2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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古川央士氏(以下、古川):特殊なエンターテイメントをプロデュースして取り組んでいく上で、もう1個重要だと思っているのが、それ(お化け屋敷の存在)を知ってもらうこと。ちょっと言葉が悪いかもしれないですけど、お化け屋敷というのはニッチな領域だと思っていて。誰もが一度は行くような、ライブとか映画とかのエンターテイメントではなくて。
お化け屋敷の場合は、一度は行ったりするんですけど、四六時中、興味がないときでも入ってくる情報というわけではないので、伝えるのがけっこう重要かなと思っているんです。その辺りのPR術について、少しうかがいたいと思って。
1つ目のポイントが「テーマや設定を絞りこみ、できるだけ無駄な要素を削ぎ落とす」なんですけど、これはどういうことですかね?
五味弘文氏(以下、五味):これは他の宣伝も同じだと思うのですけども、一体どういうお化け屋敷なのか。お化け屋敷自体がブラックボックスなので、一発で「こういうお化け屋敷です」って言えたほうが勝ちなんですよね。
なので、ひと言で「こんなお化け屋敷です」って言えるようなテーマ設定をすることが大事。そのテーマ設定がひと言で言えるものだったら、今度はそれを「いかにPRしていくか」に心血を注ぐ。
余計なことを考える必要はないんです、その部分においては。問題は、いかにシンプルに、「おもしろい」「怖い」と思わせるテーマの設定を作り出すか。これはPRというよりも……。
古川:演出とか設定ですね。
五味:設定です。そっちに大きく絡んでくる部分なんですよね。
古川:これまでプロデュースされたものの中で、まさにここに入っているなと思ったのが、素足で行くお化け屋敷「足刈りの家」。「足を刈られた」みたいなストーリー性があって、ひと言で「メチャメチャ怖そうだな」と伝わる。そういうことですよね?
五味:そうですね。これですよね。
古川:これですね。「絶対にお化け屋敷の中を素足で歩きたくない」って、瞬間的に思いますよね(笑)。
五味:これはキャッチがドーンと「くつを ぬいで あるく」って書いてあります。もうキャッチですらない。でもいいんです、それで。それですべてが伝わる。これで「靴を脱いだら怖いよ」って言う必要がまるっきりないので。「くつを ぬいで あるく」って、堂々とこんなに大きく書いてあります。
古川:あえて言うほどのことがなくても、これだけで本当に伝わりますもんね。
五味:これはシンプルさの力で。タイトルもキャッチーですから、本当にシンプルに作った感じで。でも一番成功している感じはしますね。
古川:勝手に想像して膨らんじゃいますもんね。「たぶん『ヒヤッ!』とするんだろうな」とか。話を聞いただけでも、ゾワゾワして膨らんでいくのがシンプルですもんね。
五味:みんな「このな部屋があるんでしょ?」「こんなことやるんでしょ?」みたいに話してきますけどね。
古川:このビジュアルも、すぐわかりやすいというか、入ってきやすいんですけど、それもテーマだったんですよね。ポイントとして重要なところですよね。キービジュアルというか。
五味:そうですね。もうひと目でわかる。
古川:いくつか事例があると思うんですけど。
五味:これは「闇の心臓」というお化け屋敷で、心臓を持って歩くんですよ(笑)。これは説明しづらくって。とりあえず「心臓持って歩くお化け屋敷です」って言ってますけど、実際はもっと複雑で。
「この心臓がアナタの鼓動で恐怖を誘う」って書いてありますけど、あなたの鼓動なんですよ。持っている人の鼓動が、その持っている心臓に反映されるっていうお化け屋敷なんですよ。
これはまさに「手錠につながれてます」って感じですね。それだけです。手錠でつながれてる。レール上で。
古川:ああ、ここがレールで、お互い繋がっているんですね。
五味:これはわかりづらいかも。これは廃屋をそのまま移築したお化け屋敷なんですよね。ちょっとわかりづらいかもしれませんね。
これはルミノール反応を辿っていくお化け屋敷。
全体にもう1つ言えるのが、僕のお化け屋敷のビジュアルの特徴は、けっこう派手です。ビジュアルにおいて、「怖い」ってことは大事なんですよ。やっぱり「怖い」が大事なんだけども、でもどこかで「怖いだけじゃないですよ」という信号を出したいと常に思っていて。
派手というのは、どこかで色彩感みたいなものを紛れ込ませたいと思っているんですよ。だから、「暗い中に、下から照明が当たって怖い女の顔が浮かび上がる」みたいなビジュアルはほとんど作らないです。もっと色が多い感じ。派手な感じに作る。
古川:これ、すごい嫌ですね。「口の中に恐怖がある」ってこと、お化け屋敷でなかなかないな(笑)。
事例的にはこんなところですかね。
五味:これ能面のお化け屋敷ですね。これは去年の『赤ん坊地獄』ですね。
古川:次のテーマ「怖さと楽しさを訴える」。先ほど「恐怖を楽しさに」って言われましたけども。
五味:やっぱり僕は、暗いイメージのビジュアルではなく、派手で色目が多くて華やかな。怖いだけじゃなくって、「お祭り的だよ」みたいなことを訴えたいと思ってます。
古川:言葉が正しいかわからないですけど、「アトラクション的な」という感じですか?
五味:アトラクション的だとは思います。
古川:それで惹きつけて、「怖いだけじゃないよ」ってことですよね。あと今、Web使って口コミを熟成させることもやられてるんですよね。
五味:そうですね。Webは一番相性が良くって。お化け屋敷は怖いから、みんな内容を知りたがるじゃないですか。「どんな内容? どんなふうに怖い? 楽しい?」と。それは僕がいくら「怖いですよ」「楽しいですよ」と言ったところで、「作っている側からの発信じゃん」と信用できない。「どうせそういうふうに仕込んでいるんでしょ」と思われますから。
でも、そうじゃなくって、実際に体験した人の口コミが、一番みんなが知りたがることなんです。Web、SNSですよね。SNSとは、特に相性の良さを感じます。お客さんは、そういった媒体で品定めをする。
食べログをみんな熱心に見て、行くレストランを決めるように「本当にここおいしいよ」って(書かれていても)、食べてみないとわからないですよね。それと同じように、入ってみないとわからないのがお化け屋敷なので。そういった情報を発信していくところとして、非常にSNSとの相性はいい。
古川:具体的に仕掛けられたこともあるんですか? 「出た後にSNSにあげてね」みたいなの、ありますか? これですか?
五味:これはSNSではないですけど。「ゴーストカム」という、お化け屋敷の中を定点で。
古川:ずっと映してる?
五味:そう。それをネット上で見られるシステムで、昼間はお客さんが楽しんでいる様子が見られて、夜は誰もいないお化け屋敷の中を見られます。
古川:人の気配がなくなった。
五味:本当に真っ暗になったところを、赤外線カメラで撮ってる。
古川:ずっと見てたらなにか起こるかもしれない(笑)。
五味:そう、起こるかもしれない。起こって一番怖いのは僕ですからね(笑)。
古川:そうですね。ずっと現場にいるわけですからね(笑)。
五味:一番映ってほしくないのは僕です(笑)。
古川:なるほど。他にはありますか?
五味:これはライブフォトで、中のお客様の様子を配信というか、クラウドに上げて、欲しい方が自分だけのものをダウンロードすることができるサービスです。それを「ご自由に拡散してください」というものです。
古川:こういう写真を上げたりしやすくすることで。
五味:先ほどの話に出た「間抜けな自分」があるんです。
古川:客観と主観の。
五味:「間抜けな自分を晒したい欲望」ってあるじゃないですか、「こんなに自分みっともないぞ」っていう。ネット上に晒して、みんなで楽しむ。それに通じる部分ですよね。
古川:そうですね。あとは?
五味:これが「リモートゴースト」。先ほどの「ゴーストカム」を使って。これはネットの話とは関係ないですけども、ゴーストカムと同じ映像がお化け屋敷の外で見られる。右下にお子さんがいますけども、そこにボタンがあって、ボタンを押すと中の仕掛けのひとつが動く。
古川:連動しているんですね。
五味:中のお客さんの様子を見ながら、外の人がボタンで驚かすことができる。そういう仕掛けですね。
古川:楽しいですね。
五味:楽しいですね。これもそうだと思うんですよ。客観的な立場ですから、みんな大笑いしてますよね。客観的に見てれば大笑いしますよ。
古川:なるほど。
五味:チラッと見えたのは。
古川:よく引っ張ってきましたね。これは「桐夫のブログ」で、「闇の歯科病棟」っていうお化け屋敷でやったんです。これ、私が、開催期間中に、ブログをほぼ毎日更新していて。桐夫っていう歯医者さんが主人公なんですけども、彼がお化けの霊に取りつかれて、自分が知らないうちに殺人を犯しているというストーリーなんですよね。
そういう桐夫の心の中の葛藤がブログに綴られていくんです。この時、現実に選挙があったり、台風が来たり、いろいろあったんです。そこで、「今日は選挙だ」と絡んだことを呟いたり、台風が来た時には台風に絡んだ「こういう行動をした」みたいなことを書いたりして、実際に現実世界で起こっていることと架空のことをブログでつないでいったんです。
さらに、見ている人からメッセージが送られて来たり、そのメッセージを桐夫に取りついた霊が見て、怒り狂い「そのメッセージを送るやつに祟ってやる」「お前らのところに今夜行くからな」というメッセージを送り返したりしました。その呪いから逃れるには、お化け屋敷にやってきて、隠してあるお守りを取ってこなくてはなりません。
古川:本当に怖いですね(笑)。
五味:そのお守りを持ってくれば大丈夫っていうような、リアルとフィクションの間を行ったり来たりする遊びをずっとやったんです。最後の最後に、桐夫が亡くなってしまう。「桐夫のお葬式をやるので、みなさん花を供えてください。メッセージを桐夫に宛てて送ってくれれば、それが献花になります」。
そうしておいて、夜中の誰もいない、真っ暗なお化け屋敷の中に、携帯を1台置きました。それをゴーストカムで見ながら、メッセージを送ると、着信した携帯のランプが光りますよね。携帯の前に桐夫の遺影が置かれていて、その光によって、初めて遺影が見られるようになるんです。そういうような仕掛けを行いました。
古川:なるほど。めちゃめちゃ繋がってる。仕掛けがいろいろ凝ってますね。
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