定年後の夢は海外DJデビュー
加藤大策氏(以下、加藤):先ほど、的場さんがお話しした(イノベーティブな人の共通点)1つ目の「好きなことをやってる」というところにすごく共感しています。
明治安田生命は大きな会社ですが、(今いる所属では)上司から「いつまでに何をしろ」とか「予算はいくらだ」とか言われたことはまったくなくて、思いついたこと、好きなことをやっています。
ただ、好きなことをやるときに1つだけ忘れてはいけないのが、やはり私どもは相互会社ですので、社員であるお客さまが不幸になることはやってはいけないと思っています。
お客さまのために好きなことをやる。そこさえ間違えなければ、会社自体は意外と懐が大きいと思います。
ちょっと話が外れますが、うちの会社は65歳で定年になります。定年のあと、30年、40年ぐらい生き残るわけですけれども、最近「その間に何をしようかな?」と考えています。
やはり私は、日本のDJ黎明期にDJの真似事をやっていたということもあって、家にDJ用のレコードが6,000枚ぐらいあります。
今は、家の中にしまっているんですけど、65歳になったときに引っ張り出して、渋谷でDJの勉強をし直して、75歳ぐらいには海外デビューしたいなと。実はこれが定年後の私の夢の1つです。
そのようにすれば、残る30年ぐらいを退屈しないで生きていけるかなと思っています。
「文系です」「理系です」は通用しない
的場大輔氏(以下、的場):やはり「好きなこと」を持っているというのはいいですよね。 実は私、今の仕事は8つ目なんです。
私の場合はITのアーキテクチャとパブリックセクターが専門で、最近はAI、それから金融もしているということで、みなさんNPOとか部活動とか、いろんな趣味を持っていると思いますが、そういう中で領域を広げていくことがすごく大事です。
加藤:どうしてもこれまでの会社の中だと、領域が狭いんですよね。IT部門の人はITをずっとやっているとか。
例えば、大学を出たときに「私は文系です」と言い切って……私から見ると「文系ってなんだろう?」とよくわからないですけど。
「文系です」とか「理系です」とか、「専門はITです」とか言う前に、隣の隣ぐらいまでいろんなものを見ていって、気づくとそれが専門になっているということがすごく大事だなと思います。
DJをやっていると、「次のレコードは何をかけようか?」といって、その場で即興で決めていくんです。決められたルールはないので、周りが踊っているのか、踊っていないのかを見ながら、瞬時に選択しなければいけません。
私は仕事もそれと同じだと思っていまして、「文系なのでITは無理」とか「理系だけど、大学の時にはコグニティブコンピューティングがなかったので無理」とか、そういうは今の時代では効かないと思います。
これからの時代は新しいものしか出てこないので、その時にどのように備えていくかが大事だと思います。
105歳までに何をして生きるべきか
的場:やはり大事なことは、105年も生きなければいけないということで、選択肢がないということを理解していただくといいのかなと思います。
世の中が複雑すぎて、競争が激しすぎて、会社が守ってくれるほどの体力がなくなってきています。そのなかで、「じゃあどうしたらいいか?」ということを一人ひとりがよく考えないとダメな時代が来るということです。
加藤:生命保険会社にいて、「イノベーションをやっている」と言うと、みんな絶対に「生命保険のイノベーションって何?」って言うんですね。
私ども生命保険会社がやっていることというのは、冒頭のスライドでお見せしたとおり、1,000万人ぐらいのお客さまや関係者がいて、140年ぐらいの歴史があって、明日潰れちゃいけない会社なんですね。
100年後ぐらいまで続けないといけない会社だと考えたときに、そこでできることがイノベーションだと思っています。
やはり105歳まで生きてしまうのならば、「その間に、世の中のために何をやるんだろう?」と考えると、どうしてもイノベーションみたいなことをやらないわけにはいかないと思います。そうしないと、ここにいる人も含めて、全員が95歳ぐらいで「さあ、どうしましょう?」という世の中になってしまうことをとても心配しています。
イノベーションが起こせないのは環境のせい
的場:先日、パナソニックの発明王と言われている大嶋さんという方と会いました。ジャイロセンサーや手ぶれ補正の技術が世界中で使われていますけれども、それらは大嶋さんが発明したものなんですね。
パナソニックの社員で40年仕事をされているんですけど、大嶋さんが特許を取った件数は40年間で1万3,000件もあります。
大嶋さんはむちゃくちゃ変わっていて、おもしろい人なんですけど、お会いしたときにいろんな話を教えてもらいました。
やはり「イノベーションを起こすのは人だ」とおっしゃっていて、「その人が本当はイノベーションができるのにできないのは環境の問題だ」と言い切っていました。
例えば、パナソニックでは「eチャレンジ」という人事制度ができて、今の職場に合ってないと思ったら、手を挙げて好きな部署へいける制度を作ったそうです。
そしたらけっこう応募があって、今までぜんぜん違う仕事をしていた人たちが集まってきて、ものすごく発明が生まれたそうなんです。
何が言いたいかというと、もし今、大企業いらっしゃる方で、「自分がイノベーティブじゃないかもしれない」とか、「もっとできるんじゃないかな」と思ったら、それは自分のせいにしないほうがいいと思います。間違いなく環境のせいだと思ってください。
環境を変えようとすると、「辛抱するのが会社員だろ!」と言われると思いますけど、それは嘘です。60歳定年の時代の話ですから、忘れたほうがいいです。
今はデジタルな時代に変わってきましたから、環境を自分から変えていけます。なので、自分が違和感を感じたら、絶対に正しいと思ってください。
世界を変えるために必要なこと
加藤:先ほどご紹介したとおり、私どもの会社では、デザインシンキングというのをやっています。保険会社の人を20人集めてデザインシンキングをやるわけです。効果はどうなのかというと、1割ぐらいスイッチが入る人がいます。今度はその人たちが種を蒔いてくれて、どんどん広がってくると。
これは20人に2人なのですごく確率が低いんですけど、それでもやらないよりはよっぽどましです。そうやって増やしていくと、明治安田生命の職員は4万人なので1割といったら、4,000人なんですよね。
的場:大きいですね。
加藤:これはすごい会社になるなと思って、ほそぼそと始めています。これが今の実態です。やはり変われないということはなくて、大企業だからこそできることがあるし、スタートアップだからこそできることもあります。そこをお互いに認めあって、とにかく世界をよくしようと。
的場: そうですね。そのときに反対するような会社であれば、辞めたほうがいいと思いますし、そんな会社は長く続かないと思います。これからはやりたいと思ったことをやって、いい会社に転職する、そこでいろんなことを変えていくのが大事だと思います。
司会者:そろそろお時間になりますので、最後に会場のみなさんにメッセージをいただきたいと思います。では加藤さん、お願いします。
加藤:私もやりますので、みなさんも好きなことをやってください。怒られてでも好きなことをやっていたほうがいいと思いますので、一緒にがんばりましょう。以上です。
的場:横のつながりを大切にしてください。こういう会で一緒だったり、1回でも横同士で話した人は、また絶対に会うことがあると思うので、友達になったらいいことが絶対あります。
それは明日かもしれないし10年後かもしれませんけど、そういうつながりがすごく大事だと思います。人生105年ですので、大切してください。よろしくお願いします。
司会者:加藤さん、的場さん、どうもありがとうございました。以上でセッションを終わりとさせていただきます。お二人に大きな拍手をお送りください。ありがとうございました。
(会場拍手)