「どうせ破壊されるなら自分たちで壊す」鈴木寛×DMM亀山会長対談で語られた“生きたビジネス”の話

慶應義塾大学教授鈴木寛×DMM会長亀山敬司対談 #1/5

元文部科学副大臣の鈴木寛氏が主宰する、慶応義塾大学の「すずかんゼミ」で、ゼミ生が対談を企画しました。スピーカーは鈴木寛氏とDMM.com 取締役会長の亀山敬司氏。2016年12月15日に行われた、この対談の内容を5回に分けてお届けします。今回は第1話。「DMM.老人」とはなにか? 要注目です!

「生きたビジネスを学ぶ」対談企画

鈴木寛氏(以下、鈴木):本日のゲストはDMM.comの亀山会長です。どうぞよろしくお願いします。

亀山敬司氏(以下、亀山):こんにちは、亀山です。よろしくお願いしま〜す。

学生:本日のテーマは「生きたビジネスを学ぶ」ということですけども、まずは、以前、亀山さんが「明確なビジョンを持たないことが商機になる!」とおっしゃっていた記事を見ました。これまで私たちは、「ビジョンが大切ではないか」と学んできたなかで、実際にビジネスをやっている方がなぜそのような言葉を出したのかを、詳しく教えていただけたらと思います。

亀山:えっ、俺が一方的に喋ればいいの?

学生:いえ、対談を……。

亀山:あ、対談だね(笑)。

(会場笑)

亀山:え〜と、ビジョンというと、どういう仕事をやるかという業種的なビジョンもあれば、「世界を幸せにする」とかいう社会的なビジョンもあるんだけど。業種でいえば、たとえば「新聞で社会に情報を」とかいうビジョンを持ってても、今は新聞読む人は減ってどんどんインターネットに取られているよね。そんな中でその業種に限ったビジョンだと、社員も「大丈夫かよ?」となっちゃう。

最近は昔に比べると、業種が時代に合わなくなるサイクルがどんどん早くなっている。ましてや、これからはAIとかロボットが入ってくるから、「俺たちはいい本をつくるんだ」とか、「最高のエンジンを」とか言っても、その業界自体が消滅してしまうかもしれない。

小売の会社だと、「笑顔でお客様を迎えよう!」と言うけど、リアルからバーチャルへの移行が進むなかで、これからはオシャレでサービスの良い店を作ったとしても、なかなか採算は合わなくなってくる。それなら、テクノロジーを入れて接客コストを減らすという進化もあるんだけど、「笑顔」というビジョンがそれを邪魔することになるかもしれない。

もちろん、ビジョンを掲げないと社員が「どこに向かえばいいかわかりません」ってなるから、あった方が目指しやすいんだけど、一方で決め打ちするほど世界は狭くなっちゃう。だから、部署ごとでは目標は決めさせても、会社全体では広く受けて、社員を大きな公園で思いっきり遊ばす方が、長い目では良いと思うんだ。

と、まあ、そんな風に後付けで言ってるけど、もともとは成り行きで何も考えていなかったんだけどね(笑)。

(会場笑)

ビデオレンタルをやってたら、自然と「あっ、もうビデオレンタルの時代じゃないんだな。それならコンテンツを作ろうかな」と思ったし、「アダルトコンテンツが揃ったから、それ使ってインターネット配信をやろうかな」となっていった。今も成り行きで「次は太陽光かな」、「アフリカ行こうかな」と、流行りものに飛びついてんだけど、ただそれも、俺が「ビデオレンタルでお茶の間を幸せ」とかいうビジョンにこだわってたら、今みたいにはならなかったよね。

ちょっとしゃべりすぎたね。教授もしゃべってください(笑)。

命令に従順であることはロボットにもできる

鈴木:僕は「ビジョン」じゃなくて、「フィロソフィー」「哲学」って言うようにしているんですね。どういうことかと言うと、世の中はどんどん変わってきていますから先のことは本当に見えない。ビジョンというのは5年後、10年後の将来のあるべき姿や理想で、そこからさかのぼってく。僕はこのビジョンを描いてPDCAサイクルを回すっていうことが嫌いなんですね。

亀山:何それ? PDCA?

鈴木:「PLAN」「DO」「CHECK」「ACTION」のPDCAサイクルを回していくと。

亀山:へぇー、そういう流行り言葉があるのね。

鈴木:流行り言葉があるんですよ(笑)。

亀山:ここのみんなは知ってるの?

鈴木:みんな知ってるんですよ、一応(笑)。

将来なんてなかなか分からないでしょう。前提条件がちょっと変わったら、トランプが大統領になるだけでビジョンはすべて描き直し、プランもやり直しですよ。なんかビジネスモデルとか、そういう事ばっかり言ってるから、そんなん、「モデルのフリなんかいらないでしょう」みたいな話があって。

では、なんでそのプランやビジョンが大事なのかって言ったら、先は見えてないけれど、やるかやらないかの判断はしなくてはいけないから。その判断のよりどころとして、自分としてなにを大事にしているのかを言語化しておいた方がいいのではないかということで、「自分のフィロソフィーを掲げてみましょう」と言っているんです。

亀山:それで言うと、俺も判断はするわけよ。「次はアフリカ行こう」とか。でも、「とりあえずやってみよう」ということが多いから、全て確信があってやっているわけじゃない。とりあえず進めて、「あっ、違ったから次行こう」って感じになるかな。

でも、社員には「もっとビジョンを明確にしてください」とか言われるんだよね。そんなこと言われてもしょっちゅう変わるから、「毎月変えていい?」と聞くと、「それは違います」となっちゃう(笑)。ただ、なにかを掲げてほしいなら、最後は「宗教行け」みたいな話になってしまうんじゃないかな。結局なんでみんな宗教が好きかっていうと、導いてもらいたいわけだから。

鈴木:そうですね。

亀山:なにも考えなくていいのは、本当に楽なこと。「会社のために働け!」とか「俺の命令に従え!」とか言われることも同じで、とにかくそれだけを守ればいいって話になるわけ。だけどそれだと、「上が決めたことだから俺の責任じゃない」って話になるじゃん。思考が止まれば命令に従順になるけど、それならロボットにもできるんだよね。

考えるのは疲れることだから、哲学するのは幸せな訳じゃない。常に考えているよりも、なにも考えないで盲信する方がよっぽど幸せだったりする。でも、「それは人間らしいことなのか?」って話にもなる。なんか、すごく哲学者っぽいこと言っているな(笑)。

(会場笑)

どうせ壊されるなら自分たちで壊す

鈴木:考えること、悩むことに加えて、「板挟み」も大事だと思っているんですよ。板挟みになったときも、やっぱりどっちか選んでいる訳ですから。その時々に自分が大事にしていたことが、結果的に後付けで貯まってくると。

亀山:確かに「板挟み」の中で今の選択があるわけだからね。俺だって今日の講演があっても、かわいい子からの誘いがあったなら、かわいい子を選んじゃうかもね(笑)。

(会場笑)

鈴木:逆に言うと、僕から見るとビジョンを持たない、あるいはとらわれないってことが亀山さんのフィロソフィーですかね。大事にしているのは、なにかにとらわれない生き方。それからもう一つ、現代でものすごく加速している破壊的イノベーションもありますよね。要はレコードがCDになって、CDがiTunesになっていったように、レコードの分野をいくら一生懸命に極めても、ある日突然CDが入ってきたら、根こそぎやられてしまう。同じようなことが、今の世の中では加速度的に繰り返されていますよね。

亀山:ウチは配信もしながら今でもDVDの製造・販売もしているけど、どうせ破壊されるなら「自分たちで壊しちゃえ」っていうのが俺の考え方かな。音楽業界だとアップルのように、別の業種からやってきた企業によって破壊がはじまったと思うけど、俺は人に壊されるのは嫌だし、社員にメシも食わさなきゃいけない。それなら自分たちで新しいものを作りながら壊していきたい。

鈴木:どうせ壊すんなら自分で壊すっていうのは、すごく良いですよね。

亀山:今の自分たちを脅かすかもしれないものを自分たちでやっておけば、時代が変わっても食っていける。変わんなくても、それはそれで食っていける。どっちに転んでも食ってけるようにしたいね。

鈴木:今、何気なく「社員を食わさなきゃいけないから」って仰ったじゃないですか。それはどれくらい大事にしてるんです?

亀山:仕事においては最重要事項になるかな。だって家族や友人以外では、社員との人間関係が一番濃い。俺は身近なところから大事にすることにしてるから、もし自分が「世界平和」とか言ってても、かみさんに「私と世界平和のどっちが大事なの!?」とか言われたら、すぐに止めちゃうわけ。

(会場笑)

鈴木:僕ら的に言うと、その「身近なやつ、可愛い社員は幸せにしたる!」っていうのがフィロソフィーとなるんですよね。

亀山:哲学とまでは言えなくて、むしろ本能的なことだろうね。ビジョンとかだと、「自分はこうならねば」「世界の平和を考えねば」と自分に何かを課す感じだけど、身近な人間関係だと「この子の笑顔を見たいな」と本能的に感じて、実際に笑わせることができたら自分も嬉しく感じるもの。だから、動機としては結局「自分の幸せ」が中心になっているんだよね。でも、自分が幸せじゃないやつが他人を幸せにできるはずがないよね。

自分が幸せになるためにはどうすればいいかと考えれば、家族や社員を幸せにすることになるし、そのためには社会や未来のことを考える。みんなが10年後に食えなくなると困るから、「今のうちにネットやっておこう」とか、「アフリカに行っておこう」という話になるんだよ。

鈴木:そこがすごく一貫していると思います。さまざまな判断をしていくなかで、一貫しているものがなにかとなれば、「共創」という言葉になりそうですが、例えば事業の拡大だけを見たら、昔からのかわいい部下って出来が悪い場合も多いわけじゃないですか。

亀山:そうそう。たいてい最初のころは、頭の悪いヤツしか入ってこないからね(笑)。

鈴木:ベンチャーには多いですが、社員番号が若いと、好きでも能力に限界がある社員もいる。要はスタートアップは得意でも、1,000人の会社をマネージメントするのは不得意だったりするので、あとから入ってきた社員番号が300番代くらいのヤツを上司にするかで悩むわけです。

それに、上司にするとか部下にするとかならまだいいですけど、場合によってはクビを切らなきゃいけない話になって、そこで板挟みになることもありますから。

亀山:そこで板挟み出すか(笑)。ウチは社員に終身雇用を目指すって言ってる。ただ、年功序列や定期昇給じゃないわけ。実力でポジションも変わる。当然、10人を回せても100人だとうまく回せない社員はいるし、新しいことについていけないオヤジも出てくる。俺もついていけない(笑)。それで新しく34歳の社長をいれたのよ。

もちろん、昔からいる社員は功績もあるから、なんらかの形で養う場所を作るように考える。ただ、そいつらがずっと中心に居座ると、会社が止まっちゃうだろうし、俺がいつまでもITをやっていてもダメ。それなら新しいヤツらに任せて、稼いだカネをちょっと回せと。それで、「DMM.老人」を作る。

鈴木:「DMM.老人」!!

亀山:「育ててやったんだから、生産性は低いけどちょっとカネ回してくれよ」みたいなね。それで、ぼちぼち田植えでもやりながら食わせてもらおうかなと。

(会場笑)

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