計画的偶発性理論

田中研之輔氏(以下、田中):ほかどうぞ。どうですか?

(会場挙手)

田中:はい。大きな声で。

質問者7:先ほど、橋本さんが「まさか自分が起業するとは思っていなかった」っておっしゃっていて。スドケンさんは、ちょっと言葉は悪いんですけど、(言葉を)お借りすると、ちゃらんぽらんだったと。そのまま就活をされていたと思うんですけども。

就活をする際に、自分の今後のキャリアをデザインしながら、就活されていましたか? キャリアというのは、仕事のみならず、今後の人生を総体的に見たキャリアを。

田中:核心の質問だね。

須藤憲司氏(以下、須藤):一瞬も考えたことがない。

田中:あー、そうだよね。

須藤:今も考えたことがない。ちゃらんぽらんって、本当にちゃらんぽらんだったんだけど、自分の人生をたいしたものだと、あんまり思ってないんですよ。だから、適当でいいやと思ってるんだけど、僕の適当は、どうせ生きるからおもしろいほうがいいよねと、まず思っています。

だから、自分がどういう姿になっていきたいかとか、正直どうでもいいやと思う。だけど、自分は何をおもしろいと思って、どういうことを世の中に対してやったら、すごくおもしろかったと思えるかなということしか、考えないから。考え方が、「自分が」っていうほうにいかないんですよね。いかない派の人です。そういう人、けっこういるんですよ。

田中:うーん、いるいる。

須藤:なんだっけ、偶発的なんとかでしたよね? なんとかスタンス、ごめんなさい、知らないけど(笑)。

田中:計画的偶発性理論のクランボルツだね。

須藤:そう、クランボルツ。要は、毎日起きてる中で、なにかを発見して、偶発的にそのキャリアを考えていく。僕はたぶん、典型的なそっち派でしたね。

でも逆に言うと、例えば「あなたは、どんなキャリアを描きたいですか?」なんて質問に対しては、1ミクロンも答えなかったけど、「あなたは、リクルートに入ってどうしたいですか?」ってことに関しては、相当答えていたと思います。

田中:それは、自分のキャリアじゃないけど、自分が入った会社のパワーをどうやって促すかっていうね。

須藤:そう。だから、面接でなにをしたかっていうと、「僕はこの会社に入ったら、これをやって、この会社の業績を5倍にする」とかって言ってました。リクルートのときは、当時たぶん3,000億くらいの会社だったので、この会社の売り上げを3兆にするっていう話をずっとしてましたね。それはどういう方法でやるのか、こうこう、こういう方法でやりますと。

就職のその先

田中:橋本さんはどう?

橋本真里子氏(以下、橋本):私は、実は就職活動をしなかったんですね。私は女子大出身で、大学3年生くらいになるとみんな髪の毛を黒く染め出して、リクルートスーツを買い出して。

女子大ってけっこう「親がどこどこ会社の……」とか、そういう人が多かったので。お父さんにお願いして縁故採用でっていうのを、みんなそれぞれ同じ時期に、同じような行動を起こし出すんです。

そもそも就職活動って、何のためにするのかと。「今のところ、私はこういうことに興味があるから、こういう業界、アパレルを受けてみようかな」とか。「父親がこういう業界にいるから、こういう会社に行きます」とか。そういうのを周りはやっていて。それってみんな、この時期、3年生の就職活動の時期がやってきたからやってる感がすごく強くて。

私はそのときに自分で、さっきも言ってたけど、学生の人たちは学生さんなりに忙しいので、今しかできない貴重な時間を、就活に果たして使うべきなのかどうか、私の中ではけっこう謎で。私は結局、就職活動はしなくて。今になってみて、それが良いか悪いかっていうのは、本人にしかわからないと思うんですよね。

みんなすごく生き急いでいるなっていうのは思っていて、どこに就職するかがゴールじゃなくて、なにをするかとか、なにができるかのほうが圧倒的に大事なので、それがまだ明確にないのに、リクルートに入りたいとか、電通に入りたいとか。それで、その先は? 今の結果をすごく求めすぎてる感があったので、私は就職活動はせずに、フラフラというか(笑)。

大学を卒業して1年はいろいろバイトとかしたんですけど、自分は何をしたいんだろう、ちゃんとした仕事をしようと思って。受付っていうお仕事をやってみたいなと思って、自分の意思で受付っていう道を選んだら、10年続けられた。その道の先に希望があったということです。

あんまり就活のアドバイスっていうのはないんですけど、なんのために就活をしてるかっていうのは、自分にいつも問いかけながらやったほうがいいのかなって。それって、面接官にも伝わると思うんですよね。

田中:確かに、内定が着地点というか、ゴールっていうのはおかしいですよね。これは変えていきたいなと思っていて。別にどこだっていいんじゃない。ちゃんとやりたいことができるところに入って、転職もみんなするわけで。するわけでっていうか、する人もすごく多くなってきて。

転職でマイナスなんていう文化はないし、もっといえば、定年だってね。この前の、スドケンさんたちがチームでやられてた資料もそうだけど、人生100年時代って考えれば、60年で引退して、あと40年ある。

60歳から80歳くらいまで、みんなまだすごく元気。元気なシニアが、消費ばかりしてたら困るみたいな(笑)。我々だって、僕は40だから、あと20年でそんな世代になるわけで。いろいろ考えますよね。

なぜ、リクルートに残るのか?

田中:質問どうですか? 自由にどうぞ。

(会場挙手)

質問者5:話を戻しちゃうんですけど。

田中:あ、いいよ。

質問者5:リクルートの方々って、すごく独立志向だから出て行くっておっしゃってたじゃないですか。逆に、リクルートの組織に残っている方々っていうのは、どういう考えというか。

田中:おもしろい。それは意外とない質問だ。

須藤:どういう考え……まず前提として、仕事が好きなんですよね。仕事が好きって、別にカリカリやってる仕事が好きというよりも、自分たちで価値を見出していくとか、役に立ってることが好きだから。

それぞれの事業がいろいろあるんですけど、超たくさんあるから。50個くらいあるんですよ。それぞれの事業の中で、だいたいビジョンがあるんですね。「こういう世界にしたいね」みたいなのがあって。それをやってることが好きな人は、けっこう多いよね。マーケットを動かしてるとか、世の中を動かしてる感みたいなのがやっぱりあるから、そういうのが好きという人は多いし。

あと、別に、直接的になにか関与してなくても、例えば、間接的な部門の人だってたくさんいるじゃないですか。経理をやってるとか、法務をやってるとか、そういう人たちはスペシャリストとして、こういう会社とか、こういう業態とか、こういう人たちと一緒に仕事するのが好きっていうのは、多いと思う。

感覚的に言うと、要はサークルっぽいんだよね。そのサークル的な中で、おもしろいなと思いながらやっていく。毎年若い、10年ほど前の僕みたいな人がまた入ってくるわけでしょ。「おもしれーな」みたいな感じじゃないですか。そう思うと、それはそれで楽しい。僕はそもそも嫌だったわけじゃないので。おもしろいなと。

上ではなく、プレーヤー側でありたい

田中:さらに、もっと挑戦したい感じで出た?

須藤:うーんとね、端的に言うと、僕は偉くなりたくなかったんですよね。

田中:官僚的な仕事には……官僚的っていうとちょっと違うかな?

須藤:官僚的な仕事をしてるとは思わないけど、しがらむことのほうが多くなっていくんですよね。それは、たぶんみなさんが仕事をしていって、立場も、あなたはそういう発言しないでくださいとか、ありますよね。そういうのが増えてきて、ちょっと居心地が悪いとか。

あと、さっきの僕の時間が僕の時間じゃないっていうのは、僕はリクルートマーケティングパートナーズっていう会社の役員をやってまして。『スタディサプリ』とか『ゼクシィ』とか、ああいう事業をやっていたところで。従業員が2,200人くらいいて、売上800億くらいあるのかな。そういう会社の役員で。僕の24時間って、ほとんど自分の従業員とか自分のメンバーのために捧げるわけですよね。

俺はどちらかというと自分がやりたい派だから、うらやましいなと思って。28億の投資を決済するよりは、28億の投資を俺がやりてぇなと思う派だったから(笑)。サインする側じゃなくて、出す側にいきたいなと思って。

田中:プレーヤー側がいいということですね。

須藤:「降格してほしいんですけど」ってけっこう言ってました(笑)。

田中:自分から(笑)。

須藤:「僕、降格してくれないですかねぇ」「はぁ!? そんなことできるわけねぇじゃん、バカかお前」って。

田中:ちょっとサッカーのカズ選手みたいですね。いつまでもピッチでやりたいっていう。

須藤:そうそう、自分の時間を自分のおもしろいことに使いたいとか。あと、もう1個あったのは、会社員の限界みたいなものもちょっと感じてました。例えばですよ、僕が担当してる事業部があって、すごく大成功しても、すごく大失敗しても、僕が責任を取れないんですよね。

田中:取りたくても取れない。

須藤:取れないし、僕が問題を起こしてしまっても、やっぱり責任は取れない。

人事もね、「大成功したから違う部のもっと偉い人になって」って言われても、例えばそのとき、「ゼクシィの事業部のヘッドをやってくれ」って言わても、すげぇ人数もいっぱいいるし、超でかい事業ですけど、正直興味がなかったんですよ。でも、そういうことは起きるなと思って(笑)。会社員って怖いな、というのはあったかな。

田中:だんだん自分の意識とは違うところで、スドケンさんが動いていく。役割を果たさなきゃいけないからね。

須藤:そうそう。っていうことも、感じたかな。いっぱいありますよ、その弊害みたいなのが。若くして偉くなると、自分より年上で自分のメンバーとかいっぱいいたりするんで。「お手並み拝見」とかも出てくるし。

田中:(笑)。

須藤:いや、これ露骨にあるんですよ。お手並み拝見じゃねぇよ、一緒にやろうよって心底思ってました(笑)。

(会場笑)

見ること、興味を持つこととは

質問者6:自分のキャリアというよりかは、会社に入ってその会社をどうしていくか、そういったキャリアは語れるというふうに、さっきおっしゃってたと思うんですけども。

世の中で起こっている課題とか、そういったものを見る習慣というものは、普段から持っているんですか? 例えば、情報を仕入れて、こういう世の中だからこうしたいっていうのは、いくつか持って、っていうのはありますか?

須藤:結論からいくと、そもそも僕の会社っていろんな大企業のインターネットの成長を支援する会社なので、課題を解決するということが仕事なんですよね。だから、当たり前だけど、どの会社の戦略も知ってるし、逆に言うと、どういうことを考えているのかもよくわかってるし、誰がやってるか顔も浮かぶし、興味もある。

そういう仕事をする前はどうでしたかっていうと、それでいくと、それはやっぱり興味があったよね。おもしろいなと思ってたし、なんなら聞きに行ってたしね。

今は、サイバーエージェントはAbemaTVにすごく投資してるけど、僕らのときは、アメブロってブログに超投資してて、失礼な言い方すると、何考えてるんだろう? と本気で疑問に思ってました。それをやってる人に聞きに行ったりとかしてましたよね(笑)。

田中:なんでそこまで投資するのか?

須藤:「何考えてやってんすか!?」って。いろいろおもしろいなと思って。それは別に、自分の本業とあんまり関係なくても聞いたりとか、紹介してくださいって。そういう感じですね。興味があることに対して「おもしろいな」とか、「なんでこうしてるのかな」とか、気になったら聞いていくと。

田中:オリジナルデータというか、当事者の生のデータが書かれたものをっていうよりは、直接の担当者に聞きにいくっていうね。