※以下、川上氏の回答部分を一部引用

ドワンゴ・川上氏はなぜ大物に好かれるのか?

大江麻理子アナウンサー(以下、大江):川上さんは本当に若い方にも支持をされていますし、年上の方からも絶大な信頼を寄せられていると思うんですけれども、自己分析なさって、角川(歴彦)さんがあんなに川上さんにぞっこんなのは、どうしてだと思われます?

川上量生氏(以下、川上):(笑)。いや、どうかわかんないですけども(笑)。まあでも、どうでしょうね……僕は基本、相性があるので、それは年齢に関係なく、合う人と合わない人って分かれてるんですよ。

だから別に年上の人が得意かっていうとそうじゃなくて、あるタイプの年上の人はすごく仲良くなれるんですけど、別に全員じゃないですね(笑)。

大江:では、KADOKAWA、それからジブリというお話も先ほど出てきましたけれども、そのKADOKAWAとジブリというのを、川上さんはどういうふうに捉えていらっしゃいますか?

川上:やっぱり1つは、子供の頃から憧れの対象ですよね。

大江:どちらとも?

川上:どちらともそうですね。

KADOKAWA・ドワンゴ、統合の意義

大江:結局、統合をして何をするのかというのか、というところですよね。これは明確に、先のビジョンというは見えているものなんですか?

川上:いや、無いですね。というか、別に人を食った発言をしているわけじゃなくて、KADOKAWAとドワンゴが何をするかって、みんな疑問に思ってるじゃないですか。みんな疑問に思ってるというのは、やっぱり何をするんだろうっていうのが分からないんだと思うんですね。

で、僕だってわかんないですよ。だから、それは正しいと思いますね。

大江:ただ、経営統合はしてしまおう、という……。

川上:面白いことは出来ると思いますね。思ってるんだけど、それって実際にやってみないとわからないじゃないですか。

大江:そうですね。分かるようなことはもう誰かがやっているだろう、ということなんですか?

川上:そうです、そうです。分かるようなことだったら、多分うまくいかないですよ。わかんないことだから多分うまくいくんだと思ってるんですよね。それは本当に思っています。

ロバート・フェルドマン氏(以下、フェルドマン):星座がぶつかると新しい星が生まれる。だけど、どういう星が生まれるかはわからない。

川上:あー! そうですそうです! だから来年1年間っていうのは、KADOKAWA・ドワンゴもすごい面白いことやりますけど、一緒になる必要なかったじゃん、というようなことを来年やると思います。

大江:とういうと1年くらいは、どちらかというと別々に……。

川上:別々なことしか出来ない。だって今から一緒にやったって、来年は無理ですよ。再来年ですよね。

大江:再来年あたりから統合の成果が出始めると。

川上:出る、早ければ。だと思いますね。

フェルドマン:人間関係もすごく大事だと思いますけれども、大体の合併は「相手はどう出てくるかな?」って両方思ってますけども、前向きに考えてる人たち同士だったら「もしかして私たちも、今までやりたくても出来なかったことが、出来るようになってくるのかな」って前向きに考えていく。そういう人たちが一緒になってくるとなんか良いことあるかな、っと思ってますけどもね。

川上:はい、そうですね。

競争は一番やってはいけないこと

大江:ただ、統合したあとにこういうことします、っていうことが明確にないと、競合の方もどう戦っていいかわからないですよね。

川上:そうだと思いますね。

大江:それも、戦略のひとつですか?

川上:ひとつと言えば、ひとつですよね。やっぱりわかんないと競争しようがないですから。競争って僕、一番やっちゃいけないことだと思ってるんですよ(笑)。

大江:なるべく競争は避けて?

川上:はい。競争は無いほうがいいです。

達成できない目標を立てたって、ガッカリするだけ

大江:川上さんは本当に不思議な方で、お話をしてもわからないことがたくさんあるんですけれども、川上さんにとっての成功っていうのがまた、他の方とちょっとズレていそうな感じがするんですよね。

川上:(笑)。

大江:どうなんでしょう、川上さんにとっての成功って、どういうものでしょうか?

川上:成功って、なんかね……。僕もね、目標はたてるんですよ、成功のルールを自分で決めて。例えばサラリーマンだった時に最初企画やった時って、僕まだペーペーだったんで、企画やってもライバルの会社に絶対勝てないと思ったんですよね。だから僕はその時に、自分のなかでルールを決めてやったのは、新サービスを発表してライバル会社に勝つのは無理だから、ビビらせる、っていうのが目標だったんですよ。

大江:(笑)。

川上:それで、なんか発表するじゃないですか。そしたらライバルの会社が、1か月後ぐらいに似たようなサービスを発表するんですよ。そしたら「ビビった! よっしゃ勝った!」ってことにして、それで終わりなんですよね。

大江:はー。

川上:だからその時出来ることで目標を決めて、それで自分で勝ちだっていうふうに決めちゃうんです。

大江:なにかプロジェクトで利益が出るとか、そういうものを成功に据えているわけではないと。

川上:利益が出せる時は、利益を目標にすることもありますよ。でも利益が出せないと思ったら、そんな達成できない目標を立てたって、ガッカリするだけじゃないですか。そんなんやらないですよね(笑)。

豊島晋作氏:再来年には、少なくともビビらせるなにかが出来るかもしれない?

川上:いや別に、ビビらせることが目標でもないので(笑)。新入社員の頃は、僕にはビビらせるくらいしか出来ないなと思ったんですよ。自分のベストはビビらせることだっていう(笑)。

大江:ただその、コンテンツをたくさん持っている角川と、皆さんを仲間に巻き込みながら世に出していくのがうまいドワンゴが統合する。これはどういう化学反応が起こるか、楽しみですよね。

川上:いやー、うちはそんなに周り巻き込むのは得意じゃないですよ(笑)。うちは人付き合いが苦手な人たちばっかりで出来ている会社なので、基本はそういうのは不得意なんですけど。まあただ、人付き合いが苦手な会社って、助けてくれる人が現れるんですよね。角川さんもそうでしょうし、今までもいろんな会社が、このままじゃマズいよねドワンゴは、って思ってくれた人に助けられたんで、そういうふうに見えるだけだと思いますね。

「巨人」googleへの対抗策とは?

大江:海外に目を向けますと、googleですとか、かなり大きなプラットフォームと呼ばれるネットがありますよね。そういったところと対抗していけるようなプラットフォームを作っていく、というわけではないということなんでしょうか?

川上:対抗は出来ないと思いますよね、普通に考えると。普通の方法だと対抗出来ないような競争を仕掛けてきているのが、googleのプラットフォームだと思うんですよ。そことはやっぱり、同じ方法で対抗しちゃダメですよね。

大江:ということは、違う方法……?

川上:はい。そこでは弱者なわけですから、ある種の誤魔化しみたいなことをやらないと、やっぱり戦えないと思いますよね。

大江:誤魔化し、というのはどういうことですか?

川上:混乱させるような、ゲリラ戦ですよね(笑)。

フェルドマン:そこからいろんな事が生まれてくると。 (以上)