20歳で成人を迎えることの是非

乙君氏(以下、乙君):30歳成人式を提唱(というニュース)。18歳で準成人、30歳で成人と段階を踏むほうが今の社会に合っているんじゃないかっていう提言が、ある評論家からあります。

山田玲司氏(以下、山田):大人になるのは20歳のわけねぇべって話でしょう?

乙君:うんうん。

山田:実際そうじゃない? 人生50年とか言ってるときは20歳は立派なもんじゃんみたいな。人生90年になっちゃったら、そうもいかねぇだろうって話で。

実際のところ経済的な部分でも先進的な部分でも、肉体的にだけは大人なのに追いつかない。これが現代社会みたいな感じになってる。

乙君:タバコ、お酒、選挙など社会人として半人前になるような資格の解禁は世界標準に合わせて18歳でいいと思うと。18歳で準成人。でも18歳や20歳の時点でどんな生き方をするかを言いきる必要はない。

30歳ぐらいでこういう人間として生きていくって言えるようになれればいいんじゃないかと。

つまり成人っていうもののあれを30にして、モラトリアムを長くしようよ、準成人としてこっから10年ぐらいでどんな生き方をどんな人間になろうかを、それぐらいから真剣に考えればいいんじゃないかっていうことなんですけれど。

山田:大人免許制っておもしろいね。ちょうど35ぐらいが成人いいんじゃねえかってコメントあるんだけど、あなたはちょうどそれぐらいですね。

乙君:そうですね。

出演者の「大人になったと思う瞬間」

山田:大人になったなと思う瞬間あります?

乙君:苦いコーヒーでも飲めるようになってきたっていうところかな。

山田:そういえば甘い酒でも飲めるようになったらしいね。

乙君:甘い酒しか飲めないですね。

山田:オレンジジュースが入っていると飲めるって話? オレンジジュースで割ると飲めるぐらいになっちゃったような感じ。

乙君:リモーネみたいな。

山田:アフリカで飲んだんですか? スペインで?

乙君:スペインで。

山田:そのときに大人になったなと。乙君が大人になったなと思った瞬間は? どんなときに大人になったなと思うんですか?

乙君:何だろうな。いや、だから苦いコーヒー飲めたときぐらいですよね。

山田:またそこに戻るか。それはいいよ。

乙君:大人になったって感覚がそんなにないんで。多分ですけど俺に子どもとかがもしできたら、大人になったって思うんじゃないかなとは思いますけど。

自分にしか責任がないからっていう状況では、多分俺はまだ子どもなんだろうなって思います。

山田:じゃあ40歳になっても子どもだと思う?

乙君:多分。多分どんどん子どもになると思う。

山田:え?

乙君:だから子どものほうが大人ぶるんですよ、子どもって。そこからだんだん何かもう無理しなくていいやっていうか、どんどん力の抜き方をわかっていって。

そうするとどんどん自分に素直にというか純粋に社会との折り合いも含めた上で一番適度なところをいくようになっていく。失敗とかいろいろ繰り返して。

そうなっていくと多分どんどん、どんどん子どもになっていくって本当の子どもになるというか。何か難しいけど。大人って子どもの幻想なんです。確かにそうなんですよね。大人と子どもの境がない部族とかもありますから。

山田:そうね。

(会場笑)

子どもの目が大人になる瞬間

山田:いや、部族の話。

乙君:今、休憩するために俺に話振ったね。

山田:部族の話で、アジアとか旅すると、もう子どもが大人の目をしてるじゃない?

乙君:そうですね。

山田:アフリカとか。だからそれとあと養老先生に「仕事ってのは道に開いた穴をふさぐことだ」って言ってたんだよね。だから難しいことを考えずに要はここ、道に穴開いてたら先に進めねえだろう。

復旧しなきゃダメだろうから、やるっていう、それが仕事だと。

自己実現とかじゃねえ。やらなきゃいけねえからやるんだよっていうのが仕事なんだって言ったときに、俺、このラインは結構大人だなと思ったの。大人ライン。僕はそれをするべきなんだろうかとか言ってたんだよ、まだ子どもで。「うるせぇ、やれよ」って。

「うるせえ、やれよ」っていうラインで少年たちの目が年を取るわけよ。だから中島みゆきが歌ってるじゃない。「少年たちの目が年を取る」って、要するに子どもの時代って結構そこは必要だって話でもあるわけで。

だから要するに何か海外でテロに走る人たちっていうのはそこの段階を抜いちゃってるから、目が大人になっちゃってるっていうか。そういうのあるよなみたいな。それ思ったんだけど、それって社会がどれくらい余裕があるかっていうこと。

戦中はやっぱり『ホタルの墓』に出ている人たちって子どもやれねえじゃんっていう。子どもやりたいけどやれなかった時代があるなって。それで子どもやれなかったからその反動でずっと子どもやり続けるっていう国なんで、この国って。どっかで。

行けるとこまで行くっていう。どっか戦中のトラウマが残ってて、大人になんなきゃいけないみたいな。なるもんかっていうのが結構なおじいちゃん世代でいるんだと思うんだよね。まだこれキープオンしてこうっていう。だから現実問題が解決しない。ここが結構な問題の部分かなっていう気がする

乙君:うーん。

山田:個人の話で言うと、基本的には自立したら大人っていうことにしちゃっていいんじゃねえの。要は自分で稼いで自分で選択して自分で自分のこと世話できる。親に依存してないっつうか、その中そのライフラインみたいなものが自分で確保できてるみたいな。

というのは1つのラインでいいんじゃねえかなとは思うんだけど、それが20歳でできるかっていったらちょっと難しいよね。確かに。

乙君:難しいし、この間の選挙もそうですけど何かやたら新人とか若いやつがそんなにいっぱいはいないけど当選したりするじゃない。33とか。それこそ俺、引き上げたほうがいいんじゃないかなって思ってるんですよね。

山田:どういうこと?

乙君:これ話関係ないからやめますか。

(一同笑)

山田:何それ。言ったら答えろよ、お前。

自分星人の時代からの卒業

乙君:だから社会に出てある程度の実績を政治ってもう総合力だから官僚とは違うわけじゃないですか。だから選挙権は別に今のままでいいと思うけど、被選挙権は本当35とか40でもいいと思ってるぐらいなんですよね。

山田:でもしがらみの問題あるよね。でも関係ないね。若くてもしがらみだらけでいくからね。だからその話はちょっと確かに違うんだよ。しがらみの話なんで。要するにどんなラインとつながってるかで政治家が決まっちゃうっていう問題の話なんで、こことそこではちょっと違うんだけど。

ただ思うのが、ものすごくざっくり言ってわかりやすいラインで言うと、20代30代というよりはまず最初、自分のことしか考えてない自分星人の時代があるわけじゃないですか。でも自分星人の中にはヒーローマインドっていうものが入って、もしくはマザーマインドが入ってんだよね。

要は私が育てたい、俺が助けたいっていう利他星人が自分星人から利他星人に流れるっていうこれはもう入っちゃってんだけど、これって本当に個人差で、じいちゃんになるまで自分星人はいるし。

子どものときから利他的に生きてる人がいるんだよ。ヒーローいるんだよな。だからここもまたちょっとあいまいかなとは思うんだけど。

ただ、この誰かのために生きるんだみたいなこととか、もしくはリバタリアン、要するに世間とかどうでもいい、社会とかどうだっていい、俺だけよければいいんじゃねえかみたいなこと。

例えばリバタリアンの考え方で言うと、地球を1つの水槽だとすると、別によくね? って言いながらその水槽で変な化学物質をまき散らしていく、暮らしていく。

俺だけ楽しかったらいいみたいな。だから水槽なんだよ。全部つながってる。これ見えないからわかんないけど、地球はそうだよね。だから地球にはアメリカだけあるみたいな考え方、リバタリアンってまさにそういうことで切り離して俺の自由だけっていうことをやり出す。

だからそれもまたよくないし、かといってそいつらが批判するボランティアって結局自分のためにやってんじゃねえ? みたいなところの議論もこれも今度ぐるぐる、ぐるぐる回ってる。

結局のところ、そこんとこで俺はそうなんだっていうふうに言いきることができない疑問星人になるとこがくるっていうこと。

乙君:はいはい。

山田:ラインが。要は、俺そんなこと言ってたけど、あっちにはあっちの問題や考え方があるし、こっちにはこっちの考え方があるよな。

そして俺はそれを糾弾してたけど、右とか左とか言ったとかもしくは上とか下とかいろんなふうにして人を勝手に分けてはレッテルを貼って批判とかしてたけど、ちょっと待てよって思うラインが、俺が考える大人ライン。要はだから疑問を持ちだす辺りが大人のラインなんじゃないかなと思う。

乙君:完全に他者って信じ込む人でもなくリバタリアンでもなく、そのバランスとかそういうのを自分も含めて。

山田:いったん客観視してメタ視点になって自分がジャッジしていた思想そのものっていうもの、もしくは自分がそれを言わされてたんじゃないだろうか、俺の背後にあったものは何かみたいなことに気が付くラインっていうのが大人ラインじゃないかなという気がするんだよね。

糸井重里と井上陽水対談で印象的なWord

でもおもしろいのが、昔、糸井重里さんが井上陽水さんのインタビューしてるときに、「陽水さんの曲はみんな疑問ですね」って言うの。だから探しものは何ですか? とか常に聞いてるみたいな。何とかですか? とかっていう。

乙君:お元気ですか?

山田:お元気ですか? みたいな結局聞いてますねって言ってたら陽水がそれに対して答えたのが、「いや、最近はね、信じることも大事だなと思ってるんですよ」って言って。俺、このラインになってもう仙人ライン来てるなって。もう大人の上があるなっていう。

その先はもう風流ラインが待ってますけど。「わからんのう」っていうやつ(笑)。「わからんもんじゃのう」って言って俺はそのラインがあこがれだね。あこがれる大人ラインかなっていう気がするなと思って。

あなた知らないかもしれないけど、『フレンズ』と並んで大ヒットだった海外ドラマで『ER』っていうのがあるって話ししたじゃん。そのうち見せるけど。そのうちはめるけど、君の『ER』。

それでそこにあるベントンっていうお医者さんが来る。とにかく黒人の外科医なんだよ。とにかくいろいろあって苦しい時代が多かったから、俺は絶対出世したいと思って。そのためには俺はめちゃめちゃ努力をするし、ある程度はやれることは全部やるっていう。

だから友達と付き合ったりしないんだよ。もう本当に友達少ないんだよ。孤高の存在で行くんだよ。そいつが大人になったかどうかっていうのが結構おもしろくて。ベントンのラインっていうのが『ER』にあるんだけど。

この人は途中で結婚するんだよ。結婚して子どもが生まれるんだよ。子どもが耳が聞こえないんだよ。

乙君:あらー。

山田:ここへ来て全て順調だった人生が反転する。

乙君:なるほど。

山田:え、ちょっと待てよ。俺が信じてたことは何だったんだってことになる。もうちょっと手前のこと、幸せって何だってことに話が始まる。っていうラインが俺ベントンのすごい大人ラインだなっていうのがあって。その辺が俺にとってはそのラインかなと思うんだよね。

結論としては、何歳とは決まってないっていう話。

(会場笑)

やばい。オタク落とす方法もおもしろかったのにな。時間ねえかな。どうしようかな。ざっくり行っちゃおうかな。

乙君:じゃあちょっと延長しましょう。

山田:年齢で区切るなと。っていうかもう個人差の話。

乙君:そうすると制度として崩壊しますよね。

山田:昔はいにしえ論っていうのがあったんだよ。同じような人たちが同じような考え方でそれで成り立ってた時代があるんだよね。

乙君:バンジージャンプとかもそうですからね。

山田:そう。だから『WOOD JOB!』っていう映画で、祭りにふんどしして出るっていうくだりあるけど、あれこそまさに日本古来の大人の儀式みたいなものがあって、それは地方にはいっぱい残ってるけど、ほとんど都市部では解体してしまったみたいな。

そういうばらばらになっちゃった時代、何をもって人は大人なのかなんて言えないよねって話で。

乙君:ああ。試験にすればわかりやすいですね。

山田:大人試験。

乙君:大人試験。

山田:『ゼブラーマン』読んでください。

(会場笑)

乙君:そのときからもうずっと。

山田:だから俺、すげー思うのが、あいつが不幸なのはあいつがバカだからだって言う人いるじゃない? それが子どもでしょう?

乙君:おお。それ自己責任だっていう。

山田:違うんだよ、もう。コントロール不可能なんだ、人生なんて。ってわかるところが大人ラインなんだ、そういう意味では。だからもっと要領よくやればいいじゃんなんていうようなのはちょっとね。

乙君:ちょっと違うよね。

山田:ちょっと待てよって話じゃない。

乙君:わかりました。

制作協力:VoXT