2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ) 卒業式スピーチ(全1記事)
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マーク・ザッカーバーグ氏:この場所、最高ですね。みなさん、雨の中お集まりいただいてありがとうございます。今に「雨の中でも来る価値があった」と思っていただけるかと思いますよ。
ファウスト学長、理事会のみなさま、教職員のみなさま、OBのみなさま、友人、誇らしげに座っているご両親、顧問委員会のみなさま、そして、世界で最も素晴らしい大学の卒業生のみなさん。
今日はみなさんをとても誇りに思います。認めるのは辛いのですが、みなさんは僕ができなかったことを成し遂げたのですから。もしこのスピーチを無事にやり遂げたら、これがきっと僕が最初にハーバードで何かを成し遂げたという実績になるでしょう。2017年度卒業生のみなさん、本当におめでとう!
僕は普通とは違ったスピーカーかもしれません。中退したからというだけではなくて、形式的には僕たちは同じ世代に生きていますから。10年もたたないくらいに、同じこの道を歩いて、同じ思想を学んで、同じEC10(経済学の講義)で居眠りをしたのですから。ここに来るまでには、それぞれ違う道のりを歩んできたことかと思います。
もしもあなたが、はるばるクワッド(ハーバード大学のあるエリアの総称。メインキャンパスから、かなり離れた位置にある)から足を運んでくれているなら、とくに。本日は、僕たちの世代について学んだこと、そして一緒に創り上げていくこれからの世界について思いを共有できたらと思います。
お話の前に、少しだけ。実はここ数日間で、昔の素敵な思い出をたくさん思い出しました。ハーバードから合格通知をもらったとき、どこでなにをしていたか正確に覚えている人はいますか?
僕は『Civilization』というテレビゲームをしていました。階段を駆け下りて、父を見つけると、なにを思ったのでしょう……彼の最初のリアクションは私がメールを開ける瞬間をビデオで撮影することでした。もしかしたら、ものすごく悲しいビデオになるかもしれなかったのに。
でも、これだけは確信しています。ハーバード大学に入学したことは、両親が僕について一番誇りに思っていることなんです。ほら、母もうなづいていますね。君たちならわかるでしょう、ここにいるのがどんなに大変なことか。ここを出た後も、それを実感できますよ。
ハーバードでの最初の講義を覚えている人はいますか? 私は、コンピューター・サイエンス121でした。素晴らしい、ハリー・ルイス教授の。ハリー?
(教授を見つけて、拍手)
私は講義に遅刻しそうだったので、慌ててTシャツを着ていました。そのせいで、Tシャツの前後ろを反対に着ていて、背中のタグが前に来ていたのですが、ずっとそれに気がつかなかったのです。「どうしてクラスの誰も話しかけてくれないのかな?」と思っていました。
ただ1人、KX・ジンを除いてはね。彼は僕に話しかけてくれて、この問題を解決してくれました。今、彼は「Facebook」の中核を担う仕事をしてくれています。この話からわかるように、2017年度卒業生のみなさん、人には優しくしておくべきですよ。
でも、ハーバードでの一番の思い出は何よりもプリシラに出会えたことです。ちょうど僕はそのとき、いたずら心から作った「Facemash」というWebサイトを公開していて、顧問委員会の方からぜひ僕に「会いたい」とお声かけがあったのです。
誰もが僕が大学を辞めさせられると思ったのでしょうね。両親はわざわざ車で、荷物をまとめるのを手伝いに来てくれました。友人たちは送別会を開いてくれましたよ。
いったい誰のアイデアなんだか……。でも幸運なことに、そのパーティーにプリシラが友人と一緒に参加していたのです。僕たちはベルタワーのトイレの列で出会い、そこで僕は振り返って最高にロマンチックな台詞を彼女に言いました。
「たぶん3日以内には退学させられるから、できるだけ早目にデートしない?」って。今日ここにいる卒業生のみなさん、誰でもこの台詞を使っていいですよ。「今日退学させられるから、早くデートに行こう」って。
結局、退学は免れましたが、自主的に大学を辞めました。プリシラとは2人で会うようになりました。映画では、FacemashがFacebookを立ち上げるためには重要な役割を果たしたかのように描かれていますが、実際は違います。
けれど、Facemashがなければプリシラには出会えなかったでしょう。プリシラは、僕の人生の中で最も大切な人です。だからFacemashが、僕がここで作ったものの中で一番大切なものだと思っていただいてもかまいません。
僕たちは、ここで生涯の友を得て、また何人かは家族を得るかもしれません。だから僕はこの場所に心から感謝しています。ありがとう、ハーバード。
本日は、目的についてお話をしたいと思います。けれど、「あなたの目的を見つけなさい」というような一般的なスピーチをするためにここにいるのではありません。僕たちは、ミレニアル世代です。直感的に、目的を見つけようと努力しているはずです。
その代わり「あなた自身が目的を持つだけでは不十分である」と伝えるためにここに来ました。私たちの世代は、世界中すべての人が確かな目的を持てるような世界を創造することです。
お気に入りの話をしましょう。ジョン・F・ケネディ大統領がNASAを訪れた時、ホウキを持った管理人に歩みより、なにをしているのかと尋ねました。彼はこう答えました。「大統領、私は人類を月に送り届ける手助けをしているのです」
目的とは、僕たちが自分個人よりももっと大きな規模でなにかと関わっていて、誰かに必要とされていると感じること、だからこそもっと良い仕事ができるという感覚のことです。
目的は、真の幸福を生み出すもののことです。あなたたちは卒業する今この時代にこそ、まさに必要とされているものです。僕たちの両親が卒業した時代では、目的とは主に仕事、教会や所属しているコミュニティから得られるものでした。
けれど昨今では、技術と自動化の発達により多くの仕事が奪われています。組織の一員であるということの価値は下がり、多くの人は孤立感を味わい、落ち込み、虚無感を感じそれを埋めようと努力しています。
かつて、いろいろと旅をしていたとき、少年鑑別所の子どもたちやアヘン中毒者の子どもたちが、私の隣に座って「もし、なにかするべきことがあったら、学童保育や他に居場所があったなら、もっと違う人生を歩めたかもしれない」と教えてくれました。
今までやってきた仕事がなくなってしまったという工場の従業員たちにも会いました。僕たちは、彼らのこれから先の未来を見つけていかなければいけません。
この社会全体を前進させるためには、この世代全体の課題です。仕事を作るだけではなく、新しい「目的をもつことの意義」を作っていかなければいけません。
あの小さなカークランド寮の部屋から、Facebookを世に送り出したときの夜をよく覚えています。友人のKKとNoakes(レストラン)に行って、彼にこう言ったのを今でもよく覚えています。
「ハーバード大学のコミュニティ同士を繋げる手助けができたのはとてもうれしい。でもいつの日か、誰かが世界中の人々を繋ぐ日が来るのだろう」
ここで重要なのは、その誰かが自分たちだろうなんて思いもよらなかったことです。だって僕らはただの大学生で子どもでしたから。なにも知らなかったし、世の中には巨額の資産を持ったIT企業がたくさんありましたから。そのうちの誰かがやるだろうと思っていました。けれど、人々が繋がりを求めているということは確信をしていたので、そのまま進みつづけました。来る日も来る日も。
みなさんの多くも、似たような思いを抱いているのではないでしょうか。世界が変わろうとしているのは明確なのに、誰かがやるだろうと思っている。けれど、違う。あなたです。
けれど、あなたが目的を持つだけでは十分ではありません。他の人にも、目的を持つ意義を感じてもらわないといけません。私にとってそれは、決して簡単ではありませんでした。私の目的は、会社を設立することではなく、世の中にインパクトを与えることでした。
多くの人が一緒に仕事をしてくれるようになり、私は彼らも同じ目的を持っているのだと思いこんでいました。だから、これからなにをなしたいかについて話す機会を設けませんでした。
数年後、大企業のいくつかが私たちの会社を買収したいと申し出てきました。売りたくありませんでした。もっとたくさんの人を繋げていきたかったから。ちょうど初めてのニュースフィードを開発していた時で、これを成功させたら人々が世界情勢をどうやって知るのかを変えることができると思っていました。
ほとんど全員が、売却したいと考えていたのです。高い目的意識なくしては、これがスタートアップ企業の夢が叶った瞬間だったのでしょう。この一件は、社内分裂の引き金でした。
ピリピリと張りつめた会合のあと、親しいアドバイザーの1人が、「この買収に今すぐ賛成しなかったら、これからの人生ずっとそれを後悔することになるぞ」と言い放ちました。1年かそこらで人間関係はぎくしゃくして、マネジメントチームは1人残らず去っていきました。
これがFacebookを経営していて最も辛い時期でした。自分がしていることを信じていましたが、孤独でした。しかも悪いことに、これは自業自得です。ただ間違えていただけならどんなによかったか。世の中の仕組みも知らない、ただの22歳の子どもが、ただ人をだましていたのです。
何年かして、今は「高い目的意識があってこそ物事は動く」と理解しました。それを作るのは私たちにかかっています。だから、一緒に前へ進んでいきましょう。
本日は、すべての人が目的意識を持てる世界を作るための3つの方法をご紹介します。価値のあるプロジェクトを一緒に成し遂げること、公平さを追求し、すべての人が自由に目的を持てるようにすること、世界中でコミュニティを作ること。
初めに、意味のあるプロジェクトについてお話ししましょう。今この世代は、自動運転の自動車やトラックのような自動化によって、数千万もの仕事が奪われていて、それに対処しなければいけません。けれど、僕たちには一緒にそれ以上のことができる能力が兼ね備わっているのです。
どの世代にも、それを代表すべき仕事があります。30万人以上もの人が人類を月に到達させるために尽力しました。あの管理人も含めてね。何百万人ものボランティアが、世界小児麻痺の予防接種を普及するため世界を飛び回っています。何百人もの人が、フーバーダム建設などの偉大なプロジェクトに従事しています。
これらのプロジェクトは、ただ人々にこの仕事をやるという目的を与えているだけではありません。彼らの仕事は、この国全体に「私たちはこれだけ素晴らしい仕事ができる」という誇りを教えてくれるのです。
さあ、次は私たちの番です。「ダムの建設方法なんてわからないし、何百万人もの人を巻き込む方法なんてわからない」と思っているでしょう。
とっておきの秘訣をお教えしましょう。始めたときは、誰だってそう思っていました。アイデアは完ぺきな形では降りてきません。取り組んでいるうちに、やがて明確になっていくのです。とりあえず、始めましょう。
もし人々を繋げていくにはどうしたらいいかを把握していたら、僕はFacebookを設立しなかったでしょう。映画や私たちの身近にある娯楽は間違っています。
いわゆる「アハ体験」(不思議なひらめきを感じる体験)にまつわる話はまったくの嘘で、信じては危険です。これらは、「まだその瞬間がきていないから、その時ではない」と信じ込ませてしまうからです。貴重なアイデアの種を、咲かせられずにそのまま終わらせてしまうかもしれません。
あ、発明について、映画が間違っていることをもう1つ。誰も数式を窓ガラスに書いたりしないよ。これ、覚えておいてね。
理想を求めることは良いことです。でも、誤解されるかもしれないということは覚えておいてください。もしあなたが正しいことをしていても、より大きな野望を持っている人は「変人」だと周囲から言われます。
複雑な問題に取り組んでいる人は、「問題を完全に理解していないのでは?」と非難されるでしょう。最初から先行きを見通すのが難しい場合でも。先陣を切って歩く人は、「早急すぎる」と非難されるでしょう。あなたの足を止めたい人がどこにでもいるから。
私たちの社会では、失敗を恐れるあまり大きなことをなそうとはしません。なにもしなければ、間違ったことをそのまま受け入れてしまっていることになるのに。現実的には、私たちがなにをやっても、それが未来の結果に繋がります。でもそれは、なにかを始めることを辞める理由にはなりません。
では、なにを待っているんですか? 今こそ我々の世代が偉大なる仕事を成し遂げるときです。地球が壊れてしまう前に、地球温暖化を止めるのはどうでしょう。そして、何百万人もの人を巻き込んで、太陽光パネルを製造するのは?
あらゆる病気を治療して、ボランティアの人たちに自身の健康データや遺伝子情報を調べてもらうのは? 今、私たちは治療方法を開発する投資に、病気の人々を治療する50倍ものお金を使っています。
だから、私たちはまず病気にならないといけない。こんなの馬鹿げている。さあ、変えていきましょう。民主主義をもっと近代化して、オンラインで投票できるようにしたら? 教育をもっと身近なものにして、誰でも学べるようにしたら?
これらのことはすでに目の前にあります。誰もが社会の中で役割を持てるように、すべて試してみましょう。大きなことを成し遂げましょう。過程を作るだけではなくて、目的を作るために。
意義のある仕事を成し遂げることは、誰もが目的意識を持てる社会のためにできる最初の1つです。
2つ目は、すべての人に目的を持つ自由が与えられている社会を作るために、平等さとはなにかを突き詰めていくことです。
僕たちの親のほとんどが、安定した仕事に就いてきたことでしょう。でも今、私たちは全員、新しい事業を始めたり、それぞれの役割を自ら見つけたりする起業家です。素晴らしいことです。起業家たちの歴史は、たくさんの過程を生み出してきました。
起業家文化は新しいアイデアを試すのがとても簡単なときに盛んになります。Facebookは最初に立ち上げたアイデアではありません。チャットシステム、ゲームや勉強ツールに音楽プレイヤーも試しました。僕だけじゃありません。
J・K・ローリングは、『ハリーポッターシリーズ』を出版する前に12回も出版を断られました。ビヨンセも、『Halo』をリリースする前には何百もの曲を作っていました。偉大なる成功は、失敗できる自由からきているのです。
けれど、現代にはすべての人を傷つける貧富の差が存在します。もしアイデアを試し、それを歴史的な大企業にまで押し上げる機会がなければ、我々の負けです。昨今では、成功した人々に巨万の富が与えられますが、新しいことに挑戦しようとしている人には十分なものは与えられません。
さあ、向き合いましょう。社会のシステムは間違っている。僕がここを出てから10年で何十億も稼いだ一方で、何百万人もの生徒が学生ローンを払えずに事業を始められずにいる。
僕は何人もの起業家を知っていますが、誰一人として「あまりお金が稼げなさそうだ」と事業を始めることを諦めた人はいません。けれど、「もし失敗したらもう元の生活には戻れないから」と夢を追い求めるのを諦めた人たちを何人も知っています。
「いいアイデアや懸命に働くだけでは成功はなしえない」と我々全員が知っています。幸運によって、成功を掴めることもあります。もしコードを書く代わりに家族を養っていかなければならなかったら、Facebookがうまくいかなくてもなんとかなると知らなかったら、今日ここには立っていないでしょう。正直に言うと、我々全員が今ここに至るまで自分たちがどれほど幸運であったかを知っているはずです。
すべての世代で、平等の意味は異なります。私たち以前の世代は、選挙権と市民権のために戦いました。「ニューディール政策」や「偉大な社会(政策)」がいい例です。さあ、今こそ私たちが新しい社会のあり方を示すときです。
GDPのような経済指標で測れるものではなく、どれだけの人が意義のある役割を持てるかを測れるような社会にするべきです。
全員が新しいことに挑戦できるセーフティネットとして、最低限の保障を与えられるよう尽力すべきです。何回も転職をする時代だから、1つの企業だけに紐づいているのではない、充実した育児制度と健康保障が用意されているべきです。
誰でも間違いを犯します。なので、誰かの足を引っ張ったり汚名を着せたりするような風潮を少なくするべきです。技術がどんどん変化していく中で、もっと教育の機会を増やすべきです。
そしてもちろん、すべての人々は目的を持てる社会にするためには、お金がかかります。そして私のような人がそれを担うべきです。ここにいるみなさんも、やがて成功をおさめたら、その役割を担わなければいけません。
ですので、プリシラと私は、「チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ」を設立し、平等な社会実現のために投資をはじめました。これらは、私たちの世代全体において価値あることです。なぜこの活動を強いるのかと疑問に思ったことはありません。問題はただ1つ、いつやるかだけ。
ミレニアル世代は、歴史上最も慈愛に満ち溢れた世代です。この1年で、アメリカ人の4人に1人のミレニアル世代が寄付をして、10人中7人がチャリティー活動のために立ち上がっています。
お金だけの話ではありません。時間をかけることもできます。断言するよ。1週間に1時間か2時間だけでもいい。誰かに手を差し伸べて、その人が持っているはずの才能を生かす手助けをしてみてほしい。
「そんな余裕ない」と思うかもしれません。僕もそうでした。プリシラはハーバード大学を卒業して教師として働くようになりました。
僕が彼女と教育に関する仕事をする前、彼女は僕に子どもたちになにか教えてあげてと言いました。文句を言いましたよ。「忙しいから。僕は会社を経営しているから」ってね。
けれど彼女はずっとそれを僕に薦め続けました。だから僕は地元のボーイズ・アンド・ガールズクラブで、中学生に起業家精神について教えました。
いかに製品を開発するかについてと、マーケティングについて教えました。そして、彼らは僕に人種によって差別されることや家族が刑務所にいる気持ちがどんなものかを教えてくれました。
僕は学校にいる間、自分のストーリーを話し、彼らはいつの日か大学に行きたいという夢を語って聞かせてくれました。
あれから5年経った今も、毎月あの子どもたちと夕食を一緒にしています。彼らの1人は、僕とプリシラに初めての子どもが出来たとき、ベビーシャワー(アメリカの出産祝い)を開いてくれました。翌年、彼らは1人残らず大学に入学しました。彼らの家族の中で、始めてのことでした。
誰かに手を差し伸べる時間は作れます。すべての人に、自由に目的を持てる社会を作りましょう。それが正しいことだというだけではなくて、よりたくさんの人が夢をかなえられることができて、素晴らしいことを成し遂げたなら、私たち全員がより良い社会を作れるから。
目的は、仕事からのみくるものではありません。すべての人が目的意識を持つために必要な3つめの方法は、コミュニティを形成することです。我々の世代が「全員」と言ったとき、それは世界中の誰もが、という意味ですよ。
手を挙げて。海外から来た人は? そのまま手を挙げていてください。今手を挙げた人の友人は? 今、僕たちは話をしています。僕たちは、繋がりのある社会で育ったんです。
世界中のミレニアル世代を対象に行った調査で、自分たちのアイデンティティを形成しているものはなにかと聞いたとき、最も多かった答えは国籍でも宗教でも文化でもなくて、この世界で生きているということでした。これは驚くべきことです。
どの世代も「私たちはここの一員だ」という人同士の輪を広げてきました。今我々の世代では、それが世界中すべてにまで広がっているのですから。
歴史上での偉大な出来事は、小さな集まりから市へ、市から国へとより大きな範囲へと広がり、その大多数の力によってなされてきました。決して1人の力では実現しなかったでしょう。
我々の前に広がるチャンスは、今や世界的レベルのものなのです。僕たちは、貧困と病気に苦しむ人たちに終止符を打つ世代です。立ちはだかる困難には、世界レベルでの対応が不可欠です。
地球温暖化や伝染病予防に、1つの国だけでは戦えません。一緒に歩んでいく道が必要です。市町村や国レベルではなく、世界中のコミュニティのために。
けれど、我々は不安定な時代に生きています。世界のグローバル化が進む中で、その仲間に入れないと感じている人がいる。もし、今ここでの生活に満足していなかったら、他の場所に住む人たちのことを案ずるのは難しいでしょう。そういうときは、自分の世界しか見えなくなります。
私たちの時代にとって、とても難しい問題です。自由であることへの圧力、オープンさ、世界規模でのコミュニティ、そしてそれに反対する独立主義、孤立感や国家主義。知識を受け継ぐこと、貿易や移民、それに反対し足を引っ張る人たち。
これは国家間の争いではありません。知識同士の争いなのです。どの国にも世界的繋がりを重んじる人がいて、「いい人」はそれに反対するのです。
これは、国連が決めたレベルではありません。もっとローカルな問題で、もし十分な数の人々が目的意識を持ち、自分たちの生活に安定さを感じられたのなら、すべての人たちを助けたいと思うようになるはずです。一番いい方法は、まず小さなコミュニティから始めることです。今すぐに。僕たちは、所属しているコミュニティから常に安心感をもらっています。
エリオット寮出身の人は? ロエル寮の人は? 文字通り、お互いに規則正しい生活を送ってきたから、コミュニティの大切さがよくわかっているでしょう。お母さんは? いや、ただ聞いただけです。
家や、スポーツチーム、教会やアカペラグループでもなんでもかまいません。どこかの集団に属していて、「独りではない」という感覚は、学びや気づきの場を多く与えてくれます。
だから、ここ10年の間に起きた、「集団に属している」という安心感が4分の1まで低下しているということは嘆かわしいことです。どこかに存在意義を見出さないといけない人が、たくさんいる。
だから、僕らは新しいなにかを作って始めないといけません。それが僕らにはできると信じている、だってすでにやっているから。
今日卒業する、アグネス・イゴーエ。アグネス、どこだい。アグネスは、子ども時代をウガンダの紛争地帯で人身売買の案内をして過ごしていました。今は、何千もの警官たちにいかにコミュニティを安全に保つかその方法をレクチャーしています。
同じく今日卒業する、ケイラ・オークリと、ニハ・ジェーン。さあ、立って。ケイラとニハは、持病に苦しむ人々同士がそれを助け合う非営利団体を設立しました。
今日、ケネディスクールを卒業するデイヴィット・ラル・アズナール。デイヴィット、立って。彼は、メキシコシティを、同性結婚を認めた最初のラテンアメリカシティになるまでの道のりを示した、元・市議会議員です。サンフランシスコよりも前にね。
これは私の物語でもあります。寮の部屋にいる生徒が、1つのコミュニティを一度に繋げて、世界中を繋げられるその日まで、それをやり続けた。
変化はとても小さなレベルで起こります。世界規模の変化でさえ、私たちのよう小さな集団から起こります。私たちの世代では、もっと人と繋がりたい、もっと大きなチャンスを得たいという葛藤は、元をただせばコミュニティを作る能力とすべての人たちが目的意識を持てる世界にすることに繋がります。
2017年度卒業生のみなさん、みなさんは目的が必要な時代に生まれたのです。それを作れるかはあなた次第です。「本当に私にできるの?」と不安に思っているでしょう。
ボーイズ・アンド・ガールズクラブで教えたときの話を覚えていますか? ある日、授業終わりに大学の話をしていました。そのとき、トップの成績を持った男の子が手を挙げてこう言いました。「正式な市民権がないから、大学に行けるかどうかわからない」。
大学が彼を受け入れてくれるのか、わからないと。昨年、彼の誕生日に一緒に朝食をとりました。彼になにかプレゼントをしたくて、聞いてみたのです。すると、彼は苦しんでいる生徒たちを目の当たりにして、「社会正義に関する本が欲しい」と真剣に言ったのです。
驚きました。彼はまだ若いのに、人生に対して悲観的になるには十分な理由をいくつも持っているのですから。彼は故郷と呼べる国を持たず、唯一知っている国は彼の大学で学びたいという夢を拒否している国です。
でも、彼は自分を惨めだとは思っていません。そして自分のことだけを考えて生きているのでもありません。彼は素晴らしい目的意識を持っていて、それを周囲の人たちにも与えていくのでしょう。
今日の私たちの状況をよく表している物語ですが、彼を危険にさらしたくないので、名前すら言えません。もし将来なにをすべきかわからないという高校3年生が、この少年のような思いを抱き世界を前進させることができたのなら、私たちも、私たちの義務を果たさなければなりません。
最後に。メモリアルチャーチの前に座っている今、『Mi Shebeirach』(ユダヤ教の祈りの歌)が心によぎりました。困難に直面したとき、娘の未来を思いながらベッドに寝かしつけているときなど、いつでもそれを思い出します。
「私たちに祝福を与えてくれる主よ、私たちの生活をより慈愛あふれるものにできるだけの、勇気を与えてください」
みなさんが、祝福ある未来を築ける勇気を見つけられますように。
2017年度卒業生のみなさん、おめでとう。これからの未来に幸運を。
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