いまや「子はかすがい」は逆

浜田敬子氏(以下、浜田):みなさん、長時間お疲れ様です。遠慮なく、立ってお子さんをあやしたりしてくださいね。朝日新聞社の浜田と申します。今日はよろしくお願いします。

私が着ているこの「WORKO!」というTシャツなんですけれども、「WORKO!」は朝日新聞社で去年から始めたプロジェクトで、Workと子育てを掛け合わせて、働くと子育てのこれからを考えるプロジェクトを立ち上げました。今日はその「WORKO!」と朝日新聞出版のAERAと、両方で1つのセミナーをやらせていただきたいと思っています。

私が浜田で、家事シェアに非常に詳しいNPO法人「tadaima!」の三木さんです。よろしくお願いします。

三木智有氏(以下、三木):よろしくお願いします。

浜田:一番端っこが金城珠代という『AERA』の記者です。金城は1月に復帰したばかりなので、要するに少しだけ先輩なんですよね。なので、いろいろと今日は聞きたいと思っていますので、みなさんぜひ参考にしていただければと思います。

先ほどから散々「パパは協力しろ」「協力しないと大変なことになる」と脅されていると思うんですけれども、さらにここでそれに輪をかけるようなデータも出てきます。

とにかく、私自身も10歳の娘がいまして、夫が出張なので連れてきてますけれども。なので、「夫の悪口は今日言えないな」みたいな感じなんですけど(笑)。

「子どもはかすがい」って言いますけど、今は逆なのでは、と思うんです。子どもが生まれた後、夫婦は絶対に前よりもギクシャクする。私もそうでした。それをいかに防ぐかということを、三木さんや、金城から『AERA』のほうでいろいろとやった企画を、みなさんのご参考になればと思って持ってきました。

今日は、4月から復帰の人がほとんどだったんですけれども、育休というとほとんどママのほうがとっていると思うんですよ。その間ママがほとんどの家事・育児をやっていますよね。専業主婦の方と同じような状態ですよね。そういう人、どのぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

浜田:ですよね(笑)。あと1週間で変えましょうね、この状況。このままいくと大変なことになりますからね。じゃあ、ママに聞きます。「子どもが生まれてから、すごく前よりもイライラするようになった」という人、どれぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

けっこうみなさん心穏やかに育休を過ごしていらっしゃるんですね。私、本当に自分が育休中つらい時があって、産後うつにもなったので。夫は新聞記者なので、仕事ばっかりやっていて早く帰ってこれなかったので、ブログに1回「夫に殺意を抱くとき」と書いて、会社の人にドン引きされました。そのぐらい大変でした。

そういう状況で育休から復帰すると、両立がどんどん苦しくなっちゃうと思います。

先ほどのアンケートの結果でもママのストレスって、仕事の職場の人間関係よりむしろ家庭のほうが、自分自身の経験としても大きいです。やはり夫に対する「なんでやってくれないの?」という不満。なので、そこが軽くなると、相当気持ち的に楽になるし、自分も楽しく両立ができるので、それをどうしたらいいかということをお伝えします。

家事のストレスと夫婦のコミュニケーションの関係

これはパパとママに両方に聞きましょうか。「子どもが生まれてから、家 事を負担に思うようになった」という方、手を挙げてもらってもいいですか?

(会場挙手)

そうですよね。大人2人の生活なんてそんなに家事はありませんよね。そんなに汚れないし、洗濯も毎日やらなくてもいいし。食事だって、共働きだとけっこう外で食べてきちゃうし。

でも子どもが生まれた途端に、やらなきゃいけない家の仕事がすごく増えるわけですよ。しかも、仕事と子育てもやらなくちゃいけないということで、たぶんみなさん、今「どうしたらいいんだろうな?」と思っていますよね。

三木さん、この家事のストレスを減らすということは、三木さんの持論ですけど、まずは夫婦がコミュニケーションをいかにとるかということが大事なんですよね?

三木:そうですね。「家事の負担をどうやって減らそうかな?」みたいなことを思うと、どうしても家事代行を活用したり、便利な家電を導入しようというところにばかり目がいきがちなんですけれども、「実はそれだけじゃないんだよ」というところを今日は少しお話をしていきたいなと思います。

浜田:今ママは1人で家にいる時間が長いと思うんですよ。そうすると、全部自分でやってますよね。その不満や不安を旦那さんに話しています? 話さないで、けっこう自分の胸の中に溜めていません? それが復帰した後も続くと、ものすごくイライラが募って爆発します。間違いなく。

三木:そうですね。

浜田:三木さんと話していてすごくおもしろいなと思ったのが、あとで調査結果が出てくるんですけれども、夫婦で、わりと復帰したあと共働き夫婦でうまくいってるケースは、家事を50:50にシェアしてる人たちよりも……ね?

三木:はい。もうほぼ言っちゃいましたけど(笑)。

浜田:たくさん話してる人たちなんですよ。私もうちの夫と「どっちがなにをやるか?」という日々の連絡も業務連絡、殺伐としたようなメールになるんですよ。「これやってるの?」「やってないの?」みたいな感じになって。

それで「私のほうばっかりがやってる……」みたいな感じで、どんどんイライラするんです。負担を50:50にすることに汲々としていたんですけど、それよりもむしろ、やはりいろいろなことを話している人たちは、たとえ分担が6:4だったり7:3だったりしても、仲良しなんですよね?

三木:そうですね。だから、今日のセッションのテーマも、今の家事って夫婦のコミュニケーションが大事なんだよということで進めていきたいなと思います。

円満な夫婦は1日58分会話している

やはり今、浜田さんからもお話があったように、夫婦のコミュニケーションというのは、家事とか育児のシェアということにおいてもすごく大切です。「じゃあ、それはなぜか?」というところを少しお話をしていきたいと思います。

(スライドを指して)これは、ファザーリング・ジャパンという団体さんがとった、夫婦の会話時間と円満にどういう関わりがあるかという調査結果になるんですけれども、「円満夫婦」と「不満夫婦」を分けて、「会話時間がどれぐらいか」ということを調査したんですね。その結果、円満夫婦だと、平日でだいたい58分ぐらい会話時間があります。

浜田:58分って、けっこう長いですね。

三木:けっこう長いですね。

浜田:朝はバタバタしていて、夜はたぶんママのほうが時短勤務で早く帰って子どもと一緒に寝てしまうと、夜、会話ゼロですよ。夜、会話ゼロ分だと、朝58分しなきゃいけないということですよね。

三木:朝58分ですね。なかなか大変ですね(笑)。

浜田:なかなか大変ですよ。今どれぐらい話してます?

三木:(会場に)聞いてみましょうか。「58分以上話してるかも」という方?

(会場挙手)

三木:わりと多いんじゃないですか。

浜田:でも、少ないですよ。

三木:少ないですか(笑)。

浜田:ええ。じゃあ30分ぐらいという人は?

(会場挙手)

浜田:いないですよね。30分以下は?

(会場挙手)

浜田:でしょ。ほら。

三木:そうですね(笑)。

浜田:やはり忙しいんですよ。本当に共働きになると忙しくて、子ども第一になるから、お互いのことは本当に後回しになる。不満夫婦の会話はだいたい18分ぐらいでしたが。もしかしたら平均はそのぐらいなのかなとも思うんですけど。

三木:1日58分の会話ってかなり大変だと思うんですが、実は夫婦の会話って3つの機能、役割があるんですよ。1つは情報伝達機能。「今日なにがあるよ」「明日あれがあるよ」とかの情報伝達。

浜田:そのためには、先ほどGoogleの山本さんが話されたスケジューラーというのは、情報の伝達機能としては楽になりますね。

三木:楽になりますね。そして、課題解決というのは、相談ですよね。「これどうしようかな?」「あれ買おうと思ってるんだけど」というような相談。この情報の伝達と課題解決機能というのは、わりあいどの夫婦でも、なんとかがんばって話はできると。

浜田:でも、だんだんほぼ情報伝達機能だけになっていくので。メールで「今日どっちが帰るんだっけ?」みたいな会話だけが行き交う感じになってきます(笑)。

三木:そうなんですよね。僕たちは、情報の伝達と課題の解決の機能しか行われていない会話のことを「夫婦の会話のホウレンソウ化」と呼んでいるんです。報告・連絡・相談だけ。もう1個、会話の時間を伸ばすために大切なのが、最後の情緒的サポート機能というところなんですよね。これが要は、「どういうことがあって楽しかった」「なにが楽しかった」とか、そういう感情のやりとり。

浜田:家事や育児の分担を話すだけじゃないわけですね。例えば、子どもが生まれる前だったらきっと話していただろう、「今日会社でこんな嫌なことあってさ……」みたいなことですよね。

三木:そうですね。そういう会話が多くなればなるほど、会話の時間というのは増やしていくことができるというのが、まず1つですね。

「家事が得意か苦手か」ということよりも大切なこと

浜田:そうすると58分になる。要は、時間が長くても、内容的に情緒的なサポートの部分がないと、なかなかやはり2人がうまくいかなくなってギスギスした関係になってしまう。

さっきのリクルートのアンケートのように、「ママの10大ストレスのなかの半分ぐらいは、原因はパパ」というふうになってしまうのは、おそらくコミュニケーションをしていなくて、1人で不満をため込んじゃうということが大きいかもしれないですね。

三木:そうですね。なので、先ほど浜田さんもおっしゃっていたんですけど、じゃあ今、家事や育児をシェアをするという話になったときに、コミュニケーションが大事なんだぞと。

これはうちの調査なんですけど、「5:5のほうが家事の満足度高いのかな?」とか「パパが料理やってたら高いのかな?」とか、いろいろ調査をしたんですけど、そんなに大きな相関関係はなくて、5:5で満足している人もいれば不満な人もいると。9:1でも満足してる人だっているわけです。

じゃあなにが一番大きく関わってくるかと見ていったときに、「家事についての話し合い」と「満足度」というのをかけ合わせた調査結果が(スライドを指して)こちらのグラフになるんですけど、圧倒的に「家事をよく話し合う」というグループの人たちは「家事について満足度が高い」というデータが、このなかで出てきています。

なので、これは男性にとってはわりと朗報だと思うんですけど、家事が得意とか苦手とかそれほど関係ないんですね。家事の満足度というところでいえば。

浜田:むしろ朝に「おはよう」と言って、例えば「昨日夜帰ってきてから、子どもどうだった?」というのを聞いてあげるとか、そういうことがすごく大事になのかなと思いますね。

あとで出てきますけど、一番ママがムカつくことって……、みなさんも経験あると思いますけど、朝、自分がこれから保育園に送りに行かなきゃいけないというときに、着替えさせて、離乳食を食べさせて、自分の支度もして、化粧もして、会社に行かないといけないから職場の準備もしてバタバタしているときに、スマホを見ていたら絶対ダメですからね。それが「一番ムカつくこと」って、みんな言っていますから。

三木:そうですね。

浜田:スマホや新聞をバタバタしてる人の横で読むのだけはやめてください。今日はそれだけ覚えてください。本当それだけでいいよね(笑)。

三木:そうですね。はい(笑)。そのあたりもあとで少し。

浜田:その時にちょっとでもママに、「忙しそうだけど、なにかやる?」と声をかけてあげるとか、「昨日どうだった?」「お風呂どうだった?」「夕食よく食べた?」「保育園の連絡帳書こうか?」とか。朝、保育園の連絡帳もありますからね。これけっこう大変ですからね。

三木:大変ですね。

浜田:うちは保育園の連絡帳を夫が書いてたんですよ。それだけで助かりました。わりとこまめに書く人なので。送りも全部パパというふうに決めていたので、自分は髪の毛ボサボサでも、2人が出かけてしまいえさえすれば、そのあと自分の支度ができるので、かなり楽でした。

三木:そうですね。そうやってルーチン化させていくということがすごく大切です。

負担と不満、両方とも解消していく

もう1個、次のスライド行っていただきたいんですが、家事を僕たちは「分担」ではなくて「シェア」という言い方をしています。それはなぜかというと、どうしても家事分担の話になると、時間的・肉体的な負担ばかりをどうにかしようという話になりがちなんですが、実は家事の負荷には「負担」と、もう1個「不満」というのがあります。負担のほうは、それこそ家事代行を活用したりとか、そういうところでわりと軽く解消はしていけるんですね。

浜田:物理的なところですよね。

三木:そうですね。だけど、それだけではなんだかモヤモヤするとか。自分がそのディレクションも全部しなくちゃいけないというので、ルンバを導入してもなにかモヤモヤするのはなんでかというと、実は家事・育児の「不満」というのがあるからなんです。

家事シェアというのは、この負担と不満、両方ともちゃんと解消していこうという、要は、メンタルの面もちゃんとサポートしていこうよ、というところになってくるんですが。

例えば、この家事の不満というところ。なにが起こるかというと、共働きのママが抱えがちな家事の不満って、例えば「自分ばっかりが時間を調整しなくちゃいけない」とか、「自分ばかりが家事とか育児とか回さなくちゃいけない」「自分ばかりが全部のディレクションをやらなくちゃいけない」とか。要は、共通するのは全部、「自分ばかり」というこの不公平感なんですよね。

浜田:そうですね。パパがけっこうやっていても、とくにまだ授乳していたりすると、ママの負担が大きいわけですよ。やはり仕事して、迎えに行って、ご飯食べさせて、入浴させて、夜に授乳ということになると、ママは本当に寝不足になっちゃうんですよ。

そこも含めて、パパがわかっておいてあげると、夜1回ぐらい交代で泣いたときに抱っこするだけでも違うし、やはり不満の部分ですよね。

三木:そうですね。

浜田:不満の部分もやっぱりわかってあげるということが非常に大事かなと思うんですよね。

三木:なので、不公平だなと思われないように、ちゃんとサポートをするとか。だから、「俺は言われたことはなんでもやってるぜ」というなんでもやるようなパパがはたして正解なのかというと、言われなきゃやらないというのは「自覚が足りない」と思われてしまいがち。

なので、そこは「家族ごとだよね」という認識をしていること。家事が得意とか不得意とか、洗濯物のたたみ方がきれいか汚いかというのは、正直、もっと先の話でいいと思うんですよね。自覚とか自意識をもってコミュニケーションをとっていくことで、わりと解消されると思います。

浜田:うちもそうだったんですけど、「復帰後にどうやってこの不満と負担を2人で解消していこうか?」という話を一度もしないままに復帰しちゃったんですよ。

むしろもう「保育園にやっと入れた」、その次は保育園でなに準備しなきゃいけないって。今みなさん大変ですよね。「お布団準備しなきゃいけない」とか、いろいろあって。あとは職場関係とかに気が回ってしまって、夫婦の間のことって一番後回しにしてほとんどの人がやっていないんですよね。

今年はたまたま4月1日、2日が土日なので、あと2週末あります。なので、「自分たちはどうする?」という、やり方を決めるとか話すとか、それだけやっておくだけでも、かなり違います。

三木:だいぶ違ってくると思いますね。