単なる"アリバイ作り"に留めるつもりはない

加賀屋悟氏:それでは、ただいまより質疑に移らさせていただきたいと思います。今回、アクションプランの説明ということで趣旨を汲み取っていただきまして、まずはこのアクションプランにつきましてのご質問をお受けしたいと思います。ご質問のある方、挙手をお願いします。

記者:医療ジャーナリストのナスと申します。今アクションプランのご説明があったんですが、実際にこのアクションプランで理研の改革をしました、という評価は文部科学省のみが行うということでいいのでしょうか? というのが1点。

あと、今聞いていて非常に危惧しているのが、理化学研究所はこういった再発防止策をしましたという単なるアリバイ作りに終わってしまって、なんの改革もなされていないのではなないか、という不信感が納税者である国民に残るというのは、おうおうとしてあると思うんです。最悪、再発防止策が十分では無い場合、例えばスーパーコンピュータを同じ研究分野である長崎大学とか、他の研究機関にもう譲って、理研そのものの解体も含めたあり方の見直しっていうことまで踏み込まないのは、何故でしょうか?

坪井:まず今回のアクションプランというのは、これから実行へ向けた規定を整備したりして実行に移していくというものです。(同プランの)中を見ていただくと、いつまでに何をやる、という工程表もつけております。そういった形で実際の内容はそれらが、規定が制定されて着実に実行されていくかどうかというところで、まず評価がなされていくものと思っております。

基本的には第三者からなる運営改革モニタリング委員会、これは第1回は10月の前にでもまず開きたいと思っております。そこではまず今回のこういったご説明をするとともに、この委員会は随時必要なときに開いて、改革が実施されているかどうか、外部の視点から評価をいただきたいと思っております。理研のなかに置かれる委員会としてはそういう評価もありますが、これは当然主務大臣ですとか、いろいろな面で我々は独立行政法人ですので、そういう形での評価もいただく形になろうかと思っております。

特に、独立行政法人の通則法が改正されまして、来年の4月からは理研は国立研究開発法人になるわけですけれども、国立研究開発法人については、その中期目標や評価の視点の中に研究不正の問題が盛り込まれるという方向で今、検討が進められていると承知しております。そういうことが盛り込まれますと、新しい制度の下では主務大臣による研究姿勢の評価というものが明確に入ってくることになろうかと思っております。

また2点目、これは我々としてはアリバイ作りとは思っておりませんので、この規定の中身にまさに魂を込めていって、それを実施していくということが必要だと思っているところであります。最後の点も、そういった全体のところを評価いただいたところで理研の改革の取り組みは評価いただことになるのではないか、というふうに私は思っております。

記者:すいません、その第三者の委員会ですけれども、これまでの理化学研究所の研究不正が指摘されてからの第三者委員会というのは、第三者というのは名ばかりで、皆さん理化学研究所に関係のある方が入って第三者委員会というものを構成しているような、そういう不信感というものがどうしても拭えないんですね。第三者の選定についても公平性を保つためにどのような努力をされているのでしょうか?

坪井:この運営改革モニタリング委員会というのは、これからまさに人の選定とか委員になっていただく方をこれからお願いするということになりますので、今ご指摘いただいた点も踏まえながら、そういう意味では理研の改革を第三者の立場からしっかり見ていただける方にお願いする、という形になろうかと思います。

記者:その選考基準が決まっていない時点でアクションプランを策定いたしましたといっても、そこのチェック機能というのは我々は全く見れないわけですよね。どういう人選で第三者である選定委員を選んだのか、というところからして。その時にもうアクションプランを盛り込む段階で、こういう基準で人選をしますってことが盛り込まれていないあたり、やっぱり全然ガバナンスなんてもう機能してないんじゃないかな、ということを指摘したいんですよ。

坪井:この委員会を設置するという段階で人選までの基準を明確に示すべきだというご意見だと受け止めます。この点については確かにまだここの段階では明確に出来ておらず恐縮ですけれども、これから委員会の委員の選定を見ていいただく形で、そこはご評価いただくことになると思いますし、この委員会は必ずしもずっと固定メンバーでいくわけでもない、とも考えておりますので、適時、いわゆるPDCAサイクルという形で委員会も含め、アクションプランの中身も含めて、常により良くなる形の努力を続けていきたいと考えております。

理事長も理事も、トップが誰も責任をとらないのは何故か?

記者:NHKのハルノと申します。野依理事長に2点お伺い致します。1つ目は、トップの責任について。2つ目は理事の処遇についてです。先ほど野依理事長は「アクションプランを着実に実行していくことで自らの使命を全ういく」というお話をされていましたけれども、トップとしての責任の取り方っていうのもあると思います。このアクションプラン作成のタイミングで幹部を一新して新しい人材に任せる、という考え方もあると思うんですけど、そのような考え方ではなく、引き続き、野依さんがつとめたいと思われるのはどうしてでしょうか?

野依:理事長としてアクションプランの実行において陣頭指揮を執るということが、私の責任、職務であると考えております。本日も下村文部科学大臣をお尋ねしましたところ、大臣からその旨についての支持を受けたところであります。この観点から全力を尽くしてまいりたいと思います。まあ結果は大臣に評価、ご判断いただくということになろうかと思います。

役員つきましても、今回の問題を防ぐことが出来なかったこと、また本件が社会的な問題になっているということについては、みな一定の責任を感じているところであります。こうしたなかにあって、私どもは今日公表致しましたアクションプランを着実に実行して、理化学研究所改革を推進して、高い規範を再生することをもって責務を果たしていくことが一番大事だと考えております。

記者:追加で質問します。先ほどからアクションプランを実施することが使命だ、責任だというお話があるわけなんですけれども、具体的にどこまでが自分の職責だと思っていらっしゃるのでしょうか? なにが実現されることが必要だ、とお考えですか?

野依:これは全部が実施されるべきだろうと思っております。それは実行性とスピードがやはり大事だと思っておりますので、出来るとこから誠実に、そして懸命に実施していきたいなと思っております。

記者:それが実現された時のご自身の処遇についてはどうお考えでしょうか?

野依:それは私が今申し上げることではないと思っております。

記者:それからもうひとつ。今回のアクションプラン、改革委員会の提言を意識して作成されたように見受けられたのですが、委員会の提言のなかには理研の本部の改革のひとつとして、理事の交代というのが明確に書かれていました。研究担理事とコンプライアンス担当理事は交代すべきだと書かれていたわけですが、今回のアクションプランではその点に触れられていません。この点はどのようにお考えでしょうか?

野依:先ほども申し上げましたように、私どもはこのアクションプランを確実に、そして迅速に実施していかなければなりません。そのために研究担当、コンプライアンス担当理事ともに、無くてはならない人材であると思っております。

記者:提言のなかには、理事について適材適所な配置をすべきだ、と書かれていたわけですが、適材適所な配置をしないまま今の体制が続くんでしょうか?

野依:そういうことではなくて、機能を今までよりもさらに強化する必要があると思っております。研究担当の川合理事もここにおりますけれども、極めて有能であり、またリーダーシップに長けた人材だと思っております。しかしながら、広い分野にまたがる研究開発活動を統括、調整するには非常に大きな過剰負担になっております。従いまして今回、研究政策審議役を新設いたしまして、所内の見識ある研究者たちを活用いたしまして、この補佐にあたらせるというふうなことでございます。

理化学研究所は規則によりまして、理事が5名しかいないわけです。理事たちは皆、負担が過剰になっております。これを補佐し、職務を円滑ならしめるシステムが必要だと思っておりまして、今回そのこともここに取り組んでいるつもりでございます。

記者:生命科学担当の理事が必須だ、と書かれていたと思うんですが、それについてはどのようにお考えなんでしょうか?

野依:研究担当理事は1人しかおりません。理化学研究所は非常に広い範囲をカバーしております。従いまして、研究政策審議役等につきましては、例えば生命科学に非常に強い人を充てたいと思います。さらに、理研には科学者会議というものがありまして、優れた研究者を集めているところがございますんで、そういうところから経験のある、また見識のある者を登用して、理事の補佐に充てたいと、そういうふうに思っております。

小保方氏には業務以上の言葉はかけていない

記者:ニコニコ動画のナナオと申します。どうぞよろしくお願い致します。2つ質問があります。まず野依理事長にお聞きしたいんですが、冒頭、理事長はこれまでの理研の活動は世界的に評価されてきた、とご説明されました。これは事実な部分が多分にあると思うんですが、STAP細胞の件が無ければ、これほどの騒ぎにはならなかった一方で、ご説明にあった構造的疲労が今回の件につながったという見方も出来ると思います。

これはあくまで1つの見方なんですけれども、STAP細胞をめぐる騒動というのは、理研、あるいは理事長ご自身にとってどういうものだったのか、教えてください。これがまず1つ目の質問です。

野依:まあ、先ほど申し上げましたように、研究不正については、これは基礎科学研究というものの本質に鑑みまして、その論文不正というものは個人に責任が着せられるものだと思っております。しかしながら、CDBの人事のマネジメント、あるいは倫理教育の不徹底、こういったものはあったと思います。従いまして、じゃあそれはその問題っていうのはCDBだけに固有のものかということになりますと、やはり、同じことは他の研究センターにおいても起こりうるということでありますので、この事案を契機として、所全体の研究不正等のリスクを軽減するように運営を改めていきたい、そんなふうに思っております。

記者:ありがとうございます。2問目です。今、不正の問題に言及されました。一方で、STAP細胞があるかどうか、というのはまだ残っております。冒頭、笹井博士に言及されましたのでその関連でお聞きしたいんですけれども、笹井博士は遺書のなかで小保方氏に対して、「絶対STAP細胞を再現してください」と書き遺したと伝えられておりますけれども、現在、大変ななかで実験を続けていらっしゃる小保方氏に、なにか理事長から言葉をかけられたのか、あるいはかけるとしたらどのようなお言葉でしょうか?

野依:私は直接小保方さんに接触する機会と申しますか、そういったものが無いので、直接言葉をかけることは出来ないわけですけれども、検証委員会、検証プロジェクトが進んでおりますので、そこで得られる結果を粛々と受けて、そしてそれを元に判断していきたいとそういうふうに思っております。このことにつきましては、研究担当の川合理事のほうが詳しいと思います。

記者:(川合)理事は、なにかお言葉はかけられましたか?

川合眞紀(以下、川合):まず笹井先生の遺書なんですけれども、私どもは遺書の中身は見ておりませんし、今は遺族のご意向も含めて全く公開もしていない状態ですので、実際に中になにが書かれていたかは、所として把握しておりません。そこがまず1点です。

記者:理事は小保方さんになにか言葉をかけられていないんですか?

川合:小保方さんとはお会いして、研究の進め方等についての意見交換はしております。

記者:それ以上のやり取りは無いということですか?

川合:はい。

記者:わかりました。ありがとうございます。

CDBの解体ではなく、規模の縮小に留まった理由

記者:フジテレビ『とくダネ!』のアベと申します。お願い致します。先ほどの質問にも出たんですが、改めて。6月には理研の改革委員会で、CDBを解体するようにという提言が出たものの、今回は解体せずに規模の縮小に留まったのは何故か、改めてお聞かせください。それともう1点、小保方氏の採用の仕方について今回問題視されていましたが、このアクションプランにおいて具体的に明記されていないので、もう少し具体的に、もし変更があるのであればそのへんを教えていただけますでしょうか? お願い致します。

野依:解体うんぬんの問題ですけれども、今回の改革はいわゆる岸委員会(改革委員会)が提言したところの解体と言えると思います。改革委員会は、長年固定化されてきた旧来の運営体制を廃すること、無くすること、その上で新しい組織では現時点での研究動向を踏まえて、必要な研究分野を設定して研究体制を再構築することを求めています。岸委員会の提言は、ひとつには、発生・再生科学というのは極めて重要な分野であるので、それは続けるべし、ということがあります。

それから250名に及ぶ任期制の研究員、これは確保するように、雇用を維持するようにということがございます。ですから解体をしたあと何にも無くなるのではなくて、更に発生・再生科学を中心とした新しい科学の潮流をどうやって作っていくか、こういうことが大事だろうと思っております。

私は先ほど申し上げましたように、創造とかあるいは革新に向かう科学研究というのは、今までの延長線上にない、ということで常に新しい分野に挑戦していかなきゃいけない、領域を開いていかなきゃいけない。それがどういう方向にあるかということは、いろんな見方が出来ますけれども、それを定める上で国際的に著名な研究者をヘッドとする委員会を作って、そしてどういう分野を進めていくべきか、どういう分野をコンバインしていったらいいのかということを検討するようにお願いしているわけです。

さらに分野が決まりましても、分野が決まればいいというわけではなくて、それを率いるリーダーがまた必要であります。これもまた世界に広く求めると。どこまで日本の研究社会が魅力的であるかは別として、広く世界に求めたい。これも委員会に選考を依頼するっていいますか、評価をお願いして、キャンディデイト、評価をお願いしているわけです。

坪井:2点目の件についてお答えします。アクションプランの21ページに、研究室主催者の採用・登用のあり方の新たな取り組み、を書かせていただいています。その第1点のところに、最低限必要となる採用プロセス、手順、提出すべき書類、審査の基準(研究倫理に関わるもの等を含む)、について、文書として明確化するという対策を打ち出しています。

これは小保方氏の採用の時の、CDBの自己点検の検証委員会の報告書ですとか、岸委員会の改革の提言のなかにもありましたが、彼女の場合にはCDBのなかでこういった採用プロセスの文書化がなされておらず、また審査の基準も、研究倫理が含まれているか明確化されていなかっとと。そういう課題、問題があったということを踏まえて、今回のこれを打ち出しているというふうにご理解いただければ有難いと思います。

記者:ありがとうございました。

具体的な数字がないのに「半減」とはどういうことか?

記者:朝日新聞のノセと申します。アクションプランの中身の関係で2つ質問させてください。ひとつは、概要版のほうに「センターの規模は半分程度に縮減」という話がありあす。この半分程度に縮減、という表現にあたる、30ページにわたる本体のどこにそれが書いてあるのか、縮小というのがちょっと読み取れないので、それをちょっと教えていただきたいんですけれども。

坪井:すいません、概要版はわかりやすくご説明するということで、本文以上のことがご説明されておりまして、本文のなかに半減、半分程度の縮減にあたる記述は盛り込んでおりません。

記者:本文のなかに半分程度という表現は無い、という今のご説明ですけれども、なにをどう捉えたら「半分」という表現が出てくるのか、一切読み取れないアクションプランになっているのは、そもそも何故なんでしょうか? あるいは、ここに表記できないこととして「半分」という意味合いにする中身がなにかあるとすれば、それをお示しいただけないでしょうか。

坪井:本文でいいますと16ページに、いわゆる目的志向型の4つのプログラムに組み直すという件と、あと先端技術支援開発プログラムと、一部の研究チームは移管すると、それについては明確に書いておりまして、先端技術支援開発プログラムの現在の規模と、4つのプログラムに組み直しというところで、結果的には半分くらいになるということにはなります。ただちょっと、その言葉は明示していませんが、この組み換え、移管という言葉からは、結果としてそうなるということで、概要版にはちょっと説明を省かせていただいたものであります。

記者:それは、なんで本文には明記をされないんでしょうか? 半分というのは数字を表す言葉ですから、例えば40を20とか、100を50とか、そういうふうに表現すればいいのではないか、と思うんですが。

なんでこんな事をお聞きするかというと、つまり半分程度に縮減するという表現はあっても、単にCDBにあるものを他のところに移すだけで、確かにCDBは削減されるかもしれないけれども、理研全体から見たら、さっき野依理事長がおっしゃった解体とは言えない状況なんじゃないか、という疑問というか、それを払拭しきれていないアクションプランになっていると思うんですが、その点いかがでしょうか?

坪井:この点は岸委員会の改革委員会提言のなかで、任期制研究者の雇用を確保する、というその前提でCDBを解体するという表現があったかと思います。したがって、理研全体としては任期制研究者の雇用は確保するというのが大前提でございますので、したがって、他研究センターへ移管はしますけれども、それは研究者の雇用を守るということも含まれているものです。先端技術支援プログラムにつきましてむしろ、理研全体の支援という形で、従来のCDBのなかだけに閉じこもらずに、新しい役割を担えるのではないかという期待感も含めて、このような移管をするということであります。

記者:最初の質問、つまり数字を明記出来なかった理由は何故か、という質問はまだお答えいただいていないと思うんですけれども、例えば今日の時点でCDBだけでなくて他のセンターも含めて、理研全体をこうするんだ、というような全体像が示されていないのはなんでなんでしょうか?

坪井:理研のガバナンスの全体像については書いてあると思います。理研の研究センターの研究の内容とかについては、今回はSTAP問題を基本的に旧来はCDBで発生して、そこでの制度疲労という問題かと考え、そこに対しての体制の改革案を出しているわけでございまして、他のセンターについて今直ちになにか見直しをする、というところまでのものではないかという判断で。ただ、理研本体のガバナンスについて構造的なところは直しますけれども、他のセンターの個別の研究分野の変更までは意図していないということかと思います。

記者:それは表現していないのか検討していないのか、どっちなんでしょうか?

川合:他のセンターに関しては、それぞれミッションを持った研究を遂行していただいております。現時点でそのアクティビティを削ぐことは想定しておりません。それから先程の「半分」という数値が示せないのは何故か、というご質問ですが、16ページのところにCDBの改革的な出直しの具体的なプログラム名が書かれております。これはまさにCDBが今中期計画で実施しなければいけないマストアイテムとしての研究がここに載せられております。

現在その数が明記できない理由は、CDBのなかでどのチームがどういうふうに配置されるかというのは、詳細をまだ検討している最中でございます。急なことですのでそれぞれの研究者は今年の4月にそれぞれの年度の計画を立てて開始しているところでございますので、それを調整した上で早急にそれぞれのチームがどのプログラムに配置され、どのチームがセンターに動き、という計画をこれから具体的に書くことになります。そこまでいかないとちゃんとした数字は出せない、というのが現実でございます。

記者:わかりました。最後に1つ、少し細かいかもしれませんが、岸委員会の報告書のなかに、内部通告の窓口を独立したもので作るという提言があったかと思います。それに関する記載もちょっと見当たらないようなんですけれども、これも今後の検討なのか、それともどういう状況なのでしょうか?

坪井:実はすでに、外部の弁護士の方にそういう窓口を設けておりました。ただこの点を岸委員会にご説明する機会がなかったので、無いと思われてあの記述がなされてるんですが、現状すでにあるというのがお答えになるかと思います。

※続きは後ほど追記します!