チャゼル監督の「神々へのあこがれ」病

乙君:(『ラ・ラ・ランド』が賛否両論に別れる理由の)3つ目がそれなんですか?

山田:いやいや、3つ目は……ちょっと待って。

乙君:3つ目言って、有料いきましょう。

山田:やべえな。あ、そうね。じゃあね、チャゼルさん、実はですね、非常になにかと似てました。

乙君:なにと似てたんですか?

山田:ヤングサンデーです。

乙君:えっ?

山田:我々です。

乙君:ここ?

山田:ここです。

乙君:これ!?

山田:これです。志磨遼平でした。我々と。そうなんです。なぜかというと、これは「神々へのあこがれ」病という病気にかかってるんですよ。

俺たちってリアルタイムで神様見てないんだけど、「過去にはすげー人いたらしいじゃん」という世代なんだよ。どういうことかというと、ジミヘンがいた頃を知らない。ビートルズを生で見たことがないみたいな。要するに、レジェンドになってしまった過去にものすごい憧れを抱きがちなのよ。

乙君:『ミッドナイト・イン・パリ』みたいなこと?

山田:まさにそのとおりです。それを言おうとしたの。『ミッドナイト・イン・パリ』は、その問題の答え合わせ。「過去のなにかすごい時代になにかいたんだよ。神様いたんだよ。俺はそこに行きたんだよ」と言ってるっていう話。

そうすると、その見たこともないなにかを自分の作品にものすごく出したくなるんです。これがエヴァンゲリオンもまさにそうだし、志磨遼平がやってることもそうだし、お前が太宰を語るのもそうなんだよ。

乙君:太宰は語らない。

しみちゃん:(笑)。

山田:三島を語るのもそうなんですよ。今は三島はいないんだから。だけど「今の人たちよりも、今の小説家よりも三島のほうがすげー」ってどこか思ってしまう。

乙君:思っちゃいますよね。そりゃね。

山田:思っちゃいますよね。それで、そういうのをなんとなく作品のなかで引用したくなる。

乙君:はあ、スノッブね。

山田:そう。「俺の神様! みんな協力して!」みたいな感じで、「セロニアス・モンクが……」みたいな話になるわけだよね。そうすると、ちょっと補強された感じがあるんだよね。

乙君:なるほど。自分のアイデンティティを神々を降ろすことによって。

山田:そうそう。「セロニアス・モンクが起こした革命を……」って言ってるんだけど、セロニアス・モンクってジャズの有名なピアニストなんだけど、その人がどういう革命をしたのかというのはまったく描かれていないわけ。

乙君:そうですね。

山田:だから、これについてすごく向かい合ってきた菊地さんみたいな人は「お前なに言ってんだ」って。「ふざけんな。モンクって」。

乙君:「軽々しく、俺の神を……」。

山田:そう。「表に出ろや」ってなるわけだよ。

山田:そこで実はこれ、おもしろいことに壁紙にね。ミアの部屋が出てくるでしょ。女の子の。そしたら、最初に住んでる部屋すごかったでしょ。

乙君:すごかった。あれシェアハウスでしょ?

山田:壁一面にハリウッド女優の顔がぶわーってある。

乙君:「なんじゃこの部屋?」と思った。

山田:これがだんだん現実を見ることによって、だんだんポスターがちっちゃくなってくる。最後はなにか風景的なものになってる。その風景はあそこの風景でしたね。

乙君:どこでした?

山田:だから、それ言ったらネタバレになっちゃうから。

乙君:あっ!

山田:そうなんですよ。わかりました? そういう演出やってるわけ。

乙君:俺、その時泣いて。もうなにも。

山田玲司のチャゼル時代

山田:ああ、そうですね。そんで、俺も実はやってました。21歳の時に。

乙君:えっ!?

山田:めっちゃ恥ずかしいんですけど、告白します。無料放送最後で告白しますけど。

乙君:告白しますか。

山田:はいはい。僕もやってましたね。僕のチャゼル期です。僕が21歳の時に描いた、これ見えますか?

山田:「俺の車にはジョンレノンが乗っていた」って書いてありますね。見えますか? これ。これで見えるかな。見える?

乙君:字がちょっとあれですけど、まあ。

山田:そうそう。この下に、はい、2コマ目にジョンが歌ってますね。これね。

「NANANA……」って言ってるから、これ『Hey Jude』ですね。「いーねー。ビートルズは」みたいなこと言って、「THANK YOU」と「あえてうれしいよ。ジョン」とかって思いっ切り。

これね、霧の中でどうとかいう、『インディゴ・ブルース』という、電子で出てるけど、初期作品集のなかに入っている、これね、たぶん『モーニング』で2回目に載ったやつかもしれない。読み切り作品なんだけど。

夢を追う男が夢からだんだん遠ざかっていって、夢のなかで、車に乗って空を飛んでいる夢をみるんだよ。その車のなかにいろんな人が乗ってくるの。乗ってくるのは、かつての自分の憧れだったものが出てくる。

これ、この前は乗ってるのは恐竜なんだよ。恐竜好きだったから。そのあとジョンが乗ってる。それで「ジョン、あえてうれしいよ」なんつって。そしたら「君はラッキーだったよね」つって、「いい時代だったじゃん。今なんてひどいもんさ」。

乙君:「Why?」

山田:「Why」なんつてって、「まあ俺にはどーでもいー」って。で、ジョンがなにも言わずに「Bye」って出てっちゃう。「ジョーン!」みたいな。

山田:それで、どうでもいい女と寝てる男が起きるという。

乙君:これ玲司さんですか?

山田:僕じゃないですけど。

乙君:違う?(笑)。

しみちゃん:(笑)。

山田:これまさにチャゼルスタイルですね。だから要するに、あのレジェンドたちを、一緒にやりたい、憧れみたいな。「俺はジョンレノンに会ったこともないし、よく知らないけど、なんかそういうことをやると、ちょっとかっこいい感じがする」という、そういう病(笑)。

そういうのはやっぱりあるなというさ。それはしょうがないなという気がするんですよね。

どちらのサイドにも寄らないバランス感

山田:それでね、これどうしようかな、このあとすっげえおもしろいんだけどなあ。

乙君:このあとすっげえおもしろいんですか?

山田:そう。それでね、デイミアン・チャゼルは、売れる曲がいいとか、クラシックがいいとか、あんまりはっきり言ってないんだよ。黒人だから白人だからというのもやっていないわけ。要するにどっちのサイドにも乗らないんだよ。

乙君:そこなんですよ。それがいい。

山田:ノーサイド派っていうの。

乙君:そう。

山田:どっちのサイドもいかない。うちの番組もまさに右も左もいかないでしょ。

乙君:いかない。ど真ん中じゃい。

山田:ど真ん中じゃーい! ノーサイドじゃい! 

乙君:長渕剛はど真ん中じゃい!

山田:ヤングサンデーはノーサイド派なんですよ。私もそうです。ノーサイド。どっちも人間ですよって話じゃない?

乙君:うん。

山田:だから、ヤングサンデーだって言ってるの。要するに、神々へのあこがれからのノーサイドっていうのは、この2つは俺たちがずっとやってきたことなんだよ。もしかしたらだから……乙君の世代と同じだよ。チャゼルって。なんかそういう空気あんのかなっていう気もするんですよ。

乙君:いや、28歳とかですよ。たしかこの人。

山田:いや、もう30いってる。

乙君:もう30いってるの?

山田:セッションのときがそうだったの。

乙君:あ、そっか。

山田:そうそう。ということですねーつって。やべえな。これ最後に言います。浅瀬の思い出で泣いたり……。

乙君:(コメントにて「32」)あ、32歳なんだ。

山田:浅瀬の思い出で泣いたり、若者がそれにワクワクしたり、大人はしみじみしたりなんかして。本当に外の海に飛び込んだドロップオフした人は、ちょっと呆れて、ちょっと怒ったりするみたいな感じ。

アメリカを初期化したいという思い

山田:ここですごく一番大きくやろうとしてるなと思ったのは、社会問題がありすぎる。考えたら死にたくなる。絶望的だなって。それで、思うのが「アメリカの初期化をしたい」。

乙君:なるほどねえ。

山田:その気分がものすごく乗ってて、トランプが言ってるいるクラシックなアメリカ。

乙君:うん……その絵、たぶんちょっと違う。

山田:あ、ごめん!

しみちゃん:(笑)。

乙君:めっちゃ出したけど(笑)。これがヤンサンですな。山田玲司スタイル(笑)。

山田:これ今ちらっと見せましたけど、これなにかというと、『ラ・ラ・ランド』で号泣する人のタイプを分析したチャートです。

しみちゃん:おお!

乙君:ちょっとやめてくださいよ!

山田:その話しますから。

乙君:それは後半で。

山田:これってアメリカの初期化の話なんですけど、「問題は今見たくない。山ほどある。分かってる。でも、見たくない」。アメリカの初期化というと、アメリカがパリに憧れた時代ってあるわけですよね。もともと移民の国だから。

乙君:そうですね。うん。

山田:だから、文化の中心はロンドン・パリだった時代があった。戦争があって、ニューヨークに移る。その頃のニューヨークからすると、セーヌ川に飛び込んだおばあちゃんの話っていうのはやばいんですよね。

乙君:へえ。

山田:だから、そこになにか入ってる。まさにそれは初期衝動の勇気の話ね。あのあたり。それってアメリカがまだ子供だった頃、「ぼんやりしとったんじゃ〜」の頃のアメリカ。

山田:というやつですね(笑)。最後にこれぶっこみますから(笑)。

(一同笑)

山田:ね。

乙君:困ったねー。

山田:「ほんまこまったねー」というね。「核武装こまったねー」。

乙君:困ったねえ。

植木等の頃が日本の『ラ・ラ・ランド』

山田:これ、日本にもありました。こういう時期が。だから、あえていうならば、俺、クレージーキャッツだと思う。植木等(うえきひとし)なんですよ。これ。日本でやると。

乙君:なるほど。それは……。

乙君:あわわわ。

しみちゃん:あれ?(笑)。

山田:ここは握手じゃないか。お前? そうやって切れた監督いるらしいけど。

乙君:そうだ。クレージーキャッツだあ。

山田:もうやだ、もう。わかってもらえたかしら。

乙君:植木等なんですよ。

山田:だべ?

乙君:これ、もし日本でやったら、そういうスタイルになるんですよね。

山田:そうとおりなの。所ジョージが出て来るの、これ。

しみちゃん:(笑)。

乙君:ああ、なるほどねえ。

山田:植木等の頃はラ・ラ・ランドなんだよ。日本って。そうなの。そういう空気だったの。そこに戻りたいけれども、戻れないんだよ。わかってるんだよ。わかってるけど、「戻りたいな」という気分が浅瀬の人も深瀬の人もみんなわかっちゃったというので、こんな騒ぎになっているんじゃないかということで。

それでは、どんな人が泣くのかという話は後半やりましょうか。やばい話ね。夢を見た人、見なかった人。そのあと、彼女がいた人、いなかった人。そして……みたいな。「そのなかで誰が一番やばいことになってるの?」という恐怖な体系について話をしましょうかね。このあとね(笑)。お願いします。

(一同笑)

乙君:「お願いします」って(笑)。

しみちゃん:お願いします(笑)。

ついに最終回を迎える「君エヴァ」

乙君:ということで、山田玲司のヤングサンデーニコニコ公式生放、ゴキゲンにお送りしてますけれども、まあね、すごい。

山田:(コメントにて「けもフレの話はなしかw」「ケモフレは一瞬だったな」)けものフレンズの話しますよ。あとで。

乙君:うん。けもフレの話もするんですけど、ちょっとここで後半に移りたいと思いますが、その前に来週は3月22日、水曜日夜8時からいつもの通常放送なんですけども、ついにやります。「君はエヴァンゲリオンというアニメを知っているかね? 完結編」。ついにあの長い旅路が、半年にわたるこの旅路がいよいよ終わり。

山田:バカだよね。完全にバカだよね。今。

乙君:完全にバカですよ。

山田:バカだよね。本当に。毎週エヴァンゲリオンを語ってるの。

乙君:そして来週はTV版最終話26話、プラス、『Air/まごころを、君に』。

山田:なにそのキメは? 意味がわからない(笑)。

乙君:ぶっ通しで見ていただいて、山田玲司が語るエヴァンゲリオン、最後のまとめがついに来週花開きますので。

山田:まさにエヴァンゲリオンは、神々がいっぱい出てくるわけ。だからヒデの神々が登場してるわけだよ。いっぱい。だから、俺はそのヒデの神々について……。

乙君:公式なので……あのね、庵野秀明さんのことね。ヒデは。もうすっかりあの……兄貴みたいな感じになってますけど(笑)。

山田:友達になってますけど(笑)。いや、ちょっと俺、見直してるんだよね。最近。最後まで見ると、「ヒデやるよね」みたいになっちゃって。

乙君:おお〜。

山田:だんだん「先輩、すいませんでした」みたいな。「ちーっす」みたいな(笑)。

乙君:「やっぱ先輩ってすごかったんですね」。

山田:「先輩、マジやばいですよ。マジやばかったっすよ。俺なんにも知らなかったっすよ。ごめんなさいね」という、そういう感じになってきました。

乙君:そんな感じで旧劇まで全部いきます。そして、山田玲司にとって、あの時代を含めた上で……。

山田:時代よ、時代。まさに。

乙君:エヴァンゲリオンというアニメが、この今の我々、日本の文化に残したものも含めて、全部まるっと丸ごと語ってもらおうという。ゲストはおそらく、えー……誰か来ます。

山田:アニメ、俺ぜんぜん知らないからね。助けてくれるアニメマニアが。

乙君:誰かを呼びます。ということで、みなさん楽しみにしていてください。次回の公式はとりあえずまたお知らせいたしますので、そちらはそちらで、このスタジオでお待ちしておりますので。ということで、後半に……。

スタッフ:アンケいきまーす。

乙君:アンケか。アンケを今日も。公式なんでね。

乙君:いやあ、なるほどね。

山田:大変だった、『ラ・ラ・ランド』。要素が多すぎて。

乙君:いや、なんか玲司さんのマインドにちょっと通底する部分もあったなと思ったんですよ。

山田:そうなんだよ。

乙君:だからすごい分析しやすいのか、逆にいうと自分の、さっきも自分のあれ出してましたけど、それが苦しいのかみたいな。

山田:そう。俺チャゼルだったから。昔。

スタッフ:じゃあ結果出します。

乙君:はい。お願いしまーす!

乙君:おおっ! ありがとうございます。9,000人でこれはすごい。

山田:ありがとうございます。

乙君:ということで、後半。しばらくちょっとチラ見せでいきますので、公式のみなさんありがとうございました。

しみちゃん:ありがとうございました。