と握っておくんです。「こういう状態になったら」とか、「こういう人たちからこういう言葉が出たらオッケーだよね」というイメージを担当役員と握る。では、そのためにはどういう戦略でいくべきかを考える。というような広報全体の戦略と目標の立て方をしています。
石根:わかりました、ありがとうございます。定量目標に関しては広報部では決めず、各事業部ごとの役員と相談して決めるというところについては、、具体的に事業部ごとの定量目標は具体的にどういうプロセスで決めていくのでしょうか?
上村:今「広報全体では定量目標を立てていないです」と言ったんですけれども。当然ながら、広報担当者のいわゆる評価をするために、定量目標ってやっぱり立てないと評価もしづらいし、逆に報告もしづらいというのがあるんですね。
なので広報担当は1人1人定量目標を立てているんですけれども、その定量目標というのは、広報担当者が自身の担当事業の担当役員だったり、事業責任者から、まず「その半期、この事業がどんな戦略なのか」「広報としてはどういうことを期待しているのか」というフィードバックをもらって、その広報担当者が事業部から期待されること、広報でできることを私と一緒にすり合わせをして、定量目標に落とし込みます。
その定量目標の立て方は広報担当者だったり、その事業の今の状況に合わせて変えています。例えばまったくの新規事業で、まずはこの事業のサービス名だったり存在自体を世の中に知らせないといけないよねという時は、まずはこの半期、掲載本数をKPIにしましょう、とか。
例えば、B to Bの事業で会社としてはブランドはある程度できあがっている広告事業だったら、実際の取引拡大や新規開拓につながるような広報活動をしていくので、それに沿ったKPIにしたり。
ただそれも半年ごとに変えていくので、事業戦略の変化や社内環境の変化によって個々のKPIが変わることもあるし、広報担当者が全員同じ指標を持って目標設定としているわけではないという状況ですね。
石根:なるほど、わかりました。ありがとうございます。おそらく上村さんが今お話しされたことって、多岐にわたる事業をしかけるサイバーエージェントならではのやり方だと思うんですけど、一方で田尻さんは、今リノベるの広報をお1人、お2人でされていらっしいますよね?
田尻:はい、6月から1人入りまして、今は2人でやっています。
石根:規模が違う中で、広報も違うやり方を取られているのではと思うのですが、田尻さんが今実践されているKPIの立て方についておうかがいします。
田尻さんのKPIの立て方に関しては「まず露出したい媒体を見極めて定量目標を合わせて設定」「広報戦略はトップを握るべし」とのこと。
田尻:「露出したい媒体を見極める」ということについて説明すると、まず広報は課題解決だと思っているんですね。広報って何のためにするか、すごく極端な話をすると、広報ってなくても会社は回るんですね。売り上げを上げて、お金を稼いで、人を採用して、とやっていれば。ですが、広報が必要ということはどこか課題を持っているところがある。
例えば人材採用だったり、営業の支援だったり、ユーザーを増やしたかったり、会社によっていろんな目的があるのですが、その会社に応じた目的、「何のために広報をやるのか」というのを定めて、その目的を達成できる媒体というのをきちんと設定をして、そこに向かって広報活動をしようということです。
例えば広報部員がたくさんいて、あらゆるメディアにローラー作戦でPR活動できたらもちろん一番いいのですが、当然ながら広報のリソースは限られているので、現実的には難しい。なので、露出したい媒体というのを見定めて、それぞれの目標に合わせて露出したい媒体というのを設定します。
私はこれまでSNSやソーシャルゲームを提供する会社や、ECサイトを運営する会社で広報をやっていたのですが、B to B、B to C、採用広報、IRに近いような広報だったり、会社ごとにいろんなステークホルダーがいるなかで、ステークホルダーごとの露出したい媒体を定めて広報活動していました。
「定量定性目標を合わせて設定」というところなのですが、先ほど上村さんがおっしゃられたように、私もずっと「広報は露出数を追いかけるのではなくて定性でいきたい」というのは何年も言い続けてやってきたのですが、どうしても人事査定ということになると、直接の上司でないいろんな部門の役員が見て、誰もが納得できる結果を見て人事査定をする必要が出てきます。
そういった時にやはり数字がないと、他の部門から広報がどれだけ会社に貢献しているのかというのがわかりにくいので、「仕方がなく」と言ったらちょっと言い方が悪いですが、なんとか無理くり定量目標を合わせて設定しています。
先ほどクイズにも3ヶ月・6ヶ月という目標設定の期間の話が出てきましたが、実はこれまで動きが早いベンチャー企業が多かったので、3ヶ月単位でやっていました。今の会社でも入社した時は他の部門が3ヶ月だったので、3ヶ月で設定されていました。
しかしながら、ちょうど今リノべるに入社して2年目になり、「広報の仕事って3ヶ月で結果を測定するのが難しいぞ」ということで、1年仕事をしてきて経営陣の信頼も得られたので、今年から実は半年で目標設定をし始めました。なので、まだまだトライアル期間です。
「広報戦略はトップと握る」というのは、主に定性目標のことです。広報戦略をトップマネジメント層と握っていないと、せっかくたくさん露出しても、トップから見れば「なんか効果あったっけ?」「別に人材採用の応募数も増えていないし、クライアントの問い合わせも増えてないし、ユーザーも増えてない」というような事態に陥る。
最近、広報始めたての若い広報さんから多く相談いただく内容は、「すごくがんばって広報活動して、たくさんメディアリレーションも作って、露出もこんなに出ているのに、ぜんぜん社長が理解してくれない」というもの。
それは広報戦略、つまりどこを攻めたらいいかというのがトップと握れていないからです。ただ露出するだけだと、そこの会社の広報の目的に合っていない媒体かもしれない。そういったことを避けるために、じゃあ自社はどのステークホルダーにどういうふうにリーチしたのかをきちんと経営陣トップと握って広報活動をやるようにしています。
関連タグ:
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.20
成果が目立つ「攻めのタイプ」ばかり採用しがちな職場 「優秀な人材」を求める人がスルーしているもの
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.21
40代〜50代の管理職が「部下を承認する」のに苦戦するわけ 職場での「傷つき」をこじらせた世代に必要なこと
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.19
がんばっているのに伸び悩む営業・成果を出す営業の違い 『無敗営業』著者が教える、つい陥りがちな「思い込み」の罠
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.12
自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント
2024.11.15
好きなことで起業、赤字を膨らませても引くに引けない理由 倒産リスクが一気に高まる、起業でありがちな失敗