「お店を長続きさせるための秘訣を知る」がゴール

植竹剛氏(以下、植竹):みなさん、こんにちは。お暑い中お集まりいただきましてありがとうございます。

みなさん、お疲れの方が多いようですけど、大丈夫ですか。モチベーションが高くないとお店のオーナーはやれないですからね。大丈夫ですかね。

今日お話しすることを、いくつかまとめてきています。その内容を一言で申し上げると、本講座のゴールは3年で7割。根拠は薄いんですけれども、一説によると、それぐらいの残念賞になってしまうということが言われています。

そんな中で、逆に3年以上継続して経営をされているオーナー、……先ほども「もう5年目です」という方いらっしゃいましたけど。そういったオーナーたちご心がけていること、お店を長続きさせるための秘訣を知ることができることを今日のゴールにしております。

前後しましたが、簡単に自己紹介をさせていただきます。改めまして、「チームのちから」という会社をしております、植竹剛と申します。よろしくお願いします。今年で46歳になります。20年ほどサラリーマンやりまして、5年前に独立をしました。

もともと私も父が……みなさん、カステラの文明堂ってご存知ですか? 47年前、当時でいうと特約店と始めたところですね。というところで、店舗で商売をさせていただいてました。

私も4歳から「いらっしゃいませ。いらっしゃいませ!」と言ってました。小遣いは歩合でした。5歳で1ヶ月、2万円もらったことあります。

そのかわり、朝5時に起きて自宅の掃除をしないと、朝ごはんが出てこないような家でした。これも幼稚園の年中ぐらい、……5歳ぐらいなんですかね。正直あまり記憶はないんですけど、駄々をこねたことがありまして。掃除をしたくないときってあるんですね。

そうすると、本当に父親と母親がおしんこ1枚も出さなかったんです。それだけはすごく記憶があります。そして、父と母はもうサーッとお店に行っちゃうんですね。私は4人兄弟の末っ子なので、姉とか兄が少しずつご飯を残しておいてくれて、「ほら、食べろ」と言われたのを記憶しています。

コンサルをやりながら、横浜・元町で占いカフェも経営中

実は私も店舗のオーナーです。横浜の元町に占いカフェというのを立ち上げて、3年5ヶ月経ちました。今年で4年目です。

みなさん、横浜の元町ってご存じですかね? 目抜き通りに面していて、車道も歩道も石畳。ハマトラとか、フクゾーとかあったと思うんですけど。これは50代以上の方はご存じだと思うのですが。そこの路面店の2階で商売をしております。

やはり失敗ばかりでしたね。今でも覚えていますけど、初年度は赤字の1,500万円でした。よく資金がもったなと思ったんですよね。2年目は黒の70万円です。「やっと黒字が出た。がんばろう」。3期はまた赤点ですね。赤の100万円ぐらいだったかな。今は4期目の真ん中ぐらいに差しかかっています。まだまだ一進一退です。

というような自己紹介をさせて……。たまにお店に関することはお伝えをしていきます。

本講座の流れ、プロローグですね。「経営者はいつ働きいつ休むのか?」。そして5つのポイントの中の1つ目に入っていきます。

1つ目、経営資源を知り、活用する。お店の財産を掘り起こしましょう。2つ目、ポリシーを毎日読み上げる。お店はなんのために営業するのか。3つ目、損益計算は毎日。お店の通信簿を作る。

4つ目、顧客の心理を読む。これからは「コト」を売る。5つ目、お手本になる店を10は知っておく。すべては「マネ」から始まる。

エピローグ、これからの店舗経営スタイル。……という流れになってまいります。

さっそく本題に入っていくんですが、1つお願いがあります。はっきり申し上げて、今日は真新しいことはそんなにないと思います。

4Pだ、3Cだ、分析だってやって、その中にマーケティングコミュニケーションのCを1つ加えていくべきか……なんて難しいことは一切やりません。

しかし「なんだ。そんなこと知ってるよ」「そんなのわかってるよ。そんなの聞きに来たんじゃないんだよ」と聞いていただきたいわけではないです。イメージとしては「これからお店やご自宅に戻ったあとに、すぐにできることってなんだろう?」と想像していただきながら、この70分間、話を聞いていただきたいんですね。

なので、たぶんジャストアイデアもあると思います。思い浮かんだこともあると思います。その場でそれをメモに取っていただく。アナログ媒体、デジタル媒体、どちらでもけっこうです。メモに取っていただいて、それを帰ったらすぐにやる。これを今日の肝にしていただければ幸いでございます。

オーナーはいつ休んでいる?

それではさっそく入りましょう。プロローグ、「オーナーはいつ働き、いつ休む?」です。すでにもう開業をなさってる方、挙手をお願いできますでしょうか?

(会場挙手)

ありがとうございます。これから開業なさろうという方? ご予定の方です。

(会場挙手)

だいたい同じぐらい。ありがとうございます。では、ここで、もう開業なされてます? 何年目ですか?

参加者1:6年目です。

植竹:大先輩ですね。ありがとうございます。ちなみにどういうご商売されています?

参加者1:焼き鳥屋です。

植竹:帰りに寄っていいですか?

(会場笑)

植竹:今日、休みですか? 残念。ちなみに定休日ってあります?

参加者1:今日は休みです。

植竹:今日だけですか? 定休日持つのってすごい勇気いりません? そうでもなかったですか。だから6年もってらっしゃるんでしょうね。あちらの方におうかがいしよう。定休日ってありますか?

参加者2:あります。

植竹:ありがとうございます。月1回? 週1回?

参加者2:週2回です。

植竹:週2回! すごいですね。逆に、定休日ないオーナーさんいらっしゃいます?

(会場挙手)

植竹:ありがとうございます。ちなみに、定休日をお作りにならない理由ってなにがありますか?

参加者3:うちの店のエリアでもちょっと違うんですけど、曜日ごとの集客の動向が見られないんですね。

植竹:曜日ごとの集客の動向が見られない?

参加者3:はい。2年ぐらい探ってみたんですけど、めちゃくちゃなんですね。なので、予約最優先という感じです。

植竹:もう平日・休日というのは関係ないぐらいの需要が見込まれる可能性があるということですよね?

参加者3:うん。本当にめちゃめちゃ(笑)。

植竹:あとでお話しましょう(笑)。

オーナーが休む時間=事業構想を考える時間

私は定休日を持つがものすごい怖かった人なんですね。お店の家賃は出ていくんですよ。でも、売上0円の日が月に4日ないし5日。週1回の休みは、すごい怖いな思って。占いカフェはずっと定休日なしでやってました。

そうすると、残念ながら私、自宅に帰ることを忘れまして、ずっと事務室で寝てました。体が臭いとか、そういう概念は飛んでっちゃうんですね。あまりにもしんどくて。

事務室は3畳ぐらいしかないんですよ。ノートパソコンが1台置いてあって。あと椅子2脚ぐらいで、あと本棚で終わりなんですよね。そこで体育座りで寝てました。経営コンサルが「なんでこんなにお店うまく営業できないのかな?」と、すごく悩んだ過去がありました。

ここでお伝えしたいのは、もう休みをとられてる方がたくさんいらっしゃいそうなので、釈迦に説法かもしれませんけど。休む時間を作っていただきたいんですね。とくにこれから開業をしてみたいなと思っていらっしゃる方は、睡眠を削ることなく休みを作ってほしい。要は、時間を作っていただきたいんです。

じゃあ時間を確保してなにをするのか。私がご提案してるのは2つ。事業構想を考える時間に充てていただきたいんです。

今開業されていたとしても、お客様が求めてこられるニーズは絶対に変化していきます。ということは、お店側としてもオーナーとしても、「どういう準備をし直すべきなのか?」「どういうことを今後の顧客ニーズと捉えて新しいサービスを開発しなくちゃいけないのか?」をつらつら考える時間が絶対に必要なんですね。

これをリラックスした状態で考えられる時間に充ててほしいんです。お店の事務室の中では、なかなかいいアイデア出てこないんじゃないかなという気がします。

もう1つです。好きなことに没頭する時間をぜひ作ってください。私も、拙いながらお店の経営をされているオーナーに立て直しのコンサルをさせていただくときに申し上げるのは、「オーナー、1週間の間に2時間、仕事のこと、それぞれのストレスを全部忘れられる時間作ってください。趣味はなんですか?」という話から入っていくんですね。

どうしても売上が下降気味である・利益がなかなか出ない。そういう方……、誰しもそうなんですけど、やはり考えが凝り固まっていくというか、萎縮傾向に入っていきます。それを一度開放したり弛緩をしないと、新しい風だとか新しいアイデアは入ってきません。

なので、調子が悪いと思っていらっしゃる方こそ、今日お帰りになられて、今月中に2×2の合計4時間。まずは月1でもいいです。考える時間を2時間、好きなことに没頭してストレスから開放される時間を2時間、計4時間をぜひ取るようなスケジューリングしてみてください。必ずいい結果が出てくると思います。兆しは必ず出てきます。

これを踏まえて、やはり長続きするオーナーは遊ぶのも上手です。遊びが上手じゃないと、繰り返しになりますけど、顧客のニーズってなかなか拾えません。

逆に、そこを拾えている=顧客目線でのサービスを受け続けている。そうすると「あ、うちにもこういうサービスってあったほうがいいんじゃないかな?」というような効果が必ず出てきます。時間を作っていただきたいというのが、前提のプロローグとしてのお話になります。

開業後3〜4年で見えなくなる、オーナーとしての経営資源

次にいきます。「1.経営資源を知り、活用する 〜お店の財産を掘り起こす〜」です。はい、出てまいりました。経営資源という言葉。ご存じじゃない方いらっしゃいます。大丈夫ですかね。当てさせていただきます。経営資源、なにかありますか?

参加者4:人材ですか?

植竹:ありがとうございます。最初から出ちゃいましたね。ヒトです。次になにがありますか?

参加者5:サービスをするサービス?

植竹:サービス自体。ありがとうございます。それは最後に出てきます。あとでお話しします。ほかになにか思いつかれる方いらっしゃいますか。なにがありますか?

参加者6:お客さん。

植竹:顧客ですね。ありがとうございます。ほかにはどういう言葉が出てくるでしょうか?

参加者7:ノウハウ。

植竹:ノウハウもそうですね。先ほどの方と同じになりますね。

さあ、巡っていきましょう。これも代表的な言葉ばかりです。ヒト、モノ、カネ(時間)、情報、ノウハウ。こんなものを経営資源という言葉で一般的に表されています。

資源というのは減るものです。資本、キャピタルだろうと。例えば「資本金1,000万円。それを活かして1億円の売上をあげるんだ」というような考え方があったりもします。ヒューマンリソースマネジメントじゃなくて、ヒューマンキャピタルマネジメントなんて言葉もちょいちょいありますね。

そういう言葉を、今日はお持ち帰りいただきたいのではないんですね。意外と開業して3年、4年経ってくると、自分自身がオーナーとして持っている経営資源が見えなくなるときがあります。

「私、こんなに実力があったんだ」、その反対で「私って、ここはもう少し、この資源を増やさなきゃいけなかったんだな」。この棚卸しは、今日いい機会なのでやってみてください。細かいやり方はあとで交流会で、もしもご興味があれば、簡単にお話をさせていただきます。

今度は活用レベルですね。知ることと活用することは、ちょっと違います。ヒトの分野で活用するというのは、例えばアルバイトさん、パートタイマーのフルタイムの方、もしくは社員。有期・無期があるんですけど。

そういう人材を抱えていらっしゃる方、オーナーでいらっしゃったとしたら、「その個人個人の得意分野ってなんだろう?」までしっかり追求してくださいね。

「笑顔が出てるのよね」「声が元気だ。声通ってるよね」。例えば居酒屋さん焼き鳥屋さんであれば、「『いらっしゃいませ』という言葉が通っているからいいやつだ」じゃなくて、もっと本人が才能、氷山の一角のまだ下ですよね。水面下で埋もれちゃっているところまで発掘した上で、得意分野を引き出してくださいね。そうなると、経営資源としての活用レベルまで上がってきます。

オーナーだからこそ、積極的に情報収集を

次は、モノに関してですね。これは、私がとても強く推奨していることがあります。定位置管理なんですね。

資料に写真があると思うんですけど。こういったところを、あとで「なんのために定位置管理するのか?」を簡単にご紹介をしてまいります。オカネに関してはもう、あとでくわしくやりますね。あと情報ですね。経営資源の情報。

オーナー、もしくはこれから開業する方で、情報の収集ってなにかルーティンって決まっていますか?

参加者8:とくにない。

植竹:これから開業なさいますか? もうされていますか?

参加者8:しています。

植竹:している。ありがとうございます。情報収集の仕方って、ある程度のご自身でお決めになられたほうがいいんじゃないかなと思うんですね。「私はこういう情報収集の仕方をしてるんだ」「発表しちゃいたい」なんて方いらっしゃいますか? いないと思いました。なので、簡単に私のやっている事例をそのままお伝えします。

まずは、世の中の大きな流れ。世界政治だとか経済だとか、そういったものを僕はネットで収集しています。

今、7社様ほどコンサルをやらせていただいているのですが。私、入り込み型なんですね。実際に現場に行かないと、お伝えすること、ご指導することができない。わからないので、全部飛ぶんですね。なので、正直言って、ここ3年ぐらい休んでいません。休めてないだけなんですけど。

それはなんの自慢でもなくて。情報収集を効率的にやっていかないと、浦島太郎になっちゃうよということです。

私、大きな世の中の流れとか括りはネットなんですけど、一番使ってるのは、……これ固有名詞で言っちゃっていいのかな。テレビ東京さんのビジネスオンデマンド。これ月540円です。税込み540円。これで『ワールドビジネスサテライト』『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』。あとはテレ東さんは日経さんなので、株とかずいぶんやってますよね。

あえて、最新情報は当日の日経とかの電子版で読むんですけど。繰り返し復習としては、前日の夜になにが起こったかを毎朝見たりしています。それも、タブレットでイヤホンすれば電車の中でも見れる。そこで大きな流れをつかんでいます。

私は今……。横浜の山下町が事務所なんですけど、県民ホールという場所の裏手にあるのかな。海から200メートルくらいのところ。山下公園のすぐ隣にあるんですけど。つまり、地元の半径5〜10キロぐらいで起こっている出来事って、どうやって情報を収集するか。私は、地元の新聞を取っています。あとはコミュニティ紙。小さいものがありますよね。

ああいうものは、余裕があれば市役所や、近くに貿易センタービルといってパスポートを取る場所があるので、そこで情報を得たりしています。そういった、半径5〜10キロぐらいのところを半径100メートルぐらいで情報収集するように努めています。

あとは、やはりお店に出るというところですね。フロア、ホールに出ている情報も確実に拾っておきたい。お客様との会話なんていうのも、非常に大きな情報になっています。そのなかで、なにか情報を得たときに、お店にとってプラスになるのかマイナスになるのかを直感で判断できる訓練はぜひしていただきたいと思います。

「秘伝レシピ」を持つべきではない理由

そしてノウハウですよね。商品っていうお話もありましたけど。ちなみに飲食店の方、今日はどれぐらいいらっしゃってますか?

(会場挙手)

植竹:ありがとうございます。レシピってありますか? 調理過程を書いた本など。

参加者9:ありません。

植竹:すべてオーナーがやられるんですか?

参加者9:いえ、シェフが。

植竹:そのシェフが病気になられちゃうとどうなっちゃいますか?

参加者9:シェフはセカンドまでいますので。

植竹:セカンドまで。なにか門外不出みたいなのってあります? 「これはもう誰にも教えないぞ」っていう。

参加者9:いや、それはないです。

植竹:ないですか。逆にあるって方いらっしゃいます? ……なるほど。なければいいんですけど。

とくに私、日本料理の方とちょっとお付き合いがあるんです。今、ANAの国内線の機内食を監修されている、板橋の「よし邑」という料亭があるんですけど。ご存じの方いらっしゃいますかね? そこの総料理長が冨澤さんっていうんですけど、その方にはやっぱり門外不出のものがあるって言うんですね。愛弟子にも教えないとかあるんですよ。

それは僕、やめたほうがいいんじゃないかって話をするんです。

ノウハウで一番教えたくないものって、改良してきた時のプロセスなんですよね。

私、生パスタをちょっとやったことがあるんですね。加水率っていうものがあるんですけど、これって天候や温度によってパーセンテージを変えなきゃいけないんですよ。でもそれは、予測でしかないじゃないですか。だから、記録をとって食べてみるんですね。毎日、1キロぐらい食べてました。

そうすると「あれ? これ、ぷちぷち切れちゃうな」「逆にこれ、弾力がありすぎてゴムみたいだな」などがわかる。そういうものをくり返していくプロセス自体が門外不出であり、レシピとして出た結果ってそんなに大事じゃないと僕は思います。

情報とノウハウというのがくっついて、とても人に対していい効果を表す場合が出てきます。これ、時間があったらお話をしていきたいと思います。