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エンタメ業界における、これからのVRの可能性について(全3記事)

Google、Microsoft、Facebook、AppleはVR・ARで何をする気なのか? 最新動向に見る、スマホの“次”にやってくるもの

2017年6月29日、Speee Loungeにて、株式会社WHITEが主催する「VRエンタメサミット2017」が開催されました。VR業界を牽引するゲームやアニメ等、コンテンツ制作に関わるキープレイヤーが一堂に会したイベントでは、最新のVR業界の動向から現在までのサービス展開のケーススタディまで、幅広いテーマで発表が行われました。本パートでは、株式会社gumiの代表取締役である國光宏尚氏が登壇。「エンタメ業界における、これからのVRの可能性について」と題して、VR業界の最新トレンドを語りました。

ターニングポイントは2018年の年末

國光宏尚氏(以下、國光):結局のところ、VRで本当に質が高い、今までなかった体験のコンテンツを作ろうと思うと、その世界の中に没入して、ありとあらゆるオブジェクトを掴んで、本当にその世界の中にいるかのような体験は必須です。

だから今のモバイルVRでは体験の価値が低すぎるのでだめですね。その中に入って、今のViveと同じ体験がセンサーレス、コードレスでできるようになる。これがVRの跳ねる瞬間なので、今年の年末はそういった意味では、値段がけっこう安くなって良い感じになってきて、こういうところの反省をふまえて来年の夏から、来年の年末に出てくるハードのところで一気にドーンとくると。

さらに加えてそこのセンサーレス、コードレスのHMDが出るってことは、インサドアウトトラッキング(注:周囲の測定物を検出して、相対的な動きを取る方式)が全部できているってことなので、論理的に言うと新しいスマートフォンさえあれば、今のHTC Viveと同じ体験ができるようになってくるのかなと。

これはおそらく、ほぼ2年以内には、新しいiPhoneだったりAndroidを買うと、普通に今のViveと同じシックスディグリーのフリーダムがあって、ハンドコントロールができるのが出てくると、プレイステーション4よりもWiiよりも圧倒的に良い体験ができてくると。

さらにこれがスマートフォンになってきた時、VRのハード自体は圧倒的な進化を遂げてくるんじゃないかと思います。まあゲームの部分はそういう感じで、ほぼほぼハード自体の価格が安くなって、性能があがってくる。これはタイムスケジュールも発表されているので、ほぼ間違いないところかなと思います。

なので、あとはキラーコンテンツが待たれているだけかなと。僕らは世界中でいろんなことをやってきているんですけど、ここ最近のVRのゲームの質は半端なくあがってきて、あとUGC(注:ユーザー生成コンテンツのこと)もどんどん増えてきているので、そういった意味では、コンテンツもかなりすごいレベルのものがでてきて、ゲーム機としてはポジティブなのかなって思っています。

スマートフォンの次のデバイス

もう1歩、スマホの次のデバイスとしてのVR・AR、そしてその先にあるMRというところでは、AppleにしてもGoogleにしてもFacebookにしても、彼らがVRにここまで力を入れるのはなぜかというと、当然ゲーム機を作るためにやっているわけじゃなくて、スマートフォンの次のデバイスを作ろうとしています。

スマートフォンの次がどういうものかは、もうみんな知っています。要するに目とネットが直接繋がる、そういう時代をみんな作ろうとしています。いちいちこんな小さいスマホを取り出して、こうやって見て。それってもはやめんどくさすぎるじゃないですか。

これが、タクシーを呼ぼうと思ったら「タクシー」と言えば配車アプリが出てきたりだとか、「レストラン」って言ったら、レストランがポーンって出てきたりとか。まさに『攻殻機動隊』みたいな感じの、SFでも見続けてきた、空間にいろんなものが表示されて、ハンドコントロールや音声でコントロールするというのを目指していっています。

これがずっと言われているバーチャルリアリティー(VR・仮想現実)、オーグメンテッドリアリティ(AR・拡張現実)、ミックスドリアリティ(MR・複合現実)。ここは基本的にはほぼほぼ同じです。

例えば今僕らがこうやって話してるのは、100パーセントリアルです。VR空間の中に入っている時は100パーセントバーチャル。この2つが両極端にあって、未来の世界みたいに、話している間にそれぞれの顔に名前が表示されて、となると10パーセントバーチャル90パーセントリアルみたいな。

そして、スクリーンとか物理的なものを使わずに普通に空間上に表示する、「会議室は殺風景だから、ちょっとハワイに行きましょう」って手を叩いたら、ハワイに変わってる。こうなると50パーセントリアル50パーセントバーチャル。

今日ここに来ている人はリアルに参加しているけど、そうじゃなくてホログラムで参加するようになってくる。これは80パーセントバーチャル20パーセントリアルみたいなかたちで、未来はリアルとバーチャルをシームレスに行き来するような世界になっていく。

それがミックスドリアリティで、そこを当然FacebookもGoogleもみんな新しく目指していっています。そういう中でVRがきて、そのあとARがきて、最後にMRと言われてたのはなぜかというと、ハード的に、ARハードとVRハードは7割くらいのチップが一緒なんです。だから、ベースはかなり近い。

なぜ、VRが先行してきたか

VRが先行してきた理由はシンプルで、VRが技術的に一番簡単、ARのほうが難しい。というのが理由の1つで、もう1つにはVRにはゲームっていうキラーコンテンツがあるけど、ARには現状ではキラーコンテンツが無い。だからVRが先行している。というところが今までみんなが思っていたところだったんですけど、そこに今、大きな変化が起こっています。そこは最後のほうに話していきたいと思います。

ARの世界を扱った『HYPER-REALITY』という動画は見たことありますか? これちょっと時間がある時に見てほしいんですが。

こういった感じでゲームも、自分にターゲティングされた形のロケーションに合ったデータが表示されつつ、広告からなにから全て行動履歴から表示されるみたいな。

実際買い物に行くとこういう感じで商品を選んで、アプリを起動すると商品のカスタマーサポートにシームレスにアクセスできたり。けっこうおもしろいので時間ある時に見ていただければ。

なので今のVRやARは、基本的に2007年にiPhoneが出たばかりの時代にけっこう似ているんじゃないかな、と。iPhoneが出た時って日本でもアメリカでも「こんなの誰が使うんだ」と「電話でしか使わへん」とか「いいとこメールチェック」って言っていたのが、そのあと気づけばすべての世の中を変えていた。

ちなみにアングリーバードが出たのは2011年とか、パズドラなんかは2012年なので、それなりにある程度おもしろいのが出てくるまでには時間がかかるのかと。まあスマートフォン自体で勝ち残った、勝ち切った会社はすごくシンプルで、ほかの会社より早くスマートフォンに挑戦していたところです。こういったところが大きな果実っていうのを取っていった。

大手ではドラゴンクエストとかポケモンうぃ地道にやって、最終的にはなんとか巻き返しているところですけど、そうじゃない人たちにとってはできる限り早くこの市場に挑戦していくのが必要になってくるんじゃないかと思っています。

ITの巨人たちの動向

これが今までの感じだったんですけど、今年になって大きな動きがアメリカのほうで起きまくってきています。特にこの中で技術者とかビジネスする人とかでも、今年のMicrosoftのディベロッパーズカンファレンスもそうだし、Amazonもそうだし、AppleもそうだしFacebookも、すさまじく大きな発表が続きまくりました。それは全部ウェブサイトで見れるので、時間があるときに見ていくとインスピレーションが出るんじゃないかと思います。

まず1番最初に動いたのがMicrosoft。

Microsoftがやってきたのはこれはけっこうびっくりするところで、VRとかARのハードって特許的に難しかったりして、中国の会社がキャッチアップやコピーするのがけっこう難しい。だからこれはかなり時間かかるし、ARに関しては何年もかかると思ったんですけど、その中でMicrosoftがやってきたのはHoloLens(ホロレンズ)。

HoloLens自体はオールインイワンですべてのことができるデバイスなんですけど、このHoloLensのすべてのライセンスをオープンにして、プラットフォーム化してみんなが使えるようにしてきました。

そこに中国メーカーのLenovoやASUSなどその辺が全部参加するみたいなところで、Microsoftが今まで作ってきた技術を使って、簡単に安くVR・ARハードを作れるようになってきました。これはMicrosoft的には既にPC時代にやっている戦略で、PC時代、1番最初に「Windows入ってる」みたいな感じで、ハードはいろんなメーカーに作らせて、みんなWindowsを入れていく。そういう流れと同じような戦略とってきたなと。

Googleも今年、HTCと一緒にスマホVRではないかたちの一体型のDaydreamデバイスを作るという発表が出てきたりとか。他にはSnap Chatや。

ここから続くFacebookなど、大きいところがARを一気に加速させるのかなという感じで思っています。

VR市場に足りないのはコンテンツだけ

おそらくARゲームのほうが相当早く来ます。みなさんゲーム会社だったらウォッチしてると思うんですけど、各社、通常のカメラを使って空間をセンサーできるようになってきた。

なので今まで空間をセンサリングしようと思ったら、GoogleのTangoみたいな特殊なデバイスがないとできなかったのが、普通にできるようになってきました。続いてFacebookでは、コンテンツを誰でも簡単に作れるようにしてきました。

加えてAppleがつい最近発表してきたARキット。

これはオーバーウォッチのキャラなんですけど、簡単に自分の部屋の中にこういうのが出てくるみたいな感じになってくるので、本当に没入感が違ってきます。そういう意味でAppleがかなり大きく動きとして出てきたのかなと思います。

なのでまとめるとVR自体のハードが今まで売れてこなかった。売れてこなかったと言っても1億円を超えているゲームがもうすでに15本ある。ハードの台数がたった40万台で15本そこまで売れているやつが出てきています。

さらにここから問題になったハードが高い、センサーが邪魔、コードが邪魔っていうところは今年の年末の時点でかなり解決されて、来年の年末ではほぼ間違いなくプレイステーション4よりも安い、安いのはないか。同じくらいの値段でセンサーレス、コードレスって感じで今のViveと同じ体験ができるハードが出てきます。

そうなった時にVRのゲーム市場自体がドーンとくる。ここにまだ足りないのは、イケてるコンテンツだけなので、イケてるコンテンツを作っているところっていうのはかなり大きな果実を採れるのかなと思います。

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