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慶應義塾大学教授鈴木寛×DMM会長亀山敬司対談(全5記事)

DMM亀山会長「みんなより俺の『おっぱいだ!』の方が深みがある」 金でも権力でもない“人生の着地点”とは

元文部科学副大臣の鈴木寛氏が主宰する、慶応義塾大学の「すずかんゼミ」で、ゼミ生が対談を企画しました。スピーカーは鈴木寛氏とDMM.com 取締役会長の亀山敬司氏。2016年12月15日に行われた、この対談の内容を5回に分けてお届けします。今回は第5話。亀山会長が、自分の言葉で語れるようになる方法や個人としてのビジョンについて語りました。

「リツイート」や「シェア」ではなく自分の言葉で語ること

学生:亀山会長は今でも1人で旅に行かれるんですか?

亀山敬司氏(以下、亀山):3~4年に1ヶ月くらいね。かみさんの許可もらって(笑)。

日常の中にずっといると、家族や社員との関係も見失いがちだけど、旅に出ると頭の中が1回リセットされる。「帰るところがあるのはいいな」とか、「ちょっと将軍様になりかけてるな」って自分を見つめ直す時間もできるね。

みんなも学生から社会人になると日常に追われて流されちゃう。狭い人間関係、価値観でしか考えられなくなる。だからこそ、今のうちに日本での日常から自分を切り離すのは価値のあること。そのためにどこかの国に行ってもいいし、別に旅じゃなくて座禅でもいいわけ。自分たちがいかに日頃、なにも考えていないかがわかればいい。

ただ、そんな時はスマホを置いていくべきだね。スマホを見ている時は思考が止まっちゃうから。情報はどんどん入っているかもしれないけど、思考自体は働いていないんだ。「俺はスマホを見ながら考えている」と言うかもしれないけど、考えてるのはスクロールの手を休めたときだよ。

昔は電車やトイレでボーっと考えてた人も、今は四六時中スマホを見てる。人が物事を考えるのは、友達とワイワイ話してるときじゃなくて、その帰りに1人で夜道を歩いてるときだよ。

スマホで繋がっているならどこに行っても一緒だよ。スマホがなくても、過去の記憶だけで思考は十分に働くから。

「昔、なんであの子とケンカしたんだろう」「そういえば、あいつともケンカしたな」「何人もケンカしてるってことは、もしかしたら俺が悪かったのか?」「あいつらが悪いってずっと思ってたのに違うのか?」とか、そんなことを考えたりもするよ。

自分で読んだ本もデータとして残っていて、太宰治だろうが、ワンピースだろうが、読んだときは奥に入ってこなかった言葉が頭には溜まってるんだ。誰かの言葉もそうだよね。政治家の話でもマツコ・デラックスの言っていたことでもいい。聞いたことある話や心に残った言葉も、過去の記憶として山ほど頭の中にある。

人の言葉とか文章も、今までの自分の体験と混ざっていくと、それらが編成されて本当の「自分の言葉」になってくるんだ。「あっ、そういえばあの言葉って今の俺に当てはまるな」って、後で同じ本を読み直したらまた違う見え方になったりもするよ。

そこで、自分で自分の言葉を生み出すんだ。誰かの言葉を「リツイート」や「シェア」をするんじゃなくて、自分の言葉で語れるようになっていくはずだよ。

自分の言葉を育てるには、若ければ若い方がいい

俺の話もどこかに載っていた話があるのかもしれないけど、俺自身さえそれを忘れて、色々混ざって、「自分の言葉」にしている。それは借りものじゃなくて、俺の体験に裏づけされた言葉だから「俺の言葉」。だから、俺の言葉がいくらかみんなの心に刺さるとするなら、それは自分の体験に今まで心に残った言葉を混ぜて「自分の言葉」として発しているからじゃないかな。ただ単に「マルクスはこう言ってました」という話を聞いてもピンと来ないじゃない。

自分の言葉を育てるには、若ければ若い方がいい。年を取るとしんどいんだよね。外に出るのもしんどいし、考えるのもしんどい。若いパワーがあるうちに外に出てみた方が、思いきったこともできるよ。

あと、若いうちならバカなことをしてもシャレで済む。「20代にこんなバカなことやってました!」ってネタになるからね。同じことを50歳過ぎてやったら、ただのバカなオヤジだよ。

ビートたけしさんがストリップ劇場で前座をやっていたっていう話も、笑いになっているじゃない。「若い頃にいろいろやりました~」っていうのが誇りになるわけよ。

俺も19歳の時に童貞を捨てようとストリップのまな板ショーに出たり、カネを貯めるために新宿二丁目のゲイバーでアルバイトしてたのはネタになるよね。

俺の仕事は、裸のムキムキマンの後ろでビキニパンツ一枚で踊るバックダンサーなんだけど、ショーが終わったらお客に付いてお酌するのよ。おじさんに「肌がすべすべだね」って太ももさわられながらね(笑)。

ところが不思議なもんで、はじめは「キモい、勘弁してよ」って思ったんだけど、そのおじさんが別の男に言い寄るところを見ると、逆に妬けてくるのよ。

(会場笑)

そんなバカな話でも、そのときに自分でも「こんな感情があるんだ」って気づくじゃん。「こんな状況でも負けたくないの?」って。新鮮な体験だよ。だからその後、友達とおっぱいパブに行っても、俺も似たような経験しているから「この娘たちも色々大変だな」と、働く子の気持ちが少しはわかるわけ。

だから、みんながおっぱいパブで「おっぱいだ!」って喜んでるのと、俺が「おっぱいだ!」って喜んでるのでは、俺の方が深みがあるのよ。俺はかわいい子でもブスな子でも、「おっぱいだ!」って喜んでいけるからね(笑)。あれ? なんの話してんだ。すみません、下ネタになりました。

(会場笑)

「昨日よりちょっとマシになったな」と思いたい

司会:はい、最後にもう1人。

学生:ビジョンを持たないっていう点について、「DMM.com」が企業としてビジョンを持たないっていうのは納得したんですけど、亀山さん個人としてはビジョンを持たずに生きているのかを気にしながら聞いていました。

先ほど、さらっと「自分が死ぬときに大切な人が周りに居てくれたら嬉しい」とおっしゃっていたんですけど、自分の人生の着地点みたいなもの、自分個人のビジョンみたいなものがあったら詳しく聞いてみたいです。

亀山:さっき言ったことも今はそう思ってるだけで、その時にならないとわからない。「やっぱり、おっぱいに囲まれて死にたい」と思うかもしれない(笑)。

(会場笑)

結局、「いつまでも進化していきたい」っていうことなんだよね。俺は今55歳だから、56、57って、ちょっとずつ変わっていければいいかなって。

俺は50歳まで人前で話せなかったんだよね。今日くらいの人数だったら「か、か、亀山です」って、どもってしまうくらい上がり症だった。人前に出れなかった。

でも、ちょっと自分を変えないといけないなって思って、少しずつトライしたんだ。初めて講演に行く時も、みんなの方を向いてしゃべるなんて無理だから、横にいる対談者に向かってしゃべってなんとかしてた。そこから、ちょっとずつみんなの方を見れるようになって、少しずつしゃべれるようになってきたの。だから、ちょっとずつ変えていったり進化していくっていうことかな。

やっぱり年を取ると、ボケはじめるわ、体力は落ちるわってなるわけじゃん。若いと裸で立っていてもカッコイイけど、年を取るとブヨブヨ。

銀座に行っても、金を使って権力をみせつけた方がモテるじゃない。だから、多くのオヤジが20代の男よりモテようとしたら、そういう方向に行っちゃう。しょうがないんだけど、見ていてカッコイイとは思わない。

やっぱり、自分の中で「昨日よりちょっとマシになったな」って思いたい。できればそれが金とか権力じゃなくて、友達の数でもいいし、今みたいにちょっとずつしゃべれるようになるとかでもいい。少しでも進化していくことは人にとって重要だよ。年を取って失った部分を何で補うかが大事だよね。

自分で自分がカッコイイと思えるのが一番幸せ。どうせ自己満足なんだから、誰がどう思うかより俺がカッコイイと思えたらいいわけ。周りから見たら脱落した人間に見えても、本人がカッコイイと思えればいいのよ。

鈴木:本日はとても学びの多い時間となりました。亀山会長ありがとうございました。改めて拍手。

(会場拍手)

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