今後の野党共闘について

司会者:最初に野党クラブ幹事社の方から各候補に対しまして共通の質問を2、3問いただきたいと思います。候補者の方々につきましては1分を目途にお答えをください。回答は選管の指名に基づいた順番でお願いをいたします。それでは両候補、演壇のほうに登壇をお願いいたします。

まず最初に幹事社でのテレビ朝日さんからお願いをいたします。

記者1:お願いをいたします。野党クラブ幹事社のテレビ朝日シラカワと申します。両候補にお聞きいたします。いわゆる野党共闘について、ご自身が代表になられた場合はどう取り組んでいかれるのか、とくに党内の一部から反発も強い共産党との次期衆院選をにらんでの選挙協力をどうするのか。すでに野党4党である程度の合意もしていますけれども、それについては維持されるのか見直しされるのかというところも含めてお答えください。

前原誠司氏(以下、前原):政治家、政党の命は理念・政策です。とくに次の選挙は衆議院選挙でありますので、政権選択の選挙です。この政権選択をする選挙で理念・政策が合わないところと協力するということは、私はおかしいと思います。理念・政策と合うところとなら幅広く協力する。そういったスタンスで臨ませていただきたいと思っております。

前政権で結ばれた4党の合意事項でありますけれども、4党が協力していろんな取り組みをされてきた。また協力をされてきた。そういった重みというものをしっかりと受け取めながら、是非についても見直しをさせていただきたいというふうに思っております。

とにかく理念・政策、民進党が掲げる、私が掲げるAll for All、こういった考え方。内政については北朝鮮の脅威、そして中国の拡大路線。こういったものにどうしっかりと日本が対処していくか。その意味では現実路線、これにしっかりと考え方の合う政党との協力というものを目指してまいりたいと考えております。

できること・できないことの線引を

枝野幸男氏(以下、枝野):野党間で我が党の主体性を持ちながら、できることを最大限やる。できないことはできない。そのメリハリをしっかりつけていくことが重要だと思っています。

私は昨年の参議院選挙、幹事長として対応に当たりました。野党共闘とか選挙協力という言葉は、あのときも使っていませんしそういう意識ではありません。あのとき現実に実行できたのは、幅広い市民のみなさんとの連携の中で野党の候補者を1本化する。そのことはできました。

そしてそれは成果を上げることが一定程度できたと思っています。それはそれぞれの党の理念・政策が違う中で、しかし自民党の暴走を止めて欲しいという市民のみなさんの声を受けて、できることできないこと、その範囲の中でギリギリの着地点を努力したからだと思っています。

政権選択の衆議院選挙は一層困難が大きいと思っています。しかし一方で、地域でがんばっている仲間たちを1人でも多く当選させる。そのことによって今の政治の暴走に少しでも歯止めをかける。これも私たちの大きな責任だと思っています。

理念・政策・主体性をしっかりと守った中で、できないことはできない、しかしできることはできる。それがどこなのか最大限の努力をしたいと思っています。

原発ゼロは時期の問題ではない

記者2:共同通信のナカニシです。原発ゼロ政策への取り組みについて2点うかがいます。「2030年代原発ゼロ」という現在の党の目標をさらに前倒しする考えはありますでしょうか。また、現在検討中の原発ゼロ法案の国会への提出時期はいつを目指すのでしょうか?

枝野:目標となる時期が問題、重要だとは思っていません。いかにすれば1日も早く原発ゼロを実現できるのか、そのことのリアリティある工程表をしっかりと示す。そしてそれにもとづいて、政権をお預かりしたら、それを着実に進めていく。その工程表をしっかりと示すことだと思います。

すぐにでも政権をお預かりすることができれば、おそらく相当早く原発ゼロを実現できるだろうと思います。ですから、時期の問題だとは思っておりません。

その中で、まさにその政権を取ったらやらなければならない、原発ゼロに向けてさまざまな課題があります。使用済み核燃料の問題もあります。あるいは安定的なエネルギー供給の問題もあります。

原発立地地域の経済、あるいは雇用の問題、さまざまなリアルな現実、真正面から向き合い、それをどう乗り越えていくのかという具体的な工程表を示し、それを年内にも法案として国会に提出したいと思っています。

被災者の苦労に寄り添うのは天命である

前原:旧民主党政権の時に、1000年に1度と言われる大地震、そして福島第一原発の事故が起きました。いまだに福島をはじめ、多くの被災地のみなさま方が復興に苦しんでおられる。また、ご尽力をされている。

これに対して心から敬意を表するとともに、このご労苦にしっかりと寄り添うことが我々の使命である、天命であると、こう考えております。

その意味においても、私が政調会長をさせていただいた時にまとめた2030年代原発ゼロを目指して、あらゆる政策資源を投入する、原発のない社会を着実にしっかりと現実的に作っていくという方向性のなかで、原発のない社会というものをしっかりと作っていきたい、こう考えております。

現在、玄葉光一郎代議士が調査会長、そして田嶋要代議士が事務局長として、我が党のエネルギー政策をしっかりまとめていただいています。この考えというのは非常に私はすばらしいものだと思っております。

この調査会の議論を尊重しながら、今後党内でしっかりそういった党での議論を踏まえて、今後のあり方、そして原発のない社会の工程表、これをしっかりと作っていきたい。こう考えております。

憲法改正について

司会者:最後の共通質問となりますが、北海道新聞さんからお願いいたします。

記者3:同じく野党クラブ幹事社の北海道新聞のサトウです。よろしくお願いします。憲法改正について今後どのように取り組まれるのかお尋ねします。

現状でとくに改正すべきと考える具体的なテーマはありますでしょうか? また、今年5月に安倍総理が提唱された、憲法9条の1項と2項を維持した上で自衛隊について明記するという、この案についてどう考えられますでしょうか?

前原:安倍政権の下での憲法改正は反対だというのは、私は国民の理解を得られないと思います。野党第一党として、そして政権を目指す政党として、しっかりと国のもといである憲法の議論は行っていく。そういうリードをしていく代表でありたいと、こう考えております。

他方で、2つのことを申し上げたいと思います。安倍さんが当初おっしゃっていました、「今年中に憲法改正の草案をまとめて、来年国会で発議する」。こんな性急な拙速な話はありません。

なぜ国民投票を行うかというと、ほかの法律と違い、憲法というのは権力者を縛る、そういうものであるからであります。

1章1章、1条1条、国民のみなさま方にご理解をいただき、そして国民の総意として、どこが憲法として変えるべきなのか、残すべきなのか、という議論は年単位で私はかかると思っておりますので、拙速な憲法改正のスケジュール、ましてや安倍さんの、言ってみれば実績づくり、あるいは思い出づくりに与するつもりはまったくありません。

また同時に中身については、私は自分自身の考えがありますが、党のみなさま方全体を信頼をしておりますので、しっかりそこは議論していただいたらいいと思います。

1つだけ付け加えるとすれば、安全保障法制というのは、あれは憲法違反の下で作られました。したがって、あのあととそして前ではまったく状況は異なった。

自衛隊を憲法に書くということをしたとしても、あれを上乗りして、マネーロンダリングのように、まさに自衛隊、憲法違反を逃れようとすることについては、私はまったく考え方を異にするということについては申し上げておきたいと思います。

議論を積極的に進めていく

枝野:民主主義を強化し、国民の人権保障をより高め、あるいは国民生活や国民経済をよりよくするために憲法を変える必要がある、あるいは変えたほうがより進む、ということがあるのであれば、私はその議論は積極的に進めるべきであると思っています。

これまでも党の憲法調査会長として、そうした議論をリードしてきたという自負があります。ただ、今のところ、そうしたものがあるという結論は、さまざまなテーマについて議論をしてきていますが、ありません。

今あえて申し上げあれば、これは憲法を変えないと対応ができない可能性が高いテーマとして、内閣総理大臣、内閣による衆議院の解散権。

これは多くの先進議院内閣制の国でもはや時代遅れになっています。これについて、さらに議論を深めていくということは積極的に進めてまいりたいと思っています。

一方で憲法9条に関しては、立憲主義を破壊する解釈変更、安保法制。今、憲法9条に手をつければ、それを事後的に認めることになる、追認をすることになります。

私どもの綱領には、安全保障について専守防衛を前提にと書いてあります。専守防衛にも反しています。まず、この安保法制の憲法違反の部分を少なくとも消さなければ、9条について議論の余地はないと思っています。

今、消費税は上げられない

司会者:幹事社のみなさま、ありがとうございました。これよりはご参加いただきました記者のみなさまからご質問をお受けすることといたします。1問1答形式でお願いをいたします。最初に社名とお名前をお述べいただきまして、どの候補者へのご質問かわかるよう、ご質問いただきたいと思います。それでは挙手をお願いしたいと思います。

記者4:日本テレビ、キヨタと申します。よろしくお願いします。両候補にお伺いいたします。消費税増税について、お2人のお考えをお聞かせください。

枝野:私が目指す多様性を認め合いお互い様に支え合う社会を作っていくためには、将来的には恒久財源としての消費税の負担を国民のみなさんにお願いをしなければならない。また今の財政状況、財政健全化のためにもそうしたことが必要だと思っています。

一方で、税はそうしたべき論だけでは決められません。経済状況あるいは税の使い方に対する国民の信頼、そして全体としての税のあり方。こうしたものを考えるとき、現状で消費税を上げられる状況ではない。消費不況はまだまだ続いています。

それから昨年法人税を減税している。法人税を減税しておいて消費税を上げるのか。とても国民のみなさんの理解を得られるとは思いません。こうした状況では、今消費税は上げられないというのが私の考えです。

財源論から逃げない

前原:旧民主党政権のときの野田総理の元で政調会長を務めさせていただきました。そのときの社会保障・税の一体改革、これは先ほど私が申し上げたAll for All、みんながみんなを支え合う。その原点だというふうに思っておりますし、またこれを与党の政調会長として進めた私は大いなる責任、責務を負っているとこう思っております。

2段階に分けて消費税を上げ、その代わり教育・子育て、そして医療・年金・介護・福祉、この恒久財源をしっかりと担保していく。これについては私は責任を自分自身が持ちたいとこう思っております。

同時にこのAll for Allというのは、ご高齢者の方々の不安を解消するために安定した年金あるいは介護の待遇改善、あるいは教育の無償化、さまざまなことを提唱させていただくことになります。財源が必要になります。

この中間報告にはその財源論からは逃げないということで、これは党で決めております。党で決めたことですからその財源論についてはしっかり今後、それはどういう財源なのか、行革なのか、あるいはどういう税の負担なのか、あるいはマイナンバー制度を導入してストックを把握し、フローの所得はないけれどもストックの所得がある方々にも応分負担を求めていく。

そういったさまざまなミックスが考えられます。そういう財源論というものをしっかりと逃げずに、我々としては議論していきたい。そう考えております。

All for All社会を作るために、国民の負担増を求める

記者5:ニコニコ動画のナナオです。よろしくお願いします。両候補に、今の質問の関連なんですが、前原候補は消費増税を含む税制改革の必要性を強調されました。そして枝野候補は2019年10月の消費税率10パーセントへの引き上げ反対を表明されたと思います。

それぞれの主張を実現するためには、現実問題としまして霞が関官僚から十分や理解や協力を得ることが不可欠だと思うんですけれども、それは可能なんでしょうか? 民主党政権時の中心にいたご経験を踏まえて、実現可能性につきましてお答えいただければと思います。

前原:ありがとうございます。繰り返しになって恐縮でございますが、私は野田総理の元で与党政調会長として社会保障・税の一体改革をまとめた責任者でございました。これはしっかりと完成をさせたいと、こういう想いがございますが、使われ方の中身については反省もございます。

つまりは2段階で5パーセント上げる。そのうち機能強化が1パーセントで財政再建に4パーセントというのは、これは国民に受益感があまりにもなさすぎたという意味において、反省点もございますので、中身についてはしっかりと考え直していかなければいけないと思っております。

そしてまた先ほどのご質問は、いわゆる残りの2パーセント分ではなくて、将来的な消費税という意味合いの中で私はご質問をいただいたと認識をしてお答えをしました。そこから先についてはまったく白紙です。

同時に行革、あるいは税のベストミックス、そしてどういう国民負担を求めていくかということについては繰り返しになりますが、党としてこれはAll for All社会を作るためには国民の負担増を求めるということを基幹決定しておりますので。私が代表の下でその中身はどうするのかということについては、しっかりとまとめてまいりたいとこう考えております。

民主党政権の教訓は、官僚を敵に回したこと

枝野:今のナナオさんのご質問は、政官関係のほうがメインの趣旨ということでよろしいのでしょうか? はい。

私どもの多くが参加をしていた民主党政権の教訓の1つは、やはり官僚のみなさんを無意味に敵に回したということだと思っています。政官関係は非常に難しい。今の政権のように私的な利益のために官僚に言うことを聞かせる。こんなことはあってはいけない。

一方で官僚の理屈で政治が動いてしまってはいけない。しかしそれぞれの立場でしっかりと国のためにということできちっと話をし、筋を通して説得をしたり協議をすれば、私は官僚のみなさんは政治の方針に基づいて仕事をしていただける。これはとくに官房長官としての経験から十分に間違いなくできることだと思っています。

したがってあのときの教訓を踏まえて、無意味に官僚と喧嘩をするのではなくて、とくに志の高い柔軟性を持った官僚のみなさんと野党時代からもしっかりとコミュニケーションをとる。そしてもし政権を取れたときには、そうしたみなさんを始めとしてしっかりと筋の通る進め方と内容で官僚のみなさんに知恵を出し行動していただく。こういったことができるし、やらなければならないと思っています。