脳に効くのは「小さな進捗」予防医学者・石川氏がパフォーマンスを高める質問の極意を語る

パフォーマンスが高まる、脳の使い方のヒント #2/4

楽天 新春カンファレンス 2017
に開催
「人の脳は大きなことを聞いても成長しない」と語る予防医学者・石川善樹氏。では、どういった質問が脳の発達に効果的なのでしょうか。2017年1月26日に開催された「楽天カンファレンス2017」の中で、「パフォーマンスが高まる、脳の使い方のヒント」というセッションが行われました。登壇したのは石川氏と、楽天大学学長の仲山進也氏。本パートではパフォーマンスを上げるために効果的な質問のポイントのほか、「組織が好調かそうでないか」が一発でわかる質問などが語られています。

子供の脳にも効く質問

石川善樹氏(以下、石川):僕がなぜおもしろいと思ったかというと、もう1つ理由があります。子供の教育も一緒なんですよ。子供の教育の研究について最近進んできて、結局どういう言葉かけると、子供がすくすく育ってくれるのか。

僕ら大人は、すぐ大きなことを聞きたがりますね、子供に。例えば「大きくなったらなにになりたいの?」。でも、人の脳はあまり大きなことを聞いても成長しないことが最近わかってきて。それよりも、その小さな進捗を聞いてあげたほうがいいというのは、実は教育部門の知見でもわかるんですよ。

例えば、砂場で遊んでいる子供がいたら「君は将来どうなりたいんだい?」と聞くよりも、「君が今からやろうとしている砂場遊びは、昨日と比べてどういう違いを生もうとしているんだい?」と聞いたほうがいい(笑)。

仲山進也氏(以下、仲山):ぎこちない質問ですね(笑)。

石川:「昨日とは違う、どういうやり方をするんですか?」なんです。昨日とは違うやり方を、これから砂場遊びでしようとしているかのような。小さな進捗を促すような、小さな変化を生むような質問をすることで、子供の脳はもっとも発達する。先ほどのはアメリカの先生ですけど、今の教育の話はロシアの天才教育学者(レフ・)ヴィゴツキーが考えた方法なんですね。

仲山:今のは、さっきの未完了を「明日どうやってやろうかな?」と段取りを考えてから終わるというのとかなり近い。

石川:近いところはあります。僕が今度出す『仕事はうかつに始めるな』にもつながってくるんですけど。(スクリーンを見上げて)これもまさか……。

仲山:これも(スクリーンに)出してみます。

石川:これです(笑)。なにかを繰り返しやると、僕らの脳は活性化してくるんです。学びが多いというか。

だから、面倒くさいですけれど、仕事を始める前に「どうやって自分は仕事を始めようか?」と頭の中でリハーサルする。毎回毎回「自分はこうやって仕事を始めて、こうやってやるぞ」というリハーサルをしてから始めて、さらに振り返ると、結局3回やっていることになるんです。

仲山:そうですね。

石川:3回もやると、脳は成長が早いんですね。これは、子供もそうなんですよ。ロシアの天才心理学者が考えた教育法が、まさにそれです。例えば、ままごとする場合、うかつにさせないんですよ。「ちょっと待て」「これから自分はおままごとをするにあたり、どういう役割でどうやって遊ぶのか?」を子供に書いてもらうんですね。

一通りコンセプトが固まってきたら、「よし、じゃあ遊んでごらん」と言って(笑)。遊んでもらって、終わった後にまた振り返るんです。それで言っているように、1回の遊びで3回楽しめるんですね。

日報や朝礼などで強制的に質問し続けるメリット

仲山:ちなみにその振り返りは、なんか型みたいのはあるんですか?

石川:おそらくその型が、この「なにが一番楽しかった?」「印象に残った?」という質問。子供なんで、印象と言われてもわかんないと思うんですけど。

仲山:「おもしろかった?」「どこが?」みたいな。

石川:「なにが一番よかった?」と言ったらいいんだと思うんですけどね。そういったリハーサルをやって、本番やって、振り返る。なんか予習復習みたいなもんですね。ちゃんとやり続けることが、ビジネスにおいても教育においても大事というのは、最近わかってきたことですよね。

仲山:今のは……。僕、チーム作りのこと、ずーっと考えているんです。それをみんなで、職場なりチームの単位のメンバーでやると、自動的にチームビルディングが進んだことになりますね。

石川:あー、そうだと思いますね。

仲山:リハーサルの時に、例えば1人一言、朝リハーサルコメントを1周やると、そこで「だったら俺、こうするわ」みたいなアシストが生まれやすくなるだろうし。

石川:そうですよね、とくに1つ前の本だと……。僕、本を読んでおもしろいなと思ったのが、あのハーバードの先生の調査に参加した人たちのものでした。

調査に参加した人たちが「これは本当にいい」「続けてくれ」とお願いしてきたというんですよ。最初、先生は負担だろうと思ったんです。たった1つとはいえ、毎日週5日も書いてもらうのは負担だろうにと思ったんだけど。やっている本人たちは、それをやって自分のことが整理できたり、逆に自分で自分にフィードバックがもらえたりしてて、こんないいことはないと。

仲山:続けてほしいと。

石川:これは強制されているからいいんだと。

仲山:「自分でやってください」と言ったら、たぶんやらないんだ(笑)。

石川:無理、絶対やらない(笑)。

(会場笑)

だから、日報があるじゃないですか。あるいは、朝の朝礼で「自分はこういうことやります」もあると思うんですけど。ああいう、ある程度、強制的な仕組みの中でやるのがいいんだろうなと思いますね。じゃないと、単純なこととはいえ、人は弱いですから。できないですよね(笑)。

仲山:本当にできないですよね、自分1人でやると。今のやつは、結局ビジネスコーチングでコーチをつけるみたいなのと基本的には同じ。

石川:そうです。その質問をしてくれる人を雇うくらいの価値があるということですよね。

コンサルタントとか、あるいは友達からいろんなことを聞いたり、アドバイスをくれたりすると思うんです。研究者の仕事とはなにかというと、結局「究極の質問はなんなの?」なんですよ。ある意味、万能の質問が「今日1日で一番印象に残ったこと」と、今も残っていることですね。

好調な組織とそうでない組織が一発でわかる質問

そういった究極の質問系でもう1つ、今ふと思い出したんですけど。好調な組織とそうでない組織の違いが一発でわかる質問があります。これ、組織のメンバーに聞いたらいいんですけれど。

仲山:組織のメンバーに聞いたら、一発でわかる質問。

石川:そう、たぶんみなさんもそれぞれ組織があると思うんですけれど。メンバーにこの質問をすると、うちの会社は好調なのかどうなのか、すごくよくわかると思うんです。

仲山:ほう。知りたい。

石川:これは「自分の会社の中に親友といえる人がいますか?」という質問なんです。自分の会社の中に親友といえる人が多ければ多い組織ほど、好調なんですね。

仲山:「います」という人が多ければ。

石川:「います」が多ければいいということですね。僕が話しているのも、組織心理学という分野の研究の知見なんです。研究者たちも意外だったみたいですね、「えっ、友達!?」みたいな(笑)。

仲山:その親友というのは、仕事、プライベート限らず、親友と呼べる人みたいなことですか?

石川:仕事に限らずですね。

Googleが行うマネージャー評価方法

また、Googleという会社は数字が好きなんでしょうね。なんでも数字にしているんですよ。それで、いいマネージャーとそうでないマネージャーの違いも数字で評価されていて。

そこは究極の質問を彼らはぶつけていて。いいマネージャーは、部下のことを使える・使えないみたいな、そういう部品的に見ているんではなくて、人間としてサポートしてあげているみたいなんですね。人間として気にかけてあげているというか、プライベートも含めて。

その上司というか、マネージャーの評価がどう行われるのかというと、その部下たちにこの質問をするんです。「あなたの上司は、あなたのことを人間として見てくれている気がしますか?」と。その点数が高かったら、評価がよくなるんですね。

仲山:ほう。僕、最近やってないんですけど、だいぶ前に新人ECコンサルタント研修をやっていたことがありまして。だいたいECコンサルタントは100店舗さんくらいを1人で担当するんですけど。

この100店舗の店長さんの中で、電話してしゃべりたいと思える、別になんの用事もなくてもしゃべりたいと思える、しゃべったら「あー、楽しかった」とお互いが思えるような店舗さん、店長さんが1人でもいるとがんばれる。それが2割ぐらいになったら仕事が楽しすぎてヤバイ……みたいな話をすることがあって。それは結局、人として話せる関係かどうかなんですよね、まさに。

石川:そうですね。これがおもしろいのは、あれだけ転職が多くて、能力社会であるはずのアメリカのGoogleでこういうことが起こっているというのが(笑)。

仲山:それ、数値化はどうやったんですかね?

石川:例えば、部下が10人いたら、10人中何人がその質問に答えるかという。

仲山:どうやって答えるかという。けっこうシンプル?

石川:シンプルですね。

そういうふうに、研究者は究極の質問を探している人たち(笑)。そういうのをみなさんに1つでもいいから使ってもらったら、研究者としてはすごいうれしいですね、やっぱり。

仲山:スタッフに限らず、経営者でも「会社の中に親友はいますか?」という質問は有効?

石川:経営者レベルになると違うかもしれないですね。もっと従業員レベルの話で。

仲山:かつ、先ほどの「お客さんである店舗さんの中に、親友と呼べる人はいますか?」とアレンジをすると、よりこの会社で楽しく働けているかとかがすごくよくわかる気がします。

石川:そうかもしれないですね。

仲山:今担当じゃなくても。前、担当だったでもいいですけど、それもすごい当てはまる気がしますね。

脳の構造上、仲良くなれるのは150人まで

石川:さらに思い出してきたんですけど、人がだいたい何人ぐらいの人と仲よくなれるかは脳の構造上では決まっていて。150人ぐらいと言われているんです。

仲山:150人。

石川:経営者といわれている人たちは、親しくなれるのは150人まで。だから、その150人の内訳を社内と社外でどれぐらいの割合で持つのがいいのかという研究をやっているんです。僕、その研究結果を見て驚いたんですけど、1対9で外の人ですね。

仲山:9が外?

石川:9が外。経営者ぐらいになってくると、9の時間を使って外の人と会ってくる。中のことは、外で得たことを残りの1のエネルギーで中にしっかり広めよ、共有せよという。それが一番いいみたいですね。

仲山:楽天くらい社員数が増えてくると、その人のFacebookの友達の社内・社外比率を見れば、なんとなくわかるということですね。

石川:役職が上がってくるほど、どんどん外の人とつながったほうがいい。

仲山:中の人ともつながるようになるだろうけど、外の人も多いですよね、確かに。それはなんでですか?

石川:うーん、やはり新しいアイデアは、中から出てきにくいということなんだと思いますけどね。

仲山:先ほどのバイアスの話ですか。

石川:濱口(秀司)さんが話されていたことですね。

仲山:この前のコマで、濱口さんという方のフォーラムを2人して並んで聞いていたんです。専門家は効率的に作業を進めようとするために、脳の考え方も効率化されているので、重要でないことはほぼスルーされていくから、同じ会社の人同士で話していると、スルーされてるところに大事なものがあっても、どっちも気づかないということですよね。

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