2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
e-PORT2.0(北九州市IoT推進ラボ)を支える情報共有基盤“kintone”(全1記事)
提供:サイボウズ株式会社
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糸川郁己氏(以下、糸川):ご紹介に預かりました、九州ヒューマンメディア創造センターの糸川と申します。
こういう登壇の機会はあまりないのですが、アイデアソンやハッカソンのファシリテーションを時々務めさせていただいています。
そういうイベントの最後には参加者のみなさんに発表していただくんですが、だいたいこういうものは後になるほうが辛いんですよ(笑)。先に出てきた事例とか、「あ、カブってる」ということがあるので、そういうものに私が参加する場合は、一番最初に手を上げるほうなんです。ですが今日は、なんと4番目ということで、4番バッターって辛いよね、と思いながら来ています(笑)。
今日は、「e-PORT2.0(北九州市IoT推進ラボ)を支える情報共有基盤"kintone"」、というお話をさせていただきます。まず、今お話しした中で知らない単語がたくさんあると思います。ですので、まずはそのあたりのご説明をさせていただきます。前半、堅い話が続きますが、ご了承ください。
まず、九州ヒューマンメディア創造センターというのを知っている方は、拍手していただいけますか?
(会場拍手)
おぉ、意外にいる! じゃあ、北九州を知っている人、拍手していただけますか?
(会場拍手)
お! ただ、これは拍手が欲しいからやっているんじゃないんですよ。
(会場笑)
実は先ほどもご紹介いただいた通り、私は札幌で生まれ育って、新卒の会社は仙台で入りました。その後ご縁があって北九州市に来たんですが、赴任することになるまで、北九州市のことは、存在自体知りませんでした。
この視点は、実は地域おこしにとって大事なんです。いわゆる、ヨソモノ視点というやつです。「自分は知っている」と思ってしまうことそのものが危険ということも、けっこうあります。今、みなさんに笑っていただきましたが、それを引き出せただけで、実は満足です(笑)。
本題に戻ります。九州ヒューマンメディア創造センターは北九州市の外郭団体で、一言で言うと、地域の情報産業振興やICT利活用を推進する財団です。北九州の外郭団体とは言いつつも私自身は民間人ですので、行政の気に障るような表現があるかもしれませんが、そこはご了承ください。
e-PORT2.0とは何か? 実はこの活動、北九州市が2002年から取り組んでいます。その結果として、北九州市には、西日本最大級のデータセンターが集積しています。
とはいえ、もともと、我々がミッションとして持っている地域の情報産業の発展であったり、ICT利活用の推進という部分に、どれくらい寄与できたのか。やはりデータセンターだけ作っていても、地域のIT利活用はなかなか進まない。
最近は地方創生の流れであったり、誰でもスマホを持っているという環境の変化が生まれて、構想自体を見直し、「北九州e-PORT構想2.0」として2015年から活動を再スタートしています。
次の絵はe-PORT2.0のスキームを示していますが、少しわかりにくいかと思います。
ここには「地域課題をビジネス創出により解決するプラットフォーム」と書いてあります。これは平たく言うと、技術シーズを持っている事業者さんや課題をお持ちの地域の方々、そして我々の産学官民金の枠組みであるe-PORTパートナーのみなさまと一緒に、事業化に結びつけていくという取り組みをやっています。
ちなみに、e-PORTパートナーにはこういった方々が参加していただいております。
産学官民金、さまざまな団体に参加いただいているのが我々の特色と考えています。例えば、社会保険労務士であったり、金融機関も参加しているので、単に、IT事業者の方々たちだけと一緒に活動しているときよりも幅広いコンソーシアムが組めたり、知識・知恵が折り重なって、ビジネスにつなげていくことができます。
その中から、今進めているプロジェクトとして、ここに書いてある4つのプロジェクトがあります。
この説明をするとこれだけで2時間くらい話してしまいますので、今日は割愛させていただきます。
2015年から様々な活動に取り組んでいく中で、このe-PORT2.0の仕組みが「北九州市IoT推進ラボ」として選定されました。
このIoT推進ラボをご存知の方、どれくらいいらっしゃいますか? 手を挙げていただけますか?
(会場挙手)
ほとんど知られていないですね。実は、国が進めているIoT推進ラボというものがありまして、これはIoTという単語を流行言葉に終わらせないために、加速させるための取り組みです。
ただ、どうしても地域に広げるためには各地方自治体としての取り組みが必要となるため、「地方版IoT推進ラボ」として公募をかけました。その公募に対して、北九州市もこのe-PORT2.0の取組みそのものを応募し、無事選定されました。
ここまでは難しい話といいますか、うちの財団では幹部レベルがお話しさせていただく内容です。では、なぜ今日、私がここにいるかと言うと、もっと現場の話をしたいと思っております。
私たちは地域産業振興のためにいろいろ動いてはいますが、実際の組織運営では、やはり課題が山積みになっています。一例として、私の業務内容をご紹介します。打ち合わせが、1日平均2回くらい。事業コーディネートは年間40件やったり。名刺交換数だけで言うと600件など、その他諸々です。
これを多いと見るか、少ないと見るか。「もっと働け」という感じかもしれませんが(笑)、なんだかんだ言ってタフな仕事です。こういうことをやっていると、やはりリソースは不足していきます。例えば、同僚10人くらいで動いているんですが、いろいろ忙しく動かれているので、なかなか在席のタイミングが合わずすれ違ってしまいます。
さらに言うと、職員はほぼ行政・企業からの出向者で、異動のリスクがあります。異動のリスクというのは具体的に言うと、情報の引き継ぎが行われないということですね。
つまり、どんなに多くの人と会って、どんなに多くの事業を生み出しても、短期間での引き継ぎですので、事業から継続性が損なわれる、という話です。行政の場合、だいたい1週間前に内示が出て、異動しなければいけません。その間に引き継いでくださいと。これは、まだ良いほうだと思っています。
民間の出向者は、前任者と契約期間が被らない状況で引き継がなければならない。そんな状況の中で、事業の状況だけではなく、担当者とのやり取りや相性といった過去の悲喜こもごもを引き継ぐのは、基本的に無理です。現実的には不可能なんです。
ですから、やはり情報の蓄積だけはしておかないとダメですよね、ということで、我々はkintoneを使っています。
もう1点の視点がこちら。「地域課題は事務所で起こっているんじゃない、街の中で起きているんだ!」。
(会場笑)
……失笑ですね。これは(笑)。まあ、だいぶ古いですよね(笑)。
ですが、これはけっこう大事な話です。我々のように地域課題を解決していこうと言っているので、事務所の中で座っていればいいという話ではありません。やはり地域の中に溶け込んで、どの様な課題があるかを見据えて、どういった事業者さんが一緒にやっているのか、ちゃんと見ていかないとできません。
そんなときに、事務所からしかアクセスできないファイルサーバーに情報を書き込んで、とか、そういうことはやってられません。なので、クラウドを使いましょうと。先ほど話も合わせて、やはりここもkintoneでやっています。
ここまでが、我々がなぜkintoneを使っているかというかんたんな理由です。では、どういうかたちで活用しているのか、代表的な部分だけさせていただきます。
実はこのアプリ、なかなか日々の業務が難しいので、本日会場にいらっしゃっているインフォメックスさんにご相談して、組み立てていただきました。
非常に優秀な方々で、大変助かりました。ということで、ここで改めてお礼を申し上げます。奥田(健寛)さん、これくらいでいいですかね?(笑)。これを言っておくことによって、また何かいいことがあるんじゃないかと思っております(笑)。
この中で、とくに素晴らしいと思っているのは、やはり関連するレポート情報、いわゆる議事録なんかを書く部分です。ここに、関連するイベントやコンソーシアム、事業者、担当者へのリンクを登録可能にしています。
これによって何ができるかというと、次ですね。
事業者情報を見たときに、その人と、事業者との過去の関わりが追跡可能になっています。先ほども申し上げましたが、我々の職場は非常に異動が多い。3年くらいで入れ替わってしまいます。
そんな状態で新任の方が来たとき、事業者さんとお会いしても、過去に何があったのかわからないですよね。そこまで書いている引き継ぎ書はなかなかないので、それらの情報を普段から入れておきます。そして、それを追跡可能にしておく。その結果、事業者さんとお会いする際に気を付けねばならないことなどもわかります。
利用例としては以上なんですが、導入後の課題。ここは今日みなさんもおっしゃっていました。1点目は既存サービス(サーバー)との住み分け。2点目は「見られない」「入力されない」という問題ですね。これは、みなさんも言っていたので、もういいかなと思っているんですけど(笑)、一応お話させていただきます。
既存サービス(サーバー)との住み分けのところでは、desknet'sとかkintoneとか、boxファイルサーバー。やはり「ファイルサーバーが残っちゃってます」という問題です。
なので、すべてを一度に変更にするのではなく、変更できるところから少しずつやっていけばいいですよ、と。先ほども言われていましたが、PDCAを回していけばいいのかなと思っているので、あまり無理しないことですよね。
あとは、見られない、入力されないということがありました。メンバーへのヒアリングを実施した結果、「他人が入力したことがわかりません」と。なので、スペースの通知を活用したり、アプリに通知設定を追加しました。こうすることによって、レコードが入力されたら、そのままメールが来るようになります。
なんだかんだ言って、まだみなさんメールベースで仕事されている方が多いので、「(メールが)来たら見るようにしてください」という導線を作りました。
他には、入力するレベル感と入力規則がわからない。とくにお堅いところだと、入力規則がないと入力できないという人はけっこういます。なので、「いいから入れてください。10人くらいしかいないところに、入力規則なんて本当に必要なんですか? 気づいたら修正すればいいじゃないですか」ということを言っています。
ただし、「こういうときは入れてくださいよ」というところだけは作っておきます。例えば、パートナーさんが入会された際の訪問の時などです。そういった、「ここの情報だけは押さえておいてください」というところだけお願いして、ほかは「できれば入れてください」レベルで進めています。
入力規則を定めないというのは、先ほども言った通り、「見て習え」なんです。見て習えとすると、前後のレコードを見るようになったりします。それが面倒くさいという人は、先ほどの必須入力のところだけをやってください、という話になってしまうんですが、そういうことをやっています。
幸いにして(?)この春も異動者がいました。ですので、「うちの財団ではこういうふうになっているんですよ」ということをヒヨコに対して刷り込むわけです(笑)。
そうすると、文化として根付いていくと。実はまだ少数派なんですが、刷り込むことで徐々に増やしていくということを地道にやっています。
導入後の効果というところでは、機動性の向上、人への依存の低下というところがあります。
先ほどの北九州市IoT推進ラボの実質的な動きは我々がやっていますが、市の担当部署もあるので、そういったところとの情報共有にも、グループウェアが非常に役立ちました。
情報の最新化、成果の見える化促進においては、イベントの参加者が徐々に増えているのか、減っているのか。あるいは、パートナーの中からどれくらい来ているのか、というクロス集計ができたりするので、こういったところが非常に便利だと思っています。
あとは、扱う情報の種類をかんたんに増やせるというところです。過去の事例としては、持ち込み相談リストをエクセルからアプリに作り変えたこともあります。
今後の展開としては、3年目という活動の節目を迎えて、来年度からまた違う動き、構想の見直しがある程度必要です。フェーズ2に移るときには何かしらの組織の変更なども出てきますので、現時点ではそこまで大きく変えないで、徐々にできることをやっていければいいかな、と思っています。
しかし業務量の増大は免れないので、より効率的に行える仕組みづくりは必要ですので、この点については今後も取り組んでいきたいと考えております。
ということで、ご清聴ありがとうございました。話は戻りますが、みなさまも、北九州発、地域課題解決型ビジネス創出プラットフォームに参加しませんか?
e-PORT2.0について、もう少し詳しい話を聞きたい方は、6月20日21日に、福岡国際展示場でやる「IoT Japan九州2017」に、北九州市IoT推進ラボとして出展しますので、そちらもご覧いただければ嬉しいです。
(会場拍手)
伊佐政隆氏(以下、伊佐):ありがとうございました。引き継ぎ問題、やっぱややこしいですねぇ。
糸川:ややこしいですね。
伊佐:引き継ぎではありませんが、4月になると、やはり新しい方が入ってきたり、部署異動がありますよね。これもほとんど同じ問題だと思って聞いてたんですが、そうですよね?
引き継ぎはないかもしれないですが、異動があったり新しいメンバーが入ってきたときに、過去、誰と会って、どんな話をしたかということが伝われば、すごく良いですよね。教える手間も省けます。
糸川:そうですね、とりあえず見てくださいと言えるものがあると、かなり楽です。
伊佐:少し言葉は強くなりがちですけど、「見て習え」というお話。これも1つの真理なのかなと思いました。みなさん、実際やっていますか? 「前のを見てくださいよ」「ほかの人もこうやって入れていますよ」とか。
糸川:実際は、見て習えをやらざるを得ないという感じなんです。やはりみなさん席にいなかったりします。しかも、電話だと打ち合わせの最中だったりするので、そうせざるを得ないというのが、正直なところです。
伊佐:ことあるごとに、「それkintoneの中に入ってますよ」。このコミュニケーションが定着してくると、当たり前になっていきそうですね。
糸川:最初はウザがられますけどね(笑)。
伊佐:コツコツやるしかないですよね(笑)。素晴らしいです。ありがとうございました。
糸川:ありがとうございます。
(会場拍手)
サイボウズ株式会社
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