2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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古川央士氏(以下、古川):ありがとうございます。事前にいただいている質問はこれで全部ですかね。あと、この中でお話を聞いていて、追加で質問がある方。どうぞ。
質問者1:「リアル脱出ゲーム」との類似性についてお話ししていたと思うのですけど、「リアル脱出ゲーム」ってけっこう大箱でやってるじゃないですか。東京ドームとか富士急ハイランドとか。そういう大箱とか街全体とか、フィールドを広げることに興味はないですか?
五味弘文氏(以下、五味):興味はありますよね。その大箱というのは、つまり一度に大勢のお客さんを楽しませるということですよね。
質問者1:はい。数千人。
五味:興味はあるんですけど、すごく難しくて、実際にできてないのが現状です。まさに大箱どころじゃなくて、例えば「この人数を一度に楽しませよう」というのでも難しいことなので。集団を楽しませることは、やりたいけどまだ至ってないです。至れるのかわからないですけどね。
古川:ありがとうございます。他にもありましたら。
質問者2:「情熱大陸」を以前拝見させていただいて。外国人のお客さんが映っていたと思うんですけど。「怖い」に対して、生まれ育った文化や年代が影響するのかしないのか、というのをお聞きしたいなと思います。
五味:文化は圧倒的に影響しますよね。文化、それから宗教観、このあたりは圧倒的に影響するんですよ。ストーリーにおいて、あるいは設定においては、特に影響が強いです。
でも、物陰からいきなり恐ろしい風貌したなにかが飛び出してきた。それに対して悲鳴を上げることに関しては、文化とか宗教とかは関係ないですよね。そういった面においては、全世界共通だと思うんですよ。
ただ「恐怖を感じやすいか感じづらいか」に関しては、文化に関係なしに、人種の違いがあると思いますね。日本人の場合は、わりと恐怖に対して感度は高いです。これが西洋の方だと、もっと感度が低いというか。恐怖に対して強いと感じます。肉体的な違い、人種の違いみたいなものは、文化と関係なしにあると思いますね。
質問者3:お話ありがとうございます。お化け屋敷を回る中で、いくつか部屋があって、いろいろ仕掛けがあると思うのですけども。恐怖の度合いというか、進んで行いく中で「どこで盛り上げて、どこでいったん下げて」みたいなことは、どのように意識されているのか。
それと、先ほど大箱の話があったと思うのですけど。去年のサンシャイン水族館での、比較的大人数を入れたものについてお話を聞きたいです。
古川:まずは、いろんなレベル感、度合いを、どこでどうやるか。
五味:どこでどうやるか、お話するのは難しいですね。方策は別にないですよね。
ただ、最初のほうの不安な状態と恐怖。つまり悲鳴を上げるような状態は、最初のうちから「悲鳴上げさせて」というようには作らないことが多いです。最初からいくこともありますけど、最初のうちはじっくりと不安な状態を作っていく。
その状態は、お客様が周りの状況を見たり、観察したりという余裕がまだあるので、その時にストーリーの世界観をじっくり見てもらって、体験してもらいます。悲鳴を上げ始めると、そういうことは目に入らなくなってしまうので、そうなったときには、別の部分に演出を持ってくるようにしてます。
最初は激しい脅かしはなく、1発目、2発目、3発目あたりは、さっきの話ではないですけど、「やられたな」と思わせるような演出を行うようにします。「ああ、こんなものか」と思っていたところへ、演出で「ああ、やられた」と思わせるような、なにかの形で主導権の譲渡をさせる仕掛けが前半の方にあって。
主導権を早めにもらったところで、後半に畳み掛けていく演出にすることが多いです。これは1つのパターンなので、ぜんぜん違う形になることもあります。「必ずこういう定石でやってます」というわけではないですね。
もう1つの質問、サンシャイン水族館についてですよね。これはまったく新しいチャレンジで。大箱というには、それともちょっと違いますけど。
確かに迷路状のところを、周りのお客さんもいなくて、自分たちだけで歩いていく。そういうシチュエーションとも違っていて。この場合は、悲鳴を上げるお化け屋敷を目指したのではなくて、1つのストーリーに乗ったお化け屋敷……。お化け屋敷じゃないな。「お化け屋敷」と言ってないんですよ。ひと言もそうは言ってなくて。
「お化け屋敷プロデューサー」という名前ではありますけど、「ホラー水族館」という言い方をしていて、どちらかというと、悲鳴を上げるよりもゾクゾクするような怖さを体験してほしいなと思って作りました。悲鳴を上げたり騒いじゃったりすると、水槽の中の魚が飛び出しちゃったり水槽にぶつかったりするので、そういうところを目指して作ったという側面もあります。
だから、お化け屋敷とはちょっと違うんです。「前のほうにもお客さんがいる、後ろにもお客さんがいる」という状況は、「前の人はこんなことしている」ということを観察する冷静さや「自分が今悲鳴あげたら、こんなふうに後ろの人に見られるんじゃないかな」と感じる冷静さを生みます。
そういう冷静さの視点が、今まで作ったお化け屋敷になかった視点だったので。それをどうやって解決したらいいかは非常に難しかったし、未だにそれは課題になっています。大箱の話に繋がっているかわからないですけど、いずれにしても新しいチャレンジで、もうちょっと進めたいなと思ってます。答えになっているかわからないですが。
古川:ありがとうございます。他に質問ある方。隣の方。
質問者4:ありがとうございます。五味さんが今まで触れてきた中で、嫉妬したり衝撃を受けたエンターテイメントを教えていただいてもいいですか?
五味:(笑)。……ちょっと待ってくださいね。
古川:嫉妬したり、衝撃を受けた。
五味:いろいろありますよ。でも最近あったかなと思って。今、すっと出るかなと思ったのですけども。最近ですかね?
質問者4:最近でも大丈夫です。
古川:「リアル脱出ゲーム」は衝撃を受けましたね。まったく新しい出会いで。
質問者4:昔のものでも。
五味:昔のものでも大丈夫? いや……あったんですよ、答えたいやつが、最近。……お芝居でもいいですよね。こんな話をしてもしょうがないかもしれないけど、「マームとジプシー」という劇団があってね。その劇団の芝居は衝撃を受けましたね。でもこの話をしても……。
古川:どんなお芝居なんですか?
五味:リフレインをしていくんですよ。あるシークエンスの次に、それとは関係のないシークエンスが展開し、その次にも関係のないシークエンスが演じられる。そして、同じシークエンスが何度も出てくるんです。
それらのシークエンスが、次第に繋がっていって、だんだんどんなことを演じているのかがわかってくるんです。その繰り返しを見ていると、すごい不思議な気持ちになるんですよ。一種の催眠術にかかったような気持ちになって、すごく不思議だったんです。
質問者4:でもやっぱり、そこは素直に。
古川:これですか?
五味:あっ、そうです。
僕が生きてる中で一番衝撃を受けた瞬間は、「状況劇場」っていう、唐十郎さん、根津甚八さん、小林薫さんとか、みなさんがいらした劇団なんです。そこの芝居を見た時の衝撃が一番大きくて、それは未だに続いていると言ってもいいと思います。
そこで描かれているのは、、フィクションの世界とリアルの世界のせめぎ合いです。妄想に駆られた登場人物が、現実に対して立ち向かって打ちのめされ、それをひたすら繰り返していくっていうドラマづくりで。それがどこかの段階で、現実を突破するんですよ。
その突破した瞬間に、テント公演なんですけど、テントの後ろの幕が開いて、その向こうに、現実の、例えば新宿の街が現れる。つまり、テント1枚で現実とフィクションが区切られていて、テントが跳ね除けられた時に、フィクションが現実のほうに流れ出していく。そういうドラマづくりなんです。
結局、先ほどの「客観と主観」の話もそうで。客観がリアル、主観がフィクション。別の言い方をすると、「フィクションとリアルの間を往復運動している」っていう言い方もできるんですね。そういうことを僕はずっとやりたい。そういうことが僕は好きで、そういうことをずっとやりたいと思っているんです。
でも、図らずも今のエンターテイメントの多くは、「どうやったらフィクションの世界をリアルに持っていくか」、あるいは「リアルなものをどうやってフィクションに持っていくか」を考えているんですね。
まさにリアル脱出ゲームはピッタリですよね。フィクションの世界をリアルの中に作っていく。VRもそうだし、ARもそうです。リアルとフィクションの間を、どういうふうに突き破ったり乗り越えたりして、どういう楽しみ、どういう便利さを生んでいくか。
今のテクノロジーやエンターテインメントは、そういうことを追求している側面がありますが、それはまさに当時、唐十郎さんがやってたことに繋がるんじゃないかなと思っています。多少は質問に対する答えになったでしょうか。
古川:思い出していただいてよかったです(笑)。手を挙げていた方。
質問者5:2つ、質問させていただきたいことがありまして。まず1つが、例えば東京ドームとか、大阪MBSとか、いろんなところでお化け屋敷を開催されていますが。
開催されるにあたって、お化け屋敷のテーマ……去年で言うと「リバイバル、続編でいこう」という流れは、ある程度五味さんのほうで提案されて、形にされてから持っていってプレゼンをされるのか。もしくは東京ドームや各地方の主催者から「こういう感じでやってくれ」という形で依頼を受けるのか。そのどちらなのか、というのが1点と。
元々演劇の畑出身ということで、ホラーを使った演劇には挑戦されないのか、というところをうかがいたいと思います。
五味:1つ目の質問ですけど、クライアントさんからの要望はほぼないですね。「こういうことは止めてほしい」「こういう事件があったから止めてほしい」という最低限の要望はありますけど、基本的にはこっちがすべて考えて、提案させてもらうスタイルになってます。時には「こういうことを提案してほしい」と言われることもありますが、それはイレギュラーな話です。
ホラー演劇の話、まさに演劇の話になってしまいますけども、お芝居をずっと続けていたこともあって、作ることの大変さは、自分なりにわかっているつもりです。
だから、お化け屋敷とお芝居が近いからといって、そんなに簡単に作れるものではないということもわかるので。興味があるかないかと言われると、興味はあるんですけども、簡単にはできないと思っています。
質問者5:ありがとうございます。
古川:では、最後お二方にしましょうか。
質問者6:先ほどプロデュースの4つの視点があったと思います。その制作の部分で、「自分が思っている以上のものを、コミュニケーションで返す」みたいなお話があったと思うのですけど。
「自分の頭の中で考えていることを他人に伝える」、「自分が思っている以上のものを返してもらう」って難しいと思うのですが、もし工夫されている点があれば、教えていただきたいなと思います。
五味:工夫している点……ぱっと思い浮かぶのは、「乗せていく感じ」。
「ここでこんな奴が出て、こんなに酷い目にあった女がいるんですよ。だからこの女はこういうふうに化けて、こんなことをする」みたいな話をして面白がってもらうと、「それだったらこんなふうな髪型がいいし、こんな顔つきがいい。衣装はこんな色がいいし」みたいに、広がってくれる。
乗せていく感じというのは、わりと近いかもしれないです。近いと言うか、やってることかもしれないです。
質問者6:一緒に体験してる感じを作っていく、ということでしょうか?
五味:うん、それはすごい大事じゃないですか。同じ視点に立つこと。「僕はこんなふうに体験してほしい。だから一緒に隣にいて」みたいな感じ。そうすると「ああ、わかる、わかる。そこからそう出ると怖いよね」って思ってくれる。
あとは、僕も含めてそうなんですけど、そんなにみんながホラーマニアじゃないことかな。そこがけっこう大事で、だからいろんな視点を出してくれる。「怖い」っていう視点しか出してくれないんじゃなくて、別の視点を出してくれる。それが、その人がどこかの映画で見たカットだったり、どこかの展覧会のなにかの絵だったり。
そういうパートナーがいてくれるほうが、僕はやりやすいですね。そういうパートナーを作るようにしてる、ということかもしれないです。
質問者6:相手の引き出しを誘うというか、なにかそういうのを工夫してたりするんですか?
五味:それ、工夫してない。無邪気にやってます。無邪気にというか、「素朴に」という言い方かもしれないけど。
例えば僕が「この間見た、こんなのがおもしろかった」みたいな話をすると、向こうもそういう話をしたいじゃないですか。「僕が見たこんなのおもしろかった」「ああそう、わかる」みたいな話。
そっちに繋がっていって、どこかでぜんぜん別の引き出しの中に潜んでいることを話した時も、「あの時のこういうものがおもしろかった」「わかる」みたいな形で出てきたりする。引き出しているかどうかはわからないけど、そんな話をしたりします。
質問者6:ありがとうございます。
古川:じゃあ、最後に。
質問者7:ありがとうございました。うかがいたいのは、お化け屋敷のフォーマットみたいなものが、ご自身の中にしっかりあるのかな、と。先ほど「それはお化け屋敷というか、ホラー型のエンターテイメントだね」っておっしゃっていたので、その切り分けをお聞きしたいというのと。
あともう1つ、そのフォーマットを守るからおもしろいのか、あえて破りにいくことがあるのか、ということをお聞きしたいです。
五味:先ほど「これはお化け屋敷じゃない。ホラーエンターテイメントです」って言い方したのは、便宜上もあって。どこかで「お化け屋敷というのはこうである」ということを規定しておかないと、話が進まないこともあったから否定をしたんです。
でも、規定したということは、自分の中で「これはこういうものである」と規定しているものがあるということでもわけですよね。
25年間ずっと1つの形。フォーマット……「入り口があって出口があって、一方通行で体験する」という、1つの形の中で掘っていった時に、規制があるからこそ、いろんなものが見えてきたところがあるわけですよ。それはすごい大事なことだと思っていて、これを僕はずっと掘り続けていくだろうと思います。
それとは別に、ほかのホラーエンターテイメントに興味がないかと言ったらそうでもありません。「こういう場が与えられたら、もうちょっとこうなるだろうな」という部分に、今まで掘ってきたものを広げていきたい、形を変えて提供していきたい。そういう気持ちは当然あるので、まったく興味がないわけではありません。
ただベースはどうしても、先ほど僕が規定したところのメイズ(迷路)型のお化け屋敷がある、ということは確かだと思います。
古川:ありがとうございます。本当に長い間ありがとうございます。質疑応答をこちらで終わりにして、ワークショップに入っていきたいと思います。改めて拍手をお願いします。どうもありがとうございます。
(会場拍手)
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