打率にこだわるようになった

重松大輔氏(以下、重松):はい。ありがとうございます。葉山さん、お願いします。

葉山勝正氏(以下、葉山):働き方のところがやっぱり一番大きいとは思うんですけど、打率にこだわるようになったというひと言ですね。

重松:おもしろいですね。打率にこだわる。

葉山:基本的にはやっぱりベンチャーなので、主体者になる機会がもちろん多い。だから、日々の仕事では打席数は多い。つまり、チャンスはたくさんあるんですよね。ただし新規事業とか「なにか新しいサービスを作るぞ!」「新しい取組みをするぞ!」といったタイミングでは、成功率100%にこだわらないといけないと思ってます。

大企業は資金力がたくさんありますし、いろんなところがお金くれますので利益も出てますからね。なので、今の会社に入るまでは、「新規事業をやったら、10やれば3つぐらい当たればいいか」という考え方が昔は正直ありました。

それって要するに、野球で言うと、9回あったら必ず3回は打席が回ってきて、そのうち1回打つと打率は3割ってことじゃないですか。「これもう、超一流選手ね」って話なんですけど、そういうふうにはなかなかベンチャーはなれない。

資金力などのいろいろな制限がある中でベンチャーが生き残っていくには、1つのチャンスも無駄にはできない。「100パーセント当てるんだ」っていう気持ちでやらないと上手くいかないなと、すごく思いますね。

大企業の動きを知っていると、やりとりしやすい

あまり:すみません、お話の途中で。今みなさんTwitterで打ち込まれていることを少しおうかがいしたいと思うのですけども。

この4名に共通しているのが、大企業を経験しているということです。具体的に勤務経験は新しいベンチャー企業の立ち上げですとか、運営していくなかですごく役に立ったということを教えてもらいたいと思います。西村さん、だいぶ悩まれていらっしゃいますけども。

西村洋平氏(以下、西村):僕はファーストキャリアが役所であったので、その業務がどれくらいプラスしているかという観点で見ると、大企業の働き方とか動き方が理解できていると、新たに組んでなにか実施する際に話を開始するときにやりやすかったりする。

どういうパワーバランスとか、ポリティクスがあるから企業の中の誰にちゃんと話を通さなきゃいけないとかがわかるようになったのは利点でした。こういう点は実は大企業に入らないとわからなかったことです。ベンチャーだけの人と話してたらあまり理解していない部分だと感じました。

あまり:なるほど。内部を知ってるからこそ開拓できたということですね。

西村:そうですね。まさにおっしゃる通りだと思います。

あまり:大企業でずっと過ごすわけじゃなくて、ちゃんと目標を持って大企業に入るのも作戦的にはいいのかなって感じですかね。

西村:そうですね。そういうメリットは確実にあると思いますね。僕自身は。

あまり:ありがとうございます。では、葉山さんはどうでしょう。大企業で働いた経験が具体的に活きた瞬間についてエピソードみたいなのはありますか?

葉山:やっぱりベンチャー企業とはいえど、成長過程においては、なにがしか一般化していくことが非常に重要になってきますので。

ベンチャーって本当に動物園みたいな感じで、いろんな芸がある人たちがたくさんいますよね。ものすごい営業が得意な人がいれば、全然しゃべらないんだけど、エンジニアで「ものすごいテクノロジー持ってます」みたいに、いろんな人がいると思うんです。個人商店でスタートしてるっていう会社が多いと思うんですけど。

やっぱり、ある一定以上の規模を求めていこうと思うと、すべてのことを個人の力量に頼るのではなく組織力でもってことを進めていくというのが絶対重要になってくる。そういうのは大企業は得意ですよね。一般化したりノウハウ化したり。

それを蓄積してリニューアルしていくとか。そういう内容って大企業のほうが強い。それが経験できたっていうのが非常に大きいです。

あまり:やっぱり成長してきた後にノウハウがあるところの参考になるということですよね。

葉山:そうですね。やっぱり大企業からベンチャーに転職してほしいっていうニーズは、一定以上ありますよね。

ベンチャーには新しいことを自分で考えてやる楽しさがある

あまり:新しい風を巻き込むということですね。ありがとうございます。では、窓岡さんはどうでしょう?

窓岡順子氏(以下、窓岡):お2人と違うことでいくと。大企業で働くメリットは大企業ってもちろんですけど、人が多いので、人生や仕事の先輩たちからいろんなことを教えてもらえて、いろんな人脈ができて。

なので、私は外に出たとしてもけっこう助けてもらえる人がいるというか、そのときに出会った人とか仲間とか、お客様とかとの繋がりが非常に強いです。それがなんか財産みたいになって、今生きることができるといっても過言ではない。なので、リクルートで得た一番の財産は人だなって本当に思ってますね。

あまり:いろんな人がいるプラットフォームって感じはしますよね。

窓岡:いやがおうにもいろんなことを教えられて叱られてだいぶ揉まれるので、それは大企業ならではというか。

あまり:そのなかの悔しかったこととかの矛盾。「これ、なんとかならないのかな」とかは、やっぱり次の新しいものを立ち上げるときに糧になってくるということですね。

窓岡:ありますね。いろいろ意見を言っても大企業だと通らなかったりだとか、そういうことももちろんあったりするんですけど。

あまり:今されてることで意見の透明化というか、そう言ったものは大企業で働いた時の悔しい思いとか活かしてやっていらっしゃるということですか?

窓岡:そうですね。昔はなにか新しいことを1個やりたいと思ったら、相当な関門があるんですね。何個も何個も。そのために資料を作り会議をする、根回しをする、という。

あまり:稟議を通していったりとか。

窓岡:今は、それがいい意味でまったくないというか、自分で考えて自分でやるってだけ話なので。新しいことを自分で考えてやることの楽しさとか、価値とかっていうのは昔があったからこそかなとはすごく思います。

リモートワークやテレワークをガンガン入れた

あまり:なるほどですね。ちなみにスペースマーケットさんは、こういった大企業からこういうふうに変えてみたぞっていうのは重松さん的にはありますか?

重松:変えてみたこと?

あまり:こういった枠組みで。普通だったら今の稟議の話じゃないですけど、すごい会議が多いとか、そう言ったときに所属が遅くなってしまうのがあったと思うんです。そう言ったなかでスペースマーケットさんが事業を始めるなかで、大企業からここをガラッと変えてみたことってありましたか?

重松:そうですね。やっぱり働き方とか、大企業だと全員9時にいかなきゃいけないとかあると思うんですけど。人によって働きやすいコアタイムってけっこう違うと思うんですよね。お子さんがいらっしゃるご家庭とか、エンジニア自体は夜型で、夜根つめてやりたいとか。あとお母さんだと早朝やりたいとかいたりするんですね。

そこはいろいろ裁量を与えていって、リモートワークを入れたりとか、会議とかは極力短くやるし、テレワークを本当にガンガン入れてますね。たまに大きな会社だと訪問とか、すぐ人を呼ぼうとするんですけど、なるべくスカイプとかの打ち合わせで1回やってみると「あれ、これけっこう便利ですね」とか言われるんですよ。

あまり:それ、先方の思惑としてはやっぱり会社に来てもらうことで、ちょっと相手に萎縮させるとか、そういうのを感じますか?

重松:いや、あまりないですね。たぶん深くは考えてなく、そもそもずっとこれでやってきたという慣習からで、効率性はあまり考えてないんだと思うんですよ。

あまり:なるほど。

重松:夏の暑い日とか、冬の寒い日、雨のなかの訪問や、例えば往復1〜2時間掛かるような場合、それだったら別にオンラインミーティングでもいいじゃんというように思うんですよね。そういうふうに今までの常識を取っ払ってやりやすい働き方というのを考えてます。

あまり:なるほど。そういうのってみなさん、今お話に出たようなシチュエーションの場合に訪問するという話は大企業内にいたら気付かないことですかね?

葉山:それはそうだと思いますね。今の会社では、訪問せずにSkypeなどで面談するということも多くあります。それも大企業だといかなきゃいけないって言って。

あまり:なんかこう、常識的みたいな?

葉山:常識的に。

窓岡:訪問目標みたいなのがありましたね。

葉山:ありましたね。アポイント目標とかありましたね。

窓岡:1日で何社も行かなきゃいけないとか。

あまり:ああ、なるほど。

葉山:そうです。

窓岡:名刺をもらってくるだとか(笑)。

周囲の「いいね!」を削ぎ落とし、出てきたものを大事にする

あまり:でもそれってなにかこう、やらされている側はどこにゴールがあるのかというところで、モチベーションが下がっていきやすいところかなって僕は思うのですが、どうですか?

窓岡:そうですね。意味はなくはないんですけど、けっこう非効率なことを敢えてやってるみたいな。

あまり:がんばってるからいいみたいな(笑)。

窓岡:それはそれで、そっちの営業のやり方のメリットはあるので、否定するわけじゃないですけど、「そのやり方でなくてもよくない?」みたいなことは、すごくたくさんあると思います。

あまり:なるほどですね。ありがとうございます。ではですね、残り時間も少なくなってきましたので。最後まで残ってお話を聞いてくれた学生のみなさんにですね、ぜひゲストのみなさんからアドバイスを。例えば自分がみなさんと同じくらいの歳だったら、そういったアドバイスをしたなというのがあればですね、ぜひおっしゃっていただければと思います。

西村さんからみなさんにアドバイスをお願いします。

西村:もし僕が今、みなさんと同じ年齢になったら、たぶんWebサービスやゲームをやっている会社を新卒で受けてると思ってるんですよ。それはどういうことを言ってるかと言うと、僕は社会人始めて8年とか9年経って、初めてインターネットがすごい好きだということに気付いたというところにあります。

つまり、わかりやすい言葉で言うと自己分析なんですけど。もうちょっと言うと、自分がなにが好きで、その好きなコトにをどれだけクリアに具体的に自分のなかに持てるかというのが大事になってくると思います。

就活をしていると、友達がこう言ってるとかSNSで言われてるとか、無意識に他人の意見を自分の中に取り入れてしまうことがあると思うんですね。これを削ぎ落として、削ぎ落として、自分のなかから出てくる好きなものを大切にするのが重要だと思います。

どん底を味わうという経験をどれだけできるか

あまり:ありがとうございます。では続いて葉山さんお願いします。

葉山:大前提として最初の会社というのはすごく大事だと思っています。そこで働いたものがいろんな糧になります。先ほどの窓岡さんの話もそうですけど、人脈もそうだし仕事の癖とかもそうだし、ガッツとかもそうだし、1社目の経験はめちゃくちゃ大事です。

あとは、会社選びの際は自分の現体験を非常に大事にしてもらいたいなと思ってます。仕事ってそんなにずっと楽しいものでもないし、辛いことのほうがわりと数としては多いです。

そういうときに最後ふんばれるかどうかって、自分がやってるビジネスが好きか、今のお客さんたちの期待に応えるのが自分にとって喜びなのか、なぜそれは喜べるのか、そう言ったところが結びつかないと続かないと思うんです。

なので自分がテンション上がるタイミングがどういうことなのかってことを、ひたすら考える。そのうえで納得のいく1社目を選んでもらいたいなと思います。

あまり:窓岡さんアドバイスをお願いします。

窓岡:20代のうちにたくさんの失敗をしておいてほしいというのはすごく思っていて。たくさん失敗すればそれだけ成長もチャンスがあるので。

失敗するためにはやっぱりバッターボックスに立たなければいけなくて、どれだけたくさんそれができたかでわりと30代からの働き方が変わってくるかなと思っているので。20代の若いうちって失うものも、なにもリスクもないので。

たくさんチャレンジして、たくさん失敗をして、怒られてどん底を味わうという経験をどれだけできるかが今後の人生を決めていくので。

私は選択肢があったら大変な方を選ぶというのをモットーとしてるんですけど、そういう何か自分なりの軸を見つけてチャレンジを忘れないというか。安定は悪いわけではないですけど、成長したいのであれば、行動してチャレンジして失敗するという経験をたくさんしてほしいなと思います。

選ぶなら、成長産業に入ったほうがいい

あまり:ありがとうございます。では重松さんからお願いします。

重松:私からのアドバイスとしては、大前提として成長産業に入ったほうがいいと思ってます。右肩上がりの産業ね。

これから日本は人口が減っていくじゃないですか。そうすると、どういうことが起こるかというと、基本的に普通に頑張ってたら下がっていくんですよ。高度成長期って普通にやってても上がっていったんですけど、これから人口がどんどん減っていくんで我々の世代の半分ぐらいしかいないんですよ。

これからのみなさんの世代って、基本的にはこういう産業ばかりになっていくんですね。なので本当に右肩上がりの産業で、優秀な人が集まるような5年後、10年後を作るようなビジネスのところにいけば、業界が伸びていれば自分もそのまま伸びていく。

そういう業界はなにか、基本的にはここに来ている会社さんはみなさん知らない会社が多かったかもしれないですけど。実は有望な会社がいっぱいあるので、ぜひこれから伸びる会社に行かれるのがおすすめです。

これからの時代、どんどんキャリアのあり方も変わっていくし、副業とか新しい働き方みたいなのがどんどん出てくるんですよ。ロボットもどんどん出てくるし、AIも出てくるし。

もうびっくりするくらい世のなか変わってくるので、変化に対応していけるためには、ぜひこれからの産業、新しい産業は何かということを全員考えていただいて、そこに突っ込んでいただければなと思ってます。

あまり:ありがとうございます。みなさんの話をおうかがいしていると、今日ずっとトークセッションがあったなかで、「大企業もいいけどベンチャーもいいよ」みたいな話があったんですけども。

この最後のセッションでは大企業でも学ぶことがあるんだと。でもそこで終わるんじゃなくて、そこでなにを手に入れて、さらにその向こう側でなにをしていくかというもの。その向こう側でベンチャーだったりとか、起業だったりとかいう選択肢がまた生まれてくるということを教えていただきました。

どうもありがとうございます。では、もう一度ゲストのみなさんに大きな拍手をお願いします。

(会場拍手)