旧石器時代の食事はどんなものだったのか

マイケル・アランダ氏:1970年以降、一時的な人気を集める減量法が流行ったり廃れたりしてきました。そのことから一時的な減量法はただの一時的なものと、一般的には推測することができます。

5年のうちに人々は関心を再び失い、もっと野菜を食べてフライドポテトや砂糖の入った飲料の量を減らすべきだったと判明するだろうと思われますが、それらのものはおいしいので私たちはそれを実践しません。

パレオダイエットは、人類は特定の主食を食べて進化してきたこと、また私たちは食べるために進化した食べ物を食べていないので健康ではないという考えに基づいています。

歯磨き粉や石鹸などの複雑な科学の発展により、人類が5万年前に比べ現在大幅に健康であるという事実を別にすると、これにはある程度の論理が存在します。ですので、一見の価値ありです。

人類は何の主食を食べて進化したのでしょうか? それに合わせれば、我々はもっと健康になるのでしょうか?

旧石器時代の人類が食べていたものに合わせるという考えの問題点は、それがもし今日の我々が考える狩猟採集民文化のようなものとはまったく異なるものを彼らが食べていたということです。

臨床栄養学に関するアメリカの機関誌にある2000の事例では、200以上の異なる狩猟採集民文化の主食を再調査したところ、非常に幅があることがわかりました。炭水化物は22~40パーセントで、脂肪もおおよそ同じ範囲内ですが、たんぱく質は主食の19~56パーセントだったのです。

この研究は、これらの文化ではカロリーの源が広範囲にわたることも発見しました。マサイ族はたいてい肉、牛乳、血によって生きていますが、一方ニューギニアの文化ではほとんどすべての栄養を植物から得ています。

私たちが食べるものと、狩猟民族が食べるものには大きな違いがあることは間違いありません。私たちはもっと食物繊維を含むものを摂ることや、減塩することや、大幅に糖分や精製された炭水化物を減らすことによく適応できるでしょう。しかしそれらは1つとして新しい情報ではありません。

すべての原始時代の人々の目的は生き延びることだったので、彼らに適応する主食は1つではありません。しかしながら彼らはすばらしく巧妙に生き延びてきました。我々が原始時代の人々について確かに言えることは、彼らは生き長らえるためにやらなければならないことは、なんでもやったということです。

しかし、もし私たちがそれらの文化のうち1つを取り上げるとして、彼らが食べたものを食べようとしたとしても、私たちは出来ないでしょう。なぜなら彼らが食べていたものは、シカや野牛は別として、そんなに入手可能ではないからです。

食料品店のほとんどすべての果物や野菜は、栄養豊富なものを創り出すため、何千年もの間、選択的に生育されてきました。

また我々の体が主食の変化に追いついてきていないという主張もまた、有効ではありません。旧石器時代より人類が大幅に進化できたはずはないという考えは、真実ではありません。私たちがここ数千年のうちに、いくつかの新しい適応力を発達させたということを研究は示唆しています。

もっともよく知られた例の1つは、全ての大人は以前乳糖に耐性がなかったのですが、比較的最近の突然変異のおかげで、世界中の約30パーセントの人々が現在アイスクリームを食べることができます。また2007年にNature Geneticsという機関誌で公表された研究によると、でんぷんをより消化する能力も時間の経過とともに発達したとのことです。

研究者たちは7つの異なる種族の人々を調査しました。3つは高でんぷんの主食で、4つは低でんぷんの主食を食べました。彼らは高でんぷん主食を食べた人々は、たんぱく質を消化する唾液中のでんぷんを暗号化するAMY1と呼ばれる遺伝子のコピーを余分に持っている可能性がほぼ2倍だったことがわかりました。

彼らがヨーロッパ人かアメリカ人か、ハヅァ族という狩猟民族かは関係なく、彼らは余分なコピーを持っていました。AMY1の余分なコピーは1つの突然変異から来ている可能性は低いでしょう。なぜなら彼らはそんなに多くの接触がないであろうグループから見つかったからです。

その代わりに、余分な遺伝子のコピーを持った人々は全てのグループの中から自然に選ばれており、それはでんぷん豊富な主食からより多くの栄養を得られたためであると研究者たちは示唆しました。

我々の体は万能であり、それによって食パンの1枚や2枚を食べて栄養にする能力があるのです。