大量生産から自分だけの”作品”へ
デジタルファブリケーションがもたらした、ストーリー性のある「ものづくり」

Vision to making #1/2

自身が運営する「しぶや図工室」で、3Dプリンタなどのデジタル技術を使ったものづくりのワークショップを行っている株式会社prsm・平本知樹氏。大量生産ではなく、個人が生み出すストーリー性のあるものづくりの価値について語りました。(TEDxTokyo yzより)

情報化社会にみんなで共有するべき価値観とは

平本知樹氏:今日僕はみなさんに、僕が企画運営しているプロジェクトの紹介をしたいと思っています。去年辺りからよく聞かれるようになった3Dプリンタのように、デジタル技術を使った、ものづくりに特化したワークショップスペース「しぶや図工室」というプロジェクトです。

3Dプリンタみたいに、ものづくりのデジタル化が進むことによって、コンピュータで作ったデータからものを作ることができるようになってきています。ただ、「ものを作ること」自体は別に新しいことでも何でもなく、ずっと昔からやられています。例えば、昔の人はこういう道具を作っていたかもしれません。

彼らは木を削る技術を使って、その時に必要だった「獲物を捕まえる」とか「食べる」ことなど、彼らの価値に沿ったものを作っていました。

もうちょっと時間が経つと「射出成形」という技術が出てきて、大量生産ができるようになってきます。そうすると「大量に作る」とか「安く作る」とか「均質なものを作る」などの当時の価値観に沿ったものを作ることができるようになってきました。

今は情報化社会が進んできて、データからものが作れるようになってきます。それとともに進めていく価値観って一体何でしょうか。たぶん技術はこれからもっともっと進んでいきます。データからものを作る技術っていうのは小型化するし、もっと高精度化するし、高速化するし、どんどん進んでいっています。その技術と一緒に進めていく、みんなで共有するべき価値観って一体何でしょうか?

ニューヨークで刺激を受けたものづくりスペース

 デジタルのものづくりは世界中でどんどん起こっています。世界で先に行われている活動を見て回るということを、僕もちょこちょこしているのですが、その中でいちばん印象に残っているものの紹介をしようと思います。

「3RDWARD」という、ニューヨークからちょっと離れたブルックリンにある、昔の倉庫をリノベーションしてできたものづくりのスペースなんですけど、すごい大きい木工のスペースなんですね。そこにみんなが来てスピーカーみたいなプロダクトを作ったりとか、壊れた椅子を持ってきて修理したりとかして、自分のものを作っているんです。他にも写真スタジオがあったりとか、コンピュータが何十台も並んでいるデジタルルームがあったりとか。服を作ったり、メイクもしたり、溶接したりしていろんなものが作られている。

いろんなものを作って自分の生活を一緒に作っていっている。これにすごく刺激を受けました。そういう風に、自分自身もデジタルの技術を使ってものを作ることをしながら、同時にいろんな場所を巡って可能性も同時に探って行く中で、僕自身がある場所を企画・運営するチャンスをもらうことができました。それが「しぶや図工室」という場所です。

ニューヨークで見た、実際にものを作り、生活を作っていくっていうことを日本でどうやればいいのか。文化も違うし、経済状況も違う、それをどう日本でやっていくのか、ということを考えなければいけませんでした。ただ、じゃあ日本でやるぞという時に、みなさんの中でどのくらいの人がものを作っていますか? 何か作ったことありますか? パッと思いつきますか? 

僕は、どんな人が、どんなものを作っているのかがあまり思い描けなくて。どんな人が、どんなものを作っているのか、どんなものを作ってどんな生活を作っていくのかっていうのが、まだパッと思いつかなかったので、そこを一緒に考えるところからやれるような場所にできないかなと思っています。

しぶや図工室のワークショップ

しぶや図工室ではワークショップを開催しているのですが、その中でメインのワークショップを紹介しようと思います。全6回、6週間かけてやるワークショップなんですが、1時間目のオリエンテーションから始まって、4回目に自分にピッタリ合ったデータを作る。4週間かけてどんなソフトウェアでどんなことができるのか、どんな機材でどんなことができるのかという、いわゆるハウツーを学んでいきます。

4週間くらいやると、だいたいマスターするまではいかないまでも、どんな機材でどんなことができて、どんなソフトでどんなことができるってわかってくるんですよね。デジタルものづくりでどんなことができるのかっていうのがわかった時に、じゃあそれを使って「どんなこと、どんなものを作っていきたいですか?」「どうやってその技術を使っていきたいですか?」という、ちょっと違った使い方を残りの2週間で考えていきます。

「なんでそれを作りたいですか?」「何を作りたいですか?」っていうのは考えてきてもらって、その作りたいものの作り方を2週間かけて一緒にやっていく。そうして1か月半が経つと、最初は興味はあったけどまだやってなかったという人が、何かを作って卒業して行くということになります。そこでどんなものが作られているか、気になりますか? 

特別なスキルのない人が、ものづくりに挑戦できる

その紹介をしようと思うんですが、しぶや図工室って渋谷でやってるんですけど、毎週大阪から夜行バスで通ってくるおばあちゃんがいたんですよ。すごいパワフルなおばあちゃんがいて。

そのおばあちゃんは数年前に陶芸教室でコップを作ったんですね。コップの上側に取っ手がついていて、ちょっと大きめで持ちやすいのが気に入ってたらしいんですよね。そして、取っ手を支えるために鳥を作ったんですけど、本当はこの鳥、白鳥にしたかったらしいんですよ。でも「手が不器用すぎてようやらんわ」ということで、アヒルになっちゃった。

(会場笑)

それが気になりながら使ってたんですね。そしておばあちゃんは4週間かけてどんなことができるのかをわかった上で、今なら使いやすいのを残しつつも、私が本当に作りたかった白鳥にできるかもって思って、紙粘土で白鳥を作ってきたんですよ。今あるコップと、自分で紙粘土で作ってきた白鳥を両方3Dスキャンして、両方データ化した。両方データ化したのをパソコン上で合体して、今までの使いやすさとか、一応何年間も使ってきて愛着もあるので、それを残しつつも新しいものを作ることができました。

他の人がやったのは……。これは売り物なんですけど。苔とか盆栽とかが趣味の方が来られたんですが、こういう動物の鉄製の器っていうのは売ってるらしいんですよね。これ自体はいいなあと思っていたんですけど、鉄製なのでちょっと重たい。苔の軽さがあんまり出ないし、ちょっと高いし、背中のところが丸まっていて水がたまっちゃって良くないと。そういうのをどうにかしたいなと思っていて、「3Dプリンタは透明なのもできるし、あるよ」という話をしたら、彼が作ったのはこれです。

「こっちのほうが全然かわいいしみずみずしいでしょ?」とかって作るわけですよね。他の人がやったプロジェクトはこういうものをやっていて……。

しぶや図工室で3Dスキャンする技術を覚えたら、彼は自分で安い簡易の3Dスキャナを買っちゃって、嫌がる家族を順番にスキャンしていきました。これは奥さんとお父さんをスキャンしたそうです。

(会場笑)

奥さんは結構活発らしいんですよね、お父さんは結構ハゲかけてて。そういう2人をちょっとイメージの違うピンク色で3Dプリントして。それを見た家族は「イメージ違う、ギャップあるね」とか言って、コミュニケーションのネタになるらしいんですね。データ1個あれば何個でも作れるので、何個か作って実家に送りつけて、電話してまたコミュニケーションのネタにする、みたいなことがされているわけです。

こういうことはしぶや図工室でたくさん起こっているんです。ここに来る人たちって、特にデザインを学んだわけでもなく、特別なスキルがあるわけでもない、普通の人たちが来て何か作っていっています。どうですか? 欲しいものとかってあります? 僕は特に欲しいものないんですけど……。

(会場笑)

ストーリー性のあるものづくりの可能性

皆さんから見たら、もしかしたら変なものかもしれないし、見たことのないものかもしれないですけど、これは彼らにとっては欲しいものなんですよね。彼にとってはストーリーがあるんです、この「もの」に。社会的に見たら価値はないかもしれないんですけど、その人にとっては価値があるものがたくさん生まれてきている。こういうのって、今までのものづくり、大量生産のものづくりでは、絶対に作られることがなかったものたちなんですよね。でもそういうものが作られるようになってくる。これは次の技術に対応した価値になり得るんじゃないかなと僕は思っています。

こういう……どうですか? 驚きがあります? なんかリアクション見てると「おお?」っていう感じがしますけど(笑)。こういう新しい技術、情報化社会とデジタル、データからものを作るっていう技術の接点を理解した上で、彼らが欲しいと思ったもの、つまり、新しく出てきた彼らの欲求から生まれてくるものっていうのは、すごく新しい、次の技術と一緒に進めていく価値になり得るんじゃないのかなと思っています。

そういう価値をいろんな人と探索していくっていうことを、僕はこれからもやっていきたいと思っています。まだまだ情報化社会が広まってきたように、作る技術っていうのもどんどん広まっていくでしょう。その広まった先にある生活、広まった先にある進めていきたい未来の探索だったりとか、探索した先に見えてくるビジョン、ビジョンからものを作っていくっていうのを僕はこれからまだまだやっていきたいなと思っています。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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1 大量生産から自分だけの”作品”へ デジタルファブリケーションがもたらした、ストーリー性のある「ものづくり」
2 近日公開予定

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