放映権ビジネスの最前線を知る男が語った欧州事情「勤労意欲もモラルもすごく高くて、死ぬほど働く」

トップランナー達が語る「プロスポーツビジネス 私たちの成功事例(東邦出版/編)」出版記念特別イベント #4/6

「プロスポーツビジネス 私たちの成功事例」(東邦出版)の刊行を記念して、2017年7月5日に特別トークイベントを開催。本パートでは、日本サッカーと欧州サッカーの違いなどをディスカッションしました。放映権ビジネスの世界に身を投じた岡部氏の見解はどんなものだったのでしょうか。

強豪クラブで働くためのマインド

岩本義弘氏(以下、岩本):ぜひ岡部さんにも聞きたいです。

岡部恭英氏(以下、岡部):まともな話?

岩本:まともな話をしてください。

岡部:ちょっと酒井(浩之)さんと違います。僕は自分の経験から酒井さんみたいに、人にアドバイスを均等にしない。要するに日本とか日本人であることを売りにするなってことです。

例えばレアル・マドリード、FCバルセロナは日本語が話せるというか、おそらく日本のビジネスのことを考えている。であれば、固定のコストをかけて雇わずとも電通に行っても博報堂に行ってもING Japanに行っても、やれることはやれる。

僕は、(斎藤)聡もよく知っていますが、一切自分が日本人であることや日本のマーケットがどうとか、しなかった。

僕の場合はラッキーなことにヨーロッパに行く前にアジアパシフィックのビジネスをして、シリコンバレーに行って、LAに行くときにも言いましたが、アジアとかアメリカを結ぶビジネスをしていたことが僕の売りでした。

聡がアジアのことを知っていると言いますけど、相手が何を求めるか、相手のニーズがどこにあるかの宿題を99.999パーセントやって後は0.1パーセント。

どういうことか? 「俺は日本を知ってるよ、アジアを知ってるよ、アメリカを知ってるよ」なんて、そのトピックはまったく響かないんです。

「俺はハーバード出ていてアメリカをよく知っている、INGのニューヨークでやっていたからアメリカを任せてください」って言ってもまったく響かないです。

行く前にどれだけ宿題をリサーチするか、そこは徹底的にやりました。それをやらないと入れないぐらいなんです。

すごくリサーチをした上で、英語で言うと、テーラーメイドしていきました。要するにいろんなプレゼンテーションのタイプ、いろんなプロポーサルを作ってそれがエヴァートンならこう、インテル・ミラノならこう、マンチェスター・ユナイテッドならこうと、自分なりに宿題をしてきたうえで、じゃあ彼らの今のチャレンジは何かと。

それに対してどういう機会、オポチュニティーがあるか、それに対して自分のセールスピッチングです。じゃあ自分のバックグラウンドにエクスパティーズ(注:専門的な強み)はないか。どうやって貢献できるか? それを各クラブによって変えていきました。

岩本:そうすると、当然、岡部さんがTEAM、チャンピオンズリーグに出ていたチームにいた時にまだアジアのマーケットっていう感じじゃないですよね?

そこの中でちゃんと組織の中で結果を出さなきゃいけない。そういう意味で、学生のみなさんはこれから社会人になる上で、まだ社会人の経験が浅い方も、今言ったような相手のニーズに合わせると。

逆に言うと酒井さんの場合は前年度にクラブワールドカップで日本に来て優勝しました、翌年も行きます。

だからクラブワールドカップで日本に来る前から、日本を知りたいニーズが高まっているところに、めちゃくちゃマッチして、そこにちゃんとアピールできた(からレアルに入ることができた)。

本当に石にしがみついて頑張ったからレアルの中で仕事ができた。全然タイプが違うけど、ニーズに合わせた意味では一緒ですよね。

だからこの時にちょうど日本を捨てることが武器になったという、ラッキーな部分もあった。そこをちゃんと把握した。やばい、真面目な話になっちゃった。

(会場笑)

スペインと日本のサッカーはどう違うのか

岡部:両方バランスをとって。

仲島修平氏(以下、仲島):トークトピックスとして「スペインサッカーと日本サッカーの違い」を競技面とビジネス面の両面からお願いします。

岩本:「スペインサッカーから学ぶべきもの」は置いときます。長すぎるので。

仲島:大丈夫です。

岩本:斎藤さんからお聞きしたいです。もともとFCバルセロナの組織にいた斎藤さんが、今JFAという日本サッカーの中でもめちゃくちゃお堅いと言われているど真ん中で仕事をされている。

そこの部分の違い、組織の違い、サッカーのニーズに対する考え方の違い、を話せる限りでいいのでお願いいたします。

斎藤聡氏(以下、斎藤):非常に面白いのは、スペインサッカーと日本サッカーの違いを比べようとすること。「スペインサッカーってこんなもんです」「日本のサッカーってこんなもんです」と、みなさんいろいろおっしゃる。

ちょっと真面目な話をするので、玉乃さんがかみ砕いてやっていただければと思いますが、日本のサッカーは、プロができてから25年足らずしかなくて、まだ全然確立されてないんです。

我々も一生懸命、とにかく文化的にヨーロッパから学んだり、ビジネス面でアメリカから学んだり、常に変わろうとしていてJリーグもDAZNとの契約が決まった。収入が増えて、その中で自分たちがどうするか? その一つの基準がスペインサッカーなのかなと。

ただバルサの経験から、今サッカー協会にいますが、実はバルサをここまで大きくした人間って生きていないんです。

110年の歴史の中で自分たちで広めたというより、世代を超えてその上に乗っかっているようなものです。ですから、あまり自分たちで努力するより、どうやってシステムを伸ばすかをやっています。

日本のサッカーに足りないのは、我々のサッカースタイルがどんなものなのかを確立されていないこと。それをバルサは育成のときからすごく事細かく、左サイドバックの選手はボールがきたときはこう迎えて、どうやってどこにボールを入れるなどを、実は16歳まで形作ってやるんです。

日本はなってなくて、それを1つの方向性としてやらないといけない。だけど、できていない。それ以外のことは常に変わろうとしているので、単に違いに関しては、一言では言えない部分があります。

緻密なプレーが要求されるスペイン

岩本:一番聞きたいドロドロした部分は聞けませんでした。JFAの中身とか聞きたかったんですけど、それはやめておきましょう。(玉乃氏に)例えば今の話を聞いて実際どうなの? ピッチ上でも全然違った?

玉乃:そうですね。ピッチはスペインって創造性の溢れるマタドールのように、華麗にやるイメージがありますけど、練習としてはもう数学者が教えるように1センチ単位でプレーも制限されている。それを僕は体感した。

岩本:(斎藤さんが)言われたようにポジションごとに正解があるんですね。

玉乃淳氏(玉乃):正解がある。この間、アトレティコの非公開練習を見に行ったけど、僕が15年前に所属したときと同じ練習をやっている。こうやって語り継がれるんだと思った。

岩本:それはテンション上がるね。

玉乃:はい。本当に細かい。トーレスとかボールがない練習で約1センチ単位の動きをしているわけです。これは勝てないなと。

さらにディフェンスから点をとるのはどうやってやるんだろうと。さらにそれの上を行く攻撃の練習をしなきゃいけない。「なかなか遠いな」という気がしました。

岩本:ハマるとレアルでもバルサでもすごいよね。ちなみに行ったときは顔パスみたいになってるの?

玉乃:その時は顔パスでした。

岩本:マジで、すごいね。持ってるじゃん。これでMBAをとったらすごいんじゃない?

玉乃:時間がかかるんですけど、僕のことを覚えておいてください。10年ぐらい表舞台から消えますけど。

岩本:10年も?

(会場笑)

岩本: 10年たったらアトレティコに知っている人いなくなっちゃうよ。

玉乃:ちょこちょこ。

岩本:ちょこちょこね。

レアルは殿様商売?

岩本:酒井さん、逆に日本の企業で働いて、向こう行って日本の文化とスペインの文化の違いをここ2年ですごく感じたと思うけど、そこらへんをぜひ。

酒井浩之氏(以下、酒井):そうですね。みなさんご存知のとおりですね、昼間も長ければ夜も長い。だいたい昼飯が2時ですから。朝9時出社でも、9時に来る人はいない。みんな荷物置いて朝飯を食いに行って戻ってくるのが11時ぐらい。

それからメールを処理して2時ぐらいまでやって、2時から3時まで1時間昼休みを取ってその後戻ってくる人は半分くらいです。仕事が回らないです。

「メールしたよね?」「うん、受け取った。以上」。そんな感じなんで、どうやって金が回っているんだろう?ってずっと思っています。

岩本:完全に殿様商売ですね。レアルだからできるんじゃない?

酒井:レアルだからの部分は確かにあると思いますけど、周りの人間に聞いてみると平気で同じことを言っています。

岩本:バルサはどうなんですか、斎藤さん? みんなもうちょっと働いてるんですか?

斎藤:これは面白いことに、やっぱり常に経済が良くない。一般にはそういう人たち多いんですよ。当時のトップのエリート中のエリートの経営者で、フェラン・ソリアーノや、マーティン・グランドや、ラポルタ会長は、本当に24時間働いていました。

岩本:なるほど。

斎藤:その人たちのスピードはとにかく、例えばバルサだったら「レアルに追いつけ、マンチェスターに追いつけ」とやっているので、そういう人たちは結構いるわけです。

そこまでクレイジーになれるぐらいに働ける人がいるし、本当に優秀なエリート人間もいて、ギャップがすごくある。逆に日本は中流階級というか、上と下の差がない。みんな一緒ですというのが結構大きい印象です。

岩本:岡部さん、逆にTEAM(欧州スポーツマーケティング会社の名門)やUEFA(欧州サッカー連盟)の人はどんな感じなんですか?

岡部:TEAMは本当に特殊。

岩本:労働基準法を違反しているくらいですか?

岡部:いや、日本人ほど働かないですけど、効率的でパターン、テンプレートみたいなものがめちゃくちゃある。しかも全部、チャンピオンズリーグブランドでやっている。下手に白紙のレターセットだとかを使って外部に発信などしようものなら、大変なことになる。全部ブランドビジネスですから。

あらゆるものがチャンピオンズリーグブランド。「ベスト・オブ・ベスト」と言いますけど、だからそういう超効率化を目指してやっている。

TEAMを作ったのはアングロサクソンでドイツ系の人たちなんです。最初にチャンピオンズリーグの法則を考え出した人間。ドイツ人が作ったシステムをスイスの傭兵たちが動かしている会社なんですよ。

すごく勤労意欲が高くてモラルも高くて、死ぬほど働く。そこまできちきちっとシステムとストラクチャーができているので、日本人ほど長時間労働はしないです。ただ、今試合のオペレーションはやっていないですけど、試合のオペレーションの前は睡眠時間1、2時間でやるぐらいです。

各試合、全部うちから2、3人出ている。レアル・マドリードでやろうが、バルサ、ミラノ、シャフタール・ドネツクのウクライナでやろうと、2、3人で全部のコマーシャルを回している。あの時は本当にその1週間寝ない。狩猟民族のメリハリです。

岩本:実際に現場のところだけは労働力が必要ってことですよね。

岡部:そうですね。それはたぶん、日本だろうとどこだろうと現場だけは、グッとやらなきゃいけないところがあるんでしょうね。

プロスポーツビジネス 私たちの成功事例

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