衰退していく故郷を救え!
「かつお節」を手に立ち上がったオヤジたちの挑戦

みんなで実践!出汁(DASHI)による地域活性化 #1/2

人口減少や地域経済の衰退に悩む地方は、地域活性化のために「ゆるキャラ」を活用したり、B級グルメグランプリで認知の獲得を目指すなど、さまざまな取り組みを行っています。全国の70%以上のかつお節を生産している鹿児島。その鹿児島で水産会社に勤める中原晋司氏が、かつお節を用いた地域活性化について語りました。(TEDxSakurajima 2013より)

崩壊していく町を支えるため帰ってきた

中原晋司氏(以下、中原):みなさんこんにちは。これ、何ですかね?

観客:かつお節!

中原:よくご存知で。私は、実は魚屋とかつお節屋をやっている者です。枕崎は鹿児島の南にあります。かつお節生産量日本一の町です。私は小学校まで枕崎にいて、そのあと中高と鹿児島市内、そして大学から東京に行きました。大学を卒業して東京でしばらく働き続けましたが、私は5年前に枕崎に戻って来ようと思ったんです。それはなぜか? 理由は2つあります。

1つは、枕崎の人口がどんどんどんどん減ってるんです。1955年に3.6万人いた枕崎の人口。2010年には2.4万人、そして30年後の2040年には、なんと1.5万人にまで減るんですね。このままだともう0になるんじゃないかっていうぐらい、ズルズルズルズル減り続けてるんです。これは枕崎だけじゃないんです。

鹿児島市だって30年後には今の60万人から50万人に減ってしまいます。鹿児島県も30年間で何十万人も人口が減るんです。人口が減るというのはどういうことか? 枕崎を例にあげてみますと、例えば枕崎には耳鼻科、小児科、産婦人科がそれぞれ町に1つしかありません。これが人口が減っていくとどうなるか。病院だって経営ですよ、ある程度採算がとれなくなったら撤退しますよね。なくなってしまう。

そしたらわざわざ病院に行くのに30分も1時間半もかけて行かなきゃならない。病院だけじゃないです。本屋もなくなる。いろんなサービスがなくなる。もう町が崩壊して行くんです。そうなったらもう非常に住みにくい町になってしまいます。

私は枕崎の自然、特に温泉が大好きなんですね。東京だと何千円もかけて、しかも何時間もかけて行かないとなかなか良い温泉には行けません。でも、枕崎は「安い・早い・うまい」なんです。数分で行ける、しかもサウナまで付いて豪華なんです。それでも何百円。しかも絶景なんですよ? 非常にありがたいんですよ。もう本当に最高なんです。こういうすばらしい町がなくなっていく、崩壊していくことは、非常に無視できない。我慢できない。枕崎の町の活性化にちょっとでも貢献したい、そういう気持ちがあって戻ろうと思いました。

地元を離れて分かった。かつお節のすごさ

もう1つ理由があります。今回のテーマなんですけれども、それはこちら「出汁」。出汁ってわかりますか? あまりにも当たり前すぎて「えっ?」ていう方もいらっしゃるかもしれませんが、出汁というのはかつお、そして昆布、鶏、豚、野菜。

出汁素材と言いますけれども、そういったものを水とかお湯で煮出したりしたもので、料理に使う液体の調味料のことなんですね。今みなさんがご覧になっている、別名「黄金出汁」と呼ぶんですが、これはこのかつお節と昆布を使った出汁です。実際どうやって作るのかといいますと、かつお節をこういうふうにして削るんです。

そうするとですね、なんと……。見てください、これ。このルビー色。香りがすごいんですよ。かつお節じゃないとこの香りは出せないんです。あらかじめ昆布を水につけておいたものを、沸騰させる直前に昆布を取って、これ(かつお節)をガサッと入れるんです。それで火を止めて2~3分。だんだん沈んでいくと、このようなきれいな黄金出汁が出てきます。

それをキッチンペーパーとかで濾す。出汁っていうのはきちっと取ると甘いんですよね。砂糖も何もいらない。本当においしい。みなさんに飲ませてあげたいくらい。出汁、もう、すばらしいんです。

私がこの出汁に気付いて、出汁ってすごいんじゃないか? と思ったのは、実は東京にいる時だったんです。東京では、高いお金を出せばおいしいものは食べられます。でも鹿児島に帰省してきた時に、あれ? これ、何でもおいしい。なんやこれ? 鹿児島の食事っておいしいなぁ、と。

特に枕崎の味噌汁とうどんがやたらおいしいんです。枕崎にいるときはわからなかったんですよ、当たり前すぎて。煙ももうもうと町中を覆ってますし。かつお節のいい香りとで、もう麻痺してたんです。でも戻ってきたら、やたらおいしい。あら、これなんだろう? よくよく見たら、さっきのこの、かつお節。枕崎では大量に削ってどわーっと入れてたんです。

「あ、なるほど、これか」と。出汁がおいしいから料理がおいしいのかと思いました。実際、うちはこのかつお節を作っているメーカーで、こんなすばらしい出汁のもとになっているかつお節、これを作ってるんだから、きっとこれを活用したらもっといいことができるんじゃないか? そういう風に思って、なんとか町を活性化したい。そういう気持ちがありました。

かつお節生産者が消費者から離れてしまった

それでは、出汁を使ってどのようにして活性化していったのか、ということについてお話したいと思います。まずちょっとみなさんにアンケートを取ります。この中で出汁をとって料理を作っていらっしゃる方、ちょっと手を上げてください。……パッと見て100人中30人ぐらいですかね? まだ手を下ろさないでくださいね。

その中で、実際にこうやってかつお節を削って出汁を取られている方、手を上げてください。あれ? 1人……あっ、あちらに2人だけ。もうちょっといましたね、3人か4人。見てください。100人なのに、100人以上なのに、(かつお節を削って出汁を取っているのは)3人、4人……はっ!? これが現実なんですよ。別にみなさんが悪いわけじゃないんです。

私たちは一生懸命かつお節を作ってるんです。これはこんがり節っていう最高級のかつお節なんです。世界一固いんです。かつおを1/4に切って、茹でて、薪を焚いて煙で燻して、表面を削って麹菌を付けて、天日干しをして、またカビ室に入れて、天日干しして。入れて出して、入れて出して。もう4ヶ月から1年ぐらいかかるんですよ。相当手が込んでいるんです。でも枕崎のかつお節屋さんっていうのはほとんど、かつお節のまま出すことで役目を終えているんです。

実際には、いろんな鹿児島以外の場所に行って、削り節メーカーとか、かつおのパックになったりとか、粉とか液体、いろんなものに化けて消費者のもとに届く。結局、私たちの商品はこれなんです。一生懸命かつお節を作って、かつお節じゃないと出ない香りや旨味があるんですが、最終的には今、これが現実なんですね。

これが消費者に届くんじゃなくて、別の形で届くんです。昔は毎日みなさんの家で削ってたはずなんですよ。それがいつの間にかもうなんか大道芸のようになっている、もう何なんだこれは、と。私たちと消費者の間にいつの間にか距離ができちゃったんです。

かつお節が煎餅と出会った瞬間

それで、私はこの距離を埋めたくていろいろ考えたんです。「どうすれば埋まるのかなぁ?」と思っていろんな人に相談してみました。ひとりで悩んだってしょうがないんですよ。そしたらある日、東京で元同僚のひとり、煎餅屋の息子に会いました。私が1時間半ぐらいかけてかつお節と出汁のすごさについて語ってたんですけれども、彼がひとことボソッと言ったんです。

「そんなにすごいんだったら煎餅に混ぜたらいいじゃないか」と。それでできたのが、このかつお節を使ったお煎餅なんです。これね、もうすごいんですよ。この煎餅は、ここにあるんですけど……。さっき私が4分ぐらい使って説明したかつお節の香りと旨味。これが袋を開けた瞬間に、香りがね! みなさんに嗅がせてあげたい。

これを食べたら、こんがりとしたさっきの最高級のかつお節の旨味が最後に残るんですよ。まさに私、目からうろこだったんですよ。もう本当に、私がひとりで悩んでても絶対できなかった。そういうことを人に相談することによって、助けてもらったんですね。結局、かつお節を買って買ってって言っても、削り器がなかったら全然ダメなんです。

ところが、このかつおのお煎餅で興味を持ってもらって、それで「おいしいんだね」って言う方に、こういう削りとか、あと、かつお以外にもさば節とかいろんな出汁用の魚の節があるんですが、それを紹介したり出汁を飲んでもらったりっていう形で。

いきなりかつお節を買ってって言うんじゃなくて、その間になるまさに名刺代わりのものを開発したことで、消費者との距離がグッと近くなったんですね。非常に目からうろこでした。このかつお煎餅はお出汁の煎餅と言えるんですが、結局お出汁を体現したものっていうのはいち企業にとどまらず、今度は町に広がっていきます。

出汁がけん引するグルメ開発

こちらは私が住んでいる枕崎の地元グルメで、「鰹船人めし」という出汁茶漬けです。これはもともと、かつお船で一本釣りしてた漁船の船員が、釣ったかつおを切ってご飯の上に乗せてお湯をバーっとかけてガーッと食べるという、それにヒントを得てできたものなんです。実は同じ時期に、私と同様に枕崎の方で、さっきの人口の減少もありまして、活性化したいと思っていた人がいたんです。

これを考案したのは実はふすま屋、ふすまを修理するオヤジだったんです。自分の利益とか関係ないんですよ。とにかく町が寂れていくのを何とかしたい。で、グルメで町おこしをしたい。でも何か人を引きつけるものはないか? 枕崎はかつお節が日本一だから、だったらやっぱり出汁を主役にした方がいいんじゃないか、っていうことでできたのがこの船人めしです。

実は作法があります。この液体は出汁なんですけれども、まずこの出汁を飲むんです。そしてその次に丼。丼の上に乗っかってるのは、かつおの刺身。そしてかつお節と、さっきのかつおのお煎餅。それを食べて、かつお丼としても味わえる。で、最後に出汁を丼にかけてサラサラっと食べるっていうのが作法です。そうすることで、「1度で3度おいしい」という食べ物になっています。

地元でグルメグランプリがありまして枕崎も出たんですが、枕崎は今まで、例えばかつお節ならかつお節の業者だけ、そしてかつおの刺身は刺身の業者だけっていう形で、バラバラだったんです。ですが、さっきのご飯に枕崎のお茶も使ってまして、農産物、水産物、商店街、行政が全部絡んでとにかくこの丼を応援しようということで、何百人もの人がこのグルメ大会に来て、グルメ大会2連覇を達成いたしました。

これはやっぱりひとりひとりの力じゃ無理だったと思います。枕崎はかつおの町と呼ばれていますが、今後はかつお節だったり出汁というのをテーマにいろんなグルメを開発していくという方針を立てています。

脇役に甘んじていたかつお節が主役へ

そして、町だけにとどまりません。これは奄美大島の名物「鶏飯」ですね。鶏の飯と書いて鶏飯。鶏のササミを乗せて、鶏の出汁をかけて食べる。あれ? なんかどこかで出汁って聞きましたね。かつおの出汁、そして鶏の出汁。

みなさん、黒豚しゃぶしゃぶを食べた後に食べるラーメンとかご飯っておいしいじゃないですか。あれ? これ、鹿児島ってもしかして出汁の国なんじゃないか? ということで立ち上げたのが「出汁の王国・鹿児島」という、ラーメン屋さんとか鶏屋さんとか、町を越えて鹿児島県のいろんな企業が出汁をテーマに盛り上げるプロジェクトを立ち上げました。

こちらは鹿児島市内の天文館の中にある、かつお出汁、豚出汁、鶏出汁の試飲ができるブースです。そして出汁関連商品を買えるっていうことで、やっぱり出汁というのを主役にしていろんな展開をしています。

あと「おだし列車」。ついに鉄道会社の協力までいただきました。もう完全に趣味の世界ですけれども、やっぱり出汁を主役にして、「鶏出汁いかがですか?」「Fish or Chicken?」かつお出汁と鶏出汁どっちがいいですか? という形で聞きました。これが大好評。出汁ってすごいなと。今まで脇役だったんですけど、逆に脇役だからこそ、いろんなところが絡んでいて、主役になった時に恐ろしいんですね。いや、すごいです。

魅せ方次第で輝きはじめる原石

そういう形で出汁はいろいろ続くんですが、最後にキーワードをまとめましたのでお話いたします。1つは「不易流行」。これは松尾芭蕉の言葉です。本物のすごいところはきちっと受け継いでいって、ただ時代に合わせて見せ方を変えていくという意味ですね。なので、本物っていうのはかつお節の旨味。それを煎餅とかおだし列車とか、いろんな形に見せ方を変えていくことで活性化を図る。こういったものは鹿児島にはいっぱいあるんじゃないかなと思います。

そしてもう1つ。今回気付いたんですけれども、ひとりで儲けようと思ってもダメなんです。町の人みんなで力を合わせて、少しずつアイデアを出していく。特に地方では、中小企業とか市民レベルのちっちゃい人たち、それが力を合わせて大きなことをしていく。

ひとりがみんなのために考えたことが最後自分に戻ってくる形で、ひとりで10億円っていう経済効果を出すのではなくて、みんながそれぞれの得意分野をちょっとずつ働かせて、それで1つの目的を達成していく。そういったことで町の活性化はできていくんじゃないかなと思いました。以上です。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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