カーブボールはなぜ曲がるのか

ステファン・チン氏:平均的な人間が、見たものに反応するのに4分の1秒を必要とします。これは、目から脳へ信号が移動し、そして筋肉に戻るのにかかる時間を示しています。4分の1秒はそれほど長くありませんが、しかしながらこの時間の誤差は、実際には野球の打撃のように複雑です。

プロフェッショナルの水準では、ピッチャーマウンドからホームベースまで投球が届くのに、2分の1秒しかかかりません。つまりボールを打つには、ホームベースに届く途中ですぐにバットを振り始めなくてはなりません。脳が、ボールがどこに行くのか予見することにより、ボールが届く前にそれを可能ならしめるのです。

つまり、バッターが予期する場所より、数センチメートル離れたところに投げることのできるピッチャーは大変有利なのです。このような投球は変化球といいます。さまざまな種類の変化球があります。最も有名なものは、カーブボールで、通常よりも投球が速く下に落ちます。

変化球は、マグヌス効果(一様流中に置かれた回転する円柱または球に、一様流に対して垂直方向の力がはたらく現象)として知られるものを応用したもので、ボールの回転は、方向を変えるように周囲の空気の干渉を受けます。以下はその仕組みです。

ある物体が空中を動くとき、空気の分子は、境界層と呼ばれる厚い層として物体に粘性をもって張り付きます。そして、ボールの表面を少々引っ張りながら、それから分離します。この分離が起こる地点というのは、カーブボールが想定するよりも速く落下するための重要な部分なのです。

カーブボールを投げるとき、投球する方向に向かって、ボールの上辺が投球者から離れ、ボールの下辺が投球者の方へ近づくように、トップスピン、つまり順回転をかけます。一方、空気は、ボールの上辺と下辺の両方を覆うように流れます。ボールの底部は、通り過ぎて流れる空気によって回転し、境界層はより長くボールに張り付き、ボールの背後に向けて回り込み曲がります。

一方でボールの上辺は、通り過ぎて流れる空気に対抗するように回転し、ボールの背後で曲がる前に境界層はより早く分離します。全体的な効果として、回転する方向にボールの背後の空気を歪ませながら、ボールがその周囲の空気を引きずるのです。

カーブボールがトップスピンをもつときは、ボールの背後の空気は上へ向かって歪みます。そして、空気を上方に押し上げながら、飛行経路を変え、ボールを反対方向に向かわせます。これがマグヌス効果です。才能あるピッチャーは、マグヌス効果を有効活用しさまざまな方向にボールを回転させることができます。

ボールにトップスピンを与えることで、突如として落下するカーブボールを仕掛けることができます。しかし、バックスピンを与えれば、重力に逆らいより直線的な経路をとる原因になります。このために、積極的に物理的な回転をボールに与えるのです。

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