歯並びが歪んでしまう理由
私たちは虫歯や親知らずなど、さまざまな理由で歯医者に行くことがあるかと思います。私たちの多くは、歯の歪みや不正咬合になって、矯正が必要になったりしますね。しかし、みなさんは他の動物をみて、例えば、「ビーバーの歯は、もっとまっすぐじゃん!」と思いませんか?
ではどうして私たちは歪んだ笑顔になってしまう傾向にあるのでしょうか? それは人間の顎に私たちの歯すべてがフィットするのに十分なスペースがないということもあります。しかしいつもそういうわけではありません。問題は、10,000年前の農業の登場に関係があるのです。
野菜の栽培と動物の飼育は、人類の食料の消費量の増加に大きく関連しています。野菜や肉を切り食材をより小さくし、調理するという方法で食べ物が食べやすくなりました。そうする事で長時間食物を噛むこと、そして噛む力も必要なくなります。
ある文化人類学の調査では、このことは私たちの顎を小さくしたのですが、歯の数は変わらなかったので、今日の歯列矯正をする羽目になったと証言しています。ある研究では、中東の農耕時代前と後の頭蓋骨をみることで、顎に変化が生じていることを発見しました。農耕期以前の顎の骨は、食べ物をたくさん噛んできたことで歯の擦り切れや破損が見られましたが、歯の十分なスペースはありました。
農耕期後は、顎が横に広がり、前後の幅は狭まりました。しかしながら歯のためのスペースが小さくなり、歯並びが歪んできています。
ほかの研究では、農業また狩猟採集民を含む世界中の11種類の人類の頭蓋骨と顎を比較しました。狩猟採集民の顎は、長く狭くなっており、顎の低さが特徴となっていて、農耕民族の顎は噛むことに適した顎でした。顎の形の変化というのは、私たちの遺伝子が変化したことが理由にはならないでしょう。
また、より短い顎を持つ農耕民族の方が生き残りやすい、という影響による自然淘汰では必ずしもありません。さらに、これは進化生物学者が、発生上の可塑性と呼んでいる例の一つと言えるでしょう。これは環境によって、生命体が異なるように発達することです。
ある研究で、生で硬い食べ物よりも、柔らかく調理された食べ物で飼育されたハイラックス(齧歯動物)は、顎の骨の成長が著しくなく、低い顔になっています。これを人間で実験するということはとても難しいです。なぜなら、長い生涯で食べる物が厳しく制限されてしまうからです。しかし、発育過程で、硬い食べ物のみを食べるのであれば、私たちは大きく、顎を丈夫に発達させることが可能なのです。
ですので、私たちが大好きな温かく調理された食事、つまり柔らかなお肉だったり、マック&チーズといった食べ物は、歯列矯正へと私たちを導くことになるでしょう。
しかし、長いスパンで見て、歯が壊れるまで食べ物を噛み続けるくらいなら、私はマックとチーズを選びます! たとえ、歯列矯正が必要であってもね。