記念すべき30回放送

西野亮廣氏(以下、西野):よろしくお願いします。

のぶみ氏(以下、のぶみ):おつかれさまです。よろしくお願いします。

山口トンボ氏(以下、トンボ):もう30回目でございます。

西野:もうそんなにやってるんや。

のぶみ:30回やってるんだ! すげ~!

西野:へへへ(笑)。

のぶみ:そっか~。ダラダラやってたな~!

トンボ:通常運転で。

西野:本当、ダラダラやってましたね。

のぶみ:ダラダラやってたな。あれですね。今日も「しるし書店」、やってたんでしょ?

西野:そうなんですよ。もう、もっぱらなんですよ。

トンボ:はい。

西野:朝起きてからもう、今の合間ずーっとそれで。えぇ、えぇ。

のぶみ:さぁ、もう1回しるし書店、まだ知らない人もいるだろうから、ちょっと1回説明しましょうか?

「しるし書店」をおさらい

西野:1回説明すると、本屋さんが1日に1軒つぶれているという話を聞いて。

のぶみ:すごいよねぇ。

西野:「出版不況」っていう言葉も聞くし。でも一方で、本当に出版不況なのか、それとも時代が変わってるのに本屋さんがそこに合わせるのをサボっているのか、どっちかよくわからないので、それをわかるためには1回本屋さんをやろうというところからスタートです。本屋さんをやることは決めたんです。

まぁロボットが管理する本屋さんはAmazonさんにお任せしたらいいと。それで、人にしかできない本屋さんのほうがいいなぁと思って。それで、何かなぁっていろいろ考えていった時に、「古本がおもしろい」ってなってですね。

古本って、例えば本って1回読まれると値段が下がっちゃうじゃないですか。ブックオフとかに売られるようになる。だけど、誰かよくわからない人が読んだAっていう本と、イチロー選手が読んだAっていう本だったら、「イチロー選手が読んだ本の値段って果たして下がるかな?」と思ったんです。

つまり、今のところはブックオフに売る時は、Aくんとイチロー選手がブックオフに持っていったら同じペースで値段が下がっていくけど、むしろイチロー選手が読んだ本っていうのは、価値が(上がるはず)。

のぶみ:気になるよなぁ。

西野:もっと言うと、イチロー選手が読んで、イチロー選手が気になったところに書き込み入れたりだとか、ふせん貼ったりだとか、線を引いたりだとか、つまりそういう「印」を入れた本っていうのは、定価よりも高く売れるはずだと。

のぶみ:価値がある。

西野:価値がある。要は、本自体というか、どっちかといったら、イチロー選手が何をおもしろがって、どこを見て、どんなことを感じたかっていう、その視点が付加価値として機能するから値段が上がるはずだと思って。それで、1回ちょっとやってみようと思って。

のぶみ:今けっこうやってるんですよね?

西野:いや、まだです。まだやってないです。

のぶみ:まだ発動してない?

西野:やってないです。ネットショップで1回「しるし書店」っていうのをテストで出してみたんですよ。僕が1,000円の本を読んで、気になったところのページを全部折って、それで5,000円で売ってみたんです。売り上げは全部熊本に支援するっていう。やっってみたら2秒ぐらいで本が売れて。

それは僕のファンの方が買われたと思うんですけど、僕、知名度はあんまり関係ないと思っていて。あるようで、あんまりないと思っていて。

というのは、名もなき男の子が読んで名もなき男の子が印を入れた本っていうのは、世間的なニーズはないけれど、その男の子に恋焦がれてる女の子だとか、その男の子の生き方に憧れている後輩さんだとか、ご両親だとかはやっぱりほしい1冊であると。

「あっ、これおもしろい」と思って、しるし書店っていうのを最初は自分のためだけにやろうと思ったんですけど、「これ、僕じゃなくてもこの本は売れるな」と思って。しるし書店を、全国誰でも出店できるようにみたいな。

のぶみ:YouTubeみたいにね。参加できるようにしてるんですね?

西野:出店できるようにするプラットフォームを今作ってるっていうことです。

のぶみ:「(値段が)いくらかは店主が決めていいんですよ」と、そこに今コメント出ましたけど。そうなんですか?

西野:そうそう、店主が値段を決めていい。つまり、自分の信用に自信があるのであれば、自分の視点に自信があれば、信用されてるっていう自信があるのであれば、1,000円の本を5,000円で売ったっていいし、「いやいや、私はまだまだ」っていうんだったら1,000円の本を500円で売ったらいいし、値段設定は自分で決めていい。

ただ、出すのは印が入ってる本だと。だから、ブックオフとかに売れないような本ですね。

トンボ:値段がつかないですもんね。

西野:そもそも値段つかないじゃないですか。つまり、世間的にはゴミとされるものですよ。それを売っちゃうっていう。

しるし書店、のぶみの場合

のぶみ:僕、昨日そのしるし書店を聞いて。これ絶対売れないと思うんですけど、あのねぇ、うちのお父さんが……。これ、僕の『暴走族、絵本作家になる』っていう本なんですよ。うちのお父さんって、こんなになるまで読んでるんですよ。

西野:うわ~!

トンボ:これ、メモしてるんですか?

のぶみ:ほんで、俺これ、ぜんぜん読めなくって。「何書いてんだろう?」と思って。

西野:うわ~。

のぶみ:うちのお母さんからなんか写メが届いて、うちのお父さんが僕の出た「情熱大陸」とか「嵐にしやがれ」とか、もう毎晩見て、毎晩繰り返し繰り返し見て、ほんでこの本を抱いて寝るんですって。

西野:へぇ~。

のぶみ:それで、うちのお父さん、こんなボロボロになるまで読んでるんです。ちなみにこれは3冊目らしくって。

トンボ:へぇ~。

のぶみ:これが4冊目なんですよ。4冊目をもらってきたんですけど。(すでに多くの書き込みが加えられている)

トンボ:あれ、ちょっと……(笑)。

のぶみ:ほんでね、これなんなんだろう、むちゃくちゃにこういうふうに落書きしてる人じゃないのかなと思って、さっきよーく見てみたんですよ。そしたら、はじめのほうにはそんなに書いてないんですよ。ほんで、後半になるとすごい書いてあって。ほんで、よーく見てると、「俺はもう70代か」とか書かれてるんですよ。「のぶみはこの文章の時に……」、これ僕の自伝の本なので。

トンボ:なるほど。

のぶみ:「昭和何年だったのか。ということは、俺はこういうことやってたな」って書き込んであるんですよ。

西野:へぇ~。おもしろ~。

のぶみ:へぇ~! と思って。

トンボ:へぇ~。

のぶみ:「そんなことする?」と思って。本当俺、今日インタビューで「家族について」っていうインタビューだったんですけど、家族についてあんまりなんにも思ってなかったんだけど、これ見て、「俺、ひょっとしたら愛されてるな」って……。

トンボ:ははは(笑)。

西野:そうですよ。そらそうですよ。

トンボ:すごいですよ。こんな本は初めて見ました。

のぶみ:こんなのおかしくないですか? これすげぇよ。

トンボ:すごい。これはもう立派な印が刻まれて……。

西野:そうですよね。

本ではなく、視点が染み込んだ本を売る

のぶみ:もはや芸術になってるよね(笑)。こうなってるからね(ページが取れている)。ちょっと感動したんですよね。だから、それがどうのっていうことじゃないけど、ちょっと感動はするなと思ったんですよね。

西野:はいはい。

のぶみ:それ聞いて。いや、「しるし書店って何なんだろうな?」って。もともと俺ってあんまり印つけない人だからどうしようかなと思ったけど、これ見たらちょっと、「うわ、いいじゃん」って。うれしかった。これ、取っといていつか番組に出る時に(笑)。

西野:世間的なニーズはないと思うんですけど、この本がほしいっていう方はいらっしゃると思うんですよ。お父さんに憧れてる方だとか。というと、やっぱその本ってたぶんほしいと思うんですよね。

のぶみ:いや、これ僕がほしかったですね。

西野:だから、のぶみさんがほしいと思う、そういう感じで。

のぶみ:だって、こんなに俺の本読んでくれる人って、たぶん地球に1人だと思うよ(笑)。

トンボ:ブックオフではもちろん売れないですもんね。

のぶみ:売れない売れない! こんなの売れないよね? 「これ、なんだ?」って。「ゴミじゃないか」って言われるけど、俺には宝なんだよなぁ。そういうことだよね?

西野:はいはい。本を売るのではなくて、まぁ売ってるのは本なんですけど、店主の視点が染み込んだ本を売るっていう、そっちですね。

しるし書店が目指すのはSNS

のぶみ:でも、企画自体がまだ嫌われてないっていう。炎上してないっていうのがちょっと嫌だって言ってたよね?

西野:まぁ、めずらしくアンチの人が出てきてないっていうので。

のぶみ:どうやったらけなされるかね?(笑)

西野:会議で上がってたのは、もうずっとそっちです。「どうやったらアンチができるか?」という。アンチがいたほうがやっぱり盛り上がるから。

のぶみ:最低なことがあるんだろうなぁ、なにか(笑)。

トンボ:今はちなみにどれぐらいなんですか? サービスの完成度というか、届けられるまでにどれぐらいの……。

西野:たぶん7月ぐらい、6月ぐらいには完成して、そこから2ヶ月ぐらいは自分のオンラインサロンのメンバーだけにリリースして、テスト運転してみて、どっか穴がないかみたいなことをやるんだけれど。

まぁ今はね、方向性が大きく決まったのは、まずしるし書店って言ってるんですけど、スタッフに言ったのは、なんだろう……。本を出すでしょ? 本を出すじゃないですか。要は、古本販売サイトにするのはもう興味がないんですよ。そっちにはもう全然興味がなくて。

古本販売サイトじゃなくて、僕たちが作らなきゃいけないのは、「古本コミュニケーションサービス」だと。つまり、古本をきっかけに人との会話が生まれたらすげぇおもしろいねって。だから、SNSなんですよ。

のぶみ:よくそれ話すよね。それを絡めるよね。

トンボ:オークションサイトとかそういう、メルカリみたいなこととはぜんぜん違うと。

西野:じゃなくて、SNSを作っちゃおうと。TwitterとかFacebookとかああいうもの、SNSを作っちゃう。きっかけとして本があれば、同じ趣味……。つまり、図書館とかで本を取る時に手と手がふれあってハッ、みたいなことを、これをインターネット上でやってしまおうという、そっちですね。

のぶみ:だから毎回言ってる、自分を主役にするっていうのをけっこうメインにしてくるもんね。「一人ひとりが主役なんだよ」っていうふうにしたい人だもんな。

誰に売るかは売る側が決める

西野:そう、コミュニケーションを生むためにはどうしたらいいかっていう、そっちになってますね。

だから、まず本を出すじゃないですか。「しるし本」っていうんですけど、しるし本をバッて出したら、ほしい人いますよね。「ください」っていって手を挙げるんですけども、例えば「しるし書店 西野亮廣店」の常連客が10,000人いたとしたら、それを早いもん勝ちってしてしまうと、常にへばりついとかなきゃいけないじゃないですか。それもなぁ、っていうのがあって。

最初の人が手を挙げて、そこから例えば6時間とか猶予があって、最初の人が手を挙げて6時間以内にみんな手を挙げる猶予があって、30人ぐらい手を挙げたとしたら、僕が売る人を決める。

のぶみ:あぁ~。

西野:つまり、「この本はあなたに読んでほしい」とか、「あなたが読んだほうがたぶんいいと思うよ」っていう。

のぶみ:なるほど、なるほど。

西野:「このタイミングであなたが読んだほうがいい」って、僕が売る人を決めるっていう。買う人も誰から買うかを決めるけれども、売る側も誰に売るかを決めると。

トンボ:あ~、西野さんっぽい、それは。

西野:そこでこういうやりとりが。

トンボ:なるほど。早いもん勝ちじゃないんですね。

西野:そうそう。

のぶみ:オークションでもないと。値段が跳ね上がれば買えるっていうことでもなく、お互いの。だからコミュニケーションだっていうことですよね。なるほどなるほど。

インターネットに体温を宿す

西野:徹底して「インターネットに体温を宿す」っていうことを言っていて。あの「星」の評価っていうのを1回やめる。

トンボ:なるほど。

西野:「星5個」とか。要は、人に対してそういうのってないじゃないですか。

トンボ:そうですね。

西野:のぶみさんに対して「星何個」って言わないじゃないですか。あれをやった途端に距離ができちゃうようになると思うので。それを1回やめて。そういう評価しちゃうの1回やめようって言って。

のぶみ:そうなんだよなぁ。俺もわりとその、「みんな大好き」って決めてるんですよ。「みんな僕は好き」って決めてて。それはなんでかというと、人に会った時に判断するのが嫌なんですよ。なんか、審査員になるのが嫌だって。なんか「こいつこういうふうに言ったから、俺嫌い」とか、ちょっと疑心暗鬼で会ったりするじゃないですか。それが嫌なんですよね。

そこから「好きです」「ありがとうございます」っていう感じで会ったほうが、感謝が生まれるし、そっちのほうがいいと思うんだよね。そういうのがちょっと入るといいよね。優しさみたいなやつがね。

西野:はいはい。まぁ指標があるとするのであれば、その店の常連客数ですね。つまりフォロワー数は出るから、常連客数ぐらいですね。

でも、常連客数も多ければいいかっていうと、ちょっとそこもあやしいところで。例えば常連客数が多かったらその本が手に入りにくいということだから、場合によっちゃあ「うちの店あんまり広めないで」っていう人もたぶんいらっしゃるだろうなと。

のぶみ:なるほど。

トンボ:なるほど。

西野:内々でまわしたいから。

のぶみ:そういうラーメン屋とかあるよね(笑)。まんじゅう屋とかね。

トンボ:確かにね。

西野:はいはい。

のぶみ:紹介したくない、みたいな。わざわざ紹介したくない。でもすごい人気だからっていうのありますよね。

西野:だから、商品経由で行くのではなくて、人経由で商品にたどり着く。店主の信用がすごく大事だっていう。

のぶみ:そうですよね。

西野:そこの勝負ですね。

ズルした人が損をする仕組み

のぶみ:だってニセモノだったら嫌ですもんね。

西野:そういうことを言うと、よくお客さんとかが、例えば「そんなんやって、適当に線引いて出す人が出てきたらどうするんですか?」みたいな質問があるんだけど、「そんなことして何のメリットがあんの?」っていう話じゃないですか(笑)。店主がそんなずるいことをして……。商品を買うわけじゃないから。「誰から買うか」をやってるから。

のぶみ:(笑)。

トンボ:そうですね。

西野:手間かかるわ、その本売れへんわ、何のメリットも……。その説明をどんだけ言っても、伝わんないんですよね。

のぶみ:ズルする人が出るみたいな。

西野:ズルしたら、ズルした人しか損しない。

のぶみ:そうですね。

西野:ズルした人は損する。

のぶみ:信用を下げるだけですからね(笑)。

西野:「信用を下げて何の得があんの?」って。商品を売るわけでは決してないから。

のぶみ:たぶんズルは、あんまり意味がないですね。

西野:あんまり意味がない。ズルをして意味がないっていう。

のぶみ:あと、本に線引くときって、若干自分の良心が……。「リョウシン」って、親御さんじゃなくて、良い心が。ぜんぜん関係ないところに線引きたくない心理はあるんじゃないのかなとは、ちょっと思いますけどね。適当にバンバンバンってやれないんじゃないのかなぁとは思うけどなぁ。

トンボ:あ~、適当にやる人は、っていうことですね?

のぶみ:適当に、なかなか。本ってやっぱ大切だもんね。あと自分の主張でもあるじゃん、線引くとか、ポストイットつけるとか。自分のアートな部分でもあるじゃん。クリエイティブな部分になるから、たぶん適当にはできないだろうなぁ。

西野:はぁ、はぁ。

のぶみ:だって、自分が変なところですごい響いたみたいなやつ、広まりたくないですもんね。

西野:まぁ、そう、そうですね。

のぶみ:そうなんですよね。

西野:「ズルして何の得があんの?」っていう話をずっとしてるんだけど、ぜんぜん伝わんないんですよ、伝わんない人には。それって本当にインターネットの病気だと思ったんですよ。まず人を疑うところから入ってる。これね、よくないなと。

のぶみ:なんか、まっすぐな(笑)。まっすぐな、少年のような意見(笑)。

西野:いいかげん次のステージに行かないと。

のぶみ:もうやめようそれを、っていうね。そうだよ、本当に。

相手に住所がバレたくない問題

西野:それで、こんな話になったんですよ、1回。「配送どうするんですか?」みたいな。

のぶみ:さっき「送料はどっちなんですか?」っていうの、書かれてましたね。

西野:それは別に送料込みの値段を出すだろうから、もちろん送るほうが送料持つと思うんですけど。その配送も、各々、要はこっちが用意するのは場所だけで、店だから。お客さんここはもう勝手にやりゃいいと思うんですね。それで、その時に、住所バレたくないっていう人がいたんですよ。

のぶみ:出た!

トンボ:あ~、なるほど。知らない人に。

西野:まぁ嫌だったんですね。今、ヤマト運輸とかで匿名配送があるんですよ。ヤマトを1回挟んだら、匿名でお互いの住所をバレずに行く。

買う側からすると住所バレたくないんだよって言ってるんだけれど、「ちょっと待て」と思って。その、しるし書店ですよ? 信用してる人から買うでしょ? バレたくないって言ってたんですよ。例えば僕が孫正義さんのしるし本買ったとして、俺、孫さんに家バレたくないかなと思ったら、俺はぜんぜんいいんだよね。

のぶみ:ははは(笑)。

西野:信用してるから。

のぶみ:極端な話だよね(笑)。

西野:住所バレたくないって、信用してない人にバレるのが嫌なんであって。

のぶみ:そうだね。

西野:つまり、なんだろうなぁ。例えば三河屋さんには住所バレてるわけじゃないですか。もっと言うと、クロネコヤマトには住所バレてるわけじゃないですか。クロネコヤマトのことを信用しているから。

要は信用してないから人にバレるのが嫌なだけで、信用してる人にはみんなそもそも住所開示してんじゃんっていう話をするだけど、それもあんまりピンと来ないんだよね。

のぶみ:だけど、信用がお金だってよく西野さんが言うじゃないですか。信用が価値に変わったのがお金だって言って。それはけっこうずっと言ってることですよね。信用って大事にしてますよね。

西野:信用の交換が済んでからじゃないと、しるし書店っていうのは売買が成立しないんだから、そこはそもそもいじゃんっていう。

1個だけあるとするんであれば、配送する側が住所バレたくないっていうのはありますよね。つまりアイドルの人がしるし本を出して、ファンの人にはうちの住所バレたくない。であるんであれば、レターパック出す時に差出人のところを「本人」にしてしまえば、自分のところの住所バレないですから。

トンボ:そうですね、届きますもんね。

西野:向こうにちゃんと届くじゃないですか。

のぶみ:いろいろそういうこと考えるんだ、細かいの。「めんどくせー!」ってならないですか? それはもう、楽しいから、ワクワクして?

西野:楽しい、楽しい。

のぶみ:そっか~。好きなんだぁ。

現代はストーカーしやすい

西野:なんかそれって、みんな怖いからヤマト運輸とかを介す、匿名配送で住所バレたくないからそこを介したいって言うんだけれど、「僕がストーカーだったら」っていうことを考えたんですよ。

僕がストーカーだったら、僕が配送する側として、出店者側として、本を売った側として、僕がストーカーで「あいつんちの住所知りたいな」ってなった時にですね、なった時にですよ? ヤマト運輸の匿名配送使ったらお互いの住所バレないよねっていって、これはお客さんを完全に信用してるわけですよ。

それで、ハイハイってここのやりとりが済んだとして、じゃあヤマト運輸のそこを介そう、間をあそこに委託しようって言って、いやいや料金もこっちが持つって言ってやった時に、これ向こうは信用、信じてくれるから、もうこれでこっちのもんで。あとはiPhoneをその荷物の中に入れといて、ヤマト運輸は荷物開けないから。

のぶみ:(笑)。

トンボ:やろうと思えば(笑)。

西野:やろうと思えばできる。俺は「こっちのほうが危なくない?」と。つまり、いちばんのセキュリティはお互いのことを信用してるっていうことだから。サービスを介した時に、そっちを、ヤマト運輸はぜんぜん、しないわけじゃないですか。であれば、お互い僕とあなた信用してますねっていう状態を作ってからやり取りした方がいいんじゃないかなぁと、あそこに任せたら安全っていうほうが……。

ヤマト運輸の匿名配送サービスあったほうがぜんぜん家わかるし。っていうか、今のほうが、現代のほうが、ストーカーしやすいっていうことなんです。つまり、20年前よりも今のほうがストーカーしやすいと思う。

のぶみ:いや、しやすいよ。だってFacebookとか見たらわかるもんね。

西野:それもそうだし、あとはみんながみんな、お互いの顔をわかってないから。昔ってあったじゃないですか、なんか自分たちの住宅街に、ぜんぜん知らんおっさんが入ってきた時に、「あいつなんか変なやつやな」みたいな。

のぶみ:「どこのやつだ?」って?

西野:「どこのやつだ?」って、なんかあったじゃないですか。でそれもそうだし、スナックとかでも、なんか嫌な客が来たときってわかるじゃないですか。「あいつ」っていう。

例えばなんかどっかのでっけぇ祭りとかでも、みんな完全にパトロールしなくても、祭りとかって、要はみんながちょっとずつちょっとずつ睨みをきかせてるから。顔も知ってて、一線越えないじゃないですか。ああいう、人の顔がちゃんと見えてたほうが、セキュリティは高いよなと思ったんです。

のぶみ:うんうん。

西野:インターネットなんか完全に人の顔も消しちゃったから。

のぶみ:わかんないもんなぁ。

西野:だいぶ今はストーカーとかが犯罪を犯しやすくなったと思って。

トンボ:紛れ込みやすくなってますもんね。

西野:そうそう。なんかもっと、カオスでいいと思ったんですよ。スナックっていろんな人がいても、なんか勝手に秩序が生まれてるじゃないですか。別に、おまわりさんずっと構えてるわけじゃないじゃないですか、あそこって。

のぶみ:(笑)。

西野:それで、変なはしゃぎ方したら、誰かが「おいお前、そのへんにしとけよ」っていう、そういうのが。あれをインターネットに作れないかなと思って。

のぶみ:長屋っぽい感じだよね。

西野:そのためにはどうしたらいいかっていう。なんかそっちになってますね。

のぶみ:どんどん進んでってるんだ。