雷雨喘息の恐怖
ハンク・グリーン氏:2016年11月のある暑い日、オーストラリアのメルボルンの街に雷雨が起こりました。
すると突然、何千人もの人たちが息苦しさを感じました。台風による、奇妙な喘息発作が生じたのです。
たった5時間の間に2,000件近くも救急車の緊急要請がされました。最終的には9人が命を落とし、病院は8,500人もの患者の手当てに追われました。一体何が起きたと言うのでしょうか?
ありがたいことに、このような出来事は珍しいケースです。しかしこの現象は以前にも起こったことがあるのです。
これは「雷雨喘息」と呼ばれます。このほかのケースではアメリカ、カナダ、イギリス、イタリアでも、この「雷雨喘息」が生じたことが記録されています。
今お話しした一番最近のケースは、我々が知る限りでも最悪のものです。それまでは、「雷雨喘息」で亡くなった人は1人だけで、一番大きなケースでも、発症したのは数百人にすぎませんでした。
科学者たちも、正確に何が「雷雨喘息」を引き起こすのかをわかっていません。しかし最も可能性がある理由は、嵐が花粉などのアレルギー物質を巻き上げ、その濃度を上げるため、人々はそれを大量に短期間に吸い込んでしまうから、というものです。
そのようなものにアレルギーを持っている人は、花粉やカビを吸い込むことにより、免疫反応が起こり、気道が閉じてしまうため、それにより喘息発作が起こるというわけです。
しかし問題はたくさんのアレルギー物質が巻き上がるということだけではありません。通常、ほとんどの花粉は人の肺に入り込むには大きすぎます。もし万が一、顔面に花粉を浴びてしまったとしても同じことです。
しかし、嵐はそれを変えることができるのです。上昇気流は花粉を巻き上げ、雲の中まで持っていきます。すると雲の中で花粉は水と反応します。すると花粉は広がり、そこから放出される粒子のそれぞれが何百もの微粒子を放出します。
強い風となった下降気流はそれらの微小な花粉の破片を地上に戻し、それを人々が吸い込むことになりますが、さらに細かくなった花粉は肺の奥に入り込んでしまうのです。同様のプロセスは嵐により舞い上がる、極小の真菌の胞子にも起こります。
この現象は「雷雨喘息」と呼ばれますが、喘息持ちの人だけにその危害があるわけではありません。メルボルンの被害者を対象にした最近のアンケートでは、「雷雨喘息」を発症した人のうち40パーセントは、それ以前に喘息を発症したことがなかったのです。