「お風呂を通じて日本のおもてなしを広げていきたい」中国で100店舗を目指す極楽湯の挑戦

基調講演「壁を超える」 #3/3

Cybozu Days Shanghai 2017
に開催

中国での導入実績が700社を超えたサイボウズ。中国法人立ち上げから10年という節目の年に、上海にて「Cybozu Days Shanghai 2017」を開催しました。基調講演では、サイボウズ代表の青野慶久氏が登壇。中国での導入実績がある日本企業のトップを招き、「壁を超える」というテーマについて対談を行いました。極楽湯董事長の松本俊二氏は、スーパー銭湯文化がなかった中国での事業展開を振り返り、採用・教育面での苦労や今後のビジョンについて語りました。

提供:サイボウズ株式会社

中国にスーパー銭湯文化を根付かせる極楽湯

青野慶久氏(以下、青野):それでは3社目の事例をご紹介させていただきます。みなさんご存じだと思いますけれども、極楽湯さんです。中国でも大変すごいブランドに成長していると、日本のほうにもニュースが入っております。

今日はこの極楽湯の董事長をされている松本様にお越しいただきました。大きな拍手でお迎えくださいませ。

(会場拍手)

青野:まずは事業のご紹介をいただきたいんですけれども、よろしいでしょうか?

松本俊二氏(以下、松本):はい。その名のとおり、お風呂屋さんです。日本では直営23店舗、FC15店舗、38店舗を経営・運営している会社です。

中国には2011年に会社を設立しまして、2013年2月、春節を目指して1号店をオープンいたしました。浦東の金橋に1号店がございます。その2年後、2015年2月に、これも春節に合わせて浦西に2号店をオープンさせ、昨年11月に武漢に3号店、すべて直営店をオープンさせました。

これが今までの計画でございます。現在、1店舗当たり約40万人のお客様に来ていただいております。

青野:40万、すごい人気ですね。このスーパー銭湯という、お風呂屋さんでレジャーというものは、近年の日本では当たり前になってきましたけれども。中国ではなかった文化じゃないかと思うんですが、このあたりは大変ではなかったですか?

松本:そうですね。実は私、経歴に書いてありますように、もともとは大学卒業して日興証券に入社をして、その途中でM&Aの部署に勤務することになり、その時に中国に何回か来たことがありました。その時、実はお風呂があったんですね。

青野:あった?

松本:はい。浴場があったんです。それは国有企業さんの中に体育館であったりお風呂場があった時代があったんですけれども。それがどんどん解体されていくなかでシャワー文化が根付いていったということなので、決して中国にお風呂文化がなかったということではないんですね。

それが徐々に、日本に旅行に行って、ゴールデンルートを通りながら温泉に入ったり、箱根に行ったり、それから鬼怒川に行ったり。いろいろなところの温泉に行く方が中国の人で増えてきた。

そういう人たちが中国に戻って、自分の近くにもそういうものがあったらいいなと思われたのかもしれないですけれども、私どもがリサーチを始めた時には中国全土ですでに2,000店舗ぐらいの温浴施設があったということです。

異国での社員の採用と教育

青野:でも、そうしますと、そういうものと競争していかないといけないわけだと思うんですけれども。どういうコンセプトで、ターゲットなどをどう設定されたんですか?

松本:2013年に1号店をオープンしていますけれども、そのリサーチを始めた時期は今から10年前、したがって1号店がオープンする5~6年前なんです。その当時あった温浴施設は、もしかしたらみなさん同じイメージを持っていらっしゃるかもしれないですけど、極めて不衛生で不健全な温浴施設であったと私は感じました。

そこで、日本の極楽湯を中国に持ってくれば、いわゆる清潔で、そして明るく、健全な温浴施設で勝負ができると確信を持ったということです。

青野:そうしますと、お風呂文化はあったけれどもやはり古いままの不衛生なイメージが残っていたところに、「最新のお風呂文化を持ってこよう」というイメージになるわけですよね。

松本:そうですね。最初のお店のコンセプトは「ヘルス&ビューティ」。

青野:ヘルス&ビューティ、なるほど。

松本:当然、女性をターゲットにして。それもF1層、20代~30代といったところをメインのターゲットとして据えてお店づくりをしようということで、こちらに進出をしました。

青野:そうしますと、こちらである意味、高品質のサービスをしないといけないわけです。従業員もたくさん採用して教育もしないといけないです。こういった大変さもあったんじゃないですか?

松本:そうですね。社員のなかにはやはりお風呂に浸かったことがないという人たちもたくさんいたので、それは非常に苦労いたしました。

それから社員を採用する時点で、女性社員が少なくとも半分はいるわけですよね。採用するには非常に苦労をいたしました。先ほど申し上げたように、そういう不健全なイメージがありますので、その女性の方もそうですし、ご家族の方も反対をする。そういうことはありました。

青野:どうやって乗り越えていかれたんですか?

松本:日本の企業様のいろいろなご協力・ご支援もいただきましたし、もちろん私どもとしても、毎週のように採用会に行って、「極楽湯はどんな会社なのか」「極楽湯はこの中国でなにをしたいのか」、そしてまた「中国の人たちになにを与えることができるのか」ということを愚直に伝えていきました。それで採用ができたということです。

青野:なるほど。先ほどのベネッセ様と同じように、やはり「どんな社会を作りたいのか」「どんなサービスにしたいのか」というところの教育から入るわけですね。

松本:そうですね。そうしないとなかなか理解をしていただけない。また、ちょっとわかったつもりでも、やはり特殊な業態なので、仕事をする上においても、実際に自分が実践していく柱になっていくものがなければ、すぐ辞めてしまったりする。

青野:そうですよね。またそれが品質の低下にもつながりますし、いかに採用と研修のところが大事かということですね。

松本:そうですね。最初に乗り込んできた大体12名の日本人、それから日本で採用した中国人の社員3人ほどで始めたんですけれども、やはり最初から違うんだと。もともと国の体制も違いますし、生まれ育ってきた環境も違う。そういうことをきちんと認識した上で、「おもてなしの心も、日本人の心にだけあるものではない、中国の人もちゃんと持っている」「ただ、表現の仕方などがまだわからないんだ」という理解をきちんとした上で、厳しい教育をしていったということですね。

お風呂を通じて日本のおもてなしを広げていきたい

青野:やはり高品質のサービスの裏に、徹底した社員教育は感じますね。ただ、これまたうまくいってきますと、真似してくるところが出てくるでしょうし、そういったところとの差別化というか、競争はどう対処されているんですか?

松本:先ほどベネッセさんもおっしゃいましたけれども、13年に出てすぐ真似をされる。「極楽湯」という看板そのもの、ブランドを真似したところもありました。

青野:うわ、それはひどいですね。

松本:あと1字だけ変えて、最初の「極」を「和」にして、ロゴもそのままというところも出てきました。

青野:うわぁ、完全にパクリ。

松本:それは法律的に対処していきました。それ以降はこの上海でも日式の温浴施設がどんどん出てきました。最近では、みなさんもいろいろニュースなどでお聞きになっている、東京のお台場にある温浴施設も出てきたということでありますけれども。

先ほどベネッセさんがおっしゃったように、広がるということ自体は私どもも非常にいいことだと思っていますし、真似するのであればちゃんと真似していただきたい。

青野:業界の評判を下げられるよりは上げてくれと(笑)。

松本:そうです。衛生管理の面もそうですし、それから接客もそうなんですけれども、とにかくちゃんと真似してくれれば非常にありがたい。歓迎はしていますけれども、そこだけは強く思っています。

青野:なるほど。そうしますと、やはり業界全体を見ておられるんですね。少々競争相手が入ってこようとも、文化が広がればいい。そういう寛容な心がないとなかなか(笑)。

松本:そうですね(笑)。ビジネス的には良いのか悪いのかわかりませんけれども、(日本から)中国に出てくる人の思いというのは、確かに日本のマーケットがずっとデフレで出口が見えない状況のなかで、そういう状況があったので中国に出てきたということもあるんですけれども。

でも、それだけではなくて、やはり日本のそういう衛生管理であったり、それから日本のおもてなしというものをこのお風呂を通じて広げていきたい。

そして、この公共施設のマナーなどの向上につなげて、小さいながらも中国の方々、もしくは中国の社会に貢献ができればという思いで出てきましたので。そこは今も、そしてこれからもずっと続けていきたいと思っています。

なぜ上海の極楽湯が一番高い料金設定なのか

青野:すばらしいですね。あと1つ今日おうかがいしたかったのは、価格なんですよ。ホームページを見させていただいて、中国で営業されている極楽湯さんがいくらぐらいするのかと思ったら、日本よりずいぶん値段が高くてびっくりして(笑)。どういった価格戦略でああいうプライシングになったのか、お聞かせいただけませんでしょうか?

松本:もちろんマーケティングをして、いわゆる上海にある既存の温浴施設の価格も参考にしましたし、それから所得水準も参考にしました。それで決めたわけなんですけれども、確かに138元、今の日本円に換算すると2,200~2,300円ですので非常に高いです。極楽湯グループのなかでは一番高い料金ですので。

青野:なんと。上海が一番高い?

松本:上海が一番高いです。

青野:ああ、そうですか。

松本:ただ、これはやはり、まずはこの価格が払える方に来ていただきたいという思いがありました。そうでないと、やはり館内のマナーであったり衛生管理に残念ながら自信がなかったんです。

今でも春節の時期になると2時間3時間待ちで並んでいただくわけです。それがもっと安くなるとどんな状況になるかということは非常に恐怖を覚えますので、そういうかたちで少し価格で制限をしたところはあります。

青野:そうしますと、最初からとにかく誰でも受け入れようというのではなくて、ある意味、絞ることで1つずつ公衆浴場のマナーを覚えていただき、品質についても高品質を維持したまま気持ちよく入っていただく。こういうところを維持するためのプライシングということになるわけですね。

松本:そうですね。だから、先ほどセイコーさんもおっしゃっていたように、やはり来た方がSNSで流すんですね。流してもらえるようなイベントなどを絶え間なく発信していかなければいけないということがあります。そういう方々(SNSで拡散してくれる人たち)が流してくれると、そのお友達はやはりそういう方々なので。

現時点では今の価格でやっていますけれども、将来的にはもっと一般の方々に、今の価格ではなくてもっと安い値段でも入っていただけるようなお店づくりというのはしていきたいなと思っています。

青野:なるほど。それは文化が向上し、マナーが向上してくると、その先に待っているということになるわけですね。

松本:そうですね。

中国で100店舗を目指し、世界へ

青野:なるほど。今、お話うかがっておりますと、非常にていねいにサービスを作り込みながらされている印象があります。逆に事業の拡張性といいますか、スピード感を持って拡大していくことが難しいように聞こえるんです。そのあたりについて将来的にはどういうふうにお考えなんですか?

松本:現在、直営店が3店舗です。直営店はやはり時間もお金もかかります。現在公表しているだけで4店舗のフランチャイズを計画しています。1つは青島。それから上海。上海2店舗。それから無錫。

今後はやはり直営店とフランチャイズとを合計して合わせて中国で展開をしていくということがスピードアップにつながると思っています。

青野:なるほど。今後はフランチャイズですね。フランチャイズをするとなると、品質を一定レベルに保つために、またいろいろ課題も出てきそうですね。

松本:そうですね。今後100店舗を目指しておりますので。

青野:100店舗。

松本:100人の総経理と館長、ならびに財務総監が必要になってきますので、その人たちをやはり自社で育てるということですね。

先ほど申し上げたようにお風呂屋は少し特殊な業態ですので、1日2日でパッとわかるというものでもない。やはりしっかりと経験を積んでもらいながら、そしてFCの加盟企業さんに伝えたいということになると思います。それは中国人の人にやってもらう。日本人は、SV、supervisorみたいにその人たちをsupervisingしていくということが、これからの役割だと思っています。

青野:そうしますと、どんどん現地のフランチャイズに任せながら、まさに文化を覚えてもらって文化を広げていくような動きに見えますね。

松本:そうですね。まさしく文化、それから新しい生活習慣を広げていくということですね。

青野:スピード感、すごいですね。今、日本で38店舗、これから中国で100店舗ですか。逆に中国のほうがあっという間に大きくなってしまうという計画なわけですね。

松本:そうですね。日本はもうたぶんあと数年後にははるか彼方に見ているというふうにしたいと思いますね。

青野:そうですか、楽しみですね。残り時間がわずかとなってきてしまったんですが、もしよろしければ、今後の展望や今考えておられる課題を少しお話しいただけませんでしょうか?

松本:はい。今、申し上げたように、中国全土では直営店・FCでは100店舗を目指していきます。もちろんその先にはやはり世界。

青野:世界?

松本:世界のどこに行っても極楽湯があるという世界にしたいと思っています。

青野:いいですねえ。

松本:ヨーロッパに行っても極楽湯、アメリカに行っても極楽湯、南米に行っても極楽湯、オーストラリアに行っても極楽湯。どこに旅行に行かれても極楽湯があるという生活習慣・文化と同時に、「お風呂は楽しいんだ」ということを世界に広げていければと思っています。

青野:では、時間になってしまいましたので、ここで終わりとさせていただきたいと思います。もう一度大きな拍手でお送りくださいませ。松本さん、ありがとうございました。

松本:ありがとうございました。

(会場拍手)

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