タッチパネルのしくみ

マイケル・アランダ氏:タッチパネルは身の回りの至るところにあります。スマートフォンだけではなく、スーパーにも、ATMにも、飛行機の座席に取り付けられている場合もあります。

それぞれのタッチパネルの種類が違っているのにお気づきでしょうか。昔からあるタッチパネルは使いづらいですよね。タッチパネルというよりは、押しこまないと反応しない「プッシュパネル」のようです。

ところが最近のスマートフォンやコンピュータのモニタは、タッチの仕方すら見分けてスムーズに反応します。たくさんの技術が詰まっていますが結局は、パネル上の特定の場所から精密に電気信号を伝える、ということをしているのです。

広く普及している方式の1つは「抵抗膜方式」です。物理的に押してタッチパネルをたわませて反応させる方法です。

抵抗膜方式は2層の膜から構成されています。

表面の膜はペットボトルにも使われているポリエチレンのような、柔らかい透明な素材でできています。2枚目の膜はガラスのような固い素材です。

2枚の膜の表面には電流が流れるように酸化インジウムスズのような金属が、透明度が維持できる程度の薄さでコーティングされています。

そして2枚の膜の間には「ドットスペーサー」と呼ばれる電気を通さない絶縁体が配置されていて、勝手にタッチされたと検出されないように膜同士に隙間を空けています。

タッチパネルが起動すれば、微量な電圧が水平、垂直の両方向にかかります。指やタッチペンで柔らかい膜を押すと、2枚の膜が接触します。

するとその部分の電圧が変わり、タッチパネルと繋がった回路がタッチした場所のXY座標を計算するのです。

抵抗膜方式のタッチパネルは安価で耐久性も高いので、乱雑なサインが何度も何度も書かれるスーパーのクレジットカードリーダー(アメリカでのクレジットカードは電子サインが主流)などには適していると言えます。

ですが、しっかり押さなければ反応せずにイラッとしますし、同時に数ヶ所をタッチしても反応しないため2本指で拡大するといった複雑な動作には不向きです。そのため現在のスマートフォンでは、指が電子部品の役割を果たす「静電容量方式」が主流になっています。

静電容量方式のタッチパネルにも複数の方式があり、デバイスごとに異なっています。しかし基本的には、酸化インジウムスズといった導電性の物質をガラスのような固い板に挟み込んだ設計です。

格子状に引かれた導線は、常に電流を流し続けている「駆動線」と、もう片方は電流を測る「検出線」からなっています。そして駆動線と検出線が交差する場所には特別な電場が生じ、スマートフォンやコンピュータ内部の回路はその電場状態を基準点とします。

そこへ指のような導電性の物が近づくと、電場状態は一変します。人体は電荷を持っているので電流をよく通し、帯電することができます。

そのためタッチパネルに指が触れると、タッチした場所に流れていた電流の流れが変わって電場が変化してしまいます。電流が指を伝って流れていくというわけではなく、帯電した指が触れることで電場が変化するのです。

ほんのわずかな電場の変化であっても回路は検出できるので、タップをしたのかスライドをしたのかといった違いも判定できます。格子状の動線はとても細いので静電容量方式は極めて性格で、しかも同時に複数の点を検出できる種類もあります。

ですが手袋をはめたままではだめです。

布は導電性ではないため、指先に金属繊維が埋め込まれていないと検出されません。さらに水は塩分を含んでいるため、濡れたもので触るとタッチパネル上の電場が変化してしまいます。

つまりタッチパネルは、中にある導電物質で電場を変化させているわけですね。次にスマートフォンでメールを送ったり、ページをスクロールする時は、自分が電子部品になっていると想像しながら使ってみてくださいね。