「復興支援も黒字にする」ヤフーが震災支援を“ただの社会的貢献”にしないと決めた背景

2部 村上臣さんトークセッション「インターネット黎明期からの20年を振り返る」聞き手・鶴田浩之 #2/7

20周年を迎え、今なお成長し続けているYahoo! JAPANではどういった戦略やアイデア、技術、組織、人材育成が行われているのか。その謎を解き明かす書籍『Yahoo! JAPAN全仕事 現場200人に聞く、過去→現在→未来』の発売を記念したイベントを開催しました。第2部に登壇したのは、Yahoo! JAPAN 執行役員CMOの村上臣氏。モデレーターはBOOK LAB TOKYO鶴田浩之氏。ヤフーが成長し続けてきた20年間を振り返りました。

会社を立ち上げ、楽天へ行き、ヤフーに来た小澤隆生氏

村上臣氏(以下、村上):IT関係の本っていろいろ出ていると思うんです。各会社さん、「こんなふうに企画してます」とあると思いますけど、実際その現場に踏み込んで、どういう仕事をしてるかに踏み込んだ本って、なかなかめずらしいと思うんです。

僕もそのなかの1人としてインタビューに答えています。そのときはあまり企画内容を知らずに、「今度ヤフーの本が出るので、またインタビューに出てください」と言われて、べらべらしゃべっていただけなんです。でも、できあがったその本を広報から回された時に、「こんなんなんだ」ってすごいびっくりしました。

せっかくなので、本を持っている方はぜひ見ていただきたいですが、「やっぱりこの3人」という人を出します。まずどこからいこうかな。すでに忘れつつあるぞ、もう。

鶴田浩之氏(以下、鶴田):(スライド資料の表示が)もうすぐできます。

村上:できる? 

鶴田:復旧します。少々お待ちを。

村上:さっきあげなかった小澤隆生はおもしろいですね。IT関係の人はたぶん知っていると思う。

鶴田:それは、内容がおもしろいというより、人がおもしろい?

村上:人が……芸人としておもしろいです。今、Yahoo!ショッピングのカンパニー長、責任者をやっています。とにかくベンチャー界隈では有名なシリアルアントレプレナー。立ち上げて、楽天に行って、ヤフーに来たみたいな。もう本当に三木谷(浩史)さんに怒られちゃう感じなんですけど。

ヤフトピの見出しが13文字の理由

鶴田:じゃあ臣さん、『全仕事』に出てくるおもしろい人を教えてください。1人目は、奥村(倫弘)さん。

村上:奥村さんです。これ、414ページ。

鶴田:本を持ってる方は414ページを。

村上:すごいですね。なんか辞書を手にした読書会みたいだね。なかなか新しいね、これ(笑)。

鶴田:この本の楽しみ方が1つということで、村上さんに人を紹介していただきます。

村上:一応、本を持っていない方もいらっしゃるので。奥村さんは今、ワードリーフというヤフーの子会社で社長をやっております。この人、もともと新聞記者なんです。旧来の既存メディアからインターネットに来て、かなりヤフーの中でも古株の社員なんです。

この人が長年やっていたのがYahoo!ニュースの編集。とくにヤフトピです。ヤフートピックスのシステム、編集の仕組みを作ったのが、この奥村さんです。

ヤフートピックスって13文字なんです。これ文字数は決まっていて、今ちょっと空白を含めて13.5文字。あのフォーマットを作ったのがまさにこの奥村さん。

ヤフーは基本的に自分でニュースを作っていないんです。なので、いろんな新聞社さんから入稿いただいたデータをもとにしたヤフトピ編集部がある。ここは社長であろうと僕であろうと、絶対に触れない独立性を持った編集者がいるんです。そこでいろんな記事を見ながら見出しを作るわけです。

なのでヤフトピは、見出しは我々がつけて、その先のニュースは各社さんの提供をされたコンテンツに飛ぶかたちになっています。

彼は、「元祖まとめ」です。今、いろんなまとめ記事あります。要は、いろんな見出しが新聞社からついてきて、同じ1つのストレートニュースであっても、各社さんのアングルから出てくる。ただ、それを一つひとつ見ていくのは、お客さん、ユーザーからすると「めんどくさいよね」とか「もっとパッと見たいよね」というニーズが出てきたので、まとめようと。

これは新聞社さんも「自分たちが一生懸命作った見出しを、なんでお前ら変えるんだ?」みたいな話も含めて、いろんなやりとりをして理解していただいて、今のフォーマットができている。

ただやっぱり、日本語において、パッと見て認識できる限界が13文字らしいです。

鶴田:へえ、そうなんですか。

村上:日本語ってすごく優れている。ひらがね、カタカナ、漢字があって、ぱっと見で認識する内容が多い。なので、あれだけ短いものでもパッと見てなにかわかる。それで、もうちょっと知りたければ押す。それを上から順番に、時系列、重要度などを加味しながら更新していく。

あの6本になっているのも、社会面のニュースにかかわらず、なるべくパッと見たあの枠のなかで、今の読むべきニュースがわかるように編集がされている。なので、非常にこだわりを持って作っている。

世の中のニュースは氷山の一角

彼は今、子会社で独自ニュースを作る「THE PAGE」をやっています。実際に自分たちが取材をして、いろんな深い記事を書いていく。ヤフトピでまとめはやったので、もっと社会で知られるべきニュースを自分でやりたいと。

鶴田:けっこう読み応えある記事が多いですよね。

村上:そう、かなり骨太のね。彼も新聞記者時代、地方を担当した時があるので、彼の目で、本当は読まれるべきニュースなのにスポットライトが当たりにくいものをね。

当たるものは、各社さんから入稿いただくので、普通にあるんです。そういうところからはあがってこないけど、課題感を持っているようなものを足で探して、取材している。

鶴田:Yahoo!ニュースって24時間体制ですよね。

村上:そうですね。

鶴田:編集部は何名体制でやってるんですか?

村上:何名かは非公開だと思います。

鶴田:そうなんですか。

村上:そこそこの人数はつけて、交代しながらやっています。当然、災害もあるので、拠点的にも、BCP(注:事業継続計画)というか、東京だけに集中しない体制でやっています。

鶴田:ありがとうございます。じゃあ、次。

村上:(スライドを指して)それは奥村さんの最近出た本。新刊ですね。

鶴田:ほかにも、Yahoo!ニュースに関する新書がありましたよね。

村上:そうですね。ヤフトピの作り方みたいな本です。

鶴田:僕も読んだことがあるんですけど、すごくおもしろかったです。13文字の秘密、みたいな。

村上:これは出たばっかりです。『ネコがメディアを支配する』という最近の本。結局ですね、ネコ動画とニュースがあって、どっちが勝つのか。当たり前のようにネコ動画が勝つインターネットなんです。「それってどうなの?」と。

また、トランプ問題では、いわゆるフェイクニュース。ソーシャルネットの影響で、自分が読みたい記事をクリックする。だから情報の偏り、もしくはフィルターバブル問題みたいな話に切り込んだ、なかなかおもしろい本でした。

鶴田:僕も読んでみます。

村上:はい。おもしろいです。

元マッキンゼーで、一番のクセ者・安宅和人氏

鶴田:次のおもしろい人。

村上:これは有名人だね。うちの。

鶴田:そうですね。安宅(和人)さん。

村上:もうミスタービッグデータ、ミスターAIみたいになってます。

鶴田:これはたぶん、パッとわからなくても、この本を見ればわかる。

村上:はい。大ベストセラーの『イシューからはじめよ』。

鶴田:ヤフーのChief Strategic Officer。

村上:そうですね。CSO。

鶴田:CSO。

村上:Chief Strategy Officerというタイトル。安宅さんは本でなにを話したんだろうね? 彼もだいぶ天才肌というか、もともとマッキンゼーからヤフーに来た、異色の経歴なんです。

とにかく話がいろいろ飛ぶんです。いるじゃないですか? 天才肌の人って、本人の中ではつながっているけれど、僕が聞いてもぜんぜんつながらない。その典型的な人です。

よく話をしますけど、「これがこうで、これがこうで、これがこうで」って、「ちょっと待ってください。そこからそこってどうだったんでしたっけ?」みたいなことを聞かないとわからない。けっこう、編集大変だったんじゃないかな?

鶴田:(笑)。

村上:すごい。きれいにまとめられてますね。

鶴田:さっき打ち合わせの時にも、「安宅さん」という名前が全員一致で出てきた。一番大変だったのがこの安宅さん。

村上:キャリアとして、マッキンゼーを辞めてからイェールに行って、脳神経科学でPh.D.(注:哲学博士)を取った。ちょうど911の事件があって、「もうアメリカやべーっ」と言って日本に戻ってきた。その時にうちの前社長の井上(雅博)と会って、「お前、だったら日本でうちで働け」と言ったら、来たんです。

鶴田:僕もヤフーというより、この本のイメージが強い。てっきりすごいビジネス書の著者だと思っていたら、ヤフーの中の人だった。

村上:そうですね。彼がマッキンゼー時代に、いろんな消費財とか、マーケティングをやっていたけど、そこでやっていたノウハウを全部、本にまとめようと。ヤフーでもいろんな課題解決を整理したりして経験を活かして、この本を作った。書いている時にいろいろ話しましたけど、やっぱり書くのは苦労していましたね。

鶴田:読むのも苦労します。

村上:読むのも、やや苦労しますね。

鶴田:ちょっと腰を据えてしっかり読めばおもしろい。

村上:何度も読むのに耐える本です。

鶴田:これはベストセラーにふさわしい本ですね。

ただの社会的貢献にしない。復興支援も黒字にする

じゃあ続いて、長谷川(琢也)さん。どういう方ですか?

村上:我々、「はせたく」と呼んでいます。

327ページですね。彼は、けっこうヤフーが長いですけど。彼が今やっている署は、いわゆる復興支援事業です。

Yahoo! JAPANは石巻にオフィスを震災直後から持っていて、そこでいろんな取り組みを地元でしました。最近だと「ツール・ド・東北」。つい最近またエントリーを募集しましたけど、日本で大きな自転車イベントを主催して、共催してます。

(長谷川さんは)最初に石巻オフィスに行った5人のうちの1人です。今もその復興支援をがんばっています。石巻って漁港があるじゃないですか。なので最近は「漁師さんにスポットライトを当てたい」と、「Fisherman japan」という団体を立ち上げて、若い漁師をプロデュースするという謎のことをやっている。もはやうちの社員なのかどうかもよくわからない。

鶴田:ヤフーにおける仕事の部署はどこなんですか?

村上:今、復興支援室ですね。

鶴田:復興支援室。なるほど。

村上:今はコーポレートコミュニケーションになっていますけど、基本的にやっていることは一緒です。

鶴田:そんな長谷川さんも本を出されている。

村上:そうですね。

鶴田:『10倍挑戦、5倍失敗、2倍成功!?』。

村上:復興支援をやるときに、CSRという言葉があるじゃないですか。

企業の社会的貢献は大事だけど、社長の宮坂が「ただのCSRで終わりたくない」「余った利益でなんとなくいいことやってますみたいなのは、俺はいやだ」「行くんだったら、向こうで利益を、黒字の事業を作ってこい」というのが、彼に課されたミッションだったんです。

彼は、Yahoo!ショッピングで石巻の魚を売ったり、いろんなことをするなかで漁師さんと仲良くなって今に至る。そういった復興支援事業で意識してやったのは、CSRの中でもめずらしいものです。

鶴田:民間企業でそういう部署を作っちゃうという。

村上:オフィス作って人を送り込んじゃうところですよね。そこは当時、やっぱりめずらしかった。ボランティアを行き来することをやっている会社はたくさんありましたが、ちゃんと常駐する社員を置いて腰を据えてやるのは、けっこううちは早かった。

鶴田:そういう人事的なことも含めて、ポータルとしても復興支援、そのWebサイトはずっとテストをしてましたよね。

村上:そうですね。

鶴田:災害時のテストです、みたいな。

「最低10年はやり続けよう」と始めたのが、ツール・ド・東北

村上:その一環で「ツール・ド・東北」という自転車のイベントを昔はやっていたんです。河北新報社さんという新聞社がありますけど、そこが主催で「なんちゃら宮杯」みたいな感じでやっていたのがなくなっちゃった。そういう話を聞いて「それを復活させよう」「最低10年はやり続けよう」と始めたのが「ツール・ド・東北」。

今、もう3,000人以上ですね。entrantでいうと。

鶴田:へえ、すごい。

村上:はい、entrantで言うと、もう今はエントリーですぐチケットがなくなっちゃう人気イベントに育ちました。私も毎年走っています。

鶴田:あ、やるんですか?

村上:あの……なんですか、業として。

鶴田:業として。

村上:あまりロードバイクとか趣味としてはなかったけど、会社がせっかやるので、とりあえずロードバイクを買うところから始めて、年に1回は同じコースを走って、肌で復興具合を感じることをやってみようかなと。

鶴田:この3人、臣さんにさっき聞いて、「まずここから見てみたらどうでしょうか?」と挙げていただきました。ありがとうございます。

この本、いろんな人の話が載っているので、もう価格以上の価値があります。知るきっかけになる。インタービューをされて出ている方が、それぞれ本を出されている。「この人はおもしろいな」と思って調べてみたら、ブログをやってる方がいたり、いろいろそういう引き出しになる。

村上:そうですね。

鶴田:ここで1回なにか質問のある方いますか? なにか聞いてみたいことある方? 質問をときどき挟んでいくので、なにかあったら。

村上:考えておいてください、みたいな(笑)。

鶴田:考えておいてください。

村上:なんでもいいです。今日はわりとゆるい感じでやるので。私、あまりNGはございませんので、なんでも聞いてください。

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