2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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出口治明氏(以下、出口氏):時間がなかったので、僕はなにをしているのかという話を省略しました。この大きい名刺に、僕がなにをしているか書いてありますから、2〜3枚持って帰ってください。
(会場笑)
なんで2~3枚かというのは、せっかくのご縁ですから、ライフネット生命のことを知ってほしいと思って。家の方にあげるとか、明日職場に行かれたら同僚の机の上に黙って置いておいてください。
(会場笑)
はい、じゃあ自由に手を上げてください。どんな質問でもけっこうです。
(会場挙手)
はい、どうぞ。
質問者1:今日は、とても勇気付けていただく話、また有意義な時間をありがとうございました。今日の話と直接的ではないんですけど、いいですか?
出口:あ、ぜんぜんいいですよ。
質問者1:出口さんが、生命保険からビルの管理会社に出向されて、サラリーマンだといろんな場面があると思うんですけど。そのときにもいろんな思いがあったんじゃないかなと思います。そのときに自分を奮い立たせたというか、あるいは言葉だとか。そのとき、どんな心境で、どんなふうに……今日の話の中に答えがあるのかもしれませんが、なにかあれば教えてください。
出口:なんにもないんです。
ものすごく単純に考えたら、例えばですね、社長を5年やると考えてください。大企業の場合ですが、新入社員が200人だと考える。そうすると、社長を5年やるということは、5年間に1人ですから、1,000人に1人社長になるだけです。それで、計算は合ってますよね?
ということは、係長か、課長か、部長か、役員かはわかりませんが、どこかの段階で999人はすべて左遷されるわけです。左遷されるということは、「俺、やっぱり多数派やったんやな」というだけのこと(笑)。
1,000分の1って、かなりの確率ですから、その時点で多数派が確認できるだけの話です。そんな当たり前のことで腐ったりしていたら、馬鹿馬鹿しいじゃないですか(笑)。
だから、たぶん腐る人は、自分は社長になれると傲慢にも思い込んでいる。なので、おかしいと思うという話ですね。
でも、冷静に考えたら1,000人に1人なんて、くじ引きのようなものなんで、「あ、ここでくじ外れたか」と思えばいいだけの話です。たぶん、冷静にどういう状況かを考えれば、落ち込む人なんていないと思います。だって、多数派のほうが多いわけですから。それでいいですか?
質問者1:はい。
スタッフ:ほかにご質問ある方、いらっしゃいませんか?
出口:なんでもどうぞ。
(会場挙手)
出口:はい、どうぞ。
質問者2:僕は54歳になるんですけども、折り返しだということで勇気をいただきました。出口さんがこれから10年、20年、ご自分でやりたいことはをおうかがいしたいです。
出口:答えは簡単で、ライフネット生命を大きくすること以外なにも興味がありません。
まだ140人の社員で、売上100億円の会社なので。1人7,000万円くらいしか売り上げていないし、生命保険業界は40兆の売上を持っているので、マラソンで言えば、400メートルのトラックを走り終えて、道に出たくらいのところです。せっかく始めた会社なので、これを大きくすること以外、なに1つ興味もなく外にやりたいこともないです。
急に会社がデカくなって「もうええわ」と思ったら、またそのときにやりたいことを考えればいいと思っています。
質問者2:そんな中で、ご本を書かれたり、あるいは、このようにみなさまの前でご講演をされたりというのは、出口さんの頭の中では仕事という概念を持ってらっしゃるのか、それとも……?
出口:100パーセント仕事で、ライフネット生命を知ってもらうことがすべてです。
大阪に話しに行ったとき若い人がきて「ライフネット生命、大好きです」「でも入ろうと思ったら、嫁に却下されました。悔しいです」と。
「なんで却下されたんですか」と聞きました。そうすると「生命保険は、終身保証してもらうんやで。あんたが入りたい言うから、ホームページをよく見た。ええ会社みたいや」「せやけど、あんた、こんな小さい会社、30年40年続くと思ってる?」「創業者の出口さんは70歳近いで。死んだらどうなるんや?」「郵便局にしときと言われて、押し切られました」と。
つまり、当社は無形のものを長期で売っている。テレビコマーシャルでライフネット生命という名前を売ることはできても、「この会社を信頼してもいい」ということは売れない。どうしたらいいかと言えば、やっぱりその会社を創った人や社員の顔を見て、そんなに悪いやつじゃないなと思ってもらう。そういうのがすごく大事なんです。
結局、会社のことを信じてもらおうと思ったら、経営者がどんなことを考えて生きているのか、どんな顔色してる人間なのか。「元気やな」「あと2〜3年働けそうやな」「こいつ元気ないからもうダメだな」とか(笑)。
(会場笑)
だから、本も講演も全部「ライフネット生命を信用してほしい」「信頼してほしい」ための仕事だと思っているので。そのほかには、なに1つ考えたことはありません。
質問者2:ありがとうございます。出口さんがおっしゃる、人・本・旅の中でご一緒させていただけているんだなと、ありがたく思っております。ありがとうございます。
出口:ありがとうございます。
はい、どうぞ。じゃあ、後ろの方から。
質問者3:今日は貴重なお話、ありがとうございました。
出口:「ありがとう」はカットしましょう。時間が足りなくなるので。
質問者3:あ、わかりました。
人・本・旅というお話だったんですが。人ってところは縁がけっこうあると思うんですけど。
出口:はい、ご縁です。
質問者3:それを、どうやったらうまく広げていけるんでしょうか。なにかコツみたいなものがあったら、教えていただければと思うんですが。
出口:答えを言えば、そんなものわかっていたら、苦労しないです(笑)。
(会場笑)
出口:人はものすごく厄介なんですよ。プライドも高いし、だいたいすべての人が自分の評価を3割から5割増しにしていますしね。それから、相性もあるでしょう? だから僕は、いい人に会うってものすごく難しいと思っています。
そうであれば、まずイエスしかないですよね。なにかご縁があったら、行ってみて、会ってみる。しょうもなかったら、「すみません」と言って席立てばいいだけなんで。コストはほとんどかからない。だからまず、イエスでたくさんの人に会ってみる。その中で、相性が合ったり「この人おもしろいな」と思う人と飲みに行く。あるいは、本を読んでみる。
そういう中で、自分に合う人、職場でもたぶんそうだと思いますけれど、ロールモデルとかができてくるんです。それはもう、運としか言いようがない。でも、運を掴むためにはまず「イエス」が大事ですよね。だから、軽々しく行くほうがいいと思いますよ。ご縁があれば。
学生にこういう話をしたら、「そんなに軽々しく誰にでもついて行った先が、怪しげな集団のパーティーだったら、どうしたらいいんでしょう」ってすごく心配する学生がいて(笑)。
(会場笑)
出口:そのときは、「すみません、ちょっと気分が悪いんで帰ります」と、それくらいの知恵あるやろと(笑)。
まず、イエス。オープンに自分を開かないと、人との出会いはないと思います。それでいいですか?
質問者3:わかりました。はい。ありがとうございました。
出口:はい、どうぞ。
質問者4:今、パレスチナのガザとかで、若者の起業家支援みたいなものをやっていて。若者の失業率をどうするかというので、起業したらいいんじゃないかみたいなことをやってるんですけども。出口さんから見て、途上国の若者の失業とかって、起業家支援以外になにか解決策みたいなものってあると思いますか?
出口:これ、本当に難問ですよね。歴史を見ると、偶然の要素がとても大きい。
例えば、(イツハク・)ラビン元首相が生きていたら、ひょっとしたらパレスチナ国家はもうできていたかもしれませんよね。でも、たまたま暗殺されて、オスロ合意がすべて御破算になってしまって。だから、クールに言うと、個々の努力で一所懸命やればできることと、やっぱりリーダーにしかできないことは、厳然とありますよね。
それを踏まえた上で、なにをやればいいかというと。僕は、途上国で一番大事なことは、自分でやったことはないので自信はないんですけれど、仕事を作ることに尽きると思っています。
どんな仕事でもいいので。人間は、仕事がなくて家にいると煮詰まってくるんですよ。お金は少なくてもいいので、きちんと働いて誰かのためになっているということが、人間の心身を一番正常に保ちます。
あえて言えば、できるだけ知恵を絞って、ささやかな仕事でもいいですけれど、ちょっとずつ仕事を作っていくことが一番大事じゃないかなという気がします。あまりいい答えが出なくてすみません。
質問者4:ありがとうございます。
出口:はい、どうぞ。
質問者5:出口さんは大変、読書家でいらっしゃるので。おすすめの歴史の本とか、私あまり歴史の本とか読まないので、これだけは読んだほうがいいみたいなものがあれば、教えていただきたいんです。
出口:自分の本で恐縮なんですけれど。
(会場笑)
出口:今、日本で売られている歴史の本の中では、新潮社さんに出していただいた、『全世界史講義Ⅰ・Ⅱ』が、一番いい本だと思います。
(会場笑)
質問者5:ありがとうございます。
出口:人の本だったらもっと勧めやすいんですけれど。でも、なんで勧めるかというと、「世界は1つで、人間の脳は進化してない」という原点からスタートしている歴史の本って、あまりないんですよ。
わかりやすい例を言えば2世紀の中頃、地球が寒くなります。寒くなったら、北にいた人は南へ移動するでしょう? 玉突きで。そうすると、山にぶつかるんですよ。まぁ最初にぶつかるのは、天山山脈ですけれど。めんどうくさいんでヒマラヤにぶつかったとします。
昔の人ですから、羊とか、馬とかいっぱい連れていますよね。ヒマラヤを越えたいですか? 越えたくないでしょう。どうしますか?
質問者5:近くで定住する。
出口:東西に分かれるでしょう。北から下がってきて、壁にぶつかったら、普通は東西に分かれますよね。「俺、東のほうが住みやすいと思う」「いや、俺は西や」「じゃあ、幸運を祈る。バイバイ」というわけです。
東へ行った人々が五胡十六国と呼ばれていて、西へ行った人々がゲルマン民族の大移動と呼ばれているのです。今は、ゲルマン民族はいないということになっているんですけれど。それは、ひとまず置いておいて。
このように教えてもらったら、理解しやすいでしょう? でも、こういうことを一切抜きにして、東洋史と西洋史を分けてしまって、「五胡という蛮人が入ってきて、16の国ができましたとか、ゲルマン民族の移動で、ローマの西の方が滅びました」とか、ちっともおもしろくないですね。
世界中、人間の歴史は全部つながっているんです。その因果関係を書いた本なので、もしお嫌いじゃなかったら1回読んでみてください。
名刺、お渡ししましたっけ?
質問者5:はい、いただきました。
出口:もし万が一、読んでまったく役に立たなかったら、代金は払いますから。
(会場笑)
出口:自分の本でなくても、人に勧めるってそういうことだと思うんですよね。自信があるから勧めるので。僕は人の本であっても勧めてしょうもなかったら、「代金を払いますから」って昔からずっと言っています。
質問者5:帰りに買って帰ります。
出口:ありがとうございます。
(会場笑)
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