2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
Do You Really Know What You Think You Do?(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:あなたが自分を知るよりさらにあなたをよく知る人はいませんよね? あなたは自分が誰かを知っていますし、なにが好きか、なにが得意かも知っています。
ハリーポッターのことはよく知っているかもしれませんが、アミノ酸のリストは高校の生物のテストのために覚えただけに過ぎず、終わったらすぐに忘れてしまったかもしれません。すべてのことを知っている人などいませんから、なにか自分が知らないことがあっても大丈夫だろうと考えるでしょう。
しかし、一般的に人間は「自己奉仕バイアス」のせいで、自分の考えですらよく理解できていないのです。
心理学者はさまざまなバイアスの研究をしますが、「自己奉仕バイアス」により、なぜ人が、実際以上に自分は物事を知っていると思ったり、自分の推論が実際以上にいいと信じ込んだりするのかを説明することができます。
「自己奉仕バイアス」を研究するにあたり行われることの1つは、ちょっと卑怯な手ですが、完全な作り話を知っているかどうか被験者に尋ねることです。これにより、「オーバークレーミング」という現象が起こります。それは、人がなにかを知らないと認める代わりに、知ったふりをするときのことを言います。
例えば、2015年に行われた研究では、研究者が被験者に生物学、哲学、そして文学の分野での自分の知識を評価するようにお願いしました。例えば生物学の分野では「哺乳類」とか「副腎」といった用語が出て来ましたが、そのなかには人々が知るはずのない、研究者が作り出した言葉がこっそり含まれていました。
「ultra-lipids(ウルトラ脂質)」「bio-sexual(バイオセクシャル)」「retroplex(レトロプレックス)」といった言葉です。すると、自分は知らないと認めるのではなく、被験者の124人中110人が、自分はそれについて知っている、またはそれについて詳しいと言ったのです。
それだけではありません。一般的に生物学をよく知っていると言う人ほど、偽の生物学用語に関して知っていると主張する傾向にあったのです。しかし、単純な間違いにより、このような結果が導き出されたということもできます。
「ウルトラ脂質」という言葉を見て、「脂質」という、脂肪や脂の分子を指す言葉を知っているゆえに、「ウルトラ脂質」という言葉自体が存在しないにせよ、知っている、としたのかもしれませんし、それと同時に、被験者はまったく生物学の知識がないにもかかわらず、自分はそれを知っていると認識したのかもしれません。
ですから、知識のある人も「オーバークレーミング」してしまうことがあるのかを確かめるため、研究者たちは個人の経済という話題に関係する、ちょっと異なる研究をしました。
前回同様、研究者は被験者に、特定の話題のリストについて質問しました。例えば「インフレ」や「個人年金」という言葉のなかに、こっそりと作り出した偽のトピックも混ぜました。しかし今回は、そのリストを個人経済のクイズとあわせて、実際の知識をテストしました。「個人年金」がなにかを知っているかをただチェックするだけでなく、それが課税か否かといった質問に答えなければならなくしたのです。
すると、クイズの正解率の高い、知識を持っている人たちのほうがさらに「オーバークレーミング」する傾向にあることがわかったのです。彼らは偽のコンセプトを指摘したり、自分の知らないことを認めることに関して、とくによい結果を出すことはありませんでした。
「オーバークレーミング」は人々の日常生活に悪影響を与えかねません。人生のなかで自己破産歴のある25,000人以上を対象にしたある国際研究によると、そうでない人に比べて、経済知識に関する同様のテストの出来は酷いものでした。それは驚くべき結果ではないかもしれませんね。しかし、それらの経済知識に欠ける人たちも同様に、自分の知識に関してどう思うかを尋ねられた際、高い評価をつける傾向にあったのです。
これは「ダニング=クルーガー効果」と言われます。つまり、知識や能力の点でとても低いスコアの人が、自分はとてもよくできていると思うことを言います。みんながさまざまな面で知識を持っていたり、持っていなかったりしますから、これは誰もに生じうる現象と言えるでしょう。
自分の思考のなかにあるこの死角は、自分の主張について評価するのを難しくさせていると言えるでしょう。他の心理学者チームはこれを、237人の人に5つの理論的問題を解き、そしてその答えに論理をつけるように指示しました。
それから、同様の5つの問題に対するほかの人の論理をジャッジし、それと比較するために自分の答えを与えられました。しかしこっそりと、5つの問題のうち1つは研究者により、被験者のものと他人の論理をすり替えられていました。
研究者たちは被験者が自分の論理に気付かず、他人のものであるとして判断してほしいと思っていました。半数の人は自分の論理を評価すると言われていることに気がつきましたが、108人の被験者は気がつかず、そのうち60人に限っては、自分の論理を否定したのです!
これは彼らが他人に対してただ過度に批判的になっていたからではありません。ただ人は、他人の推論だとすると、それが本当は自分の推論であったとしても、その過ちに気がつきやすくなるのです。これは「バイアスの死角」と呼ばれます。つまり、自分の間違いよりも他人の考えの間違いに気がつきやすいということをそう言います。
このような心理学の研究について聞き、人間は馬鹿だと結論付けるのは簡単ですが、「自己奉仕バイアス」のお陰で、みんなが自分の知識のギャップをいつもわかっていると期待することはできませんし、あなたも自分に過度の期待をしなくてすみます。すべての科学者が心から発する言葉は、「知りません」です。
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