メガネと視力の関係

ハンク・グリーン氏:メガネ族なら一度は、メガネをかけていると視力が悪くなると聞いたことがあるでしょう。

メガネをかけていると水晶体を調節する筋肉がはたらかず弱くなっていくので、くっきり見続けるためにはさらに度の高いレンズが必要になるというのです。

ですが、メガネによって視力が落ちるというのは迷信で、メガネの仕組みをまったく理解していません。

視力の低下は大抵、角膜や水晶体がゆがんでしまったせいで眼球の奥行きが長くなったり短くなったりすることが原因です。それによって外からの光が網膜より手前や奥側で屈折してしまい、ぼやけた視界になるのです。

眼球の奥行きが長くなった場合、光は網膜の手前で焦点があってしまい近視になります。私のように、近くのものは見えますが、遠いものを見るのは苦労するでしょう。

奥行きが短くなれば、光は網膜のさらに奥で焦点があうため遠視になり、ちょっと遠くの看板は読めますが目の前の文字は読みづらくなります。

眼球の筋肉は水晶体を動かして、光が適正な位置に焦点があうようにしています。この筋肉は収縮しますが、眼球自体の伸び縮みにも対応するには限界があります。

つまり、眼球筋肉が弱ることが視力低下の理由にはならないのです。もしそうなら眼球運動をすれば視力が回復することになります。

メガネというのは、眼球に入ってくる光を眼球の奥行きが正常な時に網膜で焦点が合う位置に光を合わせているだけです。

メガネによって眼球筋肉の過度な緊張状態も緩和されるのです。

ですが、従来はメガネに別の影響があると考えられていました。長年にわたって眼科医は、視力が落ちると考えて近視の子供たちにあえて適切な度のメガネを処方しませんでした。子供の眼球は成長途中で、頭蓋骨の成長にあわせて眼球も大きくなると考えたのです。

そのせいで近視の子供たちの近視は余計にひどくなりました。近くのものも見える適切なレンズを使って、遠くも見える視力矯正をしてしまうと、子供の眼球は奥行きが長くなってしまうと考えたのです。それであえて低い度のレンズを処方することで、眼球の奥行きが伸びないようにしたのです。

ですが2002年、ある臨床試験が一石を投じました。試験の2年後、弱めのメガネをかけた子供の視力は余計に悪くなっていたのです。

それを見た研究者たちは倫理上の観点から試験の中止を迫られました。

続いて行われた試験では度の弱いレンズによって極端な視力の低下は見られなかったものの、弱いレンズの有効性も確認できず、ほとんどの眼科医がそうした処方を取りやめました。結局メガネによって余計に視力が悪くなるのではなく、むしろ低下を防いでくれるのです。

さらに、年齢を重ねればさらに別のメガネが必要になります。水晶体が年齢とともに固くなり、焦点を一層あわせづらくなります。ですが、それもメガネのせいではありません。

なので気にせずかけましょう。視界はくっきり見えますし、なによりかけてる方がカッコいいでしょ?