ピーナッツから葬式うどんを作る!?
「おばあちゃんのレシピ」に隠された、クリエイティビティの生み出し方

The simplest way to meet who you want #1/2

台所研究家として日本、そして世界中で「おばあちゃんのレシピ」集めに奔走する中村優氏。なかでも岐阜県で出会った、ピーナッツから作る「葬式うどん」に、彼女はクリエイティビティを見たと語ります。現代でも通じる、戦争を生き抜いた世代のロックな底力とは?(TEDxTokyo yz より/この動画は2014年に公開されたものです)

台所は笑顔の場所

中村優氏(以下、中村):こんにちは。皆さんの身近にあるところで、家庭で、一番いい匂いのするところってどんなところだと思いますか?

観客:台所!

中村:素晴らしい! みんな一緒ですね! 私もそうなんです! そう、私はいい匂いのする場所を研究しています。私が台所に興味を持ち始めたのは、台所が笑顔の場所だと思っているからです。私は大学時代に、「料理するからタダで泊めて」って言って、3ヶ月間、ヨーロッパの知らない人の家をタダで泊まり歩いていました。

その時に、知らない人の家にちゃんと合意を得た上で上がり込んで、一緒にキッチンで料理をしながら笑顔を共有する、っていうことをやっていたんです。キッチンで色々な作業をしながら話すと、こうやって対面で話すよりも、心にスキマができるんですね。だから、その人の素の部分を聞き取りやすい、そして素の部分が分かりやすい。そして、この「食べるものを一緒に作る」という行為は、親密度をグッと増すことになるんです。

こんな感じで、他にもいろんな国を旅しながら私は、やっぱり笑顔が重要だなってその時思ったんです。私は幸せの形として笑顔というものを持っていたし、笑顔があればみんな幸せなんじゃないかな、って思っていました。その笑顔を生み出す手段として、私は料理の世界に入っていったんです。

そうこうしている中で、でもやっぱり家庭料理にどんどん惹かれていきました。家庭料理っていうのはその土地だったり、自分が生まれた風土と自分、そして食べてもらう人、自分が作ってあげる人、そんな大切な人との関係性(から成っています)。それによってどんどん生まれてきたのが家庭料理だったんです。

おばあちゃんはロックだ!

そしてその歴史を知っている人、それはおばあちゃんだって思ったんですね。だから、私は今、世界中のおばあちゃんのレシピを集めています。いろんなおばあちゃんを取材して、「おばあちゃんのレシピを集めています」って言うと、みんな、「いいね!」って言ってくれるんです。

例えば、こんなおばあちゃんたちのすっごい可愛いしわだったりとか、ほっこりした感じだったりとか。しわが好きなのは私なんですけど(笑)。そういうのを見て、みんな、「いいね!」って言ってくれるのかもしれないし、失われゆくものを保存しているという意味で、「いいね!」って言ってくれているのかもしれません。

でも、実は、私がレシピを集めているおばあちゃんたちって、ほっこりしている対象でも、弱い対象でもありません。もっとロックなんです。実は80歳以上とか、75歳以上のおばあちゃんたちって戦争を経験していて、今まで信じていたものがガラッと変わるという経験をしています。また、何もないところから作り出していく、生み出していく、そんな経験をしているおばあちゃんたちは、実はアントレプレナーシップ(起業家精神)があって、革新的で、全然保守的なんかじゃない。そんなロックなおばあちゃんたちがいっぱいいたんです。

例えば、このかわいい人。

これは、私のおばあちゃんなんですけど(笑)。

(会場笑)

私のおばあちゃんは何もないところからブティックを立ち上げて、86歳の今も現役でやっているんですね。私に、「今年の流行色は何色だよ」とか言ってくれたりするチャーミングなおばあちゃんだったりします。また例えば、別にアントレプレナーではないんですけども、このおばあちゃんだってすごくロックです。

このおばあちゃんも雪山の中で何にもないところから自分たちで作り上げて。DIY以上のことをやっているんですね。他にも、富山でも、何もないところから自分で家を建てちゃうおばあちゃんとか、本当にロックな人たちがいっぱいいます。

そして、戦後培われてきた、私たちが当たり前だと思って生きてきた価値観、それが「3.11」とかリーマンショックとかでガラッと変わる経験を私たちもしています。その中で、私たちがこの時代を生き抜く鍵って、実はおばあちゃんのところにヒントがあるんじゃないかな? そんなふうに思って、生き抜くためのヒントの意味も含めてこのレシピというのを集めています。

ロックなおばあちゃんのクリエイティブ・レシピ

また、これはさっき出た、岐阜のおばあちゃんの料理なんですね。山奥に住んでいる、このおばあちゃんが教えてくれたのが「葬式うどん」という、うどんだったんです。葬式っていつ起こるか分からない。でも、こんなに雪深いところでは何もなくなってしまうし、冬は食べ物がない。街にも下りてくることができない。じゃ、どうするかっていった時に、ここでは誰もがピーナッツを育てていて、それをペースト状にして、おつゆにして食べる、といった葬式うどんが作られていたんですね。

これこそがこの街の風土だったりとか、この味を作り出すおばあちゃんたちのクリエイティビティだったりとか、そんなことがあったりします。

他にも、どくだみという野草がありますよね。東京でも探すと結構いっぱいあるんですが、そんな野草も乾燥させるとお茶になって、アルコールに漬け込めば化粧水になって、そしてそのまま発酵させるとワインになるんです。こんなにもすごい田舎で超クリエイティブなものがどんどん生まれていく。私が集めているのは、ほっこりしたレシピでも何でもなくて、ロックなおばあちゃんたちのクリエイティブなレシピなんです。

2週間で会いたい人に会える法則

聞きたくなりましたよね?(笑)でも、どうしたら、こんなロックなおばあちゃんたちに会えるのか。私は今、1年半ほど特定の定住場所を見つけず2週間ごとぐらいにいろんな地域に行ったりとか、国もまたいでいろんなところに滞在するということをやっています。よく考えると、大学時代となんら変わっていないんですけども、そんなことをやっている中で分かったことがあります。

これは「2週間で会いたい人に会える法則」なんです。会いたい人、この場合はロックなおばあちゃんたちなんですけども、これは2週間で会えます。というのも、2週間という期間は私がある実験をした結果なんですね。

私が(さっき)特定の場所を見つけず、と言ったのは、いわゆるホームレスをしていたんですけども、どうせなら東京にいなくていいから地方に行ってみようと、地方に色々行くようになりました。それで、私はやっぱり食関係なので、生産者にも会うようになった。おいしいものにもめぐり合うようになった。

じゃあ、本当においしいものだけを詰め合わせにして、その人たちがどんな人で、どんな思いで作ってて、どこで作っているのか、そんなことをストーリーブックに書いて一緒にして送る、という「You Box」というものを始めたんですね。

これは日本の地域でやったものなんですけども。どれだけの期間があれば、私は本当においしいものにたどり着くことができるのか。それを考えてやった結果、日本の地域でも、台湾の地域でも、フランスの地域でも、どこでも2週間あればたどり着くことが分かったんです。

私がそれでやったこと。今って情報が溢れてますよね。雑誌とか、本とか、インターネットとか、テレビとか。そういったものを使えば、行きたい地域の行きたい情報、聞きたい情報がいっぱい集まります。じゃあ、私は、そういう情報をバッと調べて、取って、選別していったのかといわれれば、そうではありません。

私が聞いたのってたった1人か、2人。それぐらいなんですね。1週間目に、1人か2人に、「こんなものに会いたいんだよね」、「こんなもの知らない?」って聞いて種をまくと、紆余曲折を経て、2週間目には絶対会えるようになったんです。どんなに多くの情報をリサーチするよりも、1人、2人からつながっていく信頼関係に基づくネットワークを使った方がすごく精度が高いことが分かったんですね。

「いいにおい」がする方向に進めば、人生はきっと楽しい

ただ、ここで一つだけ気を付けることがあるとすれば、その1人、2人を、どういう人を見つけるかっていうことなんですね。それを見分ける方法。それは「におい」なんです。隣の人のにおい、かいでみてください。

(会場笑)

いいにおい、しますか?(笑)私が思う、いいにおいがする人っていうのは、みんな共通点があるんです。その共通点っていうのは、自分の心に嘘をつかずにすごく自然体で生きている人たち、ということなんですね。

自分の心に嘘をつかず、素直に生きている人って、自分の好きなことをやったりだとか、自由人な人たちという意味ではありません。会社員にももちろんいるし、おばあちゃんたちの中にもいるし、国や国籍とか肩書きとか全て超えてどこにでもいる人たちのことなんですね。

でも、じゃあどうして、そういう人たちが生まれるのか。そういう人たちは決まって楽しそうに生きているんですよ。例えば、自分の日常にささいな不満とか不安とか、心に引っかかるものがありますか? なんなんだろうと思ったら、それにもっと耳を傾けてみるべきだと思います。それを無視し続けると、誰を選んだりとか、そういった人のにおいも鈍感になってしまいます。

じゃあ、本当に自分がやりたいことなのか、って問い続けた時に、それが違うとしましょう。それを変えるのって、ちょっと怖いかもしれません。でも、本当にそうなのか。意外とそうじゃないかもしれないんです。例えば、私は大学時代に初めて海外へ留学した時に、何者でもない自分に向き合って、やっぱり本当に怖かったんですね。「どうしよう、私は本当に何者でもないし、何もできないじゃない」と思った。

でも今となっては、私は家もないし、誰に言っても何をやってる人かって全然分かってもらえないし。ちゃんと仕事してるんですけどね(笑)。でも、私はすごく楽しく生きてます。毎日楽しいです。

おばあちゃんたちを見ていても、雪山で孤立してしまい、みんながすっごい心配していて、もう死んでしまうんじゃないかと思っている。でも、おばあちゃんたちはちょっとずつ自分たちが作った保存食を食べて生きていたんですね。みんながふたを開けてみたら、おばあちゃんはこたつでみかんをむいてのんびりしていた。そういう、本当に重要なのって「生き抜くための底力」なんじゃないでしょうか?

自分が本当に重要なこと、それだけを大切に生きることがとても重要なんだなと思っています。私はいろんな地域に行っているし、いろんな仕事をしています。でも、その中で、やっていることはたった一つだけなんです。それは、いいにおいがすると思う方向に自分が必ず進んでいくこと。そして自分の身の周りのたった1人か2人、でも、自分が信頼する人とか大切にしたい人、そういう人を全力で大切にすること。

本当にちっちゃいし、狭い世界のことかもしれません。でも、そこから広がる世界はもっとおっきいし、自分が行きたい方向につながると信じています。だからこそ、自分の周りの人たちを幸せにして、全力で今を楽しんで生きること。それがこれからいろんな自分へのステップになり、そこから拓けていく世界があると信じています。

それを重要なこととして、みなさんもいいにおいのする方向へ歩んでみませんか? どうもありがとうございました。

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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