チャレンジの場としての地方の魅力

藤野英人氏(以下、藤野):みなさん、こんにちは。レオス・キャピタルワークスという会社でひふみ投信というファンドの運用をしています藤野でございます。今日は「チャレンジの場としての地方の魅力」というタイトルでお話をしたいと思います。

自己紹介ということですが、今、お使いいただいているこの会場はレオス・キャピタルワークスという会社のセミナールームでして、私は運用会社の社長もしております。それで、ひふみ投信という投資信託のファンドマネージャーをしております。

経歴はここ(スライド)に書いてあるとおりなんですけれども、27年間ファンドの運用をしていました。主に日本の株式市場で、とくに中堅・中小企業に投資するのが私の専門です。

いろいろな活動をしていまして、例えば、東京証券取引所の教育部門でフェローをしていたり、明治大学で「ベンチャーファイナンス」という授業も16年間行っております。

あと、プレミアムウォーターという会社、これは東証二部上場の会社なんですけれども、そこの創業者でして。水の会社の運営もしております。

ひふみ投信なんですけれども、今、現状で1,276億円(2016年9月末時点、ひふみ投信+ひふみプラスの運用資産残高)という規模で、日本株のアクティブファンドのなかでは3番目の大きさといえます。だから、規模でも大きいんですね。

一番大きいファンドがフィデリティ(投信)の日本成長株ファンド。次がさわかみ(投信)さんで、(ひふみ投信が)3番目ということですから。

会社全体では、2,033億円(2016年9月末時点)という運用残高があります。成績がよかったということで、いろんなところで賞もいただいています。

「ひふみ投信」の2つの営業活動

私はひふみ投信というものを通じて2つのことをしています。1つは、東京もそうですけど、全国の地方も含めて営業活動をしているんですね。北海道から沖縄まで、ひふみ投信のたくさんのお客さまがいらっしゃいます。

もう1つは、北海道から沖縄まで、たくさんの会社に投資をしているということです。全国をまわっていろんな会社さまに会って、投資先としてよい会社を探しているということがあります。

投資先なんですけれども、大手の会社にも投資をしていますが、それは全体の24パーセントぐらいで、75パーセントが、上場しているけれども、中堅・中小企業にたくさん投資をしているというのが私たちの特色です。

あと販売会社がたくさんあります。(スライドに)今、29社とありますけど、最新だと30社になったばかり(2016年9月末時点)です。

それも主に地方銀行が多いんですね。見ていただくと、グラフのなかの赤い丸が銀行なんですけれども、そのなかでほとんどが地方銀行。地方銀行に訪問することも多いので、地方に行く機会が非常に多いわけです。

やりたいことはなにかというと、地方の小さな優良企業を見つけて投資をすることと、地方銀行とタッグを組んで、全国に投資文化を啓蒙するということです。これで日本を根っこから元気にしたいと考えています。

先ほどご紹介にもありましたけど、そのために私は年間120〜130日ぐらい出張していまして、北海道から沖縄までいろんな会社、現場に行くことを重要視しています。

『ヤンキーの虎』出版後の反響

そのなかで、先ほどご紹介いただいた『ヤンキーの虎』という本を書きました。この本は非常におもしろい本でして……自画自賛するなよって話ですけど(笑)、おもしろいというのは、僕が出した本のなかで一番売れなかったんですよ。販売部数で見ると、僕の本のなかで増刷がかからなかった本なので珍しいんですね。

ヤンキーの虎

ところが、なんと一番反響があった本でもあります。不思議ですよね。「売れていないのに反響があるというのはどういうことだ?」ということなんですけれども。

めちゃめちゃ手紙が来たんですね。いろんな手紙が来ました。例えば、おもしろいのは、毛筆の縦書きで長い「果たし状」みたいなものが来て、「なんだろう?」と思ったら、「I love you」なんですよね。「私は一生懸命仕事をしていた、がんばっていたけれども、私のような人を発見してくれてありがとう」ということが書いてあるんです。そういう手紙がいっぱい来たんです。

「初めてお手紙をお書きします」と。「このたび、藤野様著『ヤンキーの虎』を読ませていただき、どうしてもお手紙を書きたくなりました。とても勇気づけられる内容で、また、今後のエネルギーになりました」とか、こういう手紙が40通以上来ました。

僕、ファンレターが来ることはあるんですけれども、ヤンキーの虎の場合は、40通以上、それもものすごく熱い手紙で、「よく僕のことを発見してくれましたね。どこで僕のことを見つけたんですか?」みたいな内容なんですね。

要は地方の、僕の書いた“虎”という人たちにとっては、非常に刺さった内容じゃないかなと思います。

あとは講演会の依頼が多いんですよ。今、全国からこの『ヤンキーの虎』について語ってくれという講演会の依頼もたくさんいただいています。

『ヤンキーの虎』の話をするのは私の本業じゃないので、全部受けちゃうと本業ができないぐらい講演の依頼がたくさんきているということなので、めちゃめちゃ不思議な本でした。

売れていないのに、たぶん刺さる人には刺さったというような本です。だから必要があった本じゃなかったかなと思います。

ヤンキーの虎のビジネス手法

じゃあ「ヤンキーの虎ってなに?」ということですけれども、私が作った言葉です。「マイルドヤンキー」を束ねる存在として、ヤンキーの虎がいたということです。

マイルドヤンキーというのは、これは3年ぐらい前に出た本で、地方で働いている一般的な消費者・生活者のことをマイルドヤンキーと呼んだわけですけれども、私はそれを読んで「じゃあ、マイルドヤンキーってどこで働いているの?」ということが疑問になったわけですね。

そうしたら、こういう人たちがけっこう多いんです。例えば、建設業などの地場産業を軸に、コンビニ、介護、中古車販売、飲食など、コングロマリット化で事業を拡大している、という。

衰退した地元中小企業を矢継ぎ早に買収して、地元が求める業態ならなんでもやる。出自はだいたい、「事業継承型」いわゆる2代目・3代目と「成り上がり型」に分けられます。

これまではこういう人たちの存在がセクターとして見えていなかった、もしくは過小評価されていたんですね。でも、みんなこういう人がいることをなんとなく知ってはいる。

地方出身者だったら、「地元の友達の〇〇君がこんな人だよ」とすぐにでも思い当たるような人たちなんですね。

例えば、私が高知県に行って、高知の商工会議所でセミナーをしました。そのあと懇親会があって、そこで名刺交換をすると、佐藤ホールディングスとか鈴木工業という名前だったりして、(名刺の)裏を返すと、たくさん何業、何業とあるんですね。不動産賃貸業、パチンコ業、ホテル業、焼肉、それからパン屋などと書いてあります。

普通の人はそこで「いろいろやりながら地方でがんばっていらっしゃるんだな」と思う。そこに目新しい産業はあまりないからです。

東京のベンチャーで「新しい技術で、イノベーションを起こして世界を変えるぜ!」みたいなところはなんとなくかっこいいと思われるし、こういう会社を増やそうというのが社会的なイメージではあるんですけれども。

(地方では)コンビニエンスチェーンのフランチャイズだったり、牛丼店のフランチャイズをやっているということだったりして、新規性がなさそうに見えるので、今まで過小評価されていたんです。

ところが実際に見てみると、彼らはすごく金回りがよかったり、意外と商売の知識やいろんな情報をよく知っていたりしていて、また人生が楽しそうなんですよね。そういう人たちが地方にはたくさんいることに気がつきました。

ヤンキーの虎ってどんな人?

ヤンキーの虎がどんな人かという話をしましょう。まず、若いですね。あまり年寄りくさい人はいません。60、70歳のヤンキーの虎みたいな人もけっこういますが、心が若いですね。それで、チャレンジ精神がある。

あとはここが大事で、情報収集能力が高いということ。都会に頻繁に訪れるし、場合によっては海外に行くと。あとは仲間意識が強い。消費は健康的で、意外にスマートというところがあります。

どういうビジネスをされているのかというと、車の修理とか、ガソリンスタンド、クリーニング店、カフェ、介護、パン屋、リフォーム事業、不動産賃貸、保険代理店とか、いろいろあります。携帯電話の販売というものもあるわけです。

地域経済に深く入り込むために、生活に関わる異業種を組み合わせて、1つの生態系を作っているというのが、こういう人たちの特色になります。

登場の背景をお話すると、2000年の頭に小泉改革がありまして、公共投資を引き上げたんですね。市町村合併もありました。

それによって公共工事の需要が小さくなったり、もともとあった場所に役所がなくなったり、商店街がなくなったりということがあって、非常に厳しい時代がありました。それで「地方はもうダメだ」と言われたりして、地方の環境がかなり悪化したんですね。

その時に、「座して死を待つよりは、なにか挑戦しよう」という人たちがいました。多くはなにもしないで廃業したり、やめていったりということだったんだけれども、ジタバタするタイプの人たちがいて、そのジタバタする人たちは、主にこの時期にこういう事業を伸ばしたという話です。

1つ大きかったのは携帯電話です。ちょうど携帯電話の普及期にかかっていたので、携帯電話は既存の人たちがやっていないビジネスですよね。なかったものだから。だから参入しやすかったというところがあるので、携帯電話ショップをやりました。

もう1つは、コンビニエンスストアです。コンビニエンスストアが地方に増えてきて、それのフランチャイジーになったんですね。場合によっては、ローソンとファミマと両方やりますというかたちもあって、複数のコンビニのフランチャイズをやるようになりました。

あとは介護ですね。2000年に介護保険法が施行されたことをきっかけに社会福祉法人になったりということで。これらを組み合わせながら伸ばしていったということになります。

地方には「ナショナルブランド予備軍」が眠っている

彼らのビジネス手法について見ていきましょう。地方は、慢性的な人手不足があるのと、マイルドヤンキーの仲間意識の強さがあって、人材教育が鍵です。社長が社員をお客さんと考える時代です。

人材は能力よりも地縁血縁が大切ということで、育ってきた環境が同じ地元の仲間から優秀な幹部を選んでいきます。ネットワークをたどって役所にも協力者を見つけるということをします。

飲食店の経営者が、店長について一番重要視していることはなにかというと、「泥棒をしないこと」なんですよ。飲食店の経営者と話をすると、店長の泥棒って実は多いらしいんですよね。

店長がお金をネコババするとか、社員がネコババするという、「内引き」と言うらしいんですけれども。この内引きをなくすだけでも、会社の収益性はわりと高くなるんですよね。

ネコババさせないためにはというと、仲間だとしないんですよね。要はバレちゃうから。野球部ネットワークとか、サッカー部ネットワークとか、そういう地元の中学高校のネットワークを使いながら人を雇っていくことをします。もしくは親戚のお兄ちゃんとかお姉ちゃんというかたちで採用してきている。

ヤンキーの虎が現れている今というのは、イメージでいうと、応仁の乱をきっかけに戦国大名が誕生したなところで。小泉改革というものがあって、それで1回全体焼け野原になったのだけれど、そのなかで、戦国大名の芽みたいな、地方豪族が出てきたというのが今の状態です。

いわゆる今ナショナルブランドと呼ばれているようなユニクロのファーストリテイリングもコメリもニトリも壱番屋もヤマダ電機もコシダカという会社も、もともとは言ってみれば最初はヤンキーの虎だった人たちです。

だから、地方にはナショナルブランド予備軍が眠っているということなのです。

実は東京から全国チェーンの会社が出てきたってことはあんまりないんですよね。ます地方で勝つということがとても大事です。