イケメン農業アイドル?
トラクターを操る米づくり集団“トラ男”が、日本のおいしい食卓を守る

男達よ目覚めよ、トラクターに乗る時間だ #1/2

農家の高齢化、農地の改廃など、課題が多い農業の未来を変えようと、若手農家集団「トラ男」を立ち上げたkedama inc.の武田昌大氏。お米のネット通販やソーシャルメディアを使ったファン作りなど、独自の方法で注目を集める同氏が、若者に農業への参加を呼びかけます。(TEDxNagoyaUより)

人生最大の失敗

武田昌大氏:(米俵を持って入場する)はい、ありがとうございます。僕は今、最高に幸せです。その理由はふたつあります。ひとつ目はやっと、やっとプレゼンテーション出来る、ということ。

(会場笑)

ふたつ目は、僕が今、情熱を持って取り組んでいる日本一イケてるプロジェクトを、日本一イケてる皆さんの前でプレゼン出来る、というのが最高に幸せな理由です。今日はテンションが上がって、秋田からこうやって米俵を担いでやってきたわけですけど、この米俵は一体何キロかって話なんですが……実はこれ、30キロあるんですね。

もっとすごいのは、昔の農家さんって片手で60キロの米俵を持ち上げていた、と言われています。では皆さん、お米なんてどれも一緒だろうと思われている方もいるかもしれませんが、こちらの数字をご覧ください。「300」、実はこの数字は、お米の品種の数なんですね。

この中でも、「あっ、CMで見たことある」みたいな名前もちらほらあるかもしれませんが、お米の品種はここに書いてる以外にもたくさんのものがあります。それぞれに味があります。「名前は知ってるよ、でもお米には興味ないよ」という方がほとんどだと思います。

僕も大学生の頃には、そんなにお米に興味がありませんでした。でも、人生最大の失敗で、僕は大きく変わりました。僕の出身地はお米の国、秋田県です。毎日お米を食べていました。大学に進学して一人暮らしを始めたある日、親からの仕送りのお米が無くなったんですね。生まれて初めて、自分でスーパーに行ってお米を買おうと思いました。

そして、貧乏な大学生だったので、大特価と書かれているお米を買いました。これが僕にとっての、人生最大の失敗でした。すぐに家に持って帰って、ご飯を炊いたんですね。食べたときに衝撃を受けました。味がしなかったんですね。それ僕は「何で味がしないんだ!」とびっくりしてですね、炊飯器を小一時間調べるという。

(会場笑)

お米のおいしさには、10個のポイントがある

炊飯器壊れてんじゃねぇかと思って調べたんですが、実はそんなことはなくて、単純にお米がおいしくなかったんですね。一般的にお米をスーパーで選ぶ基準というのは、大体この4つぐらいしかないと思います。

ただ、お米のおいしさというのは、さらに6つのポイントがありまして……。

「栽培」、もちろん栽培はそうなんですが、「乾燥」には乾燥機、「籾摺り」には籾摺り器、「保存」には保冷庫といったようにですね、それぞれ必要な機材がありまして、お金が非常にかかってきます。極端に安いお米というのは、これらのどこかのポジションで手を抜いている、というのがあります。

さらに、炊飯というのも大事でして、炊飯器で一般的にはご飯を炊くんですが、それ以外に土鍋でご飯を炊いたり、羽釜でご飯を炊いたりして、お米をおいしく食べようとしたら、4つのポイントに、さらに6つのポイントを加えた10個のポイントで考えていくというのが、すごく大事になってきます。僕はその味のしないお米に出会ってからですね、おいしいお米を食べたいと、すごくお米に興味を持つようになりました。今では牛丼屋さんで食べて、そのお米の品種を当てることが出来るぐらいまでに来ています。すごいでしょ(笑)。

(会場笑)

人生最大の二度見

ご飯の話ばかりしていますが、みなさんお腹は空いてませんか? 大丈夫ですか? ランチまだ食べてないよ、みたいな人がいたら大変なんですが。お腹が空いていると、人っていうのは集中力がなくなるんです。人の話を聞きたくなくなったり、いらいらしちゃったりするんですね。

空腹問題って、すごく問題なんです。世界的にこの問題は発展してきていて、どういうことかというと……2050年、今から約30年後なんですが、2050年には世界的な人口は90億人を突破すると言われています。この90億人の食料を賄おうと思ったら、ブラジル丸々一個分の農地面積が必要だと言われています。

なので、僕たちがおじいちゃんやおばあちゃんになる頃には、世界的な食糧危機がやってくると言われています。では、日本の食事情はどうなっているのか。僕には、日本の食事情を語る上で欠かせない思い出があります。それが人生最大の二度見、という話なんですが。忘れもしません、今から3年前です。

僕は仕事が終わって、商店街を歩いていたんですね。そうしたら向こうから小さな男の子が、お父さんと手をつないで歩いてきた。楽しそうに会話をしながらやってきたんですが、すれ違う瞬間にですね、子供がお父さんに向かって衝撃の一言を言ったんです。「ねぇねぇ、お父さん、今日の晩御飯はマックにして」って言ったんです。その瞬間、僕は衝撃です。人生最大の二度見をしたんです。僕の小さい頃には、夜にファーストフードを食べるのはあり得ないな、というのがあったんですが、今の日本の食事情はついにここまで来たか、と思いました。

約50年後には、食料自給率が0%に近づく

実際にデータで見てみましょう。50年前の昭和40年というのは、1日5杯お米を食べていた。ただ、現在は1日3杯、まぁ普通なんですけど、1日3杯のご飯を食べるようになってきた。食料自給率で見てみますと、73%から39%まで減ってきているという状況です。さらに、食料自給率の話でいうと、約50年後には0%に近づくと言われています。やばいんですね、これは。さらに、農家の人口ですね。50年前は566万人いました。現在は260万人、半分以下になってきてますね。

さらに、農家の年齢を見てみましょう。260万人、中160万人、60%が65歳以上になっています。ほとんどが、おじいちゃんおばあちゃんになっています。じゃあ、農業の面積はどうなっているかというと、50年前1312万ha、現在450万haということでどんどん減ってきています。

この減っているスピードは、ぴんと来ないと思うんですが、実は一秒間に58㎡減っている。この58㎡というのはですね、畳でいうと大体35畳分なんです。なので、一人暮らしの大学生5人分の部屋が、一秒ごとにどんどん無くなっているというのが現状です。2050年を待たずして、僕たちでお米を食べられない時代がやってくるかもしれません。

農業は、ほぼ壊滅状態です。こんな話をしていると、農業に絶望しか感じないんですが、ここからは僕が今取り組んでいるプロジェクトについて、そして農業の未来についてお話していきたいと思います。

農業のイメージを「3K」から「3Y」へ

皆さん農業のイメージって、どんなものをお持ちでしょうか? 今の話だとマイナスのイメージしかないと思うんですが、農業は昔から3Kと言われています。きつい、汚い、かっこ悪い。くさい、稼げない、結婚できないとまで言われています。

(会場笑)

そんなイメージだったら、若者は農業をやりません。僕は1人でも多くの若者が、農業に参入してくることを願っています。そのためには農業の3Kというイメージを変えていかなければいけない。僕たちは農業のイメージを「3Y」にしていこうと考えています。この「3Y」のイメージは何かというと、

「夢が持てる」「やりがいがある」、そして! 「嫁がやって来るような」かっこいい農業にしていこう、ということで立ち上がりました。僕は地元である秋田県に帰って、このビジョンを達成しようと、仲間を集めました。18日間かけて100人の農家のもとを回って一生懸命話をして、僕の想いに共感する3人の専業農家と出会うことが出来ました。

若手の農家集団「トラ男」とは

僕はその3人と共に、若手の農家集団というのを立ち上げました。その名前が「トラ男」です。一体なんで「トラ男」というかというと、こんな感じです。

トラクターに乗る男前たち、略して「トラ男」という若手の農家集団というのを立ち上げました。平均年齢が28歳で、メンバーが燃える愛菜家TAKUMI26歳と、金色の山男YUTAKA29歳と、水田の貴公子TAKAO30歳と、僕の4人のチームでやってます。

彼らはそれぞれに、土、水、光にこだわって、とてもおいしいお米を作っているんですね。さらに、その方法もかなりイケている。クロスリバーサイド農法に、1000フィート千枚田農法、8000年ミネラルウォーター農法と、それぞれの農法もかなりイケている。

僕は、彼らが作っているお米を直接販売する、torao.jpというインターネット通販のサイトを立ち上げました。農協を通さず直売をするということを始めて、少しずつですが、農家の収入というのが上がってきました。

「トラ男」が大切にしている、ふたつのこと

ただ、販売をするだけでは、僕たちが目指す「3Y」農業というのは実現出来ません。「トラ男」が大切にしていることは、ふたつあります。ソーシャルとリアルのふたつです。ソーシャルというのは、農家全員がFacebookやtwitterをやっておりまして、日々の農業の情報を発信しています。それだけじゃなくて、何食べたよとか、こんなことやったよ、何処行ったよとか、普段見ることのできない農業の日常生活みたいなものが垣間見えたりします。

理想として目指しているのは、「お米ないなー」とお客さんが言ったらお米発送だ! みたいなリアルタイムのコミュニケーションを、農家とお客さんでやっていきたい。もうひとつリアルというのは、イベントですね。直接お米をお客さんが食べる、というイベントを、毎月東京のほうで開催しています。

お客さんと農家が直接ふれ合ったり、お米をその場で食べてもらうことによって、お米の味や農業について知ってもらう。僕たちはこのソーシャルとリアル、徹底的にコミュニケーションをとることによって、単なるお客さんではなくて、農家のファンというのを作っていきたいと思っています。

「トラ男」を立ち上げて3年で生じた変化

僕たちは農家のファンづくりというのを、2010年から「トラ男」を立ち上げて3年間やってきて、いろんな変化というのが起きてきました。まず、ひとつ目が「いつも見ています」なんですけど……字面だけ見るとすごい怖いんですけど(笑)。

(会場笑)

農家がコンビニで物を買っている時にですね、知らない女の子が寄ってきて、「あ、トラ男さん、いつもブログ見てます」という感じに声をかけられることがあった。これはすごいことじゃないですか。注目されていなかった単なる農家が、今はアイドル化してきているというのがすごい。これはまだまだ序の口です。これです。

これは何かというと、去年のバレンタインに、なんと、東京のお客さんからチョコレートが届きました。

(会場笑)

おそらく農家でチョコレートが届くなんて、世界初じゃないかと思います。トークイベントなんかもやっているんですが、その参加者のほとんどが農家さんです。「トラ男」を見て、Facebookを始めました! とか言って地元の農家さんのモチベーションも変わってきたりしています。

さらに、東京でやっているイベントもどんどん参加者が増えてきて、リピーターのお客さんも増えています。最終的に、秋田まで来ちゃうというファンのお客さんもいます。そのほとんどが若い女性です。皆で田植えをしたり、料理をしたりして、出会いがどんどん増えています。

農業は「TED」である

これからもファンを増やしていくために、どんどんお客さんとコミュニケーションをとっていきたいと思っています。どうでしょうか? この話を聞いて、ちょっとは農家のイメージが変わったのではないでしょうか。この「TED-テクノロジー・エンターテイメント・デザイン」僕はこの全てが、農業にはあると思っています。

トラクターはテクノロジーですし、土に触れる楽しさであるとか、作物が出来てくる美しさ、というところで農業はTEDであると思います。僕は真の男こそ、農家だと思っています。日々天候と闘って、作物を愛情を持って育て、そしてこの字をよく見てください。田んぼに力と書いて「男」と読みます。

やっぱり、真の男こそ農家じゃないかな、と思います。最後になりますが……一緒に僕たちと世界を救いませんか? どうやってやるのかという話ですが、すっごく簡単です。その方法はひとつです。今、皆さんが履いているおしゃれな靴を脱ぎ棄て、長靴に履き替えます。そして、トラクターに乗る。それだけで、もうあなたたちは「トラ男」です。

(会場笑)

荒れ果てた日本の大地を耕し! 世界を救うのは! あなたたちです(笑)。ということで、プレゼンテーションを終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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