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デジタル時代だからこその コミュニティマーケティングのススメ。~JAWS-UGにおける実践例~(全3記事)

「飲み会は割り勘にせよ」 マーケティングのプロが語る、良質なコミュニティづくりの3箇条

AWSのマーケティング担当であり、そのコミュニティ「JAWS-UG」の運営に携わるアマゾンデータサービスジャパン・小島英揮氏が、企業のマーケティング活動におけるコミュニティ作りの有用性について語ったセッション。小島氏は、コミュニティのリーダー探しや持続するコミュニティに必要な2つの条件を紹介しました。(EVENT MARKETING SUMMIT より)

コミュニティを循環させるコツ

小島英揮氏:そもそもコミュニティは、どううまく回るものなのでしょうか。ここをおさらいです。皆さんも実際、あーそうだな、と思っているところあるかもしれません。ちょっといくつか言語化してみました。

すごくわかりやすいところでいくと、同胞同士だから、同じ立場だから集まりやすい。これは違う考えの人とか、なかなか場が持たないのですが、同じものが好きだったり、同じ考え方を持ったりするので場が成り立つ。

「Peer Talk」と書いていますが、対等の立場の人から色々言われるとちゃんと話が聞けるんですよね。で、そこから学べます。リスペクトも出来る。上から言われると、同じことでも「お前に言われたくない」とか反発してしまいます。同じ立場、同じレベルの人から言われたことはすごく耳に入ってきます。マーケティングチャンネルとして非常に良いです。

もし、コミュニティの中の人が面白い製品やサービスについて話すと、相手は聞くようになる。もうひとつ。コンテンツを考えてもコミュニティは非常に良いです。コミュニティ自体がコンテンツのジェネレータになり、エクスチェンジャーになり、アーカイバーになります。

アマゾンの例でいくと、例えばこんな感じです。

新しいサービスが使えるようになりましたよ、とポンと情報を出す。すると誰かがそれを使ってみるんです。結果をブログにアップしたりします。我々が何もしなくても、コンテンツが出来上がるんです。その情報を勉強会やライトニングトークで発表することで交換されます。

交換するだけでなく、今のデジタル時代が非常に良いのは、デジタルでその情報をつくっているので、アップすればどんどん広がっていくんです。サーチャブルだし、伝播性が非常に早い。ひとつの情報がどんどん拡散していくわけです。

JAWS-UGで起こっていることはこれと全く同じで、JAWS-UGというのはAWSのサービスに関するコンテンツを生成して、交換して、保存する、という機能をコミュニティがどんどん拡大しているわけです。非常に強力、マーケティングに良いんじゃないかと思います。

最初にすべきはリーダー探し

では、このコミュニティをどうやって成長させていくのか? これをどうやってつくっていくか? 農業に非常に近い。さっき、(前のセッションの方が)ハンター側からハーベスト、育てるという話をしていましたが、非常に似ています。お金で買ってきてすぐにコミュニティはつくれないですよね、残念ながら。育てるという観点が必要です。

どういう風にやるか。まずは種を見つけなければいけません。コミュニティで言うと、適切なリーダーを見つけるということが種を探すという作業になります。どんな人がいいかというと、例えば新しいことや情報、特にテクノロジー界隈に貧欲な人、そしてそれを人に上手に教えられる人、教えることが好きな人、これがすごく大事です。話すだけではなく、相手の話が聞ける人。これが大事です。

技術系のコミュニティをたくさん見てきましたが、見たところによると技術的にとんがっている人がリーダーやったりコミュニティやったりするとなかなか長続きしません。でも、コミュニティは技術的にとんがっている人がなりがちなんです。そういう人より、飲み会の手配をしたり、会場セットしたり、ファシリテート出来る人のほうがコミュニティのマネージメントは向いています。

もっと言うと、両方できるとすごくいい。どちらかの能力を取れ、と言われたら我々はファシリテートが上手くできる人を選ぶように努力しています。そのほうが良い種だからです。そういう人は他のコミュニティですでに活躍していたりします。そういう人を見つけるのは簡単ですね。だけど、たまたま今までコミュニティに接点がないだけで、いったんこういう役割に入るとピタッとはまる人がよくいます。こういう人を探すのがすごく大事です。

今45箇所JAWSのコミュニティがあるという話をしましたが、上手くいっているところは初期にこれが非常にうまくいっている。これが出来ないと、その後のリカバリーが難しいです。一番最初にJAWSというコミュニティをつくるときに、東京で、私が何をやったかというと、当時もアマゾンについていろいろ語るmixiの会とか。mixi、当時はコミュニティだったんです。ゲームの会社じゃなかった。

で、そこにEC2ユーザー会とかがあって、そういうところに行ってみるとか。すでに我々の製品をお使いになっているお客様とそこで話に行ったりとか。それから色んな技術コミュニティ、JAVAとかPHPとかの会合に行ってクラウドに興味がある人と話をしてみるとか。その中で、先ほども言った技術的にも明るくて、人と話すのも大丈夫でファシリテートも出来るような人を一生懸命探しました。

リクルートしてきて、一か所に集めます。こういう風にコミュニティをつくりたい、と話をしました。器があると、皆も助かりますよね。一人で情報集めていたのが何倍にもなるし、拡散するのですごくいいじゃないですか、あーいいね! ってことでそのまま盛り上がりました。当時、渋谷にあったアマゾンのオフィスでミーティングをやって、そのノリで居酒屋に行って話したり。大事です。居酒屋も割り勘でやったりしましたが、これも大事です。

お金を出してしまうと難しいことになるからです。コミュニティ活動すべてにお金がついてくる、ベンダーがサポートするものだ、とお金に換算されてしまいます。こうすると、大体難しいことになります。サポートはするんですが、行動にお金をつけてしまうと難しいことになるので、こういう時は割り勘にするのが結構大事です。逆に、割り勘なら行かない、と言う人はあまり芽が無いと思ってよいでしょう。

フォロワーがいてこそ、リーダーはリーダーになれる

二番目。リーダーが決まりました。次にやらないといけないのは、その人をリーダーにしなくてはいけないんです。リーダーになるためにはフォロワーが必要です。このTEDのプレゼン見たことある人います?

「How to start a movement」社会運動の話です。ちょっと見てみましょう。これはTEDで紹介された非常に面白いプレゼンなのですが、リーダーというのは初めのフォロワーが付いた時に初めてリーダーになるということなんです。あとでURLをお教えするので是非見て頂きたいんですが、どんな動画がこの後流れるかというと、一人のお兄ちゃんが公園で踊り出します。変なお兄ちゃんなんですよ。

だけど、そのうちですね、一人の男性が出てきて真似して踊りだすんです。そうするとフォローするっていう流れが出来て、みんなが集まってきておんなじ踊りをするんです。このムーブメントを誰が作ったかというと、初めに踊っていた人ではなく、一番初めのフォロワーなんです。この人がリーダーで、僕はフォローするよ、という意思表示が出来たのでそういうムーブメントが出来たんです。

自動的にそれが出来る場合はいいのですが、なかなかできないのでその場をどうやって生成するかがキーです。リーダーとして皆さんがいいな、と選んだ人がいたとしても、その人達がリーダーになる場がなければなりません。で、勉強会や懇親会。勉強会と懇親会は似ているけど全然違います。勉強会はどちらかというと一対Nになってしまいます。こちら側とこちら側の露出が全然違います。

なので、コミュニティをつくるときは必ず、勉強会や講義の後に懇親会をやって、お互いがPeerで話せる場をつくるようにしています。そうしないと関係が上手くならないんです。お互いを知ることによって、講師の人がロックスターみたいになっていったりとか。懇親会で話してみたらすごく面白かった、その人が次に話す番になったり、とこういう風になっていきます。

ソーシャルがフォロワーをつくりやすい土壌をつくった

更にソーシャルの場です。デジタル時代の恩恵。ここで起きたこと、セッションの内容がUstreamやYoutubeで配信される、これが非常に大事です。離れていてもそれを体験することが出来るので、次に行ってみようという気になりますし、何よりそこで起こったことがアーカイブされていると後々人が集まるときにいいです。これをやる時、イベントとデジタルがすごく大事です。

1990年代、 2000年の初め、コミュニティの真似ごとに色々参加していた時は、連絡手段はもっぱらメーリングリストです。メーリングリスト、参加したことある人? すごい閉鎖的じゃないですか? 大きなメーリングリストはウェブで検索できたりしますけど、基本的には中に入らないと何のコミュニケーションをしているのか中に入らないとさっぱりわからないんです。今は(Webに)簡単にポストできる仕組みがあるので、ここで話したこととか皆がすぐに知ることが出来る環境があります。しかもお金が要らないです。そしてイベントの運営も大きく変わりました。

なぜかというと、申込みサイトを立てて、受付をするって、誰がそのサイトを用意するの? メールでやるの? とかちょっと前までは気が狂うような作業でした。今なら、例えばイベントレジストさんを使えば、単独のイベントでよければ無償で使えたりするので、非常に負担が軽いです。こういうのがコミュニティ活動を非常にやりやすくさせています。

少なくとも10年、20年前を見るともう雲泥の差です。やらない理由がないくらい環境が揃っています。これは踊っている人に人が付いてくる、ってやつですが、皆さんがつくったコミュニティのためにいろんな人が付いてくるという構図が出来るわけです。種を植える。そしてフォロワーは水をあげる、みたいな感じでした。

持続するコミュニティに必要な2つの条件

三つ目、ちゃんと世話をし続ける。完全に農業です。集まる場の継続。今回のこのイベント1回目ですよね。これが10回目くらいまで行くとかなりいいな、という感じになる。なぜかというと、1回目、2回目って出来ちゃうんです。3回目、4回目、5回目、これを拡大しながらやっていくというのがすごく大事です。

農業もそうですよね。ひとつの種からたくさんの株ができて、翌年の収穫でこう、もっと大きくしたい。これをやるのがすごく大事です。それをするために何が必要かというと、二つの相反するテーマがあります。ひとつは、「あぁ、あんな人になりたいな」とか「あの人すごいな」というヒーローがコミュニティの中にいると非常に良い。

「ああいう人になりたいな」と言っている人をワナビー(wannabe)と呼んでいるんですが。これがコミュニティに来るモチベーションになるんです。一方、コミュニティのヒーローというのは、内輪ウケの象徴のようなものです。行き過ぎると誰もついていけない世界に行ってしまう。そうすると、そのコミュニティはどんどん閉鎖的になる。すると、新しい人が入ってきません。

趣味の世界ならそれでいいかもしれません。しかし、皆さんがマーケティングツールとしてコミュニティを考えた時に、内輪的過ぎるのはあまりよくないですよね。なぜかというと、コミュニティから外にインフルエンスしないと意味がない。どんどんバリアが高くなってはいけない。

ということで、どうやったらそのバリアを下げられるかを考えます。もちろん、優れたコミュニティリーダーであれば自分で考えて自分でやってくれます。しかし、それを気が付かなかったり、知らなかったりする人がたくさんいるので、それをどうやって皆さんのほうでファシリテートするかが大事です。皆さんが主導するのではなくファシリテートです。

JAWSでよくやっているのは玄人禁止、初心者縛りの勉強会。とにかくハンズオンとか、女子会。そればかりだと濃い人が集まらなくなるので、あるイベントはテーマ絞りでどれくらいギークかを競うとか。テーマ性を与えます。今日はデータベース縛りです、とか。そういう人に集まってきてもらうとか。あとは業界でもいいです。スタートアップの人縛りです、とか。そんな感じで話をして、深いテーマにも対応できるし、幅の広さも担保するようなことをやっています。

この二つを考えていないと、途中まで上手くいっていたのに萎んでしまう、というのはどちらかが欠けています。人が入りやすいんだけど、なかなかヒーローが生まれないのも長続きしない。ヒーローは生まれているんだけど、新しい人が入ってこない、というのも長続きしない。

幹事がラクできる飲み会「AWS-HUB」

この二つを上手く組み合わせるのが非常に重要です。AWSのコミュニティの中で、自然発生的に生まれた仕組みにAWS-HUBがあります。これがすごく良く出来ているので紹介したいと思います。ちなみにこれが生まれたのは大阪のJAWSコミュニティです。AWS-HUBとは何かというと、皆さんHUBっていう飲み屋知っていますか?

キャッシュオンデリバリー、パブっぽい飲み屋ありますよね。例えば、勉強会は結局場所を確保して、アナウンスをして、懇親会の場所を確保して。パワーがかかるんです。懇親会手配したことがある人は、ドタキャンに泣かされたことがある人が結構いるんじゃないかと思います。幹事は大変です。昔より遙かにやりやすくなったとはいえ、大変なんです。

なので、もっとカジュアルに集まれるように。大変なので回数が限られてしまうので。集まるのは月に一回とか開催できれば、かなり優秀なほうです。もっと集まって話をしたいよね、というのが大阪の人達の中にあり、今はこれ全国に広がりつつありますが、AWS-HUB。簡単です。Facebookとかツイッターで、何時から何時、どこどこのHUBにいます、以上。これです。HUBって良いんですよ。キャッシュオンデリバリーなので幹事がいらないんです。

これが本当に良くて、会計するっていうのがすごく苦痛なんですが、自分で勝手にお酒買ってきて集まる。すごく楽です。AWSが好きな人が集まっているわけなので、集まれば自然にその話になるんです。ものすごく敷居も低いし、フレンドリーだし、いつ来ていつ帰ってもいい。もちろん、やります!って言った人はその時間にいなくはいけませんが、すごくハードルが低いです。こういうのもやり方のひとつですね。HUBが一番いいのかはわかりませんが、大体飲みながら話すのが好きな人が多いので、こういう場が生きてくるのではないかな、と思っています。

担当者を明確にする

種を見つけて、水をあげて、育てていく、という話をしましたが、お世話係が必要です。うちの会社だと、立ち上げは僕がやっていました。2010年頃は玉川というAWSの初代のエバンジェリストです。今は技術のトップを日本でやっています。三代目は堀内というテクノロジーのエバンジェリストがいますが、常に誰がコミュニティをケアしているのか、責任を明確にしていました、顔を。これをしないと誰に話したらいいかわからなくなる。

コミュニティって立ち位置が難しいので、窓口がちゃんとわからないと困る、そしてその人がこっちのことをわかっていないと困る。複数の窓口があると大体上手く行きません。このようにはっきりとした運営体制をつくります。これはさっき冒頭で言った、キャッシュアウトは発生しないけれども、時間と人のコストはかかりますよ、ということです。

うちだとここはエバンジェリストという職種の人がやることになっています。皆さんの会社でもそういう人がいるかもしれないし、別にそのタイトルがついていなくてもいいんです。僕はマーケティングマネージャーでやっていましたけれども、エバンジェリストってこうわかりやすいですね。ちなみに我々も体制を強化しておりまして、今新しい方を採用中で御座います。興味ある方は後でこっそりと教えてください。何しに来たんだって感じですね(笑)。採用は大事です。

(会場笑)

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