当事者だからこその感情が起爆剤になる

堀潤氏(以下、堀):ある種、古臭い言い方だと、「志」みたいなものを説くことができるかどうかっていうところですね。Twitterでも今、らたたさんという方かから「水野さんの新しいものを変える文化作り、 その変える発想はどこから出てくるのか知りたい」が来ていまして。

僕も、ぜひ聞いてみたいのは、質問がさっき言った「法人化することの意味」と、もう1つ壮大なテーマで、「起業は人を幸せにできるか」というテーマをいただいているんですが、それは逆に言ったらできるでしょう。

ただみなさんがその、それぞれが掲げるビジョンが、なんで生まれていったのかなっていうことを知りたいんですよね。なにがきっかけだったんでしょうね。それぞれが上げるビジョン、一言ずつちょっといただいてからうかがっていいですか? 「○○したい」「将来○○はこうするべきだ」など、ぜひ聞かせてください。どなたから? はい、水野さん。

水野雄介氏(以下、水野):僕は、21世紀の教育変革がビジョンですね。

:21世紀の教育変革。なぜそれを?

水野:怒りが大きいかもしれないですね。

自分が高校時代に、「この教育どうなの?」と思ったんです。みんな、とりあえずいい大学行くために勉強して、理系か文系かもあまり考えず、「得意だから選ぶ」となっていた。それでいい企業へ行って……みたいな。そういった流れを、全員が盲目的に信じているというか。先生も教科しか教えられないじゃないけど、「絶対に変えられるでしょ、これ」というのがすごくあったんです。

:高校生のときに、その怒りを感じるっていうのは、かなり引いた目線で現場を見られたんじゃないですか? それができる高校生とできない高校生がいたと思うんですけど。

水野:引いたというよりは、自分がやりたいことをやらせてもらえなかった当事者じゃないですかね。だから、僕はまず教師になろうと思ったんです。いい先生になろうと。でも、中高生の教育やればやるほどおもしろくてですね。

僕、大好きなんですよ、中高生の成長を見るのが。だから、自分がすごい好きなもので、しかも教育変革をやるっていうのは、まさに志じゃないですけど、21世紀の教育の変革をすると決めた、と。これをできなかったら死ねばいいくらいの感じというか。

:逆に当事者だからこそ、そうした起爆剤になるような感情が芽生えたんでしょうね。

水野:そうでしょうね。

:具体的になにをやりたいと思ってたのにやれなかったんですか? さっきの椎木さんのケースなんかもちょっとありましたけど。

水野:ちっちゃい話なんですけど、当時僕は野球部だったんですよ。夏の野球の、高3の大会って、超重要なんですよ。そのために6年間、毎日練習してきたんですよ。だけど、学校の決まりで練習時間が、1時間や2時間しかできない決まりがあったんです。

「いやいや、待て」「俺は、このためにやってきたんだ」と。「最後の、この超重要な期間に、なんで練習できねーんだ」「勉強どうこうとか関係ない」みたいなのがすごいあって。めちゃめちゃ先生とかに言って。テストとかも白紙で出したりとかもしたんですけど。

:態度で示して。

水野:いろんなことやったりして、だけど、駄目だった。そういったことがありました。

:でも、すごく、いいですねぇ。

水野:ちっちゃな話ですね、はい。

誰かを喜ばせることに大事なものがある

:いや、本当に、そのちっちゃなところの芽から今の活動が広がってくるわけですもんね。どうでしょうか。駒下さん。

駒下純兵氏(以下、駒下):そうですね。それでいうと、僕たちのビジョンは、「幸せな瞬間をもっと世界に」と言っているんです。どういう意味かっていうと、やっぱり人って、どんどん上を目指したくなるなって思ってて、お金持ちになりたいとか。

:そうですね。

駒下:いい服を着たいとか。そんな感じになっちゃうと思うんですけど、「本当に人生に大事なものってなんだろう」を考えたときに、今、目の前にある幸せを幸せと認識できる感性ってすごい重要だと思ったんです。そうやって大きなものを求め続けると、キリもないし。

:ちょっと待ってください。でも、どうしてそんな、70年、80年くらい生きていた方が「最期にやっぱり……」というようなお話を、すでに20代くらいのとき「幸せとはこうである」と、どうしてそんなことが……? 見えたというか?

駒下:そうですね。僕も自分のためにがんばってきた時期がすごくあったんです。カメラをやっていたのも、「もっとTwitterのフォロー数が増えたらいいな」「もっとリツイートされて有名になりたいな」とか、そんなモチベーションでがんばってたんです。でも、ある程度有名にもなったし、写真のスキルもついたけど、あまり達成感を感じなくて。

なぜ達成感を感じなかったんだろうとよく考えてみたとき、写真のきっかけは、最初は友だちを撮って、それをプレゼントして喜んでもらうのが嬉しかった。けれど、それがいつの間にか、もっと自分を認めてもらうために写真を撮るようになっていて。「そっちじゃないな」と思ったときに、「自分は誰かを喜ばせることに、大事なものがあるんだろう」「人に喜んでもらうことみたいなものを写真を通してやりたい」という感じになっていったんです。

:でも、水野さんの話も駒下さんの話も、そういう欲求だったりカメラだったり、ある一定のタイムラインを走っていく中で、1つ出たアクシデント、1つの事象がさらに次のステージにつながっている。そういうのは共通してますね。

起業家=与えられた才能の持ち主、ではない

米良さん、いかがですか?

米良はるか氏(以下、米良):私は「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」が、私たちの会社のミッションです。もともと、私はあまりやりたいこととか好きなことがぜんぜんなくて、起業するのもすごい時間かかっちゃうような、そういう感じの子だったんです。

大学生のときに、パラリンピックのスキーチームに対して、資金はないけれども、思いを持って世界で何度も優勝するような人たちに、たまたま触れ合うときがあって。

彼らにはお金がないという話だったので、「なんかネット使って、1人1円ずつ出せば1億2,000万円集まるんじゃないの?」みたいなアイディアから、「それをウェブサイトにして、お金集めするのを大学生のときに企画して作った」っていうのがもともとReayforの原型になっているんです。

そこで、ぜんぜん知らない人たちからたくさんのお金が集まる体験をしました。それまではずっと、起業するとか、なにか新しいものを作るのは、ある種の才能だと思っていたんです。今、ここに座っている学生さんたちももしかしたら、ここに座っている人たちも、起業=与えられた才能の持ち主と思っているかもしれません。

私も、そう見ていたんです。でも、アウトプットを作って、それで世の中に「見てもらう」という機会を設けることによって「もしかすると、これは才能じゃなくてなにかやってみるきっかけを掴む・掴まないかのどちらかなんじゃないか」と感じたんです。

:目に見えるアクションですね。

米良:そうです。アイディアやきっかけはたくさんあるけど、それを市場に出してみるっていうことが、足りていないんじゃないのかなと思いました。

それこそ、ビジコンを否定するわけじゃないんですけど。ビジネスのアイディアは出すんだけど、アウトプットにしてみて、それを欲しいと思う人からフィードバックを受けないとわかんないじゃないですか。

結局、やってみないとわからない。ということが、けっこう起こっているんじゃないのかと思ったときに、Readyforっていうプラットフォームを作って、いろんな人たちがとにかくアイディアのレベルでいいから、「こういうことやりたいんだよね」を出していって、それに対して共感した人たちがお金を出して、アイディアがどんどん実装されていくような、そういう社会を作っていけば、もっと自主的に社会を変えていきたいと思う人たちが、増えていくんじゃないのかなぁと思っていて。

なので、自分の体験から、この「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」というミッションにつながっていて、このサービスをやっているんです。なので、すごく楽しくやれていますね。

:やっぱり当時「120万円が集まった」というときのの驚きは相当なものだったということですか?

米良:そうですね。「実際にお金を集めるんだ!」って思ったときは学生だったのもあってもう本当に、文化祭のノリみたいな感じでした。

:1つのイベント事としてね。

米良:そうです。そんな感じでやっていたんですけど、知らない人たちから、ネットでどんどん広がっていって、いろんなメディアがどんどん書いてくれるようになっていって。そのときの体験はすごく不思議なものでした。

自分はただの学生だったし、メディアに載るような、そんな体験をすることなんて、今までぜんぜんなかったんです。でも、こうやってアウトプットを作って、いろんな人たちがそれにフィードバックをくれると、こうやって、いろんな知らない人たちが知ってもらうようなきっかけがどんどん作れていけるんだと思ったので。

もしかしたら、そういうことは誰でもできる……と言ったらおかしいけど、きっかけをちゃんと作れば、いろんな人たちがチャンスをものにしていけるんじゃないかなって。これが、インターネットの力なんじゃないのかなって、思いました。

破天荒な人が増えないと、起業家も増えない

:椎木さんは、野望は?

椎木里佳氏(以下、椎木):そうですねぇ。

:ビジョンは?

椎木:野望は、アジアの女性の代表になって、自分の後ろ姿を若い人たちに見てもらって、こういう人になりたいとか、自分もアクション起こしてみようかなって思う人がもっと増えてほしいなと思っていますね。

:なんでそう思うようになったんでしょうね。

椎木:自分が会社を立ち上げるときに、そういうモデルケースみたいな人があまりいなかったんですよ。

女性の起業家って、経沢(香保子)さんや南場(智子)さんといった素晴らしい方いますけど、その方たちのことを中学3年生の当時の私は知らなかったんですよ。たぶん、ふつうの中学生は、その素晴らしい方々を知らないし。

女性で起業できる発想がないんですよね。なので、女性が起業できるとか、15歳で起業できることをまず知らなかったら、そういう発想も生まれてこない。自分がたまたまラッキーだっただけで、ふつうの女の子たち、ふつうの15歳ではたぶん生まれない発想だから、それをもっと一般の子たちにも知ってほしい。

:チャンスが生まれるよね。

椎木:そうですね。

別に起業だけが素晴らしいものとはまったく思ってないんですけど、自分の周りでも、自分は起業したいんだけど、親が弁護士になれというからいやいや法学部へ行ってて、「すごく毎日嫌だ」「苦痛」と言っている子がいて。そういうのってすごく、いい子過ぎるっていうか。

親の言うこととかもちろん聞くの大事だと思うんですけど、でも、もっと「盗んだバイクで走り出す」とか。

:尾崎豊(笑)。いくつよ?

椎木:悪い子がもっと増えないと、起業家も増えないと思うから。私も、「盗んだバイクで走り出す」系の人だと、勝手に思ってるので。

:破天荒なね。

椎木:がんばります。

:バイクは盗んでないでしょ?

椎木:まだ盗んでないですね。

:まだ盗んでない(笑)。

椎木:窓ガラス壊すまでは3秒前ぐらいですね。

自分の大事な期間で、誇りを持てるアウトプットを

:いいですねぇ。でもなんとなく、共通して見えてくるのは、やっぱり自分の中になにか非常に大きなモチベーションを点火させていくような出来事があって、それを見事にアクションに持っていったことは共通していて。さらに、やっぱり将来なりたいもの、将来見たい未来が可視化されている状況で、それがビジネスなのかなという印象を受けました。

最後に、一言ずつ。今日のTRIGGERに参加して、Twitterでもたくさん参加してくださって。全部の質問は紹介できなかったんですけど、本当に感謝しています。くすぶって、「どうしようかな」と思っている子もいるかもしれません。ぜひみなさん、一言ずつ、メッセージを最後にください。じゃあ、米良さんから。

米良:はい。ありがとうございました。最初に話した通り、「ともかくやってみる」ということがすごく大事だと思います。とくに学生時代は本当にリスクがなく、誰でもなんでもチャレンジできるような状況だと思うんですが、その大事な期間に、自分で誇りを持てるようななにかアウトプットを、どんどん仕掛けていってほしいなと思いますし、もしそういうアイディアがあったら、ぜひReadyforにアクセスしていただければなと思います。ありがとうございました。

:ありがとうございました。

(会場拍手)

そして、水野さん、お願いします。

水野:今日はありがとうございました。僕は、大学生のときに起業とかを考えたわけではまったくなくて、27歳のときに起業しようと思ってした、という感じだったので、みんなすごいうらやましいというか。やっぱりなかなか歳ををとったりとか、家族持ったりとか、子供できたりすればするほど、リスクって取りづらくなってくると思うので。

でも「日本ってこうなんなきゃいけないんだ、だから起業を増やさないといけないよね」みたいなネガティブ・アプローチがすごい多いかなと思うんですけど、今ってそれじゃ動かないなって思っていて。その中でいうと、起業はめっちゃ楽しい。

もう成長してるというのもあると思うんだけど、出会えない人と出会えたり、自分がこんな教育あったらいいなっていうのがかたちになったり、それで幸せになれる子が増えたりっていう、自分で社会を変える手段なんだよね。だから、なにか不満を持っていたりするのであれば、すごいチャレンジする、人生を賭ける価値はあるんじゃないかなと思う。

なので、もし今あるんだったら、本当に今日トークしに行きたい。でもしちゃえば、最初20万で済むから。トークしちゃえばなんとかなるぐらいの。そしたら成長もするし、楽しいと思うんです。

:始まりますよね。

水野:はい。ぜひ一緒に、社会を変えるチャレンジができればなと思います。今日はありがとうございました。

:ありがとうございました。

(会場拍手)

「やろうと思ってます」「やりました」の差

さあ、駒下さん、お願いします。

駒下:はい。今日はありがとうございました。「やろうと思ってます」「やりました」の差ってすごく大きいかなって思っていて。やろうと思っていますの段階って、すっごく批判がくるんですよ。それって市場規模がなんのとか、そういうニーズってあるの、とか。

とくにうちなんて、「カップルのデートにカメラマンが同行するって、意味わからへん」って言われるんですけど。でも、やってみたらニーズがあるなんてことはいくらでもあって、そこはみんなが気づかない、自分だけが見えてる世界みたいなのが絶対あったりするんで。なにか邪魔な雑音が入ったときは「全部無視してとりあえずやる」みたいなことをやってもらえたらなと思います。今日はありがとうございました。

:勇気のある言葉でした。ありがとうございました。

(会場拍手)

最後、椎木さん、お願いします。

椎木:はい。今日はありがとうございました。さっきも言ったんですけど、起業するとか、なにかアクションを起こすってなると、必ず言ってくる人がいるんですよ。それは先生かもしれないし、家族かもしれないし、友だちかもしれないし、恋人かもしれないし、周りの親戚かもしれないし。

いろんな人が、「え、それいいの?」「こっちの方がいいんじゃない?」って言ってくること、必ず起きると思うんですよ。ただ、その人たちのアドバイスを完全に無視しろとは、私は思わないんですけど、結局、最終的に自分の人生に責任を取れるのは自分しかいないので。

親が、自分より先に死ぬだろうし、友だちも、彼氏も、ずーっと傍にいてくれるとは限らないし、結局、自分の責任は自分で取らないといけない。なので、自分のやりたいこととか、見たい世界とか、そういうのを絶対に諦めちゃいけないなって思うので、その雑音とか、いろんな人が言ってることは、まぁまぁ聞いて、ちょっと流すくらいの塩梅でいいんじゃないかなって思います。私もがんばるので、ぜひ一緒にがんばりましょう。今日はありがとうございました。

:ありがとうございました。

(会場拍手)