「助け合わない女性には、地獄が待っている」 オルブライト元国務長官が見た、女性と社会のリアル

女性として、外交官として #1/2

世界において女性の地位はゆっくり、しかし確実に向上しつつありますが、その進捗には地域差があります。クリントン政権下で女性として初めて国務長官を務めたマデレーン・オルブライト氏が、世界の女性が置かれている状況と今後の展望について、女性実業家のパット・ミッチェル氏を相手に語りました。(TEDWoman 2010より)

サダム・フセインとブローチ収集

パット・ミッチェル氏(以下、ミッチェル):そのブローチの意味は?

マデレーン・オルブライト氏(以下、オルブライト):これは「ガラスの天井(女性のキャリアを阻む障壁)を破る」という意味よ。

ミッチェル:まあ、それはTEDWomanにぴったりね。

オルブライト:朝起きて、その日の予定を考えてブローチを選ぶのに時間をかけるわね。このブローチにまつわる秘話もサダム・フセインが発端なの。由来をお話しするわ。

湾岸戦争後、私はある使命を帯びて、国連大使として派遣されたの。(湾岸戦争)停戦以後、一連の制裁決議が採択されて、私はサダム・フセインを絶えず中傷するように指示された。他国に侵略したのだから、当然ですけど。すると突然、私の悪口をいろいろ書いた詩がバグダッドの新聞に掲載されて、その中に「稀代のヘビ女」というのがあったの。私はたまたまヘビのブローチを持っていたので、イラク協議の場につけて行ったわ。

(会場笑)

記者会見で、記者から「どうして蛇のブローチをつけているのですか」と質問されたので、「サダム・フセインが私をヘビに例えたから」と答えたの。それで、これはおもしろいと思って、いつ何があっても対応できるよう、たくさんのブローチを買い込んだわ。それがきっかけね。

ミッチェル:コレクションの量は?

オルブライト:かなりの量になるわ。巡回展示中なの。今はインディアナポリスだけど、スミソニアン博物館でも展示されていたわ。それも『ブローチの暗号を説き明かせ』という著書と一緒にね。

(会場笑)

「女性初」は過去のものになりつつある

ミッチェル:素晴らしいアイディアね。女性初の国務長官を務めていた頃、服装やスタイルがいつも話題になっていましたね。特に「女性初」の地位についた場合、多くの女性につきものの質問だけど。そのことについてはどう思いますか。みんな……。

オルブライト:正直なところ、とても腹立たしいわ。男性が何を着ていようが誰も気にしないのに。でも、確かに私の服装は注目されたわね。おもしろかったのは、国連大使としてニューヨークに行った時に、前任のジーン・カークパトリックと会い、「大学教授の服は捨てなきゃだめよ。外交官らしい服を買うように」と言われたことね。おかげで、たくさん買い物することができたわ。それでも、「帽子はかぶりましたか」とか「スカートの丈はどのくらいでしたか」とか、ありとあらゆる質問を受けたわね。

それに、コンドリーザ・ライス(女性として二人目の米国国務長官)が何かのイベントでブーツを履いて批判されたのを覚えているかしら。男なら非難されないでしょう。そんなこと、どうでもいいことだわ。

ミッチェル:そうね。男性でも女性でも、自分の役割を見つけて、社会に貢献し、未来を形づくることのほうが大事なのに。やり手の外交官として、他国にアメリカの立場を力強く代弁する一方で、母親として、祖母として子育てもして……。どうやって両立させていたのかしら?

オルブライト:おもしろいことに、国務長官に指名されてわずか数分後に、初の女性国務長官としてどう思いますか、と質問されたわ。「女性としてのキャリアは60年間ですが、国務長官としてはまだ数分間しかありませんので」と答えたの。ずいぶん進歩したものね。

(会場笑)

でも、女性であることは素晴らしいと思う。こんなことがあったの。皆さんの中にも同じ経験をされた方がいるかもしれないけど。

初めて国連の会議に出席した時のことよ。それが全ての始まりだったわ。国連は、男性優位の機関だったから。安全保障理事会は15ヵ国だから、14人の男性が私の前に座って、じっと私を見つめているわけ。女性ならわかってもらえると思うけれど、その場の雰囲気をつかみたい、いい印象を与えたい、気の利いたことを言いたい、と考えていた。

でも、突然、「これではいけない、アメリカ合衆国の代表なのに、私が今日発言しなければ、アメリカの意向が伝わらなくなってしまう」と思ったの。その時初めて、発言したがらない女性という殻を破らなければ、と思ったわ。そしてアメリカ代表として発言しようと心に決めたの。そんなことが、いろいろな場面で何度もあった。でも私は、女性であることは多くの点ですばらしいメリットがあると思う。男性よりも個人的な関係を築くのが上手だし、必要な時には事実をありのままに話すこともできるし。

そうそう、私の一番下の孫が去年7歳になって、母親、つまり私の娘にこう言ったの。「マディおばあちゃんが国務長官だったからって何がすごいの? 国務長官ってみんな女の人(マデレーン・オルブライトの後、コリン・パウエルを挟んで、コンドリーザ・ライス、ヒラリー・クリントンと女性の国務長官が2代続いた)でしょ」。

(会場拍手)

ミッチェル:お孫さんが生まれてからずっと……。

オルブライト:そうなのよ。

女性の問題は、生死に直結する問題

ミッチェル:時代は変わったものね。世界中を頻繁に旅行されて、世界における女性と少女の状況をどう思いますか。進展はありますか。

オルブライト:少しずつ変わってきているわね。もちろん、何も変わっていない国もあって、取り残されている女性もたちもいる。だから、忘れてはならないのは、パット、あなたが業界の第一人者であるように、大きなチャンスに恵まれている女性たちもいれば、自分のことを気にかけたり、面倒をみることができない女性、女性どうし助け合う必要があることを理解できない女性もたくさんいるということね。

このことを国家安全保障の面から考えてみた。国務長官だった時、女性の問題を米国の外交政策の中心に据えることを決断したの。自分がフェミニストだからというだけでなく、そのほうが社会がもっと良くなると信じていたからよ。女性が政治的、経済的な力を身につければ、その価値観が受け継がれ、健康状態も、教育も向上する。そうすると経済も大きく繁栄するわ。だから、経済的にも政治的にも声を上げることができる国に住む私たちが、他の女性たちを助けるのは当然のことだと思う。私は国連大使としても、国務長官としてもそのことに尽力してきたわ。

ミッチェル:女性を外交政策の中心に据えたことに対して、抵抗はなかったの?

オルブライト:中には反対する人もいたわね。瑣末な問題と思ったのでしょう。私の下した結論は、実際には、女性の問題が一番の難題だということね。多くの面で生死にかかわることだし、私たちの考え方の核をなす問題だから。

例えば、私の在職中には戦争が何度も起こったけど、多くの場合、主な犠牲者は女性だった。大使として派遣されてすぐにボスニア紛争が起こり、ボスニアの女性が組織的性暴力の被害にあった。それで、その問題を専門に扱う国際戦犯法廷の設置にこぎつけたの。

そうそう、その頃に私がしたことと言えば、私が国連大使に就任した当時、国連加盟国は183ヵ国だったの。今は192ヵ国だけど。自分で昼食を作らなくてもよかったので、アシスタントに「他の女性の常駐代表を招待して」と言ったの。自分のアパートに着いて、さぞかし女性でいっぱいだろうと思ったら、183人のうち、私を除いて6人しかいなかったわ。当時、女性の国連常駐代表は、カナダ、カザフスタン、フィリピン、トリニダード・トバゴ、ジャマイカ、リヒテンシュタイン、そして私だったの。アメリカ人らしく、議員連盟を立ち上げることにしたわ。

(会場笑)

そして、立ち上げた女性議連をG7と名付けたの。

ミッチェル:それはGirl 7の略かしら。

オルブライト:そう、Girl 7。私たちは女性の問題のためにロビーイングをして、国際戦犯法廷に女性裁判官を2名送り込むことができた。そのおかげで、レイプは戦争の手段であり、人道に対する罪であると宣言できたのよ。

(会場拍手)

女性同士が助け合えば、世界はもっと良くなる

ミッチェル:世界に目をやると、特に西洋においては女性がますます指導的役割を担うようになってきているし、他の国々でもガラスの天井が破られつつありますね。まだ女性に対する暴力も、問題も数多く残っていて、でも、外交交渉に携わる女性も増えてきている。以前は、女性外交官と言えばあなたと1人、2人ぐらいしかいなかったけれど。(女性外交官が増えると)持続的に暴力と平和、紛争解決の面で大きな変化はあるのかしら。あるとすれば、それはなぜでしょう。

オルブライト:そうね、女性が多いと、議論の論調や目標が変わってくるわね。だからと言って、女性が完全に主導権を握ったら世の中がもっと良くなるというものでもない。そう思う人は高校時代を思い出したらいいわ。

(会場笑)

でも結論を言えば、女性を増やす方法はあるし、交渉の場に参加する女性が増えれば、何らかの合意を得ようとするわね。例えば、ブルンジに行った時、ツチ族とフツ族の女性を呼んでルワンダで起こった問題について話し合ってもらったの。女性のほうが、相手の立場に身を置くことができるし、共感しやすい。交渉の場に女性が多いと、サポートしてもらえるわ。

国務長官時代、女性の外務大臣は私の他に13人しかいなかったので、1人でも来てくれると嬉しかったわ。例えば、フィンランド大統領(当時)のタルヤ・ハロネンは、以前はフィンランドの外務大臣で、一時期EUの代表(議長)を務めていた。彼女がいてくれてどんなに助かったことか、わかってもらえるでしょう。

会議の場で、私が「この件に関して、何かしなければという気がするわ」と言うと、アメリカ代表団の男性から「『気がする』とはどういう意味ですか」と言われたものよ。そんな時、タルヤが私の向かいに座っていて、二人で軍縮について話し合ったの。タルヤが「こうしなければという気がするの」と言うと、代表団の男性もにわかに納得してくれた。外交政策の場に女性が多数いると、本当に助かると思うわね。

あと大事なのは、国家安全保障とは外交政策に限ったことではなく、特に軍事予算と、各国が抱える負債をどう解決するかの問題でもある。だから女性が、さまざまな外交政策に関する地位についていれば、自国の予算編成の時に協力し合えるわ。

ミッチェル:それでは、どうやったら社会における女性の比率を増やせるかしら。女性をもっと交渉の場に参加させるためには? そして、女性の割合が高いほうが良いと考える男性を増やすには?

オルブライト:そうね、私は女性候補者を支援する、全米民主国際研究所という団体の理事長を務めているの。他の国々でも、女性を訓練して、もっと女性政治家を増やし、政治的発言力を高められるか考える必要があると思う。女性の起業も支援する必要があるし、何よりも、女性どうしが助け合うようにならないと。この年齢になって強く思うことがあるの。

キャリアをスタートさせたばかりの頃、信じれらないかもしれないけれど、「どうしてライドシェア(相乗り通勤)をしないの?」とか「いつも一緒にいてあげないと子どもがかわいそう」と女性から非難されたのよ。私たちはお互いに罪悪感を感じさせるものなのね。女性にはみんな「罪悪感」というミドルネームがついているんだわ。女性は、互いに助け合わなければいけないと思うの。だから、私のモットーは「互いに助け合わない女性には、地獄が専用の場所を空けて待っている」よ。

(会場拍手)

ミッチェル:あなたはきっと、天国に行けるわ。本日はありがとうございました。

オルブライト:皆さん、ありがとう。ありがとう、パット。

<続きは近日公開>

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