幼なじみの2人が1つになったとき

MC:座る前にみなさん、ファッションを見てください。

中村展子氏(以下、中村):ちょっと今日図らずも信号機みたいになっちゃって……。

川野季春氏(以下、川野):そう、なんか間違っちゃって。全然話してなかったんですけど赤・青・黄色になっちゃって……。

中村:打ち合わせしといたのかな、逆に? みたいな(笑)。

MC:まずは私のほうでお2人を紹介したいと思います。伊佐市出身のデザイナー中村展子さんと、河野千春さんはオーガナイザーという仕事をしていますけれども、2人はデザインユニット「Quantize」をしています。

たぶん、どっちがどっちかすぐに分かると思います(笑)。小学校1年生から幼なじみの2人なんです。高校卒業後、それぞれ進路を進んで、偶然なのか、どちらもニューヨークへ留学し、帰国してから一緒にQuantizeというユニットを、ファッション業界に参入するために始めました。お互いの強みを生かしあって、「2人で1つ」のファッション・デザイン・パフォーマンスユニットを確立しました。

MC:これはいわゆる「ゲリラファッションショー」と言われるもので、パリで撮影したようです。ニューヨークの地下鉄だとか、パリのストリート。そういうところでゲリラファッションショーをやったり、ベルリンの日本大使館をランウェイにする、そういう誰もやらないようなことをする、というのをモットーに、新しいファッションの形を切り開いているQuantizeのお2人です。

MC:これは地下鉄のシーンですけれども、パリ、ニューヨークのストリート。あとはオーダーメイドのウェディングドレスだとか。テレビコマーシャルのコスチュームなども手掛けながら、デザインと運営の役割を絶妙なバランスで、お互いを尊重しあいながら、2人で共に働くスタイルをクリエイティブな仕事の在り方として、世界に刺激を与えながら活動しています。

世界を相手にファッション・アート・デザイン・エンターテインメント、その境界線を崩しているというふうに私たちは思っております。

自分の夢にリミッターをかける必要がない

MC:私のほうから、どんどん質問していきたいと思いますけれども、まずはオーガナイザーという仕事をされている季春さんと、デザイナーをされている展子さん。2人の役割分担はどういう風に決まってきたんですか?

川野:私たちは「あなたこれしてね、私これするから」って話し合ったことが1回もないんですね。お互いの得意分野をやっていたら、完全にきれいに分かれていたっていう。

中村:給食で「私、これ嫌いなんだよね」って言ったら、「私それ好き」って。そういうのがちょうどぴったり自然と合う2人という感じです。

MC:それが小1からずっと続いているということなんですね?

川野:そうなんですよ。なので、彼女がデザインとかお洋服の制作をするのが得意で、アイデアもいっぱい出す企画犯だったら、私はそれを実行する実行犯っていう。

MC:2人が言っているのは「班」ってグループのことじゃなくて、犯人の「犯」なんですよね。

中村:完全犯罪をしたい感じですよね。

川野:彼女、本当に犯罪レベルの無謀な夢をいっぱい私に言ってくるんですよ。あれもしたい、これもしたいって。「万里の長城でファッションショーをしたいんだけど、どうしたらいい?」とか、「飛行機の中で結婚式を挙げたいんだけど、どうにかしてよ」とか言ってくるんですよ。この間は、新作のストールができたから「これ、安倍総理に着てもらって『アベノミクス』とか言ってほしいよね」とか。

(会場笑)

中村:思いついたらすぐ言っちゃうんですけど、私の夢って無謀すぎるところがあって、それを超現実派のオーガナイザーが「安倍総理はいくらなんでもすぐは無理だから、でも県知事だったら人を辿れば、身に着けてもらえるかもしれないね」って、ちょっと身近なところの目標にすり替えてくれるんですよね。それでちょっとずつステップアップして進んでいくことができるんです。

川野:私は私でちょっと現実的すぎるところがあって、私の考えってすごいつまらないんですよ。なので彼女の大きな、大きすぎる夢をいっぱい出してもらって、そこから私のできるもので、ちょっと背伸びして届く範囲のものが目標になり、次のステップとして実行していくみたいなやり方なんです。

MC:展子さんのほうはもうフィルターかけないでバンバン無謀さを出しちゃっていいということ?

中村:それこそ実行犯がいてくれるので、私は自分の夢にリミッターをかける必要がない、もう好きに自由に全部出しちゃえみたいな。

趣味を仕事に変える実行力

MC: 2人で小学校の時から仲良しコンビでいろいろ「これやりたい、あれやりたい」って言ってるのは趣味の世界で留まってもいいはずなんですけれども、2人で実際にこれを仕事、キャリアにしちゃったという、その経緯はどういうことだったんだろうなぁと思うんですが。

川野:私は昔から人を笑わせたり、友達集めてイベントしたりっていうのがすごく好きだったので、大学の時にファッションショーを企画運営してたんですね。その時にデザイナーを目指して上京していた彼女を思い出して「大学でファッションショーするから一緒にやらない?」って声をかけたのがきっかけで。

中村:私も東京でお洋服を作ってたんですけど、専門学校じゃなくて、普通の大学で、独学でお洋服を作ってたんですよね。なので作ったお洋服を発表する場がなくて、これはいいチャンスだと。

MC:見せたくて、たまらなかったですか?

中村:そうですね(笑)。「作って持っていくよ」みたいな、そんな感じでした。7年ぐらい毎年学祭のファッションショーをやっていたんですけど、「2人でやってるとおもしろいね、楽しいよね」っていつも言っていて。私はファッションの世界でやっていこうと決めてたんですけど、彼女は公務員とかになりたかったんですよ。結構安定した職業を目指してて。

川野:大学は英語の先生を目指して英語を勉強してたので。

中村:私と一緒にファッションの人生に行ってくれないかなって、人の人生を左右するようなことを私からはとてもじゃないけど言えないなって思ってたんですよね。

川野:実はうちの父が陶芸家で焼き物を作ってるんですけど、苦労してたんで、だから私に公務員とか安定した仕事についてもらいたかったんですけど、急に「君は展子さんと一緒に会社を立ち上げたらどうだ?」って電話がかかってきて……。

MC:電撃電話だったんですね。

川野:あまりにもびっくりして「お父さんがこんなこと言ってるんだけどどう?」って言ったら……。

中村:それを聞いた瞬間にいいチャンスだと思って、「いやぁ、私も言いたかったんだよね、一緒にやろうね!」って。そこで絶対固めようと思いました。

MC:父の一言。

川野:そうだったんです。勢いで。

地下鉄で違法スレスレのゲリラファッションショー

MC:勢いでスタートしちゃったQuantizeなんですけど。そういう2人が無謀な夢を実現して、こういう海外ゲリラファッションショーを、という経緯なんですが、海外で簡単に楽チンにできるはずはないと思っていて、いろいろ苦労エピソードとかを聞けたらなと思うんですが。

川野:まず、初めて海外でショーをしたのが、ブランドを立ち上げて2年目のニューヨークだったんですけど、その時はもう資金もないし、人脈もないし、どうしよう? というところから始まって。その時、mixiとかFacebookとかそういうSNSを使ってボランティアスタッフを集めたり、テレビ局に何回も何回も「君、しつこいよ」ってプロデューサーに言われながらも、しつこいほど足を運んで「取材してください」って言ったり、そういう地道な努力をしながら。

中村:いざ見つけたモデルさんたちが、当日ドタキャンしたりするんですよ。そういうのがあるっていう想定も最初の頃はしていなかったので、「あれ? モデル8人使うつもりだったけど、実際5人だね。まいっか、じゃあ5人で行こう」みたいな感じだったりとか。いろいろテレビ局のカメラとかも入れてたし、PV撮るためのカメラマンとか、スタッフ50人ぐらい集まってくれてたんですよね。

MC:みなさんボランティアで?

中村:そうなんですよ。それでヘアメイクもして、ドレスも着せてって全部し終わって、「さぁ、いきなりゲリラで歩かせよう」って思って外見たら雷雨だったんですよ。

川野:さっきまでお天気だったのに、なんでこの瞬間で雨? っていうぐらいの雨が降ってきて。でもこれだけスタッフ集めて準備ができたのに、ファッションショーをやらないっていうわけにはいかないんで、「屋根、屋根、屋根……、じゃあ地下鉄でいいんじゃない?」みたいな感じでニューヨークの地下鉄でもうゲリラ的にランウェイをしたわけなんですよね。そしたらまたハプニングで、今度は5台ぐらいあるカメラマンたちが「もう撮影しません」って言い出したんですよ。

中村:「公共のものを写すのは違法だから怖い」って言って。

川野:でも「いいです」って。「私たちランウェイさえできればいいんで」って言ってランウェイをやってたら、その画自体がおもしろかったのか、カメラマンのカメラが回り出し……。

中村:いちばんノリノリでカメラマンが撮ってた感じだったんです。

MC:違法な……。

川野:(笑)。いつ捕まってもおかしくない状況の中やりました。

2人の根拠のない自信から生み出された無謀チャレンジ精神

MC:無謀が実現になったと。でも、いろんな失敗とかハプニングが続いてめげなかったですか? 2人はいつもなんだか、ニコニコ明るくて元気の塊っていう感じなんですけど、やっぱりそういうモチベーションを維持するのは大変じゃないですか?

中村:その時、すごいいい言葉にたまたま出会って。それが、口にプラスって書いて「叶う」っていう字になるんですよね。なので、口にプラスの言葉、ポジティブな言葉を出してたら叶うよねって言って、2人して……。

川野:根拠のない自信なんですけど。根拠のない自信の私、根拠のない自信がある中村、2人合わせてもっと根拠がない自信ができあがってました。

中村:無謀になっていくという感じです。

MC:小学校1年生からずっともう何十年も一緒に活動していて、やっぱり気になるのはケンカとかどういう風に解決してるのかなぁと……。

川野:よく聞かれるんですよね。私たちはケンカって思ってなくて、はたから見たらケンカレベルの言い合いみたいな話し合いをよくしてます。

中村:そうですね、2人でQuantizeの未来を決めていかないといけないわけなので、私たち、ほとんど24時間一緒にいるんじゃないかっていうぐらい、一緒にいた時もあったんです。けれども、こんなに近くにいても、夫婦とかもそうだと思うんですけど、話さないとお互いの心の中とか考えって全然わからないんですよ。

わかってたつもりでわかってくれてなくて、「なんで私の気持ちがわかんないの?」とか言いながら……。そんな感じで、泣きながら話し合いをします。そういう時は。

川野:最初は仕事の話し合いから始まるんですけど、だんだんお互いの人間分析が始まって、育ってきた環境、「あなたは1人っ子だからこういう考えになったのよ」とか人間分析を始めて、本当に心の奥底から話し合うっていうのをやっています。

中村:話し合った末に、2人の意見の折衷案をとるか、どっちかの意見をとるかっていうことになるんです。どっちかの意見をとった場合でも、「その意見でいいよ」って賛成した時点で自分の責任っていう風に、相手をそのあと責めたりしないっていうのは決めてます。

2人の生い立ち・生き方含めてのデザインでありブランド

MC:どこかでふたりでずっとQuantizeをすることをやめないって決めたって話を聞いたんですけれども?

川野:そうですね、Quantizeっていうブランドをやめるっていう選択肢さえあれば、解決するんですよ、簡単に。

中村:ケンカしたときにね。

川野:やめるっていう選択肢がないからこそ、苦しんで難しくて壁に当たっていくんですけど、やめる選択肢が今のところないのでぶつかってます。

中村:(笑)。

川野:ぶつかり合ってます。

MC:何がQuantizeという2人のユニットをユニークなものにしているのでしょうか?

中村:取材されて私たちも気づいたんですけど、ゲリラショーのあとに新聞とか雑誌とかいろいろ載せていただいたときに、なんかどうも見出しが「同級生コンビ」とか、そんな感じなんですよね。私たちの洋服とか、デザインそのものだけにみなさんが魅力を感じてくれて、応援してくださっているわけではなくて、私たちの考え方とかライフスタイルとか、そういう私たち自身みたいなものに注目していただいているんだなぁっていうことに気付いて。

川村:ドレスとかいろいろ商品はあるんですけど、私たちの商品って、実は自分たちも商品というかブランドなんじゃないかなっていうのには気付きましたね。

MC:じゃあみなさん服を選んでるんじゃなくて、2人を選んでるっていう、そういう感じがしますけど。特に同級生っていうのを売り出したわけじゃないのに、いつの間にかそれが表に出てきているという感じなんですね。それは、そうなるでしょうね。

中村・川野:ははは(笑)

バラバラで美しい最高のリズムを作る

MC:そろそろ時間になりましたので、Quantizeの2人から会場のみなさんへメッセージをひとことお願いします。

中村:「Quantizeってどんな意味なんですか?」ってよく聞かれるんですけど、「バラバラのリズムを組み合わせて最高のリズムを作る」っていう音楽用語なんですよ。私はこの言葉に大学生の時に出会ってて、その時にたまたま知り合った詩を書いてるおじいちゃんに「バラバラのリズムを組み合わせて~っていう意味なんです」ってQuantizeの意味のことを言ったんです。

そしたらおじいちゃんの顔がパーッて明るくなって、「へぇ、そうなんだ~。僕だったらバラバラの言葉を組み合わせて最高の詩を作るって言えるよね、僕もQuantizeってできるね」って言ってくれて。本当にその時、私は嬉しくて、この言葉でこうやってブランドをやっていこうって思いずっと続けてます。

川野:結局ずっと私たちも、見た目も中身も性格も全くバラバラの2人が1つのことをやってるわけなんですよ。それってQuantizeなんですね。でもそれってみなさんにも言えることだと思って。実は身近にいる仲間とか、家族とか、兄弟とかで、一緒に何かをやったら楽しいことができる存在が近くにいるんじゃないかなっていうのは思いますね。ぜひみなさんもQuantizeっていう言葉を心にとめて、周りに何かワクワクする人がいないかなって探してみたらいいんじゃないかなと思います。

MC:バラバラで美しい最高のリズムを作る、Quantizeでした。みなさん、ありがとうございました。