「定時は15時」「休み上限なし」働きやすさを追求し続ける3代目社長の挑戦

井上総合印刷株式会社

kintone hive fukuoka vol.1
に開催

業務の中でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、kintone活用のコツをそれぞれの視点で解説するイベント「kintone hive」。福岡で開催された「kintone hive fukuoka」では、井上総合印刷株式会社の3代目社長、井上憲一郎氏が登壇しました。システム開発に注力するも、数年間はうまくいかなかったという井上氏ですが、ある出会いを契機に状況は改善。一度業務をノートにすべて書き出しkintoneを活用することで、「15時定時」の会社に。従業員の生活をなによりも大事にする井上氏が、業務改善秘話を語りました。

提供:サイボウズ株式会社

システム開発にチャレンジ、しかし…

井上憲一郎氏(以下、井上):こんにちは!

会場:こんにちは。

井上:井上総合印刷、井上憲一郎と申します。朝倉郡筑前町の印刷会社、3代目になります。47歳。

朝倉郡筑前町という電車もかすってるくらいの田舎の印刷会社が、なぜkintoneを導入したのか。この話を、まず1つ目にさせていただきます。続いて、井上総合印刷が、システムを開発するにあたって、こういうところに注意したら、システムがうまく活用できるようになり始めた、というポイントを2つ目にお話しさせていただきます。

そして最後に、井上総合印刷には、3代目がやっている65年の会社という以外にも、いろいろ特徴がございますので、そちらをお話しさせていただきたいと思います。

まず、当社もシステム開発には何回もチャレンジいたしました。地元のシステム会社さん、大手さんからご紹介いただいた会社さんなども含めて、僕が「こうしたい」と思うものを作っていただければ、会社の業務が改善できて、スムーズに仕事が進められるのではないか。僕自身も、なにも心配せずに仕事ができるのではないかということで、システム開発をお願いしたんですけども。

そもそも、システムがあれば、業務改善ができるというわけではなかった。だから、システム開発がうまくいかなかったというのが、ここ数年の流れです。

そうやってシステム開発をお願いしても、なかなかうまくいかない。業務もなかなか改善しない。僕自身もすっきりしない日々が続くなかで、ある本屋さんに立ち寄ったときに出会ったのが、この本です。

ソニックガーデンさんのこちら。この本を、立ち読みでたまたま手にして、パラパラめくっていたら、「これは!」と思ってそのまま買って。

筑紫野のイオンモールだったんですけど、そこで、そのままタリーズに駆け込んで、一気に読んで、1人で泣いてました。「こんな会社があるんだ!」って。こんな働き方をやろうとしている、やろうとしているというか、もう実現している会社があるんだ。これが、2014年の8月。

どうしても、まだシステム開発があれば業務が改善できると思っていましたので。そこで、ソニックガーデンさんにシステム開発をお願いしようということで、すぐ連絡をしました。そこで、藤原さんという方にご対応いただくんですけれども。藤原さん、いろいろ噂は同じように聞くんですけど、システムをなかなか作らない。僕も作ってもらえませんでした。ずーっと。

ときどき遊びに行ったりして、なんとか作ってもらおうと、きっかけを作ろうとしたんですが、なかなか作ってくれない。結局、「井上さん、ITリテラシーが高いから自分で作ったら?」ということまで言われて、kintone Caféに参加することになりました。

kintone Caféで掴んだきっかけ

kintone Caféに行く前には、僕はkintoneでシステムを作るんだということを意気込んで行ったんですけども、結果「あ、これは無理だ」と。諦めました。もう、即。その場で。

(会場笑)

それで、そこでkintone Caféを開催していただいた久米さんと出会う。そこから、システム開発を本格的に始められるかと思ったら、そこからもなかなか進まずに、結局2016年の3月。ソニックガーデンさんと久米さんのご協力でスタートすることになりました。

ちょうど10ヶ月前くらいの、2016年の7月に、kintoneを使った受注管理システムをリリースすることになります。当社の場合は、まだ手書きが減ってきたとか、データの再利用ができるようになったというところが、kintoneを使ったメリットなんですが。今後は、在庫管理であるとか、受注の予測など、もっともっと楽しい使い方を、使いながら作っていこうということを目指しています。

当社の場合は、システム開発をどうやって進めてきたかというポイント。藤原さんが、「アナログで解決できない問題はシステム化できない」ということをおっしゃったように、まずは、社長である僕自身が井上総合印刷の仕事内容を全部洗い出す。

付箋に自分の会社の業務を書き出して、今誰が担当しているのか、それぞれに1日あたりどれくらいの時間がかかっているのかを、まず書き出しました。

そのあと、さらにこれを分解していきます。

まず、会社の仕事を詰めていくために、また付箋とノートでそれぞれのポジションでの役割を書き出して。これさえできればとりあえず印刷物ができあがる、ということを書き出しました。だいたい100項目書き出しました。

結局、システム開発にはこういう準備が必要だということを、藤原さんは教えてくれていたということです。これができて初めて、井上総合印刷はkintoneを使い始めることになりました。

田舎の小さな会社がkintoneを使い始めた開発のきっかけは、なかなか導入に踏み切れないクライアントさんや会社さんでも、参考にしていただけるのかと。社内の問題点のなにかしら一部分でもkintoneを使ってシステム開発をスタートすれば、業務改善につながっていくということ。そういうところをお伝えできればと思っております。

(口が)すっごい乾きますねぇ。

(会場笑)

会社は15時に閉める

最後、井上総合印刷はどんな会社か、どういうことをやっているのか、ということをまとめてみました。

当社は、僕以外の在籍10名の方は全員女性です。1名だけ社員がいるんですが、彼女も在宅のデザイナーで、ほかの方はみなさんパート契約です。印刷業界は未経験。そういった環境で仕事をやっています。

そのなかで、社長である僕自身がやるべき仕事というのはなんなのか。営業や、デザイン、企画といったものは、もちろん僕の仕事ではあるんですけども、それ以上に僕がここ数年力を入れてきたことは、みんなが働きやすい環境を作っていくこと。とにかく、そこを中心に経営をやってきました。

その結果、2016年の8月から、会社は15時で閉めようよと。みんなお子さんの迎えもあるし、家のこともある。会社の仕事をやっていただくという役割も彼女たちにはあるんですけども、それ以外にも、母親であり、妻であり、娘でもあるし、PTAの役員かもしれない。それ以前に、1人の女性であるということ。

そういったものを、今以上に楽しめるような生き方というか。大げさなことは言えないんですけど、今よりももっと楽になっていただけるような時間を作り出すための場所として、会社を活用していただけたらなと。そういうふうに考えてやったのが、15時にもう会社を閉めてしまおうということでした。

そして、休み放題です。お子さんが熱を出したときはもちろん、学校の行事がある、病院に連れて行く、実家に帰りたいとか。あれですよ、実家に帰りたいのは、お休みを使ってですよ?(笑)。

(会場笑)

そこまで深刻なお悩みはちょっと受けられないんですけども(笑)。今はお子さんと一緒に出勤していただいたり。春休みとか預かり保育がないとき、もしくはお子さんが居残りをしたくないと言ったときは、午前中に保育園だけ行って、学校や保育園から、会社に帰ってくる子どもたちもいる。「ただいま!」って言って、帰ってくる。それを、みんなが、「おかえり!」って言って、迎えてくれている。僕が今、会社に行っていて好きな時間の1つです。

先ほど言ったように、2人在籍しているデザイナーの方は、今、在宅で勤務をしていただいているとか。年末年始12連休を取ってしまったりとか。これは失敗でした。休み過ぎました(笑)。

(会場笑)

「井上総合印刷で働いてるの? いいね!」と言われる会社に

今言ったような働き方を実現させるために必要なことは何なのか、今までと同じことばかりやっていても、なかなか実現できない。普通に考えたら、15時で閉まるなんて、銀行の窓口でさえ時間を延長してるような状態のなかで、当社みたいな会社が15時に会社を閉める。みなさん、本当に心配していただきます。

お客さんが、「大丈夫!? この前平日に行ったら閉まっとったよ」ということも言われるんですけど(笑)。でも、やっぱり、どうやったらみんなが働きやすい環境にできるかという観点でやっていくと、そこは僕のなかでは譲れない。

それを実現させるために道具として、ITを活用しています。kintoneを使って情報を共有したり、Googleカレンダーで僕のプライベートな予定以外はみんなと共有しています。Chatworkはコールセンターさんと僕とのやりとり、boxを使って、遠方のお客様や頻繁に校正をやりとりする仕事の印刷原稿のやり取りをしているとか。Remottyっていう、ソニックガーデンさんのチャットシステムを使って、電話の伝言をすべてそこで共有している。あと、Trelloを使って進捗管理をし始めました。

最終的には、今、藤原さんと久米さんともお話をさせていただいているんですけれども、こういった今使っているいろいろなもののなかで、kintoneに統合できるものは統合してみよう。ただし、kintoneではないほかのシステムでやったほうがいいものは、そっちで継続してやっていこうと。あくまでも、「みんなが働きやすい」という観点から、ITのシステム、アプリを柔軟に活用していきたいと思っています。

今までになかった価値観というか、今までの「こうじゃないといけないんじゃないか」とか「印刷会社だからこうしないといけない」という考え方を超えていって、当社で働いていることが、まずはみなさんの家庭のなかで「いい会社に行けてよかったね」と言ってくれるように、まずはそこを目指していく。

それが、地域の噂になり、「あなた井上総合印刷で働いてるの? いいね!」。そういう会社にできれば、社長として、みなさんと一緒に働かせていただいている、当社に来ていただいているみなさんに対する僕自身の役割が1つ果たせることになるのかなと思っています。

当社は、今年からタグラインを新しく決めて、ロゴマークも変えてやっています。「BEYOND THE PRINTING」。印刷というものを超えていく、BEYONDしていくということ。

それは、イコール僕たち自身に過去から、もしくは今までの考え方から、今までの凝り固まった価値観から、1つ抜け出していこうということ。「ちょっと先に行ってみない?」「先には綺麗な世界が待ってるかもしれない」と。

そういったところを、井上総合印刷という場所を通して、見に行きましょうと。お客さんも一緒に。まずは、当社で働いている方たちと一緒に、その世界を見ていきたいなと思っています。

これで、最後ですね。「BEYOND THE PRINTING」、井上総合印刷の井上でした。本日は、どうもありがとうございました。

(会場拍手)

より自然な働き方へ

伊佐政隆氏(以下、伊佐):ありがとうございました。

井上:ありがとうございます。

伊佐:すごく自然な働き方をされてますよね?

井上:そう捉えていただくと嬉しいですね。

伊佐:やっぱり普段の生活があって「こういう時間帯で働きたいな」とか「お子さんが休みだから、一緒に出勤するよね」とか。すごく自然。

実は私たちも、「できるだけそういう働き方にしたいよね」ということで、最近また学校が始まったのでなくなっちゃいましたけど、春休みは子連れ出勤と言って。とはいえ、9時に連れてくるのはやっぱ大変なんですね。電車が混んでるので。なので、10時とか10時半に子連れ出勤して。そのまま子どもたちは遊んで、というのは大変なので、見てもらえる人を複数人でお金を出し合って呼んで、ということをやったり。そういう取り組みはしているんですよね。

でも、自然に働こうと思ったら、やっぱり井上さんのおっしゃった通りで、今まで通りの働き方で常識に捉われていると、なかなかそうはいかないですもんね。

ところで、プロセスを付箋に書いてやっていたじゃないですか。あれは具体的に、どんなことが書いてあるんですか?

井上:細かいことでは、印刷物として納品する前に、まずお客さんから受注をする。注文を受ける。その受注のときに、お客様から聞く項目とか、自分でやる項目とか、そういったところ。受注受付から始まって、入稿、制作、校正作業という、お客様に出すための原稿がきちんとできているかみたいな校正作業。あとは、印刷、加工、納品。それから、ファイリングとか。

伊佐:それは、付箋に「ここで校正作業」とか書くんですか? それとも、もう少し細かく書くんですか?

井上:まずは、校正という役割1つを付箋1枚にタイトルとして書きます。まだマニュアルとか手順まではいかずに、単純にどういうことをやるのかを、その役割の下に。それを各ポジションでやっていくと、結果、組織全体を一度見直すことになります。

伊佐:みんながなにをやっているのかというのを、丁寧に聞いてみようと。書いてみようと思っても、案外わからないものですね。

井上:わからないです。

伊佐:みなさんに聞きながらですよね?

井上:いや、基本的には、みんなに来てもらう前はあの業務をほとんど1人でやってたんですよね。そこで書き出すんですけども。書き出すという作業が、もう吐き気がするというか。やりたくないんですよね。面倒くさいとか、そういったところが、やはり出て来て。ただ、やはり現実を見ると、やらないとみんなにきちんと仕事をやっていきましょうという話ができないので。だから、やったという。

でも、やったらものすごくすっきりしました。頭の中だけにあったものが、全部書き出されたので、すごくすっきりした。だからこそ、見える課題も、また出てきました。

伊佐:なるほど。すごくいいノウハウを共有いただいたと思います。本当にありがとうございました。

井上:ありがとうございました!

(会場拍手)

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