いつかなりたいものより「今日やりたいこと」を考えろ
『ラ・ラ・ランド』作詞家が母校でスピーチ

Benj Pasek & Justin Paul Address and Surprise Performance

今年の話題作『ラ・ラ・ランド』で作詞を担当したベンジ・パセック氏とジャスティン・ポール氏が、母校である名門ミシガン大学音楽学部の卒業式に登壇。「なりたいもの」を追いかけて入学した若かりし日を振り返り、そこからいかにして夢を掴み取ったかについて語りました。

最高のミュージカル俳優になりたかった

ジャスティン・ポール氏(以下、ポール氏):(手元の台本をみて)ページをめくったらこれがここになかったらどうしようと、びくびくしていたんです。だからこれがあってよかったです。ドウォーキン氏と学部本部のみなさんと、ここにお集まりのご家族やご友人のみなさんにお礼を申し上げます。そして、なによりも、刺激的で不安であり、熟練されていて、疲れ切っているこのミシガン大学の2017年度の卒業生のみなさん、おめでとうございます。

ベンジ・パセック氏(以下、パセック氏):みなさんを誇りに思います。そしてこの場でみなさんに祝辞を述べることができてとても光栄です。この大学には200年も続く歴史があるのですから。きっとこの卒業式の祝辞においては、なにか素敵なことをお話しするのが通常であり、意味があることだと思うので、僕たちは1817年になにが起こったのかをGoogleで検索してみました。

ポール:そしていくつか発見があったのです。1817年にはNew York Stock Exchangeが創設されたそうです。なかなか興味深いですよね。忘れていました。これは音楽学部の卒業式ですから、誰も数学的なことにも、お金を稼ぐことにも興味がないですよね。

パセック:ですから僕たちはこれは関係ないと思いました。そのほかで1817年の好感情の時代として知られる政治は、現代の政治と非常に近いものがあります。ケリーアン・コンウェイ(トランプ政権の大統領顧問)にエールを送りましょう。

(会場笑)

ポール:本当に、みなさんありがとうございます。1817年は政治を好感情の時代と称した最後の年でした。僕たちはこのミシガン大学のホグワーツミュージック、シアターアンドダンス学部における僕たちの時代を表現する最高の言葉だと思っています。なぜならみなさんが知っているように、ここは魔法のような場所だからです。

パセック:僕たちがここを伝えようとする200年の知識や経験がなくても、みなさんのような若者が仕事に就き、音楽業界を引っ張っていく前に、なにかを達成しようとして、かっこいい10年間を過ごせるのです。けれど、成功が認められるまでには努力が必要です。僕たちは今まで学んできたことや知識を少しだけお伝えしようと思います。まず、このミシガン大学での思い出をお話ししましょう。

ポール:今のところうまくいっています。

パセック:すばらしいね。

ポール:僕たちがこのキャンパスに着いたのは2003年のことでした。ワクワクしていました。そしてヒューロン湖のすぐそばで、最高の劇場ミュージカル俳優になりたいと思っていました。同じ夢を持ったミレニアル世代に囲まれていました。僕たちはすばらしい学校に通いたくて、さほど一生懸命働かずにこの業界ですぐ成功したいと思っていました。正直な夢はそんな感じですよ。

僕の場合、夢はブロードウェイで歌って、踊って、演技をすることでした。3拍子そろった存在になろうとしていました。ミシガン大学のBFAミュージカル劇場は僕たちをそんな存在にしてくれるのだと知っていました。

僕たちはオリジナルのブロードウェイでのキャスティング記録とダンスベルトの詰まったトランクを持って、キャンパスにやってきました。もしなんのことかわからないなら、詳しく説明しますよ。それは下着のことです。

僕たちは新入生オリエンテーションの初日に出会いました。そこですぐに意気投合して、どんなにビギー・スモールズとベルナデッタ・ペータースを好きかを語り合いました。

パセック:え? なに?

ミュージカルにキャスティングされたものの…

ポール:大学生活1日目、バレエのクラスに行きました。グリフィンドール生になる準備は整っていました。教室に入ると、僕たちはせいぜいハッフルパフ生程度でしかないと気付かされたのです。

パセック:レイブンクロー生にもなれません。

ポール:これが現実です。僕たちはダンスベルトの上からスウェットパンツを履いていました。他のみんなは素敵なバレエタイツを履き、とてもカッコよく見えました。講師はなにかダンスの動きに関するフランス語を叫びました。みんな部屋を踊り回りました。わからない方のために説明すると、部屋の端にいて、踊りながら、部屋の反対側に向かう感じです。ですから、僕たちにとっては非常に恐ろしい瞬間でした。

その学期のコースを通して、僕たちはどうやって音楽を始め、どうピアニストが弾き始めるのかを掴みました。僕たちはパワーセンターのリハーサルルームの出口ドアの近くにいることにしました。そして、急いで部屋から飛び出して、建物を抜け、部屋の反対側にある正面ドアから戻ってくる方法を編み出しました。誰も僕たちがダンスしながら部屋を横断していないなんて気づきませんでした。これは時々失敗しました。ジュディ、もしここにいるなら本当にごめんなさい。

でも、全体的に見て、学ぼうとしたし、ミレニアル魂には反していたと思います。頑張ったんですよ。でも僕たちには、ピルエットをすることは将来的にはないだろうし、それがどんな意味なのかもいまだにわかりません。僕たちはブロードウェイで歌って踊って演技することはありませんでした。でもいいんです。ブロードウェイで歌って演技するという2拍子は揃っていますからね。

パセック:僕たちは俳優になるという賭けにでて、2年生になりました。ミシガン大学では学生が自分を見つめ、キャンパスで過ごす残りの時間をどのコースで過ごすかを決める時期です。歌わず、演技もしない俳優たちは春のミュージカルにキャスティングされます。

僕たちは準備し、オーデションを受け、『シティ・オブ・エンジェル』のキャストリストが発表されるのを待っていました。そしてその瞬間はやってきました。キャスティングされたのです。僕はカメラを持った男という重要な役でした。ジャスティンは検屍官役の控えダンサーでした。

ポール:最高パフォーマンスでしたよ。

パセック:リハーサルの初日、ディレクターのマーク教授はキャストを集めて、とてもすばらしい言葉を送ってくれました。彼は、「すべての役は重要で、必要にない場面などない、『シティ・オブ・エンジェル』にはすべての役を一人ひとりの俳優が担っているんだ」と話してくれました。彼は僕を見て、「それはカメラを持った男でも同じだ」と言いました。その役がなんの意味もないんだと気付かされた瞬間でした。

そこで僕たちは、自分が誰で、何者で、強みはなんなのか、これがなににつながるのか、LSAに移籍するには遅すぎるかなとか考え始めたのです。

ポール:僕たちはずっと筋肉学部の良さに気づかずにいたんです。

すべての行動はその定義の結果

パセック:こういったことが頭の中をぐるぐるしていたわけです。最初の2年間で、自発的にアール・V・ムーアビルの奥のほうの練習部屋に閉じこもって、ピアノを弾きまくっていたというのはとてもおもしろいことです。僕たちにはADHDを持つ友人同士で、自分たちが悲惨なバレエダンサーだという現実から目を背けていました。そして曲を書き始めたのです。

2年生の『シティ・オブ・エンジェル』の春公演が近づいてきた頃、3拍子揃った存在になる予定が、2拍子になり、実際にはなにもない存在になっていました。1つも強みが見つかりませんでした。そこで、誰も僕たちを芝居で使ってくれないなら、自分たちで作品を作ればいいじゃないかと思いついたのです。

ポール:僕たちは、99席しかないケリータウンのコンサートハウスを予約しました。それから大学の全学部生にメールを送って、芝居をやるから来てくれと言ったんです。『シティ・オブ・エンジェル』でキャスティングされなかったり、僕たちのように変な役しかもらえずに不満を持っている劇場ミュージカル学部の学生にも連絡を取りました。

「君たちの方が優れているよ、僕たちもそうだ、だから一緒にもっと優れた芝居をやろう」と言ったんです。実は脚本は書いていませんでした。日付を設定して、学生を呼んで、ようやく書き上げました。次に、自分勝手ですが、芝居でスターになる助けにはならないと思っていた、すべてのクラスも演技や歌のレッスンは全部有益だったと気づいたのです。脚本を書くのに必要な知識そのものを与えてくれるものでした。それは驚きでしたが、興味深いものでした。

2005年の4月3日、芝居をしました。2年生の時で、完璧な芝居からは相当離れていましたが、僕たちの母を含む99人の観客には響いてくれたようです。それはなにかの始まりで、そして最も大事なのは、それが僕たちを予期せぬ道に導いてくれたということです。ある1つの可能性を見つけさせてくれました。僕たちは役割の1つなのです。僕たちは今、作曲家で、それが僕たちが何者なのかを示し、今現在の姿にしてくれたものです。

パセック:みなさんは今、どうして自分がこんな安っぽいダンスベルトや俳優になれなかった話を聞かなくてはならないのかと思っていますよね。僕たちがみなさんの立場ならこの場を離れているかもしれません。ここから真剣に話しますよ。

僕たちは、ミシガン大学のミュージカル劇場学部を率いるブレント・ウェジェナー氏のところで劇場ソングを書いています。すべてのクラスとすべての年度で、劇場ソングはについての理論があり、彼は僕たちになにが劇場ソングを特別にするのかを教えてくれます。

彼は劇場ソングは動きであると言っています。それは、アクションであり、1つの場所から始まる変化であり、別の場所で終わるものだと言うのです。それは動き続け、ストーリーを伝えるものなのです。他のポップソングはただリピートされるだけですが、劇場ソングは旋回するもので、変形させるもので、動き続け、進展し続けるものなのです。

ポール:ミシガン大学での最初の2年間、僕たちはウェジェナー教授の愛する劇場ソングのような態度ではありませんでした。僕たちは動きもなく、今と同じように自分たちのことだけを考えていました。

パセック:「僕はベンジ、俳優です。それが僕のなりたいものです」。

ポール:「僕はジャスティン、シンガーです」。僕たちの語り手としてのアイデンティティは修正され、壁に当たりました。縁石に乗り上げてしまい、僕たちはある囲いの中に身を置こうとしていただけだと思います。それはどんな人間にならなくてはいけないのかを定義する囲いのようなものです。

つまり、すべての行動はその定義の結果なのです。僕たちが行ったことはすべて、僕たちがどうならなくてはいけないのかということを強めるものでした。「僕は俳優」「僕はシンガー」。名詞を一人歩きさせ、行き先を失う動きを強制した時に、僕たちは情熱を捧げるものがなんなのか、自分たちのストーリーを変化させるためになにができるのか、旋回する技術を上げる方法はなにかを考え始めたのです。

そして行動を起こし、動き、そして前に進むことで、僕たちは完全に新しい名詞を見つけるのです。そして、突然作曲家や、ミシガン大学に来るまで意図したことがなく、想像もしなかったなにかになるのです。

「なにになりたいか」ではなく「なにがしたいのか」

パセック:僕たちは卒業生のみなさんにエールを送りたいと思います。朝起きて、「自分は誰か」「なにになりたいか」など考えないでください。「なにがしたいのか」「どこへ行きたいのか」「そしてなにを作りたいのか」を考えてください。いつかなりたいものを考えるのではなく、今日なにがしたいのかを考えてください。きっと見つけた動きや、自分を意味する名詞の存在を通して、自分のアイデンティティを見つけるでしょう。

ポール:明らかに、ここにいるみなさんには名詞があります。バイオリニストであり、オルガニストであり、音楽評論家であり、編曲者であり、ダンサーであり、シンガーであり、あらゆる芸術を創り出す存在であるでしょう。みなさんには才能があって、僕たちなど吹き飛ばされてしまいます。

パセック:みなさんの経歴が欲しいですね。

ポール:その通り。けれど、いつだって情熱を傾ける先が同じものだったとしても、みなさんの未来は、内側でふつふつと煮えたつような動きに対しては開かれたままです。その動きは、みなさんのストーリーを変え、1つの場所からまったく別の場所へと導いてくれるでしょう。

僕たちはブロードウェイ俳優になるために、ミシガン大学に来ました。音楽と劇場が大好きだったからです。芸術も好きでした。それがなんなのかはよく理解していませんでしたが、それがここへ来た理由です。そしてついに作曲家であると言えるようになりました。曲を書くことはなにかを作ることです。1つの名詞からこの場所へと連れて来てくれました。

パセック:外へ出て、前へ進んでください。みなさんは自分が作り上げてきた人生そのものです。そしてそれをデザインし、強くする力を持っています。それに自分のやり方でまた変えることだってできるのです。それは音楽学部の練習部屋での友人や家族、汗をかいたスウェットパンツとダンスホール、永遠に続くようなキャンパス間の往復バス、ピアノの形をした池でのおしゃべり、そういったものと共にここで始まるストーリーなのです。

世界一の音楽学校から学位を受け取ろうとこの場にいて、自分の扉を開いているならば、ストーリーは広がり続けるでしょう。みなさんのストーリーがどうなるのかという可能性と潜在能力には限界がありません。無限なのです。

ポール:2017年度のミシガン大学劇場音楽・ダンス学部の卒業生のみなさん、おめでとうございます。みなさんが今後なにをされるのか早く見てみたいです。

パセック:おめでとう、みなさん。

(会場拍手)

ポール:この卒業式のために、ミシガン大学についての特別なミュージカルソングを書くことができてとても光栄です。みなさんとこの曲を共有したいと思います。みなさんはまだ聴いたことのない曲です。強制的に始めさせた僕の母のような感じです。それに加えて、僕たちの『ラ・ラ・ランド』と『ディア・エヴァン・ハンセン』での仕事の一部を共有したいと思います。

大学を卒業してからの10年の間に創り上げ、書いてきた曲すべてが詰まっていると思うからです。このミシガン大学で学んだこと、ここで教えてくれた方々のおかげで、今までの曲を書けたんだと思っています。

パセック:ジャスティンがピアノのところへいく時間です。僕たちは信じられないほど助けてくれたこの学部によってここに来ることができました。彼らが育成され影響力のある環境を整備してくれたお陰で、僕たちはすべての教授たちにこの曲を捧げることができます。そして、このすばらしい2017年度の卒業生に曲を演奏できることを誇りに思います。2017年度の卒業生のみなさんにも参加してもらいますよ。

(曲を披露する)

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