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場をデザインする コミュニティをデザインする(全5記事)

『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』のヒットの仕方の違いがきっかけだった--コルク佐渡島氏がコミュニティに注目した理由

コワーキングスペースだけでなく、マーケティング観点でも「場づくり」「コミュニティづくり」に注目が集まっています。コミュニティの価値は今後、ビジネスや働き方にどういった影響を与えるのでしょうか。グロービスのMBAプログラムの学生・卒業生、講師、政治家、経営者、学者、メディアなどを招待して開催されるカンファレンス「あすか会議2017」で、コミュニティづくりについて語るセッション「場をデザインする コミュニティをデザインする」が行われました。なぜ今、コミュニティに注目すべきなのか、またそこから得られるメリットとは?

似ているようで違う、ツクルバとコルク

井上英明氏(以下、井上):どうも、こんにちは。

会場:こんにちは。

井上:パーク・コーポレーションといってもなかなかわからないかもしれませんけど、青山フラワーマーケットという花屋をやっております。実は(登壇者の)2人に会うのは今日が初めてなんですね。

僕もよく堀(義人)さんに呼ばれるので、パネラーかなと思っていたんです。パネラーだったらパッパッと言えるんですけど、今回はモデラーでした。お2人のことをある程度わかんなきゃなと思って、さっきまでセッションには出ないでいろいろ調べていたんです。

今日のキーワードで出てくるのがお2人。似たようなことやってらっしゃるようでいて、ちょっと違う。

というのも、村上さんの場合は「ツクルバ」というぐらいなんで、どちらかというとリアリティの場をつくったりされている。逆に佐渡島さんは、もう本当にコミュニティをどうつくるかっていうところに非常に力を入れていらっしゃることがわかったんです。

集客の鍵となる「コミュニティをつくる」

実はうちは今、花屋だけじゃなくて東京のほうでカフェを3店舗やっているんですね。昼の時間帯でいうとここ2〜3年、2列ぐらい行列。今はもう4列ぐらい行列ができているんですけど。なんでなのか、わかんなかったんですよ。なにも仕掛けてないんですね。広告を出したわけでもなんでもないのに、すごく行列ができている。これはなんでかな? と。

逆に6時ぐらいになってくるとどうなるか。店は「ティーハウス」という店名でやっているんで、カフェだと思われてるのかなかなか夜の場は弱いんです。昼間にこれだけ並ぶんだったら、夜になんとか流し込むためにはどうしたらいんだろうと思いつつ、なかなかヒントがわかんなかったり。

あと、花屋なのでスクールもやっているんです。うちのビルの上のほうでやってるので、一見さんがいらっしゃらない。なので、引っ張り込んでこなきゃいけないんです。これも、やっぱりなかなか、うちは苦手なんですね。

リアルの店ってどこも、だいたい通っていれば見えるところにある。だから、けっこうお客さんが来ていただけるんです。博多の駅もそうですけれども。スクールや、夕方のカフェは、見えないところにあるとなかなか引っ張り込めない。これ、どうしたらいいのかなっていつも考えていたのです。

さっき、お2人に少し話を聞いて、よくわかったんです。「コミュニティをつくる」という意識を、強烈に持たなきゃいけないんだなって。そのことを今日先ほど感じたので、これから非常に楽しみにしてるんですけれども。

そういった意味で、今日ここにいるみなさまのコミュニティを誰がつくってるかというと、まさしく堀さんだと思うんですよね。堀さんが「あすか会議」をつくって、これだけの1,100人集めるコミュニティの力。僕はG1も一緒にやらせていただいてますけど。今、G1が日本中のトップの人を集めてくるコミュニティの力って、本当にすごいんですよね。

これからみなさんも新しいビジネスなどをやられるときに、コミュニティをつくっていくという意識が非常に大事じゃないかと、僕は今日気づいたような感じです。ぜひ、そのあたりのことを掘り下げてお話をうかがえればと思います。

コルクが挑戦する「クリエイターを中心としたコミュニティづくり」

まず、自己紹介がてらお話をお願いします。

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):そうですね。僕はもともと講談社のモーニング編集部というところでずっと漫画の編集者をしていました。それで、2012年に「コルク」という会社をつくったんです。

コルクという会社はクリエイターのエージェント会社で、今いろんな作家が所属していろいろやっているんですね。欧米では、クリエイターのエージェント会社というのは、あるのが当たり前なんです。ですが、日本だとまったくない状態だったんで。そこを変えたいという思いでつくったんです。

ただ、会社をつくったのが2012年10月で、ちょうどKindleが始まる時期だったですね。コンテンツというかエンタメが、もともとアナログであったものからデジタル化されたというのが2012年なんです。

実はまだコンテンツって世界的にあまりインターネット化されてないなと思っていて。どうすればインターネット化できるのかを考えていて、そのときのキーワードは「コミュニティ」じゃないかと。

どういうふうにしてクリエイターを中心としたコミュニティをつくっていくのか。そのことに今、挑戦しようとしています。

『ドラゴン桜』「宇宙兄弟』それぞれのヒットでの気づき

井上:講談社にいらっしゃったときは、コミュニティという意識はなかったでしたか?

佐渡島:もうまったくなかったです。僕、講談社に10年間いたんですけど、まず本をつくる編集者になりたくて入ったんです。ヒットをつくりたいという思いで、どうやったらおもしろくなるのかな、どうやったら連載を読んでくれるのかな、どうやったらアンケートの順位が上がるのかな、と。

井上:たぶんそれは、僕が「花を売りたい」と、今まで商売をやってきたのと一緒じゃないかなと思うんですけど(笑)。

佐渡島:一緒です。

井上:それが「花を売りたい」じゃなくて「コミュニティをつくろう」に変わったのは、僕はものすごく大きなスイッチが入ったんじゃないかと思うんですけど。そこは、どこで気づいたんですか?

佐渡島:もう、どういうふうにしても作品の存在に気づいてもらえない悩みからです。『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』が編集者として担当した代表作なんですけど。『ドラゴン桜』が売れているときって、なんかもう社会が動いてるという感じで。すごく売れてるというのが、肌で感じられるんですよ。自分が関わった作品が社会の空気を変えている感覚がすごくありました。

『宇宙兄弟』がヒットしたタイミングでは経験から準備できるものがたくさんあったので、かなり練ったプロモーションの準備をすることができました。『ドラゴン桜』のときはドラマだけだったのが、『宇宙兄弟』はまったく同じタイミングでアニメ、映画、イベント、さらに書店のジャックで関連本を10冊以上出して。やれることを全部やって、さらに宣伝の方法も、かなりきめ細かくやったんですよ。

でも、神風が吹かなかったですね。そのときに、「自分の方法が悪いのではなく社会が変わっちゃってる」と思ったんですよ。「自分が悪かった」と思う場合もあるんですけど、その時は社会が『ドラゴン桜』のときと変わっちゃっていて、マスコミの持っているパワーはもうまったく関係ないと思いました。

そこで「ゼロベースで考えなくていけない。ゼロベースで考えるためにはベンチャーになって、1人になっていろいろ辛い目に遭わないと、アイデアは出てこないな」「よし、辞めよう」と思ったんです。

井上:僕はリアルな体験を話しますけど。うちの店は百貨店さんや駅ビルさんにいっぱい入ってるんです。百貨店さんでつくづく感じるのは、昔は百貨店の5階、6階に行くとお客さんの数より定員の方の数のほうが多かったですね。3階ぐらいに行くと、だいたいお客さんの数が多かったんです。

ぶっちゃけ今百貨店の2階、3階に行くと、まずほとんどのところがお客さんの数よりスタッフの数のほうが多くなってきているんですね。だからお客さんの動きは、本当にリアルに変わってきてると感じます。

その空間に集まる人たちのコミュニティが価値になる

(村上氏に)同じようなことを数年前に感じられたんじゃないかと思うんですけど。今度はリアルな場づくりのほうで自己紹介がてら最近の動きを教えてください。

村上浩輝氏(以下、村上):ツクルバの村上と申します。よろしくお願いします。今リアルな場とご紹介いただいたんですけれども。僕らは「不動産建築の領域で今までとちょっと見方を変えたらどうなるんだろう?」をビジネスの種として生み出して、それを大きくするというようなことをもともとの考えとしてやっています。

最近はインターネット領域やテクノロジーを取り込んで事業をやっています。ちょっと最初に宣伝なんですけど(笑)。先週末に本を出しまして……。

(会場笑)

ここに、どう考えて実践をしたかというのが載っていますので、回し読みでも構いませんので見ていただければと思います。

場のデザインを仕事にする: 建築×不動産×テクノロジーでつくる未来

端折って言うと、最初に僕は不動産デベロッパーで、そのあとに不動産情報サービスの会社、インターネットサービスの会社にいました。そのあとに、共同代表で建築家の相方(中村真広氏)と一緒に起業したんですけれども。

最初の2011年に、渋谷でco-baという名前のコワーキングスペースをオープンしまして。もしかしたら、聞いたことがあるかもしれないんですけれども。

不動産建築の見方を変えるというポイントでいくと、もともとデベロッパーにいたときに、不動産などの価値が単にスペックでしか評価されていないということに、けっこう疑問を持っていました。

それはコモングッド的な話だけじゃなくて、もったいないと思ったんですよね。この空間に集まる人たちがコミュニティになって、それが価値になれば、そこのエリアの路線価がいくらで、坪単価はいくらという設定よりも高く取れたり、マネタイズできるんじゃないかと考えていたんです。

まだWEWORKとかもなかったんじゃないかな。2011年、サンフランシスコでコワーキングスペースというのが生まれ始めているのをニュースで見て、すぐ現地に飛んで見に行って。まさにコミュニティが不動産の価値を上げてる現場を見ました。「これ、日本でやったらおもしろそうだな」と思ってやったのがco-baです。

そのあと、1級建築士事務所として設計の仕事をやりながら会社を成長させていきました。2015年くらいにファンドや外部株主からお金を入れてもらって、テクノロジーの領域に進出しようということで、今、自社事業としてcowcamoというリノベーションマンションの流通プラットフォーム事業をやっています。cowcamoに注力して会社をさらに成長させているというかたちになります。

cowcamoは不動産メディアという見方もできるんですけど。おもしろいのは「cowcamoのことが好き」というコミュニティが存在していて、メルマガの開封率も普通のWebサービスに比べて何倍、下手したら10倍ぐらい違うような数字を叩き出しています。非常に色があるコミュニティをつくれているなと思ってます。

今日はそのあたりもお話できたらいいなと思っています。よろしくお願いします。

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