自動運転の世界標準

それから3つ目、自動運転です。私も専門家ではないので、さらっと流していきます。やはりここ数年、自動運転車両の研究など、本当に動いているところが見えるようになってきて、国内でも益々活性化してきています。ディー・エヌ・エー(DeNA)もいろいろな所で自動運転の実験などをやっているようです。

いろんなところがマスコミに出てきていますが、去年はZMPという国産の自動運転車両やロボットタクシーを作っている会社。そういった所との提携を解消して、今度は日産と組む。日産は日産で当然ながら自動運転の研究をしていますし、国内自動運転の業界もいろいろと活発にやってきているなと感じます。

これも(スライドを指しながら)つい最近の記事でしょうか。運送業界は今、ドライバー不足で、非常に問題になっていますが、自動運転技術をこういったところに役立てようという発想も出てきています。知っている方もあると思いますが、自動運転に関しては、世界的な標準というものが作られてきています。

(スライドを指しながら)自動運転のレベルというのはレベル1からレベル4までなんとなく分けられていまがど、下にいくほど完全自動運転で、ドライバーレスです。上のほうはドライバーを補助するという形ですね。日本の国産メーカー、車メーカーは当然ながら上のほうから追随して、自動ブレーキや追尾走行をやっていきながら、一方でGoogleは最初からコクピットがないような……、ZMPもそういうところから入っています。

もしこれが実用化されていった時、責任問題はどうなるのか。技術だけじゃなくて、保険なども含めた法整備も進んでいくんだろうと思います。

ITS(注:高度道路交通システム、Intelligent Transport System)の自動運転に関する話ですが、最近、日本学術会議で、自動運転について記事が出ていました。これは短い20ページくらいの発表です。今現在の取り組みやベンチャー企業の取り組み状況、課題、今後こうなっていく、世の中はこうなっていくじゃないかなど、すごく綺麗にまとまっているので、もし興味のある方はこれ見ていただけると……日本学術会議のホームページにPDFで載っていますので参考になるかなと思います。

人と車両をマッチングさせるサービス、SAV

さらっと流させていただきましたが、こういった現状のなかで我々はどんなことをやっていくのか、少しご紹介させていただきます。冒頭で申しましたが、未来シェアという会社で、設立して未だ1年経ってない、そんなベンチャー企業でございます。

公立はこだて未来大学発の初のベンチャー企業ということで、代表に松原仁、会長が中島秀之です。この2人は最近注目を集めているAI研究について、先駆け的にやっている研究者です。

こういったメンバーが、AIの要素も技術の中に取り入れられていまして、この後紹介しますが、かなり長い間研究してました。未来大学の先生方、それから産業技術総合研究所(以下、産総研)の研究者や名古屋大学など、そういった機関を中心に会社を設立しています。

私は、一応会社の代表取締役として就任していますが、横浜にあるソフトウェアの開発会社のアットウェアという会社を運営していまして、今まで研究をして、それを実地に出していくところでソフトウェア開発の部分でいろいろとお手伝いさせていただいていました。そんな関係もありまして、ベンチャー作る時に一緒にやらせていただいたという……そんな次第でございます。

SAV、これは何か端的に言いますと、人と車両をクラウド上でマッチングさせるサービスだと捉えていただければ良いかなと思います。

このSAVのクラウドは、各車両にタブレットを置きながら、各車両は今どこを走行しているのか、それから各車両は何人乗りで、現在何人乗っているかという状況をリアルタイムに把握しています。

この状況で乗客が「ここからここに行きたいです」というデマンド(需要)を発生した時に、車両と人の結び付けをクラウドが計算します。そして「この車両はこの人とこの人を迎えに行って、こういうルートで迎えに行きなさい」という指示を出す、こんなイメージです。

タクシーのように呼んだらすぐに来てくれる、来るのはバスのような乗り合い車両。タクシーとバスの良いとこ取りをしようという、そんな技術でございます。この計算を完全無人でやることで配車係がいらないという特徴があります。この技術の最も特徴的なところは、これをリアルタイムに処理してしまうというところです。

完全オンデマンドリアルタイム技術

例えば左の男性が「ここからここに行きたいです」というデマンドを発生させました。するとSAVのクラウドが「この車両に迎えに行きなさい」という指示を出します。迎えに行っている最中に真ん中の女性が「ここからここに行きたいです」っといった時に、即座に計算し直して、「じゃあこういうルートで行きなさい」という指示を出してくれます。

これは1台と2人なら非常に分かりやすい、人間でもすぐわかる話です。ですがこれが数十台、数百台の車両と数十人、数百人の人で、しかも時間が刻々と変化していく中で一斉にデマンドが発生した時、どのルートでどの車両は誰を迎えに行くのか、どういう順番で行くのか、どれが最も効率が良いのか。この計算は人間には不可能なわけですね。これをリアルタイムに即座に計算するというところが、この技術の特徴的なところです。

タクシーは人を探して走り回っている。バスも決まった路線を定時刻に走っていて多くの時間は空気を運んでいる。これをこの技術を使って確実なデマンドに応じて人を運ぶ。かつ乗り合いをすることによって限られた車両で最大限の効率を生み出そうと、そういったところに活用しようと思っております。

この技術は今まで実証実験を重ねて来ているのですが、完全オンデマンドリアルタイム技術は、日本の中では未だにサービスとして運用していません。

なぜなら、先ほどいろんな規制や公共交通会議の話をしましたが、このサービスをやるにはいろんな壁があるんですね。ただ今後は、規制が撤廃していくだろうということで、研究を重ねて実証実験を行っています。

(スライドを指しながら)左のほうは乗客がスマートフォンから「ここからここに行きたい」というリクエストをすると、地図上で指定してデマンドが投げられます。クラウドのほうでは、決定してデータがこの右側のドライバーの画面のほうに写されて、ドライバーは「ここに行って乗せて降ろしなさい」という指示が来るので、そのとおりに行って乗せて降ろす。乗客の方には配車が決まったら何分くらいに行きますよ、何号車で行きますよ、待っててねという感じです。

アプリによる実証実験

このようなアプリを使って今まで実証実験を行ってきています。この研究は非常に古くて、実は2001年くらいから、当初は産総研で、デマンド型バスというのが本当に役に立つのかどうかというシミュレーション始めています。

当時はスマホすらなかった時代でしたので時代も経て2011年くらいに……当時最初の研究を始めたのが中島という元未来大学の学長だったんです。未来大学に学長として就任し赴任したということもあって、函館の地で本格的な研究をスタートさせました。

2013年以降は、実際の道路網と車両と人を使った実証実験を繰り返してきています。これまでの最大の実験は、もう2年前になりますが、2015年に函館で人工知能学会がございました。学会は4日間でしたが、ここに集まった学生や研究者、先生方に「無料で使ってください」「自由に動いてください」とアプリを無料で配りました。現地では、多い時でタクシーを30台借りてデマンドに応じて配車をするという実験を完全無人で4日間やりました。これまでで最大の実験でございます。

イメージ見ていただくために、こちらをご覧ください。これとまったく同じシステムを使って去年の12月にお台場のエリアで実験を行いました。見にくくて申しわけないですけど、これはだいたい2キロ四方くらいのエリアですね。

この黄色い印が車両の位置です。当日は6台の7人乗りアルファード。これにドライバーが乗っているので最大6人乗れる車両を配備しまして、乗客として40組のモニターの方に参加していただき、時間になったら自由に移動してもらい、それを乗り合い計算して運ぶという実験をしています。

この緑の印が(乗客が)乗りたいと言った場所で、赤が(乗客が)降りたいと言った場所です。この40組のモニターが一斉に時間になると、デマンドが発生して、車両はその指示に従ってその人を拾って運ぶ。こうした過密な乗り合い実験を去年の12月にお台場のエリアで行いました。

かなり過密なことをやっていますので、 最大5組が同じ車両に乗り合って移動するところを見られたりして、当然ながら普通の車両で運ぶより輸送効率は確実に上がるということが立証できますし、函館だけではなくて、東京でもちゃんと使えるというところが、ここで見えてきたかなと思っております。

効率的な事業の提案から移動手段格差の解消へ

我々はこうした実証実験だけをやってきているわけではなくて、大学を中心に研究を行ってきました。今まで走行した記録から、ある程度シミュレーションを行っています。この下のところ、これはデータとしてはかなり小さいんですが、岐阜県の多治見市のとあるタクシー会社から過去の配車データを全部いただいたものを使ってシミュレーションしました。

小さい会社なのでだいたい10台くらいで運営しています。その配送記録から、これを完全にデマンド型の乗り合い車両にしたらどのくらいの効率が出るだろうかという、そんなシミュレーションを行いました。

結果として常時10台運営しているところを、繁忙期でもだいたい7台あれば同じだけのお客様を運べる、閑散期だったら3台あれば運べる。つまり10台で運営しているところを、5台あれば同じだけの営業成積が出せるという、そんな結果が出ています。

これは移動需要が多ければ多いほど、規模が大都市であればあるほど、効率は上がっていくというシミュレーション結果が出ているので、もう少し大きな都市で利用されていくと、もっともっと効率が上がっていくだろうなと思っています。

あとはこういったシミュレーションをしていますので、やる前にだいたいこの町なら何台くらいあれば何分くらいで迎えに来ることができる。そんなこともできるようになっています。今までの研究を重ねてきた結果、こういったことが我々の企業にできることです。

こうした技術を使って、未来シェアという会社でどういった取り組みをしていくのかというところですが、当然ながらその1つは、限られた車両数で沢山の人が乗れる、かつ不要な空気を運ぶということをなくしていきましょうという事で、経費の削減ですね。事業者が効率的な事業ができるようにすることを目指していきます。

これができることによって、利用者の移動格差の解消に繋がっていく。やはり年代によって、それから住んでいる場所によって、移動格差があるのが日本の現状だと思うんです。それをより低コストで、便利に使われて移動しやすくなる。そんな社会を作っていきたいと思っています。

さらには少ない車両で人を沢山運べるといったところで、渋滞緩和、CO2削減、それから人々が移動しやすくなることによる経済の活性化など、こういったところを狙っていきたい。まさにこのサービスの技術をもとに、いろいろな幸せをシェアしていく、そんな未来を作っていきたいと思っています。