腐る人は「自分は社長になれる」と傲慢にも思い込んでいる
出口治明氏(以下、出口氏):時間がなかったので、僕はなにをしているのかという話を省略しました。この大きい名刺に、僕がなにをしているか書いてありますから、2〜3枚持って帰ってください。
(会場笑)
なんで2~3枚かというのは、せっかくのご縁ですから、ライフネット生命のことを知ってほしいと思って。家の方にあげるとか、明日職場に行かれたら同僚の机の上に黙って置いておいてください。
(会場笑)
はい、じゃあ自由に手を上げてください。どんな質問でもけっこうです。
(会場挙手)
はい、どうぞ。
質問者1:今日は、とても勇気付けていただく話、また有意義な時間をありがとうございました。今日の話と直接的ではないんですけど、いいですか?
出口:あ、ぜんぜんいいですよ。
質問者1:出口さんが、生命保険からビルの管理会社に出向されて、サラリーマンだといろんな場面があると思うんですけど。そのときにもいろんな思いがあったんじゃないかなと思います。そのときに自分を奮い立たせたというか、あるいは言葉だとか。そのとき、どんな心境で、どんなふうに……今日の話の中に答えがあるのかもしれませんが、なにかあれば教えてください。
出口:なんにもないんです。
ものすごく単純に考えたら、例えばですね、社長を5年やると考えてください。大企業の場合ですが、新入社員が200人だと考える。そうすると、社長を5年やるということは、5年間に1人ですから、1,000人に1人社長になるだけです。それで、計算は合ってますよね?
ということは、係長か、課長か、部長か、役員かはわかりませんが、どこかの段階で999人はすべて左遷されるわけです。左遷されるということは、「俺、やっぱり多数派やったんやな」というだけのこと(笑)。
1,000分の1って、かなりの確率ですから、その時点で多数派が確認できるだけの話です。そんな当たり前のことで腐ったりしていたら、馬鹿馬鹿しいじゃないですか(笑)。
だから、たぶん腐る人は、自分は社長になれると傲慢にも思い込んでいる。なので、おかしいと思うという話ですね。
でも、冷静に考えたら1,000人に1人なんて、くじ引きのようなものなんで、「あ、ここでくじ外れたか」と思えばいいだけの話です。たぶん、冷静にどういう状況かを考えれば、落ち込む人なんていないと思います。だって、多数派のほうが多いわけですから。それでいいですか?
質問者1:はい。
「ライフネット生命を大きくすること以外、なにも興味がありません」
スタッフ:ほかにご質問ある方、いらっしゃいませんか?
出口:なんでもどうぞ。
(会場挙手)
出口:はい、どうぞ。
質問者2:僕は54歳になるんですけども、折り返しだということで勇気をいただきました。出口さんがこれから10年、20年、ご自分でやりたいことはをおうかがいしたいです。
出口:答えは簡単で、ライフネット生命を大きくすること以外なにも興味がありません。
まだ140人の社員で、売上100億円の会社なので。1人7,000万円くらいしか売り上げていないし、生命保険業界は40兆の売上を持っているので、マラソンで言えば、400メートルのトラックを走り終えて、道に出たくらいのところです。せっかく始めた会社なので、これを大きくすること以外、なに1つ興味もなく外にやりたいこともないです。
急に会社がデカくなって「もうええわ」と思ったら、またそのときにやりたいことを考えればいいと思っています。
質問者2:そんな中で、ご本を書かれたり、あるいは、このようにみなさまの前でご講演をされたりというのは、出口さんの頭の中では仕事という概念を持ってらっしゃるのか、それとも……?
出口:100パーセント仕事で、ライフネット生命を知ってもらうことがすべてです。
大阪に話しに行ったとき若い人がきて「ライフネット生命、大好きです」「でも入ろうと思ったら、嫁に却下されました。悔しいです」と。
「なんで却下されたんですか」と聞きました。そうすると「生命保険は、終身保証してもらうんやで。あんたが入りたい言うから、ホームページをよく見た。ええ会社みたいや」「せやけど、あんた、こんな小さい会社、30年40年続くと思ってる?」「創業者の出口さんは70歳近いで。死んだらどうなるんや?」「郵便局にしときと言われて、押し切られました」と。
つまり、当社は無形のものを長期で売っている。テレビコマーシャルでライフネット生命という名前を売ることはできても、「この会社を信頼してもいい」ということは売れない。どうしたらいいかと言えば、やっぱりその会社を創った人や社員の顔を見て、そんなに悪いやつじゃないなと思ってもらう。そういうのがすごく大事なんです。
結局、会社のことを信じてもらおうと思ったら、経営者がどんなことを考えて生きているのか、どんな顔色してる人間なのか。「元気やな」「あと2〜3年働けそうやな」「こいつ元気ないからもうダメだな」とか(笑)。
(会場笑)
だから、本も講演も全部「ライフネット生命を信用してほしい」「信頼してほしい」ための仕事だと思っているので。そのほかには、なに1つ考えたことはありません。
質問者2:ありがとうございます。出口さんがおっしゃる、人・本・旅の中でご一緒させていただけているんだなと、ありがたく思っております。ありがとうございます。
出口:ありがとうございます。
運を掴むためには「イエス」が大事
はい、どうぞ。じゃあ、後ろの方から。
質問者3:今日は貴重なお話、ありがとうございました。
出口:「ありがとう」はカットしましょう。時間が足りなくなるので。
質問者3:あ、わかりました。
人・本・旅というお話だったんですが。人ってところは縁がけっこうあると思うんですけど。
出口:はい、ご縁です。
質問者3:それを、どうやったらうまく広げていけるんでしょうか。なにかコツみたいなものがあったら、教えていただければと思うんですが。