「欲しいときは、ただ求めればいい」 1ヶ月で1億円の活動資金を集めたミュージシャンが語る、"信頼"の本質

"お願い” するということ #1/2

CDの売上が減少を続けているのは、日本だけでなく世界共通の現象。しかしアメリカで活動するアーティスト、アマンダ・パーマー氏(The Dresden Dolls)は、クラウドファンディングを使ってたった1ヶ月の間に活動資金約1億円を集めることに成功しました。その秘訣とは?(TED2013 より)

偶発的にうまれる素晴らしい愛情

アマンダ・パーマー氏:私はいつも音楽で生計をたてていたわけではありませんでした。5年間かけてそこそこ有名な大学を卒業した後、私が選んだ就職先は、これでした。

私は、"自営業の花嫁の像"として道端に立つことにしたのです。みなさん、「なんだ、この頭のおかしい奴は!」と思うかもしれません。

(会場笑)

おかしいと思うかもしれませんが、私はこの仕事を気に入っていました。こうやって、皆様になぜこのような仕事をしたのかを話すのも、いつもとても楽しみにしているのです。

私は、こうやって台の上に花嫁の格好をして立ち、自分の前に空き缶や帽子をおきました。通りがかる人々はそこにお金を入れてくれました。お金をいれてくれる人に対して、私は手に持っていた花を手渡すのです。そして大切なのは、アイコンタクトです。とてもとても深い、愛情のあるアイコンタクトをします。もし花を受け取ってくれなかったら、私は悲しいジェスチャーをして、名残惜しそうに去ってゆく人を見つめます。

このやりとりによって、私はお金を入れてくれた人々との間に、とても深い関係を感じるのです。都会といえども、孤独な人々がたくさんいますよね。一週間に一度も人と話していないかのように、孤独に見える人さえいます。そんな中で、私とのこのやり取りを通して、その短い間に、深いアイコンタクト、愛情や感謝の表現などを通して、偶発的に生まれたとはいえすばらしい関係を築くことが出来る。私はその時、恋に落ちるような感情さえ感じるのです。

もちろん、私のこの仕事に否定的な人々もいました。車で私の目の前を通ると同時に、「仕事につけ!」と怒鳴る人もいました。まぁ、その時の私の仕事はそれでしたから、「これが私の仕事よ」と思いましたけどね。

(会場笑)

もちろん、私はこのような行動に傷ついたし、いろいろと考えさせられる事もありました。恥ずかしいと思う事もありました。また、みなさんはそんな仕事で生計をたてられるのかと不思議に思うかもしれません。意外なことに、私はそれなりの収入を得られていたのです。火曜日には6,000円、金曜日には9,000円……という具合で、定期的に。

音楽を通じた信頼関係が、ネットの力によってリアルなものに

この仕事を続けると同時に、私はナイトクラブなどでシンガーとしての活動も始めていました。のちにThe dresden dollsというバンドを結成することになりましたが、その土台が出来たのもこの頃でした。私が作詞作曲をし、ピアノ、ボーカル担当。そしてこの彼はすばらしいドラマーです。

この音楽活動が軌道に乗ってきたので、私は道端の花嫁になる仕事をやめることになりました。しかし私はこの花嫁の像の仕事からたくさんのことを学びましたし、とても好きな仕事でした。花嫁の像になることで得られる人々との深いコンタクトを失いたくありませんでした。

なので、私たちのバンド(The Dresden dolls)は、ショーの後にファンの人々とふれあうことをとても大切にしました。サインをしたり、会話をしたり、のんびりしたり。そして、ファンの人々と深い関係を築いていきました。私たちのバンドもまだまだ駆け出しの状態でしたから、ファンのみなさんからいろいろな支援を受け、多くの人に助けられました。

思えば、この頃から求めることの重要性を実感するようになったと思います。恥ずかしがらずに、求めて、支援をうける。何度か、コンサートやショーを開きたいと言ったら、地元のアーティスト関係の仕事をしている人々が私達のためにステージを作ってくれて、自由参加型のすばらしい音楽イベントを開催できたこともあります。私達がしたのは、求めたことだけです。

そして、Twitterが登場してからは、私たちの活動はより活発になりました。Twitterは、いつでもどこでも、すぐに、いろいろな情報を共有できますからね。ある時ロンドンで、バンドの練習でピアノが必要な時がありました。私がTwitterでそのことを述べたら、30分後にはファンの一人がピアノの練習場所を提供してくれたのです。

シアトルでイベントがあると述べた時は、ファンがホームメイドの料理を提供してくれたこともあります。私が移動中にちょっとしたショーをしたいなと思った時は、美術館や図書館などのパブリックスペースで働いているファンが、場所を提供してくれた事もありました。

その他も、必要なものを持ってきたくれたり、私たちの活動を手伝ってくれたり、数えきれないくらいのすばらしい事がありました。さまざまな場所で、いままであった事もない新しいたくさんの人々に、いろいろな支援を受ける。私はこのような偶発的にうまれた、しかしとても深い、人々とのコミュニケーションを持つ事ができることをとても幸せに思うのです。インターネットを通して、人々とこのような深い関係を持つ事ができるのです。

例えばホテルの部屋を借りるとします。一つはWi-Fiがないが快適な部屋。もう一つは、Wi-Fiがあるが、ベッドがなかったりトイレがなかったり、人々が密集して狭苦しかったりする。私は絶対にWi-Fiがある部屋を選びますね。ソファで寝るのも慣れてますし。

(会場笑)

こんなことがありました。マイアミで活動していた時、私たちはバンで移動して寝泊まりしていました。その時、ファンの方が寝床を提供してくれたのです。母親と18歳の女の子が住む家で、ふたりとも、とくに娘さんが私たちのファンでした。彼女達は、とてもとても貧しい、移民の家族でした。私達のために寝床を提供してくれる代わりに、自分たちはソファで寝るといってくれたのです。

彼女達と私たちは、料理をしたり、聖書の話をしたりしてとてもすばらしい時間を過ごしました。そのとき、その母親がとても訛りのある英語でいったのです。「あなたの音楽は私の娘をとても元気付けてくれている。あなたの音楽のおかげで娘はいろいろな事から立ち直ることができた。ここに来てくれて本当にありがとう」。

その時私は、花嫁の像の仕事をしていたころの感覚を思い出しました。いままで会った事もない人々だけれども、何かを通じてとても深い関係をつくることができる。短いかもしれないけど、すばらしい時間を共有することができる。私は音楽を通じて信頼関係を作っていくことに喜びを感じました。

クラウドファンディングによって1ヶ月で1億円弱を集める

私はよくライブでクラウド・サーフィング(通称:ダイブ)をしますが、このクラウド・サーフィングもネットサーフィンを通してファンとコンタクトをとるのも、同じことなのだなと思います。ファンを心から信頼して私は音楽を提供し、ファンはそれに答えて私の求めるものを与えてくれる。深い信頼関係があるから、安心して観客の上に、あるいはネットでのコミュニケーションや求めるという行為に、飛び込んでいけるのです。

その後、私たちのバンドはどんどん成長していき、メジャーなレコード会社と契約を結べるようになりました。私たちのバンドのスタイルは、パンクの要素とキャバレーの要素がまざった特殊なものですから、そんなに一般受けがいいかどうか分かりませんが……。

(会場笑)

とはいえ、私達の音楽は発売後1~2週間で2万5,000枚の売り上げに達したりもしたのですが、レコード会社はその結果に満足しませんでした。それどころか、この売り上げでは失敗だ、とも言われました。そして、最終的には契約が取りやめになりました。

その頃、こんな事がありました。いつものようにショーの後、ファンと交流していたら、ファンの一人が来て、私に1,000円を渡したのです。私が驚いていたら、ファンはこう言いました。「ごめんなさい、あなたのCDを友達からコピーしてしまった」。

(会場笑)

そしてファンは続けました、「レコード会社との契約解消の事はブログで読んだから知っているよ、残念だったね。だから今更かもしれないけど、でも君にこのお金を払いたいんだ」と。そのファンは、契約解消となった私たちに、活動を続けていくために支援をしたかったのかもしれません。

契約解消後もファンからの支援が続いていました。とてもありがたいことです。そして私は思ったのです、こんなに支援を受けているのならば、自分たちの音楽を無料で提供していいのではないかと。オンラインでフリーにダウンロード出来るようにするべきでないかと。しかしもちろん、活動には資金が必要です。なので、音楽を無料で提供する、そしてそれと同時に支援してくれるファンに資金提供を求める。このころ「grand theft orchestra」というバンドも始めましたが、これはファンの資金提供(クラウドファンディング)なしには成り立たないものでした。

私はいままで関わることができた数千以上のファンやいろいろな方々に、資金提供を呼びかけました。その結果はおどろくべきものでした。私たちは一ヶ月で約120万ドル(約9,450万円)もの資金提供をうけることができたのです。これは、音楽業界においてもいままでにない資金提供額でした。資金提供をしてくれたファンはおよそ2万5,000人でした。

(会場拍手)

対価を求める、ではなく、信頼する相手にただ支援を求める

資金提供について、ある人はこう私に質問してきました、「アマンダ、君は音楽の無料提供をして、それでもなおファンからそんなに資金提供をうけるなんて、いったいどうやってお金を集める事ができたの? 資金提供をどうやって促したの?」と。しかし、私は資金提供に関する活動は特別な事は何もやっていません。ただ、資金提供を求めただけです。

そうです、ただ単に求めることによって、私は多くのファンからの資金提供をうけることができたのです。人と人との繋がりという関係のうち、求めることを恐れてはいけません。もちろん、求めることは容易なことではありませんし、求めることによって弱い立場に立ちたくないという感情もあります。多くのアーティストが、求めることについての問題を抱えています。

もちろんいまでも私の行動に批判をうけることもあります。そのとき私は、私が花嫁の像の仕事で路上に立っていた時、私に罵倒を浴びせた人々のことを思い出します。しかし、かれらは、資金提供には深い信頼関係が存在することを認識しているのでしょうか。信頼関係のもと、求めることや資金提供は健全に働きうるのです。私はファンのことを、本当に全面的に信頼しています。

これはファンとの交流会での私の写真ですが、私が丸裸になって、ファンが私の体にボディペインティングをするという催しをしました。

ここまでの信頼はよほどのことがない限り、得られないかもしれませんが……。信頼を得たいのなら、ここまでやるのもいいかもしれませんね。

(会場笑)

でも私はこの催しを通して、私はここまであなた達のことを信頼している、ということを表したかったのです。

人類の歴史の中で、コミュニティの形成は重要な役割を果たして来たと思います。セレブリティはたくさんの人々から愛されるという傾向を持ちますが、現在のセレブリティはコミュニティの一員というよりかは、雲の上の人、という感覚で愛されていると思うのです。そのような場合、ファンとの間のコネクションは近いものとは言えないでしょう。

私は、オンラインの活動、ファンとの会合を通して、近しい信頼関係を作っていきたいのです。ブログやTwitterなどのオンラインの活動では、ショーや新しい音楽の配信だけでなく、私達バンドの活動指針、恐れていることや弱み、飲み会、そういうものも配信していき、ファンとより近い関係を保っていきたいのです。

音楽を作り、それにお金を費やしてもらうというのがいままでの音楽業界の流れなのは分かります。しかし、音楽を無料で提供し、ファンに支援を求めるという形があってもいいと思うのです。そしてそういう信頼関係があるからこそ、お互いに提供し合って、助け合うことができるのです。その時に、求めることを恐れてはなりません。ご清聴ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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