ネットで環境が変わったなら、ネットで攻略するしかない

川原崎晋裕氏(以下、川原崎):最近、某ナショナルクライアントさん2社が同じことを言っていて、印象に残っていることがありまして。マーケティングでいう新規認知層の形成部分にあたると思うんですが、「価値を計測できない大きな母集団」を作ることに、もうあまりお金を使う気がない、ということをおっしゃっていました。

はじめから、上記の図でいうところの「コミュニケーションバリュー」を作れたほうが効率がいいし、みたいなお話だと思うんですけど。

北村俊二氏(以下、北村):まさにおっしゃるとおりで、なんでそうなってしまったかというと、インターネットが出てきたおかげで細分化が進みすぎてしまったんです。

例えばトレンドなんかもそうで。僕らが過去にトレンドだと思っていたこと、みんな共通で認識してたことが、今はすごく細分化されて、そのなかでミクロのトレンドが無数に発生していたりするわけですよね。

例えば、アニメの声優業界のなかですごく熱いミクロのトレンドもあれば、世の中全体の潮流としてのトレンドもあったり。それが今、有象無象でぶわ〜っと広がって。ネットがあるからこそ、コミュニティ同士がつながっている。そういう世界観に少しずつ変わっています。

それはやはりネットが出てきたからこその弊害であり、コミュニケーション、マーケティングとしてやっていかなきゃいけない、そういう手段なのかもしれないですよね。だから、毒をもって毒を制すじゃないですけど、ネットが出てきてマーケティングが変わったのなら、ネットを使ってマーケティングを攻略していくしかないと僕は思っています。

「広告換算値」に意味はない?

川原崎:PRには、広告換算値と呼ばれているものがありますよね。ちょっとふわっとした印象がありますが。

北村:そうそう。「何媒体で掲載されました」とかね。

川原崎:はい(笑)。

北村:「いくらの広告換算値」とかね。あれって、実はまったく無意味なんです。

川原崎:無意味なんですか?

北村:無意味です。本当、意味ないです。

川原崎:へえ。

北村:当然、僕らも企業から「出してくれ」というオーダーが多いので、広告換算値を算出してお出しするんですけど、PR会社によって指標も違いますしね。

川原崎:あ、そうなんですね。

北村:違いますね。ええ。

川原崎:一定の尺度みたいのもないんですか?

北村:あんまりないですね。ネットに関してはとくにないですね。

川原崎:へえ。

北村:紙とかに関してはやっぱり紙面の大きさ。例えば雑誌であれば、「中面1ページ、カラーだといくらです」と。「今回は紙面の4分の1で出たので、200万円のところ、今回は50万円分とみなしましょう」というのは、ある程度の面積で測定すると誰でも同じように出せるんですけど、ネットの場合は難しいです。やっぱり面積的な比率ではないですよね。

川原崎:そうですね。

北村:4ページものの記事が出たからいくらとか、そういう話でもないですし。

川原崎:確かに。

北村:見出しが何時間出たからいくらという話でもなかなかないし。Yahoo!トピックスに3時間載ったからいくらとは、誰も測定ができないんですよ。なので、やっぱりネットの場合は難しい。

重要なのはリーチ数ではなく、アクション数

北村:それともう1つ問題があって。記事が複製されやすいということです。

1つ記事が掲載されると、さまざまな媒体にフィードされていくので、無限にコピー&ペーストできてしまいます。そうすると、媒体としてたくさんフィードを持っているメディアのほうが価値が高いのか、ということになってしまいますが、ぜんぜん違うわけですよね。

川原崎:そうですよね。あれはあまり意味がなさそうですね。サーバにデータが載ってるだけですから。

北村:なので、結局読まれているかどうか、たくさん出たかどうか。10の読まれない記事が出るよりは、1つ2つの読まれる記事が出たほうが効果が高いですね。

川原崎:それは立証できるんですか?

北村:できます。それはいわゆるソーシャルプラグインでどれぐらい反響があるかとか、TwitterやFacebookで10万人が読んだら反響ありますから。でも、5人しか読んでなかったらほとんど反響ないわけですよね。その反響を見ていけば、その記事が本当に読まれているかどうかがわかります。

川原崎:なるほど。FacebookやTwitterって、「リーチ」という指標を使ってるじゃないですか。あれってけっこう掴みどころがないというか、それこそ交通広告みたいな。路上で看板見かけたのと同じ……。

北村:インプレッションみたいな感じですね。

川原崎:インプレッションみたいなもので。あれってPRの文脈ではけっこう意味があるものなんですか?

北村:僕らはあんまりそこを評価していなくて。やはりアクションですよね。ユーザーがアクションしたことが大事です。ユーザーの意思でアクションするというのは、例えば「いいね!」のボタンを押したとか、コメントを書いたとか。それはもうユーザーがいいと思ってアクションしていますよね。

もしくは、シェアボタンを押して自分の周りに広げようとしているとか。それもユーザーのアクションですよね。大事なのはそのアクションなんですよ。その結果としてたまたま他の人のタイムラインに流れてきているというのは、自分の意思とは関係ないところがあるので。

PV至上主義を考える

川原崎:新聞のニュースって、タイトルを読めば内容がわかるじゃないですか。「誰が〇〇した」とか「どこの企業が何パーセント減益した」ってわかるんですけど、Webメディアの場合は「◯◯とは?」とか「なぜ〇〇なのか?」という思わせぶりなタイトルつけて、記事をクリックさせようとしますよね。結果、コミュニケーションコストを増やしている。

北村:ありますね。

川原崎:それで、無駄な時間が増えるという(笑)。

あれって本当に意味ないなと思って。タイトルで内容がちゃんとわかるのであれば、クリックせずとも見ただけでコミュニケーションが成立しているので、リーチやインプレッションにも意味があるのかなと思っています。

北村:そうですね。タイトルで惑わせてPVを増やすとか、ひどい場合は、そんなに長くもない記事を何ページにわたって「次へ、次へ」というふうなかたちで、2,000文字の記事を5ページにしてPV稼ぐとか。

川原崎:ありますね。ちなみにログミーは1記事あたりの文字数が5,000〜7,000くらいあるため、スマホではさすがに読みづらくなるので,2000字ごとに分割してますが、PC版ではそのままでも読みやすいので分割せずに出しています。

PR会社は拡声器みたいなもの

川原崎:私が会社員時代に担当していたメディアは、それこそ全体を合わせたら億PVといった規模だったので、PVが高いことと事業としての成功ってのはあまり関係ないんだなということをすごく実感して。

ログミーではメディアガイドにUU数は載せてるんですけど、全体PVとか記事広告の想定PVとかは一切載せていません。それは一応そういうものへのアンチテーゼというか、意味のないPV作ってもしょうがないので。

北村:確かに。それは、やっぱりログミーさんのすごいところだと思っていて。生きたPVというか、本当にユーザーが興味のあるコンテンツだと数字が跳ねると思うんですよね。一方で、あまり興味のないコンテンツってあんまり跳ねないと思うんです。

川原崎:跳ねないですね(笑)。

北村:それを無理に跳ねさせようともしないと思うんです。それはメディアとしてかなり誠実というか、ユーザーオリエンテッドなメディアの作り方してるなと感じます。

逆に僕らの場合は、こんなこと言ったらクライアントさんに怒られちゃいますけど(笑)。PR会社として、跳ねないネタをつかんで、それをPRしなければいけないときのこのもどかしさが……。

川原崎:はい(笑)。

北村:すごいつらいです。まあ仕事なのでやったりするんですけど、それってやっぱりPR会社的にはきつくて。だから、僕らとしてはしっかり世の中に反響を得られるような、そういうネタを扱いたいなと思います。

川原崎:でも、もともとなにもしなくても、というかそんなに苦労せずにブームになったりするものって、PR会社さんにお金を払わなくてもいいですよね?

北村:おっしゃるとおりですよね。本当そうなんですよ。それってイベントもそうだと思うんですよ。おもしろいイベントに参加したら、仮にログミーさんが入らなくても、ユーザーの反響だけでソーシャルメディアで拡散しながら盛り上がったり、という構図が作れるはずなんです。

だから結局、僕らはあくまでも拡声器みたいなもので、「ちょっと声を大きくしますよ」ぐらいの価値でしかなくて。本当はやっぱりコンテンツがすごく大事なんですよね。