プラットフォームを横断した効果測定

高山靖弘氏(以下、高山):簡単にシナラのサービスを並べてみますと、まず店舗を起点にした場合、我々自身が広告配信をします。もう1つが、実は我々の広告配信だけではなく、他社のプラットフォームの広告配信も計測ができます。

これは我々のピクセルタグというものを使って、Yahoo!さまとかGoogleさま、あとは、例えばBLADEさまに配信していただくことによって、発火した際にユーザーを特定することができるのです。

例えば、シナラで広告配信しなくても、Googleさまで配信して接触した人がその後店舗に来たかどうか。もっと言うと、Googleさまもそういったストアビジネスを商品として提供している中で、なぜこれが必要なのか。それは結局、今は各社独自のロジックで来店計測をしているので、どのプラットフォームが効果的か判断ができないんですね。

一方で、これを第三者視点で、僕らが同じルールで計測すれば、実はYahoo!さまはコスト・パー・クリックは安いけれども、コスト・パー・ビジットは高いとか、実際にプラットフォーム間の比較ができるようになります。

もう1つの強みがサイト訪問計測です。いろいろな軸で分析できるんですが、例えば、トップページだけ見た人の来店率がどれぐらいか、とか。もしくは、商品の詳細を見た人の来店率がどれぐらいだとか。もしくは、サイトを訪問する前に店舗に来ていたかとか。そういった分析ができます。

最後はデータ分析です。実際にどういう人が来ていたのか、それが居住エリアだったりライフスタイル、長時間通勤者とか、あとパーティーピーポーというセグメントもあります。

これは位置情報に基づくセグメントで、例えば、「サイト訪問したユーザーがこういう構成比なのに、来店したユーザーの構成比は違うよ」とか、そういうギャップを分析することも可能です。

それを踏まえて、実際にオムニチャネルでどういうことができるのか? こちらをお話させていただきます。我々が強みとしているのは2つありまして、1つが分析です。そしてもう1つがそれを踏まえた広告配信になりますので、2つに分けてお話させていただきます。

まず我々が提案する時におすすめしているのは、現状の棚卸しですね。具体例はこちらになります。

広告配信から来店までのカスタマージャーニー。一度やった分析では、256パターン全部作ってみたんですが、どこがボリュームゾーンで、どこが一番効率がいいのか。そういうのを分析しました。これはプラットフォーム別にもできますし、もっと分解してクリエイティブ別にもできます。

ここでおもしろいのは、プラットフォームだけでなく、実際にサイトのコンテンツ、あとWebコンバージョン、それを一気通貫して分析できる点です。なかなかおもしろい発見としてよくあるのが、実はWebコンバージョンは来店につながっていなかったとか、そういった発見があった分析もけっこうありました。

したがって、今まで店舗を持っているのに、結局モバイル広告であったり、デジタル広告、測れる唯一の指標がWeb上のなにかしらの行動なので、それらすべてにオプティマイゼーションをかけている場合、実はそこが間違っているというケースもあります。そういったことを見える化する際に、非常に有効だと思っています。

不動産屋さんの事例

例として挙げさせていただいているのがこちらの不動産屋。

いろいろな物件がある中で、物件ごとの来店率を出すことが可能です。

あとはもう1つ、カスタマージャーニーの順番ですね。教科書的な、先ほどのような、広告を見て、クリックして。そしてホームページのトップにきて、その後、商品の詳細ページを見て。最後にWebコンバージョンして、ようやく来店。ですが実は、多くの場合、そういう順番ではないんですね。

この例でいきますと、一番上がそういう教科書的な順番だと思います。

Webページで比較検討して、コンバージョンである問い合わせをして、来店して、そして最終的に成約。

でも、もしかしたらユーザーはたまたま歩いてる時に店舗を見つけて、「ちょっと時間があるし、寄ってみようか」、それがきっかけで、「じゃあ、他にもどういう物件があるか、後で時間ある時に見てみよう」と。それでようやく気になるものを見つけて、問い合わせして、そこで成約する。そういうパターンもあるかもしれない。

あるいは、Webで見ていて、その後、また歩いてる時に店舗を見つけて一度相談。また別の機会に、「実際に、じゃあ、違う不動産屋さんで聞いてみよう」とか、そういうケースもあると思います。そういったものの比率を出すこともできます。

この中央のパート、これが仮に50パーセントだった場合、どうすべきかというと、結局、Webサイトというのは、来店した人が半分以上来てますよ、と。そうなると、コンテンツも来店した後の人たち、要はある程度あたたまっていて、基礎知識を持っている人たちに対して、後押しするような内容に変えるべきなど、そういった形で、定石を変えることができます。

商品によっても来店前後の閲覧比率は変わる

こちらも同様ですね。実は前にやったプロジェクトでおもしろかったのが、商品によって、来店前後の閲覧比率が違うんですね。花形商品、あとはよくプロモーションをやっている商品の場合は、来店前に見る比率がけっこう高かったりします。

ただ実は、そこまで目立たないけれど潜在能力のある商品というのは、来店後の比率がすごく高い。これは実際に見てみても、お客さまの話を聞いて「なるほど、こうなんだな」という発見もあります。

あと、カテゴリーごとに見た時は、引っ越し見積もりとか、より細かい話になるとやはり来店後ですよね。こういうことを見ることによって、どういう情報をどのページに入れるか、そういう判断につながります。

それ以外にも、先ほどお伝えしたような、どのパスが一番ボリュームがあるのか、どこが一番効率的なのか。あと、初回の広告接触から来店までのリードタイム。これはWebコンバージョンとはまったく違うリードタイムになります。

あと、フリークエンシー。広告の接触回数ですね。何回当てたら来店してくるのか。あるアイスクリーム屋さんで実施した時は、最適なフリークエンシーが9回から10回でした。4、5回だと、ぜんぜん結果が出ませんでした。そういった発見もあります。

刷り込み店舗近くでの配信で効果3倍

一応、ここまでが分析の話ですが、次に施策の運用の話をさせていただきます。こちら、あるお店の広告配信、店舗誘導の施策の時のケースになります。これは何をしたかというと、3つのセグメントに分けました。

一番上は、どこに行っても、何時であろうが広告配信をする、いわゆるブランディングのような広告をした場合ですね。中央は、店舗近くにいる時だけ広告配信した場合。そして、一番下が、日常的な配信と店舗の近くにいた時の配信を組み合わせた場合。この3パターンの来店コンバージョン率です。下に書いてあるのは平均フリークエンシーなんですが、その比較をしてみました。

確かに、一番上は来店コンバージョン率低くなっています。これには、2つ理由がありまして、結局、店舗の近くにいない時に配信しても、店舗の近くに来た時に思い出せないというのがあると思います。あともう1つが、先ほどお伝えしたようなフリークエンシーの話で、4、5回です。

一方で、店舗の近くにいる時だけ配信すると、日常配信よりも5倍ぐらいの来店率になります。やはり理由としては、店舗の近くというのもありますが、平均フリークエンシーが先ほどお伝えした9回10回、この回数に達したのだと思います。

そして非常に興味深いのが一番下ですね。こちらは、フリークエンシーで言うと1回ぐらいの差しかないのですが、日常と店舗近くでの広告配信を組み合わせることによって、来店コンバージョン率が3倍近くに跳ね上がっています。

この時の仮説というのが、やはりほとんどの位置情報系の広告配信はプッシュ通知ではないんですね。そうなった時に、みなさんもそうだと思いますが、道歩いてる時にそこまでちゃんと注目しているのか、そのモバイル広告を見ているのか。サイトでもそうだと思うのですけども、歩きながらそこまで見てないし、まして広告を注意深く見ることはないと思ってます。

そうなると、日常的な刷り込みをしたうえで、どこかのタイミングで、例えばカフェにいる時とかモバイルを見た時に、たまたま「あ、この広告見たことあるな」と気付かせる。そうやって刷り込んだ最後の後押しとして、店舗近くで配信する。この組み合わせが非常に有効だという発見につながりました。

「おもしろそうだからやってみる」では無意味

こういうキャンペーンを実施することは非常に有効だと思います。結局、よくあるのが、「シナラで広告配信をしていろんな検証ができても、最後、ビジネスにどう貢献してくれてるのか」とよく聞かれます。

一時期、広告出稿の受注いただく際のきっかけというのが、「来店計測っておもしろいのか」「これが新技術の見える化というのか」など、どうしてもそちらが目的になってしまって、 結果の測定ができないまま1回、2回やって終わってしまう。そういうケースがありました。

やはり、「何のための来店計測だっけ」というところをみなさんも意識される方がいいかなと思います。これはあくまで、既存のマーケティング目標、だいたいが売上だと思うのですが、それを達成するために、あくまで今不足してる点を補強するツールである、ということです。

ケース1、これはあるお客様で実施予定の話になります。何かというと、このお客様の場合、自社で取り組んでいるCRMがあり、そこにつなげるためにシナラを使ってるという会社です。

したがって、我々がサポートしている点は、まず新規顧客の獲得。今まで店舗に来ていないけれども、何かしら親和性のある人たちにだけ広告配信をして、店舗まで呼び込む。

その際のメッセージとしては、例えば、近くで働いてるが、「こんなところに店舗あったのか」とか、そういうことがあると思います。なので、店舗の場所を教えてあげるとか、あとは店内の雰囲気、「実はこういう素敵なお店なんですよ」と。あとは、店舗でしか売ってない商品の紹介というのも、お話にありました。他には、まさにブランドの世界観。そういったことを伝えて、まず初回来店を促進しました。

そして、すでに来店経験のあるライト・ミドル層に関しては、新商品の紹介をすることによって、来店頻度を上げていく。最終的にアプリの紹介をすることによって、ロイヤル層に持っていき、それ以降はお客様のほうで、メルマガなどを通じたCRMを実施していく。

このような形で、初回来店からロイヤル顧客の育成まで、シームレスな施策でつなげていこうと、そのように使うお客様もいらっしゃいます。

どこをKPIにするか

その際のKPIは何なのか? こちらになります。

まず最初のKPI、これは来店を軸にした場合のものですが、来店者数をベースに店舗誘導施策を量の観点で評価してもらうものです。

先ほどのように、既存と新規というのが、来店促進の対象になります。「既存顧客に広告配信して意味あるのか」と訊かれることもありますが、僕はあると思っていまして。結局、既存顧客がどれぐらいの頻度で来ていて、広告配信によってそこが上がるかもしれない。そこへの注目は必要だと思っています。

もう1つが、ここにも書いてある新規の獲得ですね。いろいろな形でよくやってるのが、家電の場合だと、ある程度高価格帯の家電の場合は、所得という軸で富裕層をターゲット。

ですが、掃除機の場合だと、「強力な掃除機が必要なのは1人暮らしかもしれないね」となります。そのようにいろいろな軸で考えてセグメントを作った上で、過去来店にしたことのある人たちを除外して配信して、新規をどれぐらい獲得できるか。ということを実施しています。

もう1つがこちらです。

既存来店者、すでに来店したことのある人たちの来店頻度をトラッキングします。これがどこまで上がっていくのか。これも常にモニタリングをしながら、メッセージを変えるべきなのか、それともターゲティングを変えるべきなのか。

過去の来店頻度でセグメントを分けた上で、配信ボリュームの予算配分をしています。例えば、過去1ヶ月以内に3回以上来店している人は、そこまで広告配信しなくていいよね、など。そういった判断をしながら運用していくことが可能です。

来店効率にひそむ落とし穴

次がこちらですね。

よくあるのが、来店効率というのは、とくにサイトの分析をすると顕著に出るのですが、少なくとも、最初から興味があって来る予定だった人たちの数字が非常に高くなります。それは非常にもったいない。読み間違えると、非常に問題なんじゃないかと思います。

なぜかというと、デジタルマーケティングの目的は、あまり興味ない人に興味を持たせて店舗に来させることなんですね。その際に、もとから興味ある人たちに対して広告配信をして、「来店率高いね」と言っても、それは単なるお金の無駄なので、その際に重要になるのがこちら。来店シェアですね。

シナラでは、自社店舗だけでなく、同じカテゴリー内の店舗の来店をトラッキングすることができるので、同じ広告接触者、これを店舗別で分けた時、「全体的に上がってるけども、実は20代が鈍化してるよ」など、そういった分析が可能になります。

したがって、一見コスト・パー・来店がすごく低くても、実は競合にすごく取られてるセグメントがあるとか、そういうことも見ることができます。

もう1つの有効な見方としては、自社店舗の来店者数しか見えない場合だと、「順調に推移してるな」と判断ができても、実は業界全体の来店者数も伸びている場合、それはシェアを落としているので、非常にもったいないという話です。したがって、こういうところもトラッキングすることによって、いつでも打ち手が取れるようにしておく、そのためのモニタリングになります。

オムニチャネルならではの戦い方

最後に、オムニチャネルという視点を踏まえた時に何ができるか。実店舗をずっと前からお持ちのお客様の場合、ボリュームゾーンは実店舗ユーザーのほうが多くて、しかし、伸び率で言うとECサイトのほうが圧倒的に高いというお話をよく聞きます。

もう1つ聞くのは、アパレル業界などで多いのが、冒頭でお話させていただいた世界観とか、あとはとくに靴の場合、サイズですね。結局、ある程度高価格帯のものだと、実店舗で実際に見ないとお客様は買わない。リピーターになってくるとWebで買う、というお話をよく聞きます。

したがって、フローとして僕らが推奨してるのは、実店舗にたくさん人を来させた上でリピート率を上げていって、その先のECサイトの誘導もやることによって、ECサイトと実店舗を両方使っているユーザーの比率をどんどん上げていく。ここをモニタリングしていきましょう、という話をしています。

お話させていただいているお客様でも、各社、オムニチャネル・プロジェクトを立ち上げているお客さんが多いので、その際の指標としてこれを今掲げています。

これをやるとできるのがこちらです。

比率はわかったけれど、どういうユーザーが実店舗だけを使っているのか。どういうユーザーがEコマースだけなのか。どういうユーザーが両方使ってくれているのか。この分析をすることによって、メッセージをどう変えればECサイトに誘導できるのか。そういう判断材料にもなります。

短期的な結果を重視するものではない

まとめると、来店計測の価値、これは単純に見える化しても、だいたいのお客様は数ヶ月後に「これで何すればいいの」という話になるので、本当に強調したい話なのですが、来店単価だけを指標に運用しても、まったく意味がありません。ビジネスインパクトも限定的です。

よくあるのが、キャンペーン1ヶ月で数百万、例えば200万円で広告配信をしても、テレビと違って、来店者が急激に伸びることはありません。そうなった時に、本当にモバイル広告が無駄かというと、そうではありません。なぜなら、僕らは3ヶ月くらいのスパンでトラッキングしているプロジェクトもあり、確実に結果が出ているものもあります。

したがって、指標として、単純に「1ヶ月以内にいくら使って、何来店稼げるか」ではなく、長期的に見た時に、接触者のほうが来店頻度が上がってるとか、もしくは、滞在時間という話も今出てきています。

例えば商業施設とか、アパレルもそうだと思うんですが、素通りするのではなく、ある程度時間をかけて店舗を回遊してもらう。そういう指標も今作っているところです。

あとはよくあるのが、混雑時に買上率が落ちてしまう。そうなると、アイドルタイムにモバイル広告を使って店舗に誘導したほうがいいんじゃないか。そうすると、アイドルタイムを特定したうえで、アイドルタイムに絞った場合どうなるかとか、そのように「来店の質」というのをトラッキングしていくことが、非常に重要だと思っています。

あとは冒頭にお見せしたような、実来店。みなさんがトラッキングされているデータとちゃんと相関分析した上で、どれぐらいの差分があるのか、ズレがないのか。もちろん買上率もトラッキングされていると思うので、それを踏まえた時にどれぐらいの来店者数が必要なのか。ちゃんとそれを連動させた上で、指標を決めて、シナラを使っていただくのがベストだと思っています。

一言で言うと、「マーケティング課題に合った指標設定」。そこにつきると思っています。「見える化がおもしろいから、やってみよう」ではなく、今、何が必要なのか。先ほどのように新規の獲得が必要なのか、それとも、ある程度そこは食いつくしたけれども、最近来店頻度が落ちているとか。そのように決めた上で、実際に指標を作ってやっていくのが重要だと考えています。

以上、今日はありがとうございました。

(会場拍手)